ある日。凍える寒さの中、俺はあるもののために物置の中を物色していた。物置の中の荷
物を外に出しているだけでも手がかじかんでしまう。正直今年の寒さは半端ではない。
あのフカヒレが年末年始に風邪をこじらせ寝込んでいるのだから。とりあえず乙女さんが
帰って来る前に用意してしまおう。

「じゃ〜〜ん」
俺が勢いよく自分の部屋のドアを開けた。
「おぉ」
乙女さんは感嘆の声と一緒に拍手をした。
「こたつかぁ。そういえば柴又の実家では毎年出していたな。レオの家にもあったのか。よ〜し!私が一番乗だ。」
しまった。ただでさえ狭い俺の部屋で奥の一番広い席を取られた。
「あぁ〜。ずるいよー、お姉ちゃーん」
俺は一瞬遅れて乙女さんのとなりを陣取った。そして準備していたみかんの入った竹かご
をこたつの上においた。
「お前よく私がみかんが食べたいってわかったな。やっぱりこたつにみかんは日本人の心
だ。」
そういってみかんの皮を剥き始めた。柑橘系の香りがいい感じに匂ってくる。
「うん、おいしい。ほら、レオ。お前も食べろ」
そういって乙女さんはみかん二つを俺の目の前に置いた。少しの間乙女さんの嬉しい顔に
見とれてたなんて言えないか。
「お前、手が荒れてないか?」
自分の手をみると手の甲がザラザラだった。「こたつを出すとき、水ぶきしたから、そん
ときかな」
「かわいそうに……」
乙女さんは俺の手を優しく包み込むようにさすってくれた。
「そういえば、お前は冷え性だったな」


こたつの中で乙女さんが足もさすってくれる。この人やっぱり優しいんだなぁ。
「まったく、私にこんなことまでさせるなんて。お前がいけないんだぞ、このお姉ちゃん子め!」
怒られちゃいました。っていうか乙女さんのはにかんだ顔かわいすぎ。さすがにここまで
いわれると、なんというか
「そうだね」
としか言いようがないわけで。そのあとしばらく二人で手足をもみ合うようにさすっていた。

「今日は寒いな」
「うん、寒いね」
こたつの中で乙女さんの手をにぎる。
「そういえばお前この部屋換気したのか?少しほこりっぽいぞ」
「あ、いけね」
乙女さんがほこりを気にするとは意外だったけど、瞬時に体が反応してしまった。窓を開
けると冷たい風が俺の顔にたたきつけられた。
「雪だっ!」
粒が小さく粉のような雪で見えにくかったけど、顔が湿っていたのですぐわかった。予報に
はなかったし、深々と降っていたからわからなかったんだ。
「つもるかな?」
「どうだろうな。もし積もったらあしたトレーニングを兼ねて雪かきだぞ」
いや、それはムリだ。
「仕方ない。換気が終わるまでそのままだ」
しぶしぶこたつにもどる。とにかく寒いので乙女さんを抱き寄せた。
「レオ?」
「こうするとあったかいでしょ?」
「おまえ……本当に甘えん坊だな」
乙女さんの頭が俺の肩に乗っかる。乙女さんの甘い息が俺の耳にかかった。
「蟹沢たちは……来ないのか?」
「あと30分位はね」
「そうか……」


「もう少しこうしていようよ」
「そうだな……」
乙女さんがそばにあった俺のマフラーを半分は自分の首に巻き、もう半分を俺の首に巻い
てくれた。
「寒くても……こうするとあったかいんだな」
乙女さんのほっぺたがだんだん紅葉色に変わっていく。
「そうだね」
俺は乙女さんの頬に軽くキスをした。
「こら、仕返しだ」
すぐに俺の唇は奪われてしまった。やっぱり俺は主導権と言う言葉に無縁なのかな?
ちょっぴりかなしいです。

数日後、柴又の家から見える位置に冬服と書かれたダンボールが送られてきた。そういえ
ば乙女さんはいまでも夏服だ。2月中旬ですよ。正直遅すぎる。乙女さんは寒さを感じな
いけど一応送ったってことなのか?また俺の中で鉄家がさらに遠い存在になってしまった。
おわり。


(作者・名無しさん[2006/02/22])

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