委員会の仕事も終り、帰路につく俺に声を掛ける人物が一人。
「おう対馬、ちょうどいいところにおった。すまんが一つ頼まれてくれんか?」
言わずと知れた橘館長。しかも頼み事って。
俺が取るべき選択肢は

@仕方ない、素直に聞く
A厄介事かも知れない、断固拒否
B最高のタイミングで乙女さんが現れ代わりに頼まれてくれる

俺としてはBがベストだがそうそううまく行かない事は分かっている。
ならばやはりAか。しかしこの選択肢は……
「館長、どうしたのですか?」
「おう鉄、今対馬に頼み事をしようと思っとったのだ」
「他ならぬ館長の頼み、私でよろしければお力になりますが」
まさか選択肢B! 現実も捨てたもんじゃない。
「おおそうか。いや実はな、館長室にTVを入れたんだがな。
うっかり配線をさせるのを忘れて電気屋をかえしてしまったのだ」
「う、配線ですか。申し訳ありませんが私機械は……」
「ふむ、儂と同じだのう。と言う訳だ対馬、頼まれてくれるか」
「と言う訳だレオ。私の代わりに頼む」
……@現実は無情だ。まあ配線ぐらいなら。
「分かりました」
「よし、そうと決まれば。着いてこい」
言われるままに館長に着いて行く。
そして館長室に入った。
しかしここはいつ来ても本当に凄い。
何が凄いってこの部屋は雰囲気が凄い。
分かりやすく言えば猛獣の檻に放り込まれたような緊張を覚える。
まあそう思うだけで今いるのは俺と館長の二人だけなんだ。気にする事はない。
「対馬、これだこのTVだ」
そこに見えたのは横幅が俺の背丈程はありそうな大型TV。しかもプラズマだ。


「では早速頼む」
配線ぐらいお安い御用だ。
だが俺らの学費がまさかこんな使い方をされてるとは。
訴えたら勝てるんじゃ……今のは考えなかったことにしよう。
そうこう考えてる間に作業終了。
「終りましたよ館長。チェックしてもらっていいですか?」
「おうすまん。少し待てよ」
チャンネルを回す館長。
「うむ。大丈夫のようだ。ご苦労だったな」
ふう、やっと解放された。
『武勇伝武勇伝武勇でんでんででんでん♪』
TVから流れてくる聞き覚えのあるテンポのいい声。
今流行りのお笑いコンビが映っていた。
もちろん俺は笑う。すると、
「対馬、漢の武勇伝を笑うとは感心せんのう」
……ち ょ っ と 待 て
お笑いなんだ普通笑うだろ。
と言うより向こうも笑わせるつもりだろ。
とりあえずこのままだと俺が危ない。
「館長。あのですね……」
「まあお前を鍛えるのは後にして……ちょっと出かけてくるわい」
そう言って走り去って行く館長。
……危機は去った。
『♪意味は無いけれど、ムシャクシャしたから、小学生をビンタした♪』
まだTVに映ってる。
……笑ってもいいよな?


まったりTVを見てくつろいでいると館長が帰ってきた。
かなり元気がない。
「ど、どうしたんですか館長?」
「おお聞いてくれ。なかなか熱い漢を見つけたのでな弟子にスカウトに行ったんだが」
ネタを真に受けてたんですか館長!?
「スタジオに着いていざスカウトと思ったら奴め
ムシャクシャしたから小学生にビンタしたなどと言いよる」
それもネタです。
「久しぶりに漢を見つけたと思っとった儂は、TV局を……
更地にしてやったわ! うわっはっはっは」
そう言いながら椅子に寄りかかる館長の背中はどこか寂しそうだった。
「さてそれではお前を鍛える直すとするか」
いつの間にかこちらを向いていた館長の顔は……とても嬉しそうだった。



〜二十年後〜


「男子は男気を、女子は女気を、
磨き青春を謳歌せよ
竜鳴館館長! 対馬〜〜レオ〜〜〜!!」
俺は竜鳴館の館長になっていた。

どこだ! どこで間違えた!?


(作者・名無しさん[2006/03/04])


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