「乙女さんも卒業して、とうとう俺達も3年生か」
感慨深そうにスバルが言った。
いつもの4人組でいつもの部屋、いつも通りのまったりとした時間。
少々うるさかった乙女さんもこの家を出て行き、この部屋も乙女さんが来る前の場所へと戻っていった。
…いや、少しだけ違うところがある。
それは、俺が良美と付き合っていることだった。
明日は4月2日、良美の誕生日。
もちろん、明日の予定は誕生祝をすると決定している。
「ということだから、明日は家に来ても誰もいないからな?」
「んだよ、付き合いワリーなー」
「レオも大人になっちまった…俺に残された選択肢は魔法使いになるだけなのか…
 げっ、抜かれた! トップだったのに!」
「ぎゃーっはっはっは! オメーはボクの後ろをドンガメのように走ってな!」
今、俺達が遊んでいるのはある有名なキャラが登場しているレースゲーム。
さっきの過程でカニがフカヒレを追い抜き、その後を俺とスバルが続いていく。
「ちくしょう、奥の手をくらえ! 赤甲羅発射だ!」
「あー! ボクの独走状態だったのにー! 逆転負けだー!」
見事にクリーンヒットしてカニは全員に抜かれてしまい、結局はドンケツでのフィニッシュとなった。
「うう〜…ダメ野郎のくせしやがって!」
「よし、罰ゲームだ。 九九を斉唱しろ」
「は? そんなもんが罰ゲームでいいの?」
「いいから早くやれよ」
「いんいちがいち、いんにがに、いんさんがさん…」
良美にはプレゼントを何にするかはもう決まっている。
後は渡すだけ。
彼女がどんな顔をするか楽しみだ。
「…くくななじゅうに、くくはちじゅうはち!」
カニは最後の段を気合を入れて叫んだ。
「お前、本当に進歩ねーな…」


「うん、お父さんありがとう。 うん、うん…」
今日は私の誕生日。 部屋の掃除をしていると、お父さんから電話がかかってきた。
私にお祝いの言葉を言ってくれたが、お母さんからは何もなかった。
お父さんは照れてるんだろうと笑っていたが、本当のところはどうなのだろう。
レオ君のおかげで人を信頼できるようになったけど、それでもちょっとお母さんは怖い。
怖いというか、何だかよくわからないけどそんな感じ。
自分でも直さなきゃって思ってはいるけれど、なかなかどうにも難しいんだなぁ…
「うん、それじゃあね」
電話を切って、私は掃除に戻った。
今日はレオ君が来るんだから、しっかりとお掃除してお出迎えしないと。

ピンポーン

あれ? 誰だろう。 宅配便かな?
「はーい」
『ハッピーバースディ、よっぴー! ということで、入れてくんない?』
「あ、エリー。 どうぞ」
ドアのチェーンを外し、エリーを部屋の中に入れた。
本当は今日はあまり来てほしくなかったんだけど、レオ君が来るまではいいよね。
「あ、掃除してたんだ。 うーん、いいお嫁さんになるわよ、よっぴー」
「もう、ひやかさないでよう」
「対馬クンと甘い一時を過ごしたいだろうから、今日はさっさと帰るわね。
 はい、プレゼント! ほら、空けてみてよ!」
そう言って、エリーは小さな包み紙を私に手渡した。
「ありがとう、エリー。 何かな?」
中身を取り出してみると、なんと出てきたのは『YOPPY』と彫られた首輪。
「あ、あのー…エリー…」
「うんうん、今日はそれを対馬クンと有効活用しなさいな。 私ってなんて友達思いなんでしょ!
 それじゃ、シーユー!」
もう…恥ずかしいよう…


家を出て、俺は良美のマンションを目指した。
ケーキ屋でケーキを買い、ワクワクした気分で道を歩く。
途中で気づいたカニの尾行をなんとかクリア。
というより、カニはいつの間にかいなくなってたんだけど。
少し遅れて到着したワケだし、良美は怒ってないだろうかな。

ピンポーン

『はーい』
「俺だよ」
『あ、レオ君! ちょっと待っててね!』
ドタバタと足音が聞こえ、それから勢いよくドアが開けられた。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「ううん、いいよいいよ。 さ、入って入って」
中に入ってみると、やたらと飾り付けされた部屋が俺を迎えてくれた。
色紙を切って作られたチェーンや星が、色んなところにつけられていた。
「ちょ、ちょっと子供っぽいかな…」
照れくさそうに良美が言った。
「いや、そんなことないよ。 俺、結構こういうの好きなんだ」
「そ、そうなの? よかったぁ…」
俺はケーキが入った箱を料理が並べられた机の上に置いた。
料理のほうは良美が用意していてくれたらしく、そのまま座って待つことにした。
まだ作っている途中のもあるらしい。
せっかくスバルに教えてもらったんだけど…ま、そんなに自信があるわけじゃないからいいか。
「はい、お待ちどう様。 これで全部だよ」
「よし、じゃあ食べる前に…」
良美の唇に軽くキスをする。 一瞬にして良美の顔が真っ赤になった。
「ん…レオ君……」
「誕生日おめでとう、良美」
「うん!」
良美は一切の澱みのない、満面の笑顔をしてくれた。


オマケ
「これ、誕生日プレゼント」
「わぁ、ありがとう! 何かな…」
(ガサゴソ)
「こ、これって……え、えーっと…」
「ん?」
「実はね…エリーにももらったんだよ。 ほら」
「げっ! 全く同じ首輪! 彫ってある文字が違うだけじゃん!」
「いや、うん、その……で、でも、嬉しいよ。 今日はこれ使おっか」
「…そだね」
「その…レオ君もつけてみる? これの名前を変えて」
「はい!?」


「んだよ、邪魔するんじゃねーよココナッツ! スバルもボクに味方しろよ!」
「そう言われてもなぁ」
「無理矢理にでも押さえつけないと、あのままずっとつけ回す気だっただろうが」
「ま、子蟹ちゃんもこれに懲りて尾行なんて真似すんなよな」
「あーあ、ボクの盛大な尾行プランを台無しにしてくれたんだ。 だからボクにカレーを奢れココナッツ」
「後輩にたかるなんて最低な先輩だな。 見習いたくない先輩の見本だ」
「あーん、誰に向かって言ってやがんだ? 上等だ、今日という今日はブチ殺してやる!」
「やめとけって。 俺がかわりに奢ってやるから」
「コイツから奢ってもらわないと意味ねーんだよ!
スバルは引っ込んでろ!」
「フン、お前なんかに奢るぐらいなら、裸で町内一周するほうがまだマシだ。
 ま、お前のその貧相な体格じゃ、そんな真似なんてとてもできないだろうがな」
「よし、殺す!」
「やってみろよ!」
「はぁ…新学年になっても進歩しないね、お前ら」


(作者・シンイチ氏[2006/04/02])

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