秋も深まったとある週末の深夜。
対馬家に足音を忍ばせてそっと忍び寄る影があった。
街灯に照らされて浮かび上がったその横顔は紛れもなく対馬レオ本人である。
レオの部屋にはカーテンが引いてあって、これは幼馴染みに「取り込み中」であることを伝えるサイン。
隣の蟹沢家の2階には明かりがついている。
きぬは、今日も夜更かしをしてゲームでもしているのか、それとも電気をつけっぱなしで寝入ってしまったのか。
対馬家の門灯は消えているが、レオは暗闇の中、慣れた様子で家の鍵を開け、そっと自分の家に侵入した。
風呂場に明かりがついていて、中からザーっと湯を浴びる音が聞こえる。
リビングに入ると、居間で“乙女さんと交際しているレオ”が岩波の文庫本を読んでいた。
「レッド、今度は何の本だ」
レオが声をかけると、レオが肩をすくめる。
「乙女さんとの約束で、今日明日のうちに論語を読破しとかなくっちゃ駄目なんだ。ってか、ホワイト遅すぎ。ブルーよりまだ遅いなんて」
「すまん。姫のスケジュールって綿密な計画性があるわりに、突発的な用事もガンガン挟まるもんだから」
「まあいいよ。お前も頑張ってるんだ。ブラックが風呂から出たら早速…」
「今日こそ」
ニッコリとうなずきあって、“姫と交際しているレオ”が二階にあがる。
部屋の扉を開くと、中には三人のレオがいて、二人は対戦格闘ゲームをやり、もう一人はベッドでぐうぐう眠っていた。
テレビ画面の中では、片方のキャラがもう片方のキャラに一方的に即死コンボを決め終わったところである。
「ふっ、なごみんといちゃついてるようなヤワなヤツには負けねーぜ!」
“カニと交際しているレオ”が勝利のガッツポーズを決める。
「腕の差が段々開いていくな…orz あ、ホワイト、やっと来たか」
“なごみと交際しているレオ”が向き直って、ゲームパッドを投げ出し、ベッドで眠っているレオを揺り動かす。
「ブルー、起きろー」
「うーん」
と唸って、めんどくさそうに、しかし、それでも“祈先生と交際しているレオ”が起き出した。
階段を上ってくる足音が二つ聞こえて、風呂上りの“よっぴーと交際しているレオ”と、“乙女さんと交際しているレオ”が部屋に入り、レオの部屋に、6人のレオが顔をそろえた。


「乙女さんは今晩と明日は鉄の実家に帰ってて、月曜日は直で学校だ」
「姫とよっぴーはキリヤの香港支社に行った。俺も誘われたけど甘いもの巡りするらしいから逃げてきた」
「なごみはのどかさんが天王寺と旅行に行ったので一人で花屋だ」
「それ、手伝いに行かなくていいの?」
「もちろん手伝うよ。明日は昼から顔出しに行こうと思う」
「祈先生は金欠で、今日も明日もドブ板で占いだ」
「カニは?」
「無理矢理にケンカをしてきた」
「…」「…」「…」「…」「…」
「すまん、みんな。あいつを俺たちの生活圏から一時的に放り出すためにはこれしかなかったんだ」
「まあ、しょうがないか。多少ケンカしてもあいつは大丈夫だろ」
「そういうことだな」
「よし、それでは」
「やりますか!」
「おー!」
それぞれの手の甲を重ねて団結の儀式をした6人のレオたちは、マゼランとその部下たちを乗せて、世界初の世界一周を成し遂げたスペインの木造帆船ビクトリア号をウィスキーのボトルに閉じ込めるため、作業を開始した。


「しかしあれだな」
ボトルシップを製作しながら、レオの一人が呟く。
「昔から、“対馬レオ”は自分がたくさんいたらいいな、増えたみんなでボトルシップやれたらいいのになって思ってたんだよな」
「ボトルシップを理解してくれる小学生が回りにいなかったもんな」
「スバルもカニもフカヒレも…これだけは分かってくれなかったな。正直、寂しかったんだよ」
「もう二度と、一人に戻りたくないな」
「…」「…」「…」「…」「…」
「でもさ」
一人が手を停めて、みんなの顔を眺め回す。
「俺たちは今、それぞれ違う女の子たちと交際してるだろ。もしも俺たちが一人に戻ったら、それって“ハーレム”だよな?」
「ハーレム…」「ハーレム!」「ハーレム?」「ハーレム!?」「スラム?」
「ハーレムを楽しめると思えば、一人に戻るのも少しは楽しみに思えるんじゃないか?」
「……………いや、正直、俺はハーレムなんかより、みんなとこうしてボトルシップを製作していたい…」
「俺もだ…」「俺もだ…」「俺もだ…」「俺もだ…」「俺も…」
「でも、もしも女の子たちに一人に戻りたくない理由を聞かれたら、それはキミを大切にして浮気をしないためだと、きちんと言うんだぞ」
「もちろんだ…」「もちろんだ…」「もちろんだ…」「もちろんだ…」「それもあるよね」
「ま、込み入った話はまた今度にしよう。せっかくだから、今はボトルシップに専念しよう」
「おう!」「おう!」「おう!」「おう!」「王!」
6人のレオは、再び製作に取り掛かる。
レオの一人が、
「俺たちが増殖したのは乙女さんに蹴られせいだってことになってるが、本当なのかな? 実は、俺たち自身にも原因があったのかもしれないな」
と洩らしたが、もはや、その呟きに反応する者もなかった。
趣味の秋はしんしんとふけていく…。

(END)


エピローグ


そのまま完全に徹夜をして日曜日のお昼を過ぎても、相変わらず、6人のレオたちはボトルシップの製作を楽しんでいた。
「なあ、グリーン、お前、なごみんの花屋手伝いに行くんじゃなかったっけ?」
カニと交際しているイエローレオが聞く。
「…ああ、そんなのもあったね」グリーンがニヤっと笑って受け流す。「この帆を張ったら完成だぜ! なごみ、今すぐ行くからな!」
結局、伝説の帆船ビクトリア号の瓶詰めがようやく完成したのはそれからさらに2時間も過ぎた後だった。
「やばい…俺、なごみんのところに行かなきゃ…」
「…お前、さっき『ああ、そんなのも』って…」
「言わないでくれ! 罪悪感でいっぱいなんだから!」
グリーンレオが家を飛び出して行き、残ったレオたちは相談をはじめた。

5分後、蟹沢家。
「わあっ、レオ! なんだよいきなり! しかも5人もぞろぞろ…お前らみんなで来たってそんなにたくさん穴ねぇよ!」
「いや、きぬ…別に穴はいいけどな、ボトルシップを作るためにわざとお前とケンカしちゃったから、まずはみんなでお前に謝ろうと思ってな」

さらに30分後、フラワー椰子。
「センパイ…たくさん来てくださってありがたいですけど、花屋の仕事は私だけでも何とかなりますし、グリーンセンパイがいてくだされば十分ですので…」
「そう言うなよ、なごみん、ボトルシップで遅刻したぶん、みんなで手伝うからさー」
「いえ、お断りします」
「そう言わずにさー」
「同じ顔がたくさんいたらキモいって言ってんだよっ!」
「あ、俺たちやっぱり線の外なの?」
「なごみーん、俺たち腹減ってんだけど」
「早く帰れっ!」

さらに30分後、対馬家。
「スバルぅ、料理当番のグリーンが椰子のところに行っちゃってさー」
「やれやれ、世話の焼けるレオたちだぜw」

フカヒレ「俺のとこにはどのレオも遊びに来ないのかよー!」


(初期設定)


乙女さん:レッド :努力家レオ :(勉強君・得意は古典や現代文、体育武道)
カニ  :イエロー:悪友レオ  :(ゲーマー君・得意はファッションとロックミュージック)
姫   :ホワイト:献身レオ  :(遅刻君・姫に振り回される日々。英語と護身術)
なごみん:グリーン:面倒見レオ :(世話役君・少しだが料理が出来る。数学)
よっぴー:ブラック:侠気レオ  :(風呂好き君・よっぴーの匂いを消すためのシャワー。性技術)
祈先生 :ブルー :まったりレオ:(爆睡君・英語以外は全部そこそこ)


(作者・名無しさん[2006/01/16])

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル