「でレオはどうする?」
「悪いけどパス。エリカ達と約束してるし」
これまでスバル達と出かけていた鎌倉の花火大会、去年はエリカの仕事の都合で一緒に行く事は
叶わなかったが今年はどうやら行けそうとの事で。
「じゃあフカヒレと子蟹ちゃんには俺から伝えとくか。フカヒレは妬みそうだしカニは機嫌悪く
なりそうだが愛するレオの為に一肌脱ぐか」
「悪いな。なあスバル・・・いや、やっぱいいや」
(余計なお世話だしな)
俺は首を横に振るとスバルに薄い笑みを見せた
若干苦いモノの混じった笑みに一瞬スバルは怪訝そう顔をしたがあえて問いただす事も無く・・・

エリカと付き合い始めて2度目の夏、乙女さんは大学進学を機に柴又の実家に帰った。
竜鳴館へ通い、執行部の仕事をこなす。日々鍛錬を重ねながらエリカの仕事の合間を縫っては
デートをし夜は幼馴染と集まって無駄に楽しい時間を過ごす。
相変わらず以前と変わらない日常を過ごしている様でその実少しずつ変わっている事を実感している。

ピンポーン
「はーい」
今日は花火大会の当日、そしてそこに在ったのは桜色の布地に奥ゆかしい撫子柄があしらわれた
浴衣を着たエリカの姿だった。
「・・・エリ・・・カ?」
声にならない声を搾り出すように呟いた俺を見たエリカは含みのある笑みを浮かべる。
「どうレオ?この色って私のキャラじゃないんだけどたまには目先を変えてみようと・・・おやぁ〜?
おやおやおや?私が綺麗だから見惚れちゃった?まあ当然だけどね」
「・・・ああ、凄く綺麗だよエリカ」
「ちょっと何素で綺麗とか言ってるのよ///」
ビシッ
「グフッ!」
「普段言わないような事突然言うのが悪い」
流石は姫、相変わらずの傍若無人、唯我独尊。だがその顔が少し赤く見えるのは俺の自惚れ?
対馬家の前に桃色空間が形成され互いの距離が次第に縮まっていき――


「ゴホン。ねえエリー、レオ君二人とも私のこと忘れてない?」
ビクッ
その声を聞いた瞬間俺は瞬時に距離を取ろうとする。だがエリカは俺を引き寄せ
「ン」
背伸びしてキスしてきた。柔らかい感触とエリカから発せられる微香に我を忘れる。
ニュル
エリカの口内に舌を挿入し貪る様に味わいつくす
「ん・・・んー!!ちょっとレオ!!んっ、ちゅく・・・ちゅぱ、れちゅ・・・っ」

数分後
「よっぴーごめんてば機嫌直して」
「・・・いいよ、どうせ私は日陰の女だし」
「ああーもう、レオ何とかしなさい」
すっかりいじけてしまった良美を必死に慰めているエリカを見ながらどうしたものかと考える。
此処までネガティブ思考に陥った良美を元に戻すのはそう容易ではないと思うのだが
「・・・えーと良美、良美の浴衣姿綺麗だよ」
「えへへレオ君///・・・そんな綺麗だなんて恥ずかしいよう///」
うん、実に簡単だった。今度は女の友情なんてと拗ねているエリカを横目に上目遣いで俺を
見つめる良美の浴衣姿を見る。
黒地に牡丹柄が華やかさを演出しあでやかな大人っぽさを見事に表現している。

佐藤さんを良美と呼ぶ切欠になったのは今年の4/2、そう良美の誕生日の事
良美のマンションに集まって3人でお祝いをした席でのエリカの一言が発端だった
「よっぴーへのプレゼント考えたんだけど今年は凄いわよ。じゃーんこれよ」
そう言って俺の肩に手を置きニッコリと笑っているマイハニー
「どうせこれからも一緒に居るんだしよっぴーまだレオの事諦めきれないらしいからレオに関する
諸権利の15%を譲渡するわ」
俺に相談も無しに権利を譲渡するとは流石はエリカの姫たる所以。それにしても15%とは微妙な数字だ。
良美は喜んでくれたし、エリカも良美と最後まで出来ると喜んでいた。
まあ俺としても悪い気はしなかったんだけどさ。


鎌倉に着くと空は既に薄墨に染まり、信じられないほどの夕焼けは夜の闇を孕んでいた。
神社は灯篭の明かりに照らされ幻想的な空間を作り出し、そして参道の両脇には延々と出店が列を
成している

「金魚すくい金魚すくい。わたあめわたあめ!」
「さ、次の挑戦者は誰かな狙撃者募集中だーーーっ!ねえねえそこのお兄さん(ry」
「焼きソバ行くわよ!他は後回し、何を置いても焼きソバ!」
祭りの独特の雰囲気にあてられて大人もオープンな気持ちになっているようだ

「二人とも次どうする?」
「うーん、花火始まるまで時間有るし射的なんていいわね。なによりお店のお姉さんおっぱい
大きかったしあそこに決定」
流石はおっぱいスキーのエリカだ。さっきチラッと見たがサラシに半被姿の扇情的な格好を
した金髪のお姉さんの店だったはず
「えーあそこは止めた方がいいよぉ」
「えーなんでよ?」
「だってお店の人綺麗だったしもしレオ君が・・・」
そう言って俺をチラチラ見る良美
「俺?俺は大丈夫だってエリカと良美以外に興味ないから」
ねえ良美なんでそんな目で俺を見るのかな?怖いよマジで。早く良美の性格矯正させなきゃな。
結局は良美の意思と長文化を恐れた執筆者の都合で適当に店を冷やかす事にした

改めて辺りを見回すとちらほらと浴衣姿の女の子も見える。
人々の笑顔が溢れ活気のあるこの中で怨嗟を一身に集めている俺対馬レオ。
明らかに彼女連れの男までこちらを睨んでくる。まあ俺が逆の立場なら気持ちは解るけど。
俺の右腕を組んでいるのがご機嫌な様子でボンボンを弾いているエリカで左腕にはそんな
エリカの様子に苦笑している良美。片手に薔薇、片手に白百合。まさに両手に花。
特に良美は普段学園では隠れ妻を完璧に演じている、鎌倉まで来たとは言え知り合いに会う
可能性も有るがこんな時くらいは甘えて欲しいと思うし――
「ようレオじゃねえか」
いきなりかよっ!


「ようレオじゃねえか」

声を掛けられ後を振り向く。そこに居たのは3・・・いや2馬鹿+心の友スバルの幼馴染ズ
「ハローハローレオの居ない対馬ファミリーの諸君」
「おいおい姫そのレオを取ったのは誰だよ。てめえもてめえだレオ鼻の下伸ばしやがって」
エリカの挨拶に明らかに不機嫌な様子のカニ。
そしてフカヒレは良美が組んでいる俺の左腕を注視していた。

「なあレオ――」
「あの、えと・・・これはふざけていただけで」
そう言って離れようする良美の体をグッと引き寄せた
「今まで黙ってたけど実はこう言うこと」
「・・・レオ君///」
辺りに静寂が訪れる。スバルは別に驚いた様子も無い、まあスバルならずっと前に感づいて
おかしくない様な気がする。そしてカニとフカヒレは
「ははっレオも冗談きついよな。俺一瞬マジでよっぴーのこと寝取られたって本気にしたぜ」
「おめえ何時からそんな冗談言えるようになったんだよ。だいたいヘタレのレオに2股なんて
無理に決まってんだろ」
全く本気にしてなかった

スバル達と合流し6人で花火会場の海岸への道を歩く。俺とスバルは前を歩く4人の背中を
見ながら並んで歩いている

「結局信じてもらえなかったな」
「まあ仕方ねえだろ2人の中でお前は去年のヘタレままなんだよ。俺としてもレオに甲斐性が
出て来たのが嬉しくもあり悲しくもあり」
そう、永遠と思える俺達の時間も有限。あと半年もすればそれぞれの道を行く。
会いたいと思えば会えるとは言えこれまで通りと言うわけには行かなくなる。
小さい頃からずっと一緒だったこいつらと離れる。言葉では解ってるとは言えかなりキツイ。
だからこそ――
「カニの事宜しくな」


「姫とよっぴー連れてエスケープするから2人の面倒見ろってか?しゃーねーな」
スバルは俺の意思を踏まえた上でとぼけているのか、それとも絶対にバレているはずがないと
思っているのか、多分後者だろうな

もう1度、今度はスバルの顔を正面から見据え
「カニの事宜しくな」
スバルと付き合いだしてこんな顔初めて見た。此処にカメラが無いのが残念だ。
「・・・何で解った?」
「なんでだろ、自分でもよく解らないけどなんとなく」
憧れの姫と付き合いだしてこの1年で本当に色んなことがあった。
これほど人生経験を積んだ1年は過去においてなかったはずだ。
周りを冷静に見る余裕も出来た。
そして偶然とは言えふとした時にスバルのカニに対する気持ちに気付いた。

「あいつ馬鹿だしさ誰か見てないと心配なんだよね。一応大事な幼馴染だし、それにスバル
を見てて歯痒い言うかさ。まあ余計なお世話だって解ってるけど」
「あいつまだお前のこと・・・いやオレも頑張ってみるか。クソ何か今のレオカッコいいな。
マジで惚れそうだぜ」
「キモイから止めれ」
そこには既に先ほど見せた顔は無い。あるのはただ俺達の誇るカッコいい兄貴の何時もの姿

「じゃあそんな優しいレオに頼みがあるんだけどカニと一緒に花火見たいからフカヒレの事頼むわ」
同性だと解っていてもつい転ぶ奴も居るんじゃないかと思えるほどの笑顔を浮かべるスバル
「だが断る。それに俺もエリカと良美の3人で見たいし」
「背中を押したなら最後まで面倒見てくれよ。まあこれだけ人居るんだしはぐれても
しょうがねえよな」

海岸へと続く道は人で埋め尽くされている。
毎年の事だが海岸はもっと多くの人で溢れかえっているはずだ。
2人で顔を見合わせ互いに笑みを浮かべると一斉に前を歩く4人の下へ急いだ。


―パァン
次々と打ち上げられ咲いては儚く散っていく2500発の花火
「へえ綺麗じゃない」
「うん綺麗ー」
オレとエリカ、良美は海岸で3人並んで空を見上げている。案の定見事に離脱に成功した。
スバルの成否を知る由は無いがきっとカニと2人で花火を見ているはずだ。

「そうだ今晩レオの家泊まるから。浴衣姿よ、興奮するでしょ」
「浴衣・・・凄くいい。じゃあ帰ろっか?」
早速2人の肩を抱き駅へ向かおうとする
ビシッ
「グフッ!」
「コラ、獣すぎ!花火が終わるまで待ちなさい。よっぴーも興奮しない」
「駄目だよレオ君///・・・はっ、何!?私興奮なんてしてないよー、うう」

俺は盾になると誓ったお姫様とちょっとエッチな女の子を見る。
エリカの覇道には艱難辛苦が待ち構えているだろう。
それでもこの2人と一緒ならきっと乗り越えて、そして何処までもいけるはずだ。

〜おまけ〜
「レオー、スバルー。ったくあいつら迷子かよ。いやこれは千載一遇のチャンスだ」
辺りを見渡すと――よし発見
「ねえお嬢ちゃん迷子?大丈夫だよ、全然怪しくないからね」
女の子の手を取ったフカヒレの行き着く先は果たして?案内所だといいなー


(作者・赤猫氏[2006/06/11])

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