「対馬さん。一つ聞いてもよろしいですか?」
「いいですけど。干渉は無しなんじゃなかったですっけ?」
「人は変わるものですわ。良くも、悪くも」
「まあ、いいですけど。なんですか?」
「対馬さんは霧夜さんのことが好きだったんでしたわよね」
「いや、好きと言うよりも憧れてたって感じですね」
「どこに憧れてたのですか?」
「やけに突っ込んで聞きますね。
そうですね、他人になんと思われようと自分の意思を貫き通すところですね」
「そうですか。では、もう一つ聞きますが、そのような霧夜さんに憧れるという事は、
対馬さん自身がそうなりたいと思っているからではないのですか?」
「確かにそう思ってた時期もありました」
「なら、そう生きなさい。私のように感情に身を任せない。
そういう人間になるのではなく。対馬さんが思ったように」
「いきなりそんなこと言われても」
「では、縁を切りましょう。元通りの教師と生徒の関係に」
「な、なんでそうなるんですか!?」
「私にとって対馬さんはあかの他人とは違う。
大切な存在になりかかっていますわ。
だからこそ。大切に思うからこそ、生きたい様に生きて欲しいと願うわけですわ。
ですから、私のことは忘れて」
「それでも………」
「しつこいですわね。しつこい人は嫌いですわ。もう話し掛けないでくださいな」
私は対馬さんから離れる。
これでいいのですわ。
大切に思うからこそ、後悔はして欲しくない。
私と一緒にいれば、どこかで必ず後悔する事になるでしょう。
これでいいのです。


あれから対馬さんは何度か話し掛けてきましたが、
私は普通に生徒と接するようにしてきました。
それが私なりの優しさですから。
しばらくすると、関係のないとき以外は話し掛けてこなくなりましたわ。
これでいいのです。
私が望んだのですから。
たとえまた、睡眠薬が必要になったとしても。
胸に空いた穴が、一つから二つに増えたとしても。
これで………いいのです。


もうあれから、六年経ちましたわ。
私は、あの時と同じように、感情に流されず。
柳のような。
そのように生きてきましたわ。
いえ、そう生きようとしてました。
彼と一緒にいたいと思うようになっていましたわ。
心地の良いあの空間を、望んでいました。
しかし、それは自分にはないと思っていた感情から。
感情に流されない。
私は彼の生きたい様に生きて欲しい。
これも感情からですが。
私には、他人の人生を奪う権利はありませんもの。
対馬さんは会社を創設しましたわ。
どうやら自分の生きたい様に生きているみたいですわね。
お似合いの女性も見つかったでしょうし。
対馬さんがもう私を思い出す事もないでしょう。
そう願いますわ。
彼がまた、私のようになりたいと思わないために。


会ってしまいましたわ。
対馬さんに。
「先生。お久しぶりです」
「あら、対馬さん。どうしたのです?このような時間に?」
「先生こそ。この時間じゃ遅刻確定ですよ」
「あらま。それでは急ぎますは。さよなら対馬さん」
だめですわ。
対馬さんに会うと、抑えていたものが出てきてしまいそうで。
また、彼と一緒にいたいと思ってしまいます。
「先生!!ちょっと待ってください!!!」
「なんですの?」
「五分だけいいですか?」
「用件があるのなら早くしてください」
「それじゃ。………俺と結婚してください!!!!」
予想もしない言葉。
「対馬さん、私は言ったはずですわ。私は柳。
それに、自分の行きたいように生きてくださいとも言ったはずですわ」
「だから、自分の思うようにしてるだけです。
俺は祈さんが好きです。たとえ、柳だろうと捕まえます。
それが俺自身、感情のままに決めた事です」
「対馬さん。本当によろしいのですか?
私よりもいい人がいるんじゃないですか?」
「俺が決めた事です」
「そうですか」
「先生は?」
「祈でいいですわよ」
「ということは?」
「答えはYESです」
この感情はうれしいとでも言うんでしょうね。
これで睡眠薬のお金が浮きますわ。


(作者・名無しさん[2005/12/31])

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