「ちゃーす」

春休みだっていうのに、生徒会業務で学校へ。
竜宮にはすでに俺以外の全員が集まっていた。
なぜか、卒業した乙女さんまで来ている。

「遅いわよ、対馬クン。
 言ってみれば今日のメインなんだから
 もっと早く来てくれなくちゃ」

「ああ、ごめん……乙女さんはどうして?」

「昨日、急に電話で呼び出されてな。
 まあ、手伝いがいるなら仕方がないが
 いつまでも私に頼るのはどうかと思うぞ、姫?」

「別に頼って呼んだんじゃありませんー。
 今日はちょっと面白い趣向があってね。
 どうせなら人数も多いほうがいいと思って」

「趣向?」

「そ、エイプリルフールのね。まあコレを見て」

あ、そういえば今日4月1日だっけ。
姫がゴソゴソと引っぱり出したのは……

「えーと……なんだっけ、コレ?
 地震の震度を計るヤツ?」

「何で私がそんなもの持ってくるのよ。
 ブッブー、残念でしたー。これは、嘘発見器でーす」


……嘘発見器?

「あ、ボク知ってるもんね!
 よくパーティーグッズとかで売ってるヤツっしょ?」

「甘いわよカニっち。
 これはアメリカFBIが犯人取り調べにも使っている本格派!
 わずかな心の動揺も、この指針の振れでバッチリわかっちゃうわけ」

「……嘘発見器はいいけど、何に使うの?」

「んー、そうね……使い方の説明もかねて
 ちょっと実演してみましょうか。
 よっぴー、ちょっとここを持ってみて」

姫が機械から伸びているコードの先端の
ちょっと膨らんだ部分を佐藤さんに渡す。
おずおずと受け取り、握りしめる佐藤さん。

「……こ、こう?」

「そそ。で、私が何か質問しても
 全部『いいえ』で答えるの。OK?じゃ、いくわよ……
 あなたの好きな人を教えてください」

「!」

な、なんちゅう危ない企画を……

「対馬クンですか?」

「は、はい!」ガクガクガクガク(←針の動き)


針はガクガクに振れていた。振れまくっていた。
でも佐藤さん『はい』って言って反応したわけで……あれ?
俺、実は佐藤さんに嫌われてる……!?

「ちょっとよっぴー、『はい』じゃなくて『いいえ』でしょ」

「うう、もうやめようよ……」

「ダーメ。じゃ、相手を変えてみるわね……
 伊達クンですか?」

「……いいえ」シーン

「鮫氷クンですか?」

「いいえ!」シーン

「……なんか今やたら強調してたな」

「……対馬クンですか?」

「う……い、いいえ……」ガクガクブルブルガクガクブルブル!

「おやぁ?おやおやおやぁ〜?」

「ひ……ひどいよエリー……」

佐藤さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
でも『はい』って言っちゃったときも反応してたしな。
単に動揺しちゃっただけか?それにしても……

「姫……これはちょっと、あんまりじゃない?」


「いいじゃない、エイプリルフールなんだし。
 誰が上手に嘘をつけるか、ってことよ」

それにしたって、これじゃ公開告白大会みたいだ。
乙女さんがずい、と身を乗り出して姫に詰め寄る。

「こういうことはまず
 言い出した姫がやらないとな?」

「あら、私は男子になんか興味ないもん」

「……だったらやったっていいじゃん。
 それとも、嘘をつくのに自信がないとか?」

フカヒレ、ナイス突っ込み。
後半のセリフなんて俺だったら怖くて言えない。
案の定、姫の負けん気に火がついた。

「む、そんなわけないでしょう!
 はい、握ったわよ?誰が質問するの?」

「待て。姫、ゆっくり手を開いてみろ」

「う……」

「……やはりな。透明な絆創膏が貼ってある」

「うわ、ズッケェ姫!」

……油断も隙もないな。絆創膏は乙女さんにはがされた。

「これでよし……さあ、誰が質問するんだ?」


「はいはーい、俺やりまーす!」

「フカヒレが?」

変なところで勇気あるな、コイツ。

「ま、面白そうだからな。
 じゃ、いくぜ姫!まずは小手調べだ。
 あなたが好きなのは……オッパイ!」

「……いいえ」ガクブルガクブル!

「……正確だな」「正確じゃん」「正確ですね」「正確ですわー」

そりゃ正確かもしんないけど……どうなの、これって。

「テスト結果はよくわかったから本番いくぜ!
 あなたが好きなのは……鮫氷新一!」

「いいえ」シーン

「鮫氷新一!」

「いいえ!」シーン

「鮫氷新……」

「いや、お前のはもういいから」

「くっそぅ……夢も見れないこんな世の中じゃ!」

「泣くなよ」


「じゃ、続きな……伊達スバル!」

「いいえ」シーン

「対馬レオ!」

「いいえ」ピクピク

「い、今ちょっと針振れてね?」

「気のせいよ。私が対馬クンごときに……」

「……レオとスバル」

「……いいえ」ガクガクブルブルブルーン!

「なんで!?なんで二人だと針振れるの!?振り切れるの!?」

スバルが俺の肩をポンと叩く。

「いやあ、照れるなぁ、レオ?」

「照れるなよ!っていうかそこ照れるところじゃないよ!」

「ほら、私のはもういいでしょ!
 カニっちとかなごみんとか、やってみなさいよ」

だが、ここで意外な人物が名乗りを上げた。

「……いや、姫。私がやろう」

「乙女センパイが?」


乙女さんは余裕の表情でコードの先端を握る。
でも、乙女さんって表情とかわかりやすい人なんだけど……

「こんなものは平常心を保てば何でもない」

「それじゃいきますよー。
 乙女センパイの好きな人を教えてください!
 ……フカヒレクンですか?」

「いいえ」シーン

「……ねえねえ、機械壊れてね?
 この俺に対してありえないでしょこんな反応!
 ちょっとぐらいピクリとかムクリとか……」

「そこ、うるさい!」

「ひぃっ、ゴメンナサイゴメンナサイ!」

姫に睨まれトラウマ発動。哀れなヤツ。

「さ、続けるわよ……スバルくんですか?」

「いいえ」シーン

「対馬クンですか?」

「いいえ」シーン

「あれ?……対馬レオくんですか?」

「い・い・え!」シーン


「あれ……図星だと思ってたのにな」

「あ、レオ凹んでやんの」

「いや、そりゃ……
 姫だってピクッときてくれたのに、俺フカヒレと同じ?」

「俺と同じで何で凹むんだよ!」

「……質問を変えます。
 好きな人はいますか?」

「いいえ」シーン

「……誰も好きな人はいないですか?」

「いいえ」シーン

逆の質問に同じ答えをしたのに両方とも何も反応しない……
なるほど、これが平常心ってヤツか。

「んー?おっかしーなー」

「ふ……これでわかっただろう、姫。
 このような機械で、人の心などわかりはしない!」

「ちぇ……せっかく対馬クンをからかう
 いい道具が手に入ったと思ったのになー」

……それだけのためにここまでしたんかい。

「さ、仕事もないようだし帰るぞ、レオ!」


帰り道。なんだか釈然としないまま乙女さんと歩く。

「……どうしたレオ。何を拗ねている」

「いや、別に……」

口ではそう言ったものの、確かにちょっと俺拗ねてるかも。

「……あの機械、いくらぐらいするものだったんだろうな」

「さあねー。けっこう高いんじゃない?
 けど、なんでさ?」

「いやな、あのテストを受けていて、レオの名前が出たとき
 つい力が入って先端の部品を握りつぶしてしまったらしい。
 手の中で『グシャ』ってなったからな」

「力技だったのか……ズルイよ、乙女さん」

「何がズルイものか。それに、言ったことは間違っていないぞ?
 あんな機械で乙女心が計れるものか」

なるほど。乙女さんのときめきを計るには
嘘発見器より握力計のほうが……いや、もっといいのがあった。
そっと手を差し出して、乙女さんと手を繋いでみる。
乙女さんは……握ったままでいてくれる。

「じゃ、質問。乙女さんが好きなのは、俺かな?」

「い・い・え♪」

キュッ。繋いだ手に、ちょっと力が加わりましたとさ。


(作者・Seena ◆Rion/soCys氏[2006/03/32])

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