朝のまどろみの中、レオはベッドの中で乙女さんを待っていた。
(毎日鍛えられてるから早起きは会得したけど、これだけは譲れない!)
橘館長から交際の許可をもらってしばらく経ったが、二人の関係はこれでもかというほどアツアツのラブラブだった。
なのでこうして目覚ましのキスを待ち構えることもたびたびである。
やがてパタンパタンと、ゆっくり階段を上ってくる足音が聞こえた。それだけで胸が高鳴ってくるのを、レオは感じた。
乙女さんも下から怒鳴ってくるような無粋なまねはしない。
いつも(仕方ないやつだ)と頬を赤らめながらやさしく接吻してくれるのだ。

ガチャ

扉が開き、足音が間近に迫ってきた。
「乙女さん、おはよ!」
辛抱できなくなったレオはガバリと布団から跳ね起き、乙女の唇を…
「…ってフカヒレ!?」
あと5cmというところでなんとか粘膜接触を緊急回避し、腐れ縁のサル顔を凝視する。
「お、おい…いくら人肌が恋しいからって親友同士で…照れるぜ」
「不気味に赤くなるな殺すよマジで? ていうかなぜおまえ朝から…」
「それが聞いてくれよ! 実はこのあいだ買った幼女育成SLGでヒロインに『鮫氷乙女』って名づけたんだけど、
そのヒロイン全然俺になついてこねーの。本来なら12歳の誕生日に一緒に入浴イベントがあったりするのにちっとも起こらないし。
でだ、こうなったら本物の乙女さんと会えばフラグ立つんじゃないかな、と思って」
「……ほう、それでいつもと違い一階から乙女さんの顔を見て上がってきたと?」
「おうよ。ついでにおまえも起こしに来たってわけ。やさしい幼馴染に感謝しろよ」
「で、乙女さんと面会した感想は?」
「俄然やる気がでたね。一刻も早く隷従ルートまで進めたくなったぜ」
「そうか、よかったな」
目を爛々と輝かせるフカヒレに、レオは最高の笑顔を送った。
「……ところでフカヒレ、人間の肝臓ってどのへんにあるか知ってる?」
「ああ知ってるぜ。たしかホラ、このあたりだろ?」」
フカヒレは視線を下に向け、自分の腹の一部分を指し示した。


「よく知ってるだろ。むかし『女体の神秘』っていう本の付録に…」
「きりもみ乙女パンチ!!!」
「レバっ!?」
フカヒレの肝臓に鋭い左フックが突き刺さった。
人体急所のひとつに強烈な一撃を見舞われたフカヒレはなすすべなく床に倒れ伏した。
「…あえて乙女さんの名を冠したのはせめてもの情けだ。安らかに眠れ、フカヒレ」
シャーク、永眠。

「おはよー乙女さん」
「おはようレオ」
乙女さんはちょうどおにぎりを握っているところだった。シワひとつ無い制服がなんともまぶしい。
「おや? さっき鮫氷が上がっていったが一緒じゃないのか?」
「ああ、いつもみたいに二階から出て行ったよ。軽やかにね」
「なんだそうだったのか。せっかくだから朝食を一緒に食べようと思ったのだが…」
「そういえばいつもよりおにぎりの量が多いような」
レオがすこし苦笑いすると、乙女はムッとした顔になった。
「いいさいいさ、私が処理すればいいんだろう。おまえは普段からおにぎりだけじゃ物足りないようだしな」
プイッとそっぽを向く仕草も、レオには可愛くてしかたなかった。
「そんなことないよ。いつも感謝してます。こうして米粒ひとつ、残さないからね」
「あ……」
そう言って米粒の着いた乙女さんの指を丹念になめしゃぶる。
この白くて細い指のどこにあれだけの力が秘められているのか。本気で不思議に思ってしまうほど美しい指先だった。
レオはそれこそ股のあいだまで、余すところ無く堪能してからチュパと口を離した。
それまでどこかうっとりした表情だった乙女さんが慌てて手を引っ込める。
「ま、まったく…朝からそういうのはダメだといってあるだろう。不健全なんだぞ?」
「ごめん。だったらせめて朝のお約束だけでも……」
「まったく、この甘えん坊が」
そして乙女は目を潤ませながらレオに近づいた。
互いに待ち望んでいた甘い瞬間に、ふたりの影は蕩けるように重なり合った。


(作者・名無しさん[2005/12/17])

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