ある日の四時限終了目前、俺はいかにしてこの危機を脱するか考えていた。
というのも今、女子連中が調理実習をしているからだ。
すなわちそれはカニの作ったものを食わされるという事実に他ならないわけで。
俺は、チャイムと同時に逃走を図るべく、いつでも動けるように準備をしていた。
そして、授業終了の声がかかり、チャイムがなった瞬間に立ち上がり駆け出した。
対馬レオはにげだした。
「よ〜し、まだレオいるな。こっちコイ」
しかし回り込まれた。
あっさりつかまりました。というか、そもそもカニと俺では機動力が違いすぎる。
どうも教室まで持ってこられるような(クッキーのような)料理ではないらしく、
実習室まで引っ張られてしまった。
そこに用意された料理は、
火にかけてもいないのになぜかボコボコと泡立ち、
何かよくわからない生物の細い足のようなものが見え隠れする、
はっきりいって食えるのかこれというような代物だった。
「なぁカニ、一応聞くがこれなんて料理だ?」
「見てわかんないのかよ、ビーフカタストロフだよ」
待て、とりあえず待て。
「ちょ、カタストロフって、何だその食ったら昇天しそうなネーミングは!?
 普通、ビーフストロガノフだろ」
「そっか? 大してちがわねーって。まぁいいじゃん、
 せっかく連れてきてやったんだからありがたく食えよな」
間違いを指摘してやるがカニはまったく取り合わない。
あっという間にカニはそれを皿に盛り、俺の前に差し出した。
期待に満ちた表情でこちらを見るカニだが、こっちは体が震えてそれどころじゃない。
何だこのプレッシャーは! シャ○か!?


それを前に俺が躊躇していると、痺れを切らしたのかカニが暴挙に打って出た。
スプーンにそれを乗せて突き出してきたのだ。
「早く食えよな。その、ボクが、あ、あ〜んしてやるから。ほら、あ、あ、あ〜ん」
さすがに恥ずかしいのか頬を染める姿がかわいらし……じゃなくて、
今、スプーンからちょっとこぼれた雫が床に落ちた瞬間、ジュッとか言って床が溶けて穴が開いたぞ、おい。
あまりの事態に唖然として口をあんぐりとさせてしまうと、
それを「あ〜ん」に了承したと取ったカニが、
ものすごくうれしそうな笑顔でスプーンを俺の口に突っ込んできた。
やばい、死ねる。いろんな意味で。
「!!!?!!?!!」
声にならない悲鳴を上げた俺は、今の俺には君の笑顔は眩しすぎるぜ、なんてバカな考えを最後に、
一気に意識を暗転させていくのだった。


ちなみに、あとで聞いた話によると、スバルとフカヒレも犠牲になったらしい。


(作者・名無しさん[2006/01/28])

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