放課後、いつものように竜宮へと向かって行った。
佐藤さんは他団体と話があるらしく、今は竜宮には姫しかいないらしい。
「ちわーっす」
扉を開けると、姫が椅子にうずくまっていた。
体も小刻みに震えている。
そういえば、今日の姫はどこかおかしかった。
インフルエンザにかかってずっと休んでおり、ようやく治って学校に来たんだけど、
なんだか一日中上の空というかなんというか…
「どうしたんだよ、姫…っておわぁ!」
近くに置いてあったホワイトボード一面に『乳』とびっしり書かれたのを見て、思わず声を上げてしまった。
「あ、対馬クンか…よっぴーじゃないんだ…」
「何かあったのか?」
「うん、私ね…」
ここで『対馬クンのことが好きなの』とか言い出したら、それこそ病院へ連れて行ったほうがいいかもしれない。
もちろん、俺はがっかりすることこの上ないだろうけどね…
「今、無性におっぱいが見たいの。 そして揉みたいの」
「はい?」
「ということで、至急私におっぱい1セットをよろしく。
 ちなみに言っとくけど、対馬クンのこきたない乳を見せたらぶっとばすわよ」
「なんでやねん」
思わず訛ってしまったぜ。
それはともかく、なんで今日は様子がおかしいんだ?
「頼むから持ってきてよー。 今日の私はいつもの100倍以上は見たくなってるの!
 偉い人が昔こう言ったわ。 『バストの1センチ差とは、オリンピックの順位の差と等しいと言われている』と。
 つまり、90の祈先生は金メダルを獲得して国歌が流れるけど、87のなごみんはメダルすらもらえないということよ!」
「どういう理屈なんだよ。 言ってることがバラバラだぞ。 ちょっと落ち着こうよ、姫」
「つべこべ言わずにさっさと行く! でないと思いっきり踏んづけるわよ!」
「は、はいっ!」
姫に怒鳴られ、俺は竜宮を飛び出した。


バキッ! ドカッ! グシャッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ…」

…10分後…
俺は乙女さんにボコボコにされた挙句に、そのままズルズルと引きずられて竜宮に戻ってきた。
「た、ただいま…」
「おい、姫! お前、レオに何を命令したんだ!
 いきなり私のところにやってきて『胸を見せて』とか言うものだから、つい思いっきりやってしまったじゃないか!」
当たり前だが、乙女さんは怒り心頭だ。
それより、乙女さんに頼んだ俺を誰か勇者と呼んでくれ。
「対馬クン…」
ゆらりと姫が立ち上がった。 何だか禍々しいオーラのようなものが立ち込めている気がする。
「乙女先輩じゃないでしょ! こういうときはよっぴークラスか、それ以上の娘を連れてきなさいよ!」
「そんなこと言ってなかったじゃないか!」
「ああ、もう! 対馬クンに頼むんじゃなかった…」
「姫、私のことを馬鹿にしているだろう?」
「しましたよー。 乙女先輩の胸は私の求める胸じゃありませんー」
何で俺はこんなことで評価を下げられてるんだ!? ムチャクチャ横暴じゃないか!
そこへ誰かが竜宮にやってきたようだ。
「誰かいますか〜? あらあら、まだこれだけしかいなかったのですか」
来たのは祈先生だった。 途端に、姫の目が凄まじい光を放つ。
「祈先生、覚悟ー!」
「させん!」
声と共に姫が凄まじい跳躍で先生に飛び掛ったが、空中で乙女さんに捕まってしまった。
そしてそのまま、乙女さんは姫の首に右のスネを押し当てて床に落下した。
「必殺・乙女の断頭台!」
「げふぁ!」
さすがにこれは効いたのか、そのまま気絶してしまった。
「霧夜さんはどうかなさったのですか? 説明していただけないでしょうか」
「ああ、それはですね…」


「なるほど、そういうことだったのですか」
かなり呆れた顔で祈先生は答えた。
乙女さんは乙女さんで、気絶した姫を椅子に縛り付けていた。
「どうだ、これなら目を覚ましても襲い掛かったりはしないだろう?」
すると、どうやら姫は気がついたらしい。
「う〜ん……あ、あら? どうして私縛られてるの?
 ていうか、先生の胸を見せなさい! そして揉ませなさい!」
「こうでもしないと、お前はまた先生に襲い掛かるだろうが。 見境なしか、お前は」
ガルルルルと唸り声を姫は、縛られているにも関わらず無理矢理動こうとするばかりである。
「ああ〜! おっぱいが見たい! おっぱいを揉みたい!」
「だったらさ、佐藤さんを連れてくればいいのか?」
「それでもいいけど、今は目の前によっぴーよりも大きい人がいるでしょ! 先生おねがーい!」
「嫌ですわ。 どうしてもと言うなら、高級マンションの一部屋をくださいな。
 もちろん、引越し代込みでお願いします」
「あげる! あげるからお願い!」
「あら、そうですか。 それでは…」
「祈先生、脱ごうとしないでください!」
姫も姫だけど、先生も先生だ…でも、俺もちょっと残念。
さて、この状態をほったらかしていくわけにもいかないなぁ。
後で事件でも起こされたらメチャクチャ困る。
「とりあえず、乙女さん」
「うむ。 当て身」
「かふっ」
姫が暴れるおかげで話も全く進まないので、とりあえず姫には気絶してもらった。
姫のセクハラは珍しい事ではないが、今回はハッキリ言って異常だ。
まるで禁断症状にでもかかっているかのような…
「それで、どうするのですか」
「とりあえず佐藤さんを呼んできます。 乙女さん、姫がまた暴れないように見張っててよ」
「ああ、任せろ」


佐藤さんを見つけた俺は、そのまま竜宮まで急いで戻った。
「…というワケなんだ」
「あぁ…まったくもう……」
「佐藤、何かわかるか?」
少し考えてから、佐藤さんは口を開いた。
「昨日までエリーがインフルエンザで休んでたじゃないですか」
「そういえばそうでしたわね」
「その間、私に移ったら悪いから、屋敷の人が看病していたんです。
 エリーったら『その人の胸があまりにも貧相だから不満だ』って何度もメールを送ってきたんです。
 部屋はエリーの部屋から別の部屋だったおかげで、その……エッチな本も読めないし、ビデオも見れないし、
 トイレ以外は部屋から出れないし、あの…えっと…『おっぱい離れ』が続いたのが原因だと思います。
 今日は何とか騒ぎを起こさないように、私が押さえつけてたんですけど…」
話を聞いてから、全員が大きなため息を出した。
「…呆れて物も言えんな」
「バカバカしいですわねー」
「…そのエッチな本とビデオの内容が知りたいな」
「レオ!?」
「あぁぁぁぁ、ゴメンゴメン! それよりも、姫のこの状態を治す方法はないの?」
「うーん、こうなったらやっぱり正攻法しか…」
「誰が犠牲になるのですか?」
「……え、えっと…」
完全に黙ってしまった。 やはり祈先生でないと無理なんだろうかなぁ。
いや、それならいっそのこと椰子で手をうってみようか…
「うぉぉ…」
「どうした、レオ?」
「いや、別に」
頼んだ瞬間に俺が血達磨にされるのが想像できてしまったぜ。 ブルッときた。
あーあ、誰か救世主が出てきてはくれないもんかなぁ。


「ウィース!
消防署のほうから来たぜー!」
そんなところへやってきたのは、相変わらず悩みのなさそうなバカ面をしているカニだった。
全員が同時にカニのほうをじっと見つめる。
「ど、どうしたんだよ、みんなしてよー。 ボクが可愛すぎるからか? 照れるぜ」
「無理…だろうなぁ」
「蟹沢には悪いが…」
「無理ですわね」
「ということだ。 今日はお前の出る幕はねぇ」
「んだと、このヘタレオ!」
「略すんじゃねぇ!」
「ったく、そういやなんで姫が縛られてんの?」
とりあえず、俺達は事の顛末をカニに話した。
全部を聞いたカニはやはり呆れ顔だったが、このままにしとくわけにもいかないというのは理解したらしい。
「ふーん、そういや元気がなかったけど、そういうことだったのか」
「なんとかしないと、また暴れだすことにもなりかねん。 一般の学生にも危害が及ぶかもしれないからな」
「じゃ、ボクに任せてよ!」
全員の目が点になってしまった。
何を言ってるんだ、コイツは。 カニの洗濯板で何とかなるようなもんじゃないんだぞ。
その場の空気もお構いなしに、カニは鞄からあるものを取り出した。
「コレを使えばいいんだよ!」
「何だ、それは?」
「ふっふーん、まぁ見てなさいって。 乙女さん、姫にタオルで目隠しをしてよ」
「よし」
「レオは女子サッカー部まで行って、マナにこれを借りて来いや。 同じの持ってるから」
「浦賀さんだな。 そんじゃ、行ってこよう」


アイタタタ…そっか、乙女先輩に攻撃されたんだっけ。
ホント、容赦ないんだから。
そういえば、なんで私は目隠しされているのかしら?

ムニュッ

「あ、あら?」

ムニュムニュッ

「こ、これわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
両の頬から伝わるこの感触!
布ごしだけど、紛れもなくこの何とも言えない感触はおっぱい!
しかもこれはかなりの大きさときたわね!
そしてこの体勢はまさしく…
「かの有名な仙人がこよなく愛した、伝説の究極奥義『パフパフ』!?」
「アンッ。 お姫様、動かないでくださいよう」
「この目隠し取って! そして服も脱ぎなさい! 縄を解きなさい! 直に触らせなさい!」
「だって、恥ずかしいんですもん…これでガマンしてください……もう一人いますから」
その言葉の後、今度は顔面に胸を押し当ててくる娘が出てきたわ!
ああ、もうこの世はパラダイス…
でも、ちょっと息苦しいかも。
「どうですかぁ、お姫様?」
「いい! すごくいい! 今までの鬱憤がどんどん消えていくわ! ハァハァ…」
この大きさはどれぐらいかしら?
ひょっとして100オーバー!? そんな逸材がこの学校にいようとは…!
も、もう…気持ちよすぎて……
「お姫様? お姫様〜〜?」


「また気絶しちまったみてーだな。 レオ、もういいぞー」
浦賀さんからカニの言っていたものを受け取って戻ってくると、今度はいきなり締め出されてしまった。
中で姫の嬉しそうな叫び声が聞こえてから数分後、ようやく中に入れてもらえたのだ。
すでに目隠しも縄も解かれていたが、姫はまたも気絶していた。
「どうよ、効果バツグンだったでしょ?」
「それにしても本当に気持ちいいですわ〜。 私も欲しくなってきましたわ」
「祈ちゃんもよっぴーも裏声バッチリだったけど、ちょっと感情入ってたんじゃねーの?」
「そ、そんなことないよう!」
祈先生のお気に入りになっていたのは、2つの丸いクッション。
浦賀さんから借りてきたのは薄いブルー、カニが持っているのはオレンジだった。
そういえば、授業中に片方を枕にして寝ていたな。
確かフカヒレもグリーンのやつを持っていたような気がする。
「こいつがさー、スゲー気持ちいいんだよ!
 新素材のよくわかんねぇ横文字のやつ使ってるんだけど、コレがたまんねーんだよねー。
 目隠しすりゃ大丈夫かなーって思ったけど、うまくいってよかったよ」
「で、佐藤。 姫はもう大丈夫なのか?」
「はい、多分」
そんな話をしていると、姫が気がついたようだ。
「う〜ん…ハッ! ちょっと、よっぴー!」
「ど、どうしたの?」
「あの娘達どこ行ったの!? 教えなさい!」
「え? そ、その…」
「あれほどの逸材、放っておくわけにはいかないわ! 生徒会長の権限を存分に使って、あの娘達を生徒会に引き入れるわよ!」
「あ、あのね、えっと…」
「あーもう、まどろっこしいわね! 私が捕まえに行ってくるわ!」
そう言うとすぐに、姫は部屋からものすごいスピードで出て行ってしまった。
「ちょ、ちょっとまってよぅ!」
その後を佐藤さんが追いかけて行ってしまった。

結局、禁断症状は解決する事ができたものの、今度はどうやって姫を言いくるめようか悩むことになる。
しかし、それはまた別のお話…


(作者・シンイチ氏[2006/04/07])

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