―1―
「ふあ〜〜〜〜」
 俺は大きなあくびをしながら目を覚ました。
 枕元にある時計に手を伸ばしてみる・・・あれ?無い。
 上半身を起こしてみると俺の部屋ではなかった。
「あれ、ここは居間か?」
 どうやらソファーの上で寝ていたようだ。
 壁時計を見ると・・・・げっ、まだ朝の5時だ。
 2度寝しようとソファーに倒れたが眠れない。しかたがない、起きるか。
「よいしょっと。」
 俺は起きあがった、そして妙な違和感を覚えた。
「・・・・なんだか体が軽いな。」
 不思議に思いつつトイレに入った。
 便座を上げパジャマのズボンを下ろしたとき、妙なものが目に入った。
「・・・いつの間にブリーフなんかはいたんだ?」
 というかブリーフなんて持っていたか?
 きっと寝ぼけているんだろうと思いブリーフを下げる、その瞬間凍りついた。
「・・・・・・・ない。」
 そこにはあるはずのものが無かったのだ。それ具体的に言うには憚れるが
とにかくなかったのだ。
 俗称で“息子”とか“男にしかないのも”とか表現されるアレがついてな
かったのだ。
 そしてその時になってようやく
「・・・胸がある。」
 という事に気が付いた。
「な、な、なぜだ―――――!!!!」
 そう大声で叫んだとき、誰かがやってくる足音が聞こえた。
「どうした!レオ!」


「乙女さ・・・・・ん!?」
 俺は振り返った、そこにいるはずの女性に助けを求めるために。
 しかし女性はいなかった。
「え・・・・・・・なぜ?」
 それは俺だった。
「どうして・・・・私がそこに?」
 俺達はそこに立ち尽くした。

―2―
 俺の名前は対馬レオ、龍鳴館高校に通っている2年生だ。
 そして俺の家には同居人がいる。
 彼女の名前は鉄乙女、従兄弟であり俺の恋人でもある人だ。
 俺より1つ年上で頼りになる人だが、今は全く頼りにならなかった。
「どうしたものか・・・・。」
「うーむ・・・・。」
 かれこれ1時間ぐらいこうしては唸っている。
 それもそのはず、なぜなら俺達は、いや私達とも言うべきか。ある重大な問題と直面
しているのだ。
 それは互いの精神が入れ替わってしまったみたいなのである。原因を考えているのだ
が・・・・一向に進まない。
「レオ・・・・いやこの場合はなんと呼べばいいのか。」
 俺の体にいる乙女さんがそう言った。
「2人でいるときはレオで構わないと思うよ。」
「そうか、ではレオ、お互いの体がなぜ入れ替わったか分かるか?」
「俺にも分からない、乙女さんの方はどう?」
「私もさっぱりだ・・・。」
 さっきからずっとこんな事をいいあっている。
 乙女さんは単純な性格(ゴメン)しているから、アドリブ効かないんだよなあ・・・。
 しかしこんな漫画みたいなことが起きるとは。・・・・・・別に人体練成してアレ見たわ
けでもないし。


「どうした?何か考え事か。」
 俺の体にいる乙女さん(以下乙女さん)が心配そうに聞いた。
「ちょっと真理の扉について考えていただけさ。」
「何だそれは?」
「いや、気にしなくていいよ。」
「そうか・・。」
「しかしこれからどうしたら・・・。」
「うーむ・・・・・。」
 またもや2人して唸り始めた時、急に乙女さんは立ち上がった。
「こうやってうじうじするのは性に合わん、動くぞ!」
「動くって・・・・どのように?」
 そして乙女さんはさらっと言った。
「もう家を出ねばならん時刻だ、とりあえず学校へ行く。それから考えよう。」
「ああ、分かった。」
 そして立ち上がった。
「そうそう、乙女さんの着替えって箪笥に入ってるの?」
「そうだが・・・まさか着替えるのか!?」
「だってこのままじゃあ外に出られないし・・・。」
 因みに今はパジャマを着ている。
「まて!着替えるのはだめだ!」
「じゃあどうやって学校に行くの?」
「それは・・・・・。」
 乙女さんは押し黙って考えこんでいる。どうやら葛藤しているみたいだ。
 数分後、諦めたようにこういった。
「・・・・今だけだぞ。」
「わかった。」
「余計な事はするんじゃないぞ!」
「わかってますって♪」
「心配だな・・・。」


 そして着替えるために部屋に戻った。

「とりあえず脱ぐか。」
 俺は今乙女さんの部屋にいる。そして着ているパジャマを脱いだ。
「恋人同士なんだから別に恥ずかしがら無くてもいいのに・・。」
 俺は鏡を見た、そこには下着姿の女性が写っている。
 こうしてみると、乙女さんの体は非常に美しいなあ。
「なんていうんだろう・・・エロかっこいい?みたいだな。」
 知らず知らずの内に顔が赤くなっていくのを感じる。
「・・・いかんいかん、何を考えているんだ俺は。」
 俺は頭をぶんぶんと振った。
「着替えるか。」
 そして制服に手をかけた。
「と、その前にいろんなポーズをしてみるか♪」
 俺は嬉しそうに鏡の前に立った。
 1回して欲しいポーズがあったんだよなあ・・・。
 膝を床について両手も床につけてと。
「できた。」
 そのポーズは通称女豹と呼ばれるポーズであった。
 しかも今は下着以外何もつけてない。
「うお――――――!すげーいい!!!!」
 鏡に映るその姿は、世の男性を虜にして離さないような代物である。
「これ写真に残したい・・・。」
 はっ、鼻血でそう・・・。
 次は・・・・脚をアルファベットのMの形にしてみよっと♪
「ではいざ!」
 そして俺が脚を開こうとした時、突然扉が開いた。
「おいレオ、何をしている。早く学校に・・・・・。」
 そこには乙女さんが立っていた。


「きゃー、エッチー!」
「それは私のセリ・・・・この場合は正しいな・・・・ってそんなことよりも、何を
してるのだ!」
「着替えようとしているだけだよ!」
「じゃあ早くしろ!」
「乙女さんは見ないでよ!」
「私の体だから問題ない!そして制裁してやる!」
「待って!この体は元々乙女さんのだから跡が残っちゃうよ!」
「くっ・・・まあいい、ともかく着替えさせてやる!」
 そして俺は乙女さんに無理矢理着替えさせられた。
 数分後。
「うっうっ、お嫁にいけない・・・。」
「だからそれは私のセリ・・・・もういい、行くぞ。」
「はーい・・・・。」
 2人は学校に行った。

―3―
 学校の授業はチンプンカンプンだった。
 だって俺は2年生だし・・・・。
 普段ならサボっていただろうけど、乙女さんに迷惑はかけられない。
 そんなわけで俺はこの日非常に退屈で苦痛な1日を過ごしたのである。
 そして放課後になると急いで生徒会室に向かった。
「あーしんど。」
 中に入るとすぐに俺はリラックスして椅子にもたれかけた。
「レオ、そんな座り方はするんじゃない。」
 横では先に来ていた乙女さんがいる。
 普通なら微笑ましい光景であろう、だが
「乙女センパイいつからくだけた性格になっちゃったの?」
「対馬君、鉄先輩にレオっていったけど何でなの?」
 霧夜エリカと佐藤良美は各々疑問を口にした。


 それも仕方が無い、はたから見れば乙女がだらけてレオがきっちりしているのである。
「い、いやなにレオが少しくだけてみろといってね・・・じゃなく言ったのでな。」
「そんなことはいってないぞ。」
 乙女さん・・・・・空気読んでくださいよ。
「ちょっとレオこっちに来い!」
 俺は乙女を連れて隣の給湯室にいった。
(乙女さん話をあわせてよ!)
(し、しかし・・・。)
(もし姫に互いの精神が入れ替わっている事がばれたらものすごい事になるよ!)
 乙女はそのことを想像した。
 そうなれば姫が自分の本当の体にセクハラするだろうと思った。
(わ、わかった、何とかしてみる・・・。)
(頼みますよ。)
 そして2人は元の席に戻った。
「そ、そうなのだ佐藤、いや佐藤さん。乙女さんにそうするように進言したのだ、いや
したんだ。」
 しどろもどろに答える乙女さん。その姿に2人は怪訝そうな眼差しで見ている。
「乙女センパイ大丈夫?」
「レオ君どうしちゃったのかな?」
 2人は苦笑いを浮かべている。
(何とか誤魔化せたみたいだな。)
(・・・・だといいのですが。)
 とりあえずその場を2人は凌いだ。
 そしてしばらくその場に留まっていたとき、急にドアが開いた。
「部長大変です!」
「村田!?」
 乙女さんがそう言った。
「対馬か・・・お前に呼び捨てされる覚えは無いぞ。」
「あ、いや・・・すまない、それよりなにかあったのか?」
「そうだった。部長大変です!道場破りが現れました!」


「なにっ!」
 乙女さんは叫んだ。
「対馬・・・・なぜお前が驚く?」
「いや・・・続けてくれ。」
「今拳法部の部員が相手していますが、持ちそうにもありません!すぐに来て下さい!」
「わ、私が!?」
 俺は驚いてそう言った。
「このままでは負けてしまいます!」
 村田にやっと勝てたレベルの俺がそんな奴に勝てるわけが無いよ、でも断れないよな
あ・・・・・・。
「わ、わかったすぐに行く・・。」
「お願いします!」
 村田は礼をして去っていった。さてどうするかな・・・。
「レ・・・ではなく、乙女さん!早く行こう!」
 乙女さん戦いたいみたいだな。はあ・・・・仕方ない。
「わかった。」
 そして2人は生徒会室を出て行った。
「・・・なんだか乙女センパイ、対馬君に毒されたのかなあ?」
「反対に対馬君は鉄先輩に影響を受けたみたいね。」

 道場へ行くとそこには沢山の拳法部部員が倒れていた。
 一体どんな奴なんだ?
「鉄乙女、待っていたぞ。」
「お前は!・・・・・・誰?」
 そう言った時、何かがこける音がした。
 不思議に思っていると乙女さんがひそひそと教えてくれた。
(前に1度道場破りに来た奴だ。)
 ああ、たしかそんなこと前にもあったね。
 改めてそいつ見ると、奴は肩をわなわなと震わせている。
「そうか・・・・お前は倒した相手など覚える必要が無いというのだな・・・。」


 いや、ただ単に知らなかっただけなのだが。
「覚えておけ、俺の名は・・・。」
「それは後にしてくれ。」
 そう言うとまた奴が肩を震わせた。
「なるほど・・・勝ってから名乗れというのだな・・・いいだろう、受けて立つ!!」
 どこをどう勘違いすればそう言う結論になるんだ?すると乙女さんがまた小声で俺に
話しかけた。
(レオ気をつけろ、今度はさらに強くなっているようだぞ・・・。)
(えっ!じゃあ倒せないじゃん!)
(私なら数分で倒せる。)
(でもこの場合戦うのは俺じゃないか!)
(だから絶対に負けるな、根性で何とかしろ。)
 結局はそういうことになるのね・・・・。
 すると奴は痺れを切らしたらしく、大声でこう叫んだ。
「おい!お前がどんな作戦を立てようとも俺はお前を倒す!」
 どうして体育会系はこんなにも熱くなれるんだよ!
「ならばさっさとかかってくるがよい!」
 こうなりゃ俺も全力で相手しやる!

 俺は乙女さんとの特訓の経験を元に戦い始めた。
「おりゃあ!」
 拳を繰り出していく、が
「ふははは!当たるかそんなもの!」
 軽々とかわされている。
「攻撃を読まれているぞ!」
 乙女さんが激を飛ばしてくれる。
 俺はこれ以外戦い方を知らないんだよ!
「はあ!」
 見様見真似で蹴りを放つが、これも簡単によけられる。
 すると今度は奴が攻撃を始めた。


「うりゃあ!!」
「くっ!」
 それを紙一重でかわす。クソッ!このままじゃあジリ貧だ!
「見える、見えるぞ!俺にも奴が見える!」
 あいつ何だか自分の世界に陥っていないか?
 その隙に攻撃を仕掛けるが弾かれてしまう。
「おらぁ!」
「ぐあっ!」
 とうとう攻撃をもらってしまった。
 くっ!結構痛いぞこれ!
「ふっ、そろそろ年貢の納め時のようだな。」
 奴が好き勝手いっている。
 マズイ!何とかしないと!・・・・・・そうだあの手だ!
 俺は距離を開けて構えを解き、こういった
「お前ごとき私の拳を使うまでも無い。」
「どうした!負け惜しみか!?」
「・・・・レオ?」
 外野では乙女さんが不安そうに見ている。
「そうではない、お前は弱いのだ。」
「なんだとぉ!!」
 奴は激昂している。
「どうせお前の事だ、あいつにさえ勝てまい。」
 そして俺は乙女さんを指差した
「何をほざくか!いいだろう!やってやるさ!」
 奴が乗りやすい性格でよかった・・・。
「では私は傍観させてもらおうか、頼むぞレオ。」
 そして乙女さんに視線を送った。
「任せろ乙女さん。」
 乙女さんも目を輝かせて、やる気になっている。
「貴様なんかギッタンギッタンにしてやる!」


 なんだか奴は負けるセリフを吐いたような気がするなあ・・・。
 そして
「なっ、なぜだぁ・・・・・。」
 結果は乙女さんの大勝利に終った。
「さあ負けたから出て行ってもらうぞ。」
 乙女さんは奴を軽々と持ち上げた。
「まっ、まて最後に名乗らせ・・・・・・ぐふっ!」
 外に放り投げると奴は気絶した。
「うむっ、さすがはレオだ。」
「こんな奴大した事は無い。」
 周りにいた部員は呆然として見ていた。
 ちなみにあいつの名前なんだろう?

―4―
 拳法部の騒動が収まり、俺たちは家路についた。
 さて後は元に戻るだけなんだが・・・・。
「乙女さん元に戻る方法わかった?」
 そう話を振ると乙女さんは、事も無くこう答えた。
「安心しろ、方法はわかった。」
「ほんと!?」


「図書館で調べたところ、頭と頭をぶつければいいということがわかった。」
 ・・・・・・マジデ?
「おねーちゃんを信じろ、ではいくぞ。」
 そして乙女さんは俺の頭を掴んだ。
「ちょっ、まっ・・・・ぐはっ!」
 その瞬間、目の前に星が飛び頭に鈍い痛みがした。
「あいたたたたた・・・。」
 そして俺は目を開ける、そにには見慣れた女性の顔があった。
「痛たたた・・・どうやら成功したようだな。」
「まあ何はともあれ元に戻ってよかったよ。」
 お帰り、マイサン。
「これにて一件落着だね、乙女さん。」
「いやそうではないぞ。」
「えっ?」
 俺は首を傾げた。
「お前には格闘技を学ぶ必要がある。」
「なんで!?」
「今回の件でお前が強いという事が皆に知れ渡ったからだ。」
「・・・・・あ。」
「これで弱かったらどうなることか・・・。」
「あれは偶然勝てた事にできないかな・・・・・?」
「それを私が許可すると思うか?」
「・・・・・・思いません。」
「安心しろ私が直々に鍛えてやる。」
 乙女さんは笑顔でそう言った。
 しかし俺にはそれに答える余裕などなかった。
 そう、あるはすも無かったのである。


(作者・区区氏[2006/01/06])

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