私は病室で目がさめた。
相当疲れてたのかつい眠ってしまったらしい。
個室といえど、公共の場で寝てしまった。不覚。
そんな時
『おはよう、エリカ』
懐かしい、優しい声で言われた気がした。
そんな声が聞こえてきたような。
気のせいだ、レオは私の目の前で眠っている。
半年前からずっとこう。目覚める気配は今のところないらしい。
「いつまで寝てるのよ、私がどれだけ待ってると思ってるのよ?」
そういいながら頬をつねってみる。これも何回やったっけなぁ。
大学に行って、授業後すぐに病院に行く毎日。
今日もそろそろ帰ろう。
「お休みレオ」
そういいながら唇を重ねたあと家路に着いた。

「はぁ、何でこうなるかなぁ……」
ため息をついてしまう。
もっと話がしたい。もっと声が聞きたい。もっとからかいたい。
どうにもならない。考えてもしょうがない、寝よう。


会社を奪い取ってもレオは起きなかった。
私自身が望んだ夢への第一歩………のはずなのに、充実しない。
楽しくもない、何も感じない。
ただ奪い取れたという結果が残っただけ。
「はぁ、つまんないの」
口に出してから気づく。
レオなしの人生が味気ないものに変わっていたことを。
レオがいないことで、ため息が増えたこと。
さみしい。医者は起きるのを待つしかないとか言っていた。
いっそ私が医者に、それで私がレオを起こしてやる。
そう思ったこともあった。
でも野望を捨てたくない。
そうも思った。
また野望と男のどちらかを選んだとき、野望をとっていた。
さすがに今回ばかりは両方取れるとは思わない。
結局心の底では、レオよりも野望の方が大事と思っていたんだろう。
自分ではそう言っていたがいざそうだとわかると何かつらいものがある。
「ああああああ!!!もう考えるのはやめ!!私は野望に向かって進むだけ!!!!!!!」
そうだ、私は野望に向かって進むだけ。
毎日レオのとこに行ってるからこんな考え方になるんだ。
世界の頂点を取るまで、もう行かない…………明後日からは。
明日でしばらくおしまい。
もう寝よう。


今日でレオとはしばらくお別れ。
なんていうんだろうこの気持ちは。
「まったくいつまで寝てるの。そろそろ起きなさいよ」
そう言いながらドアを開ける。
レオが起きている、そう思いたかった。
中を見渡す。
いつもと同じ病室だった。
「レオ、あなたがなかなか起きないから私は一人で先に行くことにするわ。
次にここに来るのは。そうねえ、私が世界の頂点に立ったらにしましょう。
レオが起きるのが先か、私が世界を取るのが先か、どっちが早いかしらねぇ」
決意が揺らぎそうになっていた。あえて口から出し、自分の意思を再確認。
病室を立ち去ろうとしたとき、後ろで物音が聞こえた。
「やっと起きたの?待たせすぎ」
うれしさが胸いっぱいに広がった。
きっと今の顔はとてつもない笑顔だろう。
二度とできないかもしれない、そんな感じの表情。
しかし、その表情も一瞬で普段の顔に逆戻り。
そこで立っていたのは、最愛の人ではなく赤の他人。
手に持っていたのは拳銃。
「こんばんは、ミス霧夜」
殺し屋だった。
あの顔を見せたのがレオではなかったことが腹立たしくなった。
この男をこの世から抹消してやりたい。
そう思ったが相手は銃を持っている。
さてと、どうしようかな。


「何か、言い残すことはありますか?」
え?どういうことになってんの?
ベッドの横に怪しげな男。
部屋の出口にはエリカが立っていた。
そうか、俺は空港でエリカの盾になって撃たれた。
そこからの記憶がないってことは今まで眠ってたんだ。
で、エリカがお見舞いにきた。
そして帰ろうとしたところに、
どこからともなく現れた殺し屋に銃を突きつけられたということか。
現状把握。
「危ない、エリカ!!!」
俺は考えるよりも先に男に飛び掛っていた。
まあ、考えても同じ事をしただろうが。
「ちょっとレオ、いつ起きたのよ!」
「そんなことよりも早く逃げて!!!」
「そんな、あなたをおいて逃げるだなんて!!
じゃなくて、私がとどめを刺すのよ!!
しっかり抑えときなさいよ!!!!」
そういうなりエリカはその男にとどめ+αを与え瀕死寸前にまで追い込んでいた。
やばい……!!!早く止めないと愛する人が殺人者になってしまう。
「ちょ、別にそこまでしなくても」
「うるさい!黙ってなさい!!!!」
なんて顔をするんだ。殺気だけで気絶しそうになる。
これはちょっと止められそうにない。
殺し屋さん、安らかに眠ってください。


「いったい俺どれくらい眠ってたの?」
「約七年は眠ってたわよ、それはもう毎日幸せそうに」
「……ごめん。……でも俺だって眠りたくて眠ってたわけじゃ」
「ああもう、うるさい!!そんなこと別に聞いてないわよ!!!!」
「………ジャア、ナニヲイエバイインデショウカ」
「少し黙ってなさい」
「……でも、俺は眠ってた分エリカとたくさん話したいわけで」
「………………………」
「…どうしたの?急に黙り込んで?」
「ねぇ、レオ。言っておきたいことがあるの」
「…なに?……まさか!別れましょうとかじゃないよね?」
「どうかしら。そう取れないこともないわね」
「俺が眠ってる間に好きな男ができたとか?」
「レオ以上に魅力的な男なんていなかったわよ!…そうじゃなくて!!あのね」
「ちょっとききたくないんですが?」
「まじめに聞いて!」
「………わかった。取りようによっては別れないとも取れるんだよね?」
「そうね。あのね、昨日のことなんだけど、私はあなたと野望をまた天秤にかけてたの」
「前にもあったよね」
「ええ、それで私が出した結論は前と同じ。
あなたと野望を両方は取れないと考えていたの」


「それでも俺はエリカにずっとついていく!」
「!ちょっと最後まで言わせなさいよ!!」
「いいや、俺はなんと言われても離れるつもりはないね。
この命が尽きるまでエリカのそばにいる。
そう自分に誓ったからね。
エリカが何を考えて野望を選んだと言ったって、
そんなエリカだからこそ俺は好きになったんだ」
「………ぷっ…あははははは」
「な、何で笑うのさ、俺は真剣に言ったんだよ」
「あはははは、ごめんごめん。別にレオのせりふで笑ったわけじゃないわ」
「じゃあ、何でさ。自分は人にまじめに聞けとかいったのに」
「あははは。いや、ただこんな簡単なことに悩んでた自分が馬鹿らしくて」
「?どういうこと?」
「あはは…別にいいのよ、わからなくて」
「あ、ひっで!……いいんだ……別に俺なんて……」
「あはははは、別にいじけなくてもいいでしょ」
「で?……話の腰を折っちゃったけど何を言おうとしてたの?」
「もういいのよ。何でもない」
「まじめな話だって言ってたのに?」
「レオが大好きだって言おうとしたのよ」
ほんとやっかいなもんにほれられたもんね。
それでも離れられない、離れたくない、そう思った。
レオは私に死ぬまでついてくるといった。
私もレオから離れない………この命尽きるまで


(作者・名無しさん[2005/12/24])

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