俺は今、松笠公園にいる。
もちろん一人ではない。
「松笠公園なんて来るの久しぶりだね」
「ああ、そうだな」
俺と良美は大学に進学していた。
俺は松笠には里帰りで帰ってくるけど、
良美にとってこの町は母校のある町でしかない。
それで俺の就職も決まったので久々に一緒に来た訳だ。
「あの日の事……覚えてる?」
「あの日って?」
「ひどいなあ、忘れちゃったの? 五年前の七月四日」
「ああ、良美の誕生日だな」
「私の誕生日は四月の二日。あの日は……私が初めて心の底から泣いた日」
「良美の涙で服がびしょびしょになった日」
「ち、違うよー。あの日は雨が降ってて」
「次の日風邪をひいたっけ」
「もう、真面目にきいてよ」
「ゴメンゴメン、ただその日あたりからこんな風に話せるようになったかなって思ってさ」
本当に思う。良美はあの日に生まれ変われたんだなあって。
「そうだね……それまでは何に対しても卑屈で」
「他の女の子が俺に話し掛けるだけですごい怒ったり」
「それは今も嫌かなあ」
「昔なら鬼の形相って感じだったかな。でも今は」
そう言いながら良美の顔に手を触れ。
「やきもちやいてる可愛い子って感じ」
「もう、レオ君ったら」
こんな感じで話が弾んだが、別に俺は雑談するためにここに来た訳じゃない。
ポケットの中に入ってるものを渡すため。
そして一生に一度しか言わないセリフを言うため。


「あのさ……良美、俺と」
「そこから先はちょっと待って」
そう言いながら良美は海の方に歩いて行った。
そして、
「レオくーん!!! 私と!!! 結婚してくださーい!!!!」
って、え?
「どう?」
「どうって言われても。そもそもそれは俺のセリフでは?」
「昔の私じゃ考えられない行動でしょ」
今のあなたでも想像もつきませんでしたが?
それにしても、
「ホント、生まれ変わるってのはあるもんだね」
「そんな私と結婚してくれますか?」
「俺が言いたかったんだけどなあ、そのセリフ」
「海って偉大だよねえ」
「こらこら話をずらさない」
まあそれでも、俺が彼女を変えれたんなら本当に嬉しい事だ。
そして、これからもずっと幸せに出来るのならばこんなに嬉しい事はないだろう。
「こちらこそ、俺と結婚してください」
俺はポケットの中のものを取り出して言う。
「そうじゃないよ。レオ君も」
そう言いながら海の方を指差す良美。
「へ?」
「だからレオ君も私みたいに、ね?」
そんな輝いてる笑顔で言われても……。
「叫ぶと気持ちいいよ」
……本当に強くなったね。
だが俺は一人の人を変えれたという事をきっと後悔しない。
今俺の目に映っているものを見ることが出来たんだから。


(作者・名無しさん[2006/02/24])

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル