俺は今遭難している。
本当は幼馴染達と、楽しい旅行になるはずだったのに。
俺の横にいるカニがはしゃぎすぎたせいで、
こうして洞穴で吹雪がやむのを待っている状況に陥っている。
「それにしてもカニ。ちゃんと前を見て滑れよ」
「うっせえなあ、なんか面白そうなもんがあったと思ったんだよ」
「だからといって、谷に落ちるときに俺の服をつかむ事はないだろ」
「近くにあったんだからつかむだろ普通。皿をもつかむってやつだよ」
「藁だ藁。本当にお前は底無しバカだな」
「けっ…それよりどうすんだよ。このままじゃ二人とも凍え死んじまうぞ」
「救助を待つしかないな。この吹雪の中に出て行くほうが自殺行為だ」
「役に立たねえなあ、レオは」
「お前のせいでこの状況になってんだぞ」
「……わかったよ。とりあえず腹減ったからなんか食いもんちょうだい」
このカニ。ぜんぜん反省してねえな。
まあいい。
「食いもんなんて………あった。ほら、ビスケットだ」
「おー、あんがと。いやあ、持つべきものはレオだね」
「調子のいいことを。とりあえずそれしか持ってないからな、食料」
「えー!?このビスケット一袋だけ?二枚だけじゃん。じゃあレオはなに食うのさ?」
「何も無いって言ってるだろ。とりあえず明日までには救助が来るだろうから。
それまで我慢するさ。お前は育ち盛りなんだろ?それしか無いが無いよりましだろ」
「ちぇ、一枚レオにやるよ」
「カニらしくないな。熱でもあるのか?」
「ちげえよ!恩を売っておくんだ。あとで倍返しだからな」
「それ俺のなんだぞ。まあいいやサンキュー」


「なあレオ」
「どうしたカニ?」
「なんかボク眠たくなってきちゃったよ」
「寝るなよ?意識はしっかり持っとけ。起きれなくなるぞ」
「んな事言われても………ふあ〜っ」
「おいっカニッ!」
「ははは、ボクの人生ここでザ・エンドだね」
「ザじゃねえジだ!そんな冗談笑えねえぞ!!」
「レオ…言っときたい事が…あるんだけど」
「なんだよ!?」
「ボクさ……レオの事が好きなんだ」
「それだけ言えりゃ大丈夫だ!だから意識をしっかり持て!!」
「冗談じゃ………ねえよ………本気なんだ」
「いい事を教えてやる!それは吊橋効果ってやつだ!!
な、カニ、お前はまだまだ知らない事があるだろ!?
もっと色んな事を知りたいだろ!?だから寝るんじゃねえぞ!!」
カニの顔を触ってみたが、かなり冷えてる。
小さいから体温が下がりやすいんだ。
「なんか……難しそうだけど…そんなんじゃねえよ…………
前からなんだよ…………ずっと前から好きだったんだ………
レオの事が…………はは…………遺言ってやつだよ…………
もう……見れなくなる前に………言っとこうと思ってな……」
「……カニ、それは遺言じゃなくて、告白というんだ」
俺の目の前で小さな火が消えようとしていた。
消させねえ!
絶対に消させねえ!!!
俺はカニを抱きしめる。
「その告白の答えは生きて返ったら返事してやる!!!だから絶対生きて帰るんだ!!!!
お前返事聞かなくていいのか!!!!?」
「……いやだ!………絶対返事………聞いてやる!
………レオ………いい返事期待しとくぞ……」
早くやめよ吹雪!!俺達は絶対に二人で帰るんだ!!!


吹雪はやまない。
カニの体温はどんどん下がっていく。
「くそっ!!!このままじゃ………」
最悪のケースが頭をよぎる。
その時、遠くから声が聞こえてきた。
「おいカニ!!救助が来たぞ!!もう少しだ!!
もう少しだけがんばれ!!!」
「……ん?………なんも聞こえねえぞ?………はは……
レオ……幻聴でも………聞こえたんじゃねえか?」
そんな筈は無い。確かに聞こえた。
「おーい!!!ここだー!!!!」
返事はこない。
嘘だろ!?ちゃんと聞こえたんだ!!
幻聴なんて許さねえぞ!!
カニの命がかかってんだ!!!
「おいカニ!!あとほんのちょっとだけだ!!!
………カニ?………カニ!?おい!!カニ!!!
目え閉じんな!!!今俺が話してんだろ!!!返事聞かなくていいのかよ!!!!」
カニの目は開かない。
「おい……言い逃げなんてずるいだろ!一方的すぎるぞ!!
ちゃんと返事させろよ!!目え開けろよ!!!」
冷たいカニを抱きしめる。
「絶望なんていらねえよ!!!希望をよこせよ!!!!」
カニの目は………開かなかった。


幻聴じゃなかった。
救助は来ていた。
「おい、カニ!助かったぞ!目え開けろ!」
だがカニは目を開けなかった。
「ほらカニ。早く目を開けないと頬を思いっきり引っ張るぞ」
それでも目を開かない。
「この野郎!早く起きるんだ!!」
思いっきり頬を引っ張る。
「ふぁ〜?……ああ、レオ……おふぁよう」
!!!カニが生きてる!!!!
「てめえ、心配させやがって!!!」
「は……なにが?………」
「俺達助かったんだぞ」
「ん?……あ、そう。んじゃおやすみ」
こいつ、ホントにただ眠かっただけなんじゃ。
「返事聞かなくていいのか?」
「…ス〜っ……ス〜っ……」
ま、いっか。
起きてから言ってやるか。
幸せそうに寝てやがるしな。
「おやすみ……カニ」
そっと額にキスをした。
「しっかし、俺も何を血迷ってこいつが好きになったんだかなあ」
原因はわかってる。
だが、俺はこいつを愛していこう。
………いけるよな?


エピローグ

「こらカニ!また俺の弁当食ったろ!今日という今日は許さん!」
「へへーんだ!ボクは育ち盛りなんだよ!けちけちすんな!」
「てっめえ!待て、このバカガニ!!」
「待てといわれて待つわけねえだろバーカ!!!」

「なあ、スバル。レオとカニって付き合ってるんだよな?」
「なんでだ?」
「だって前までと全く同じじゃん」
「いいんじゃねえの。それがあいつらのスタイルってやつなんだよ」
「そうか?ま、別に俺はカニなんてどうでもいいけどな」
「まあレオと一緒なんだ。カニも幸せだろうし。(良かったなカニ)」

「くそっ!逃げられたか!」
くっくっく、レオのやつボクを見失ってやがるぜ。
ここで、後ろから近づいて。
「喰らいやがれ!!!!」
「わっ!!って、てめえ!いきなり抱きつくな!」
「いいじゃん別に」
「抱きつくなら前から来いって言ってんだ!顔が見えないだろが」
「おうよ!それでは改めて……おりゃ!!」
「ひっかかったなカニ」
「な?いはいいはいほっへはひっはふは」
「なんだ、泣くのか?」
「な、泣くわけねえだろ」
泣くわけねえだろ。
好きな人と一緒にいられるんだからな。
「よし。泣くまでひっぱてやる」
「ちょっとまっちくり」
「ん?なんだ?」
このスキにキス。
「………おい」
「ぎゃーはっは。まんまと逃げてやったぜ」


(作者・名無しさん[2006/01/03])

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