〜プロローグ〜

エリカがキリヤカンパニーを乗っ取ってから約1年後、俺達はかなり多忙な日々を送っていた。
海越え山越え国境越え、海外の財界を巻き込んでの「戦争」は当分終わりそうに無い。
まあ、敵対していた親族一同をことごとく潰し、粉砕し、抹殺したので周辺の危険分子は一掃されただろう。
エリカのリーダーとしての手腕はキリヤカンパニーの発展に更なる拍車をかけた。そして世界でも指折りの世界企業に成長しつつある。
そんなエリカは今や時の人となり、世界の経済界でも一目を置かれている。彼女と「お友達」になろうとする代議士などのお偉いさんは数多かったが、エリカは構いはしない。
そんな輩と手を結ばなくたってやっていく自信がエリカには満ち溢れている。
だけどいつもエリカの周りは敵だらけだ。
だから、俺はエリカを守っていく。

―――騎士として


〜Scene 1 : Queen Erika〜

「乳揉〜ま〜せ〜ろ〜」
決してそこらのセクハラオヤジの発言ではない(汗)
「エリー! ちょっと〜!」
佐藤さんに抱きつき、豊満な胸を鷲掴みにしようとしていた。
「ふぅ……」
乙女さんはため息をつき、エリカの脳天に軽くチョップ。
「はうぅっ!」
「姫、いい加減にしないか。佐藤が参ってるぞ」
どうやらストレスが結構溜まってるらしい。タフなエリカでも最近のハードスケジュールには目が回る様だ。「アレ」がご無沙汰気味なのもあるだろうけど。俺は決してこの年で○ンポではない。
「私、欲求不満なのよ〜!」
「そんな事、人前で言わないでよ〜!(私はずうっとそうなんだけどね)」
「うー。揉みてー」
俺たち3人はため息をつく。
一般の方々の好奇の視線を浴びる俺達。
「この仕事が終わったら、少し休みを貰いたいわね……」
霧夜エリカ、秘書の佐藤良美、警護の鉄乙女、そして俺、対馬レオ。
空港でこんなやり取りしてるのがキリヤカンパニー代表だとは誰も思わないだろう。


ピピピピピ

佐藤さんの携帯電話の着信音が鳴る。
「ハイ、ハイ……。え? わかりました…」
「どうしたの? よっぴー」
「今、連絡があって、カンパニー専用機が故障しちゃったらしくて…。この空港から出る一般の便に無理矢理割り込ませてもらったからそれに乗ってくれって(なんか声が震えてたけど……なんだろ?)」
メガネを直しながら佐藤さんはスケジュール帳を確認する。
実言うと次の行き先は沖縄。海のシーズンなのだが、リゾート目的ではない。
「整備班め…。帰ったらお仕置きね」
それはそうだ。代表の命を預かってるのだから。

1時間後、そして機内。俺と乙女さんでエリカを挟む形で座席に座る。
「沖縄に着くまでの間、休憩を取ったらどうだ? 姫」
「ん〜そうね。少し時間があるようだしそうさせてもらうわ。じゃ、おやすみ、レオ」
「ん、おやすみ」
そう言うとエリカはすぐ寝てしまった。かなり疲れていたのだろう。エリカは俺に寄りかかり、寝息をたてる。髪のさわやかな匂いが俺の鼻をくすぐる。
(いいな〜、エリー)
「レオ、お前も寝ておけ。私が見張ってるから安心しろ」
「うん。わかったよ。乙女さん」
俺もお言葉に甘えて眠らせてもらう。俺も睡魔に襲われ、眠りについた。
それが俺達にとっての束の間の休息だった。


〜Scene 2 : 動きだす陰謀〜

私は目を覚ました。薄目を開け、窓の外を見ていた。
(妙ね…)
とっくに沖縄に着いてもいい筈なんだけど。
しかも外の景色は一面海ではなく、山々の景色が広がっている。
(まさか……)
その答えはすぐ後に明らかになった。
(何? 動けない!?)
手足に拘束具、何故?
「乙女センパイ、レオ! って…?」
護衛の二人も同じ有様だった。もちろんよっぴーも。
「お目覚めかな? 霧夜エリカ嬢」
私の脇には数人の男達が。日本人のようだった。
「鉄一族の者にはまともに太刀打ち出来ないからな。眠ってもらった」
乙女センパイの手足には、チタン製と思われる鎖が巻いてあった。
「大人しく降りてもらうぞ」
恐らく薬を飲まされたのだろう。体が言う事を聞かない。

飛行機が着陸した後、銃で武装した男たちによって乗客たちは外に降ろされた。
着いたのは日本ではないどこか。
窓からは戦闘機や装甲車なども見える。
明らかに日本とは雰囲気が違う場所。
ただ、私はとんでもない事態の渦中にいる事がわかった。


「ようこそ。霧夜エリカ殿」
一人の中年の男が両脇に屈強な男を引き連れて私の目の前に現れた。
日本人では無いけど流暢な日本語だった。
「ここは”私の”空港なんでね。民間の者は一切いない」
(どういうこと…?)
「簡単に言うと、私設軍隊の基地でね、私の力だよ」
私設軍隊を持つほどの力を持っているこの男。一体何者なのか。
単なる金持ちではない事は確かね。戦闘機とかがある私設軍隊を持ってる事自体が異常よ。恐らくはこの国全体を牛耳ってる財閥クラス以上の組織である事は間違いないわ。
「私について来てもらおう」
私は男たちに抑えられながら飛行機を降りようとした。
私はその途中、飛行機の脇にはたくさんの人だかりがあった。
「サア、ココニ全員並ベ!」
数人の兵士が叫ぶ。片言の日本語のようだ。
眠っている私の側近以外の乗客百数十人。その中には見覚えのある人の姿があった。
(え? スバル君、カニっち、それになごみん!? フカヒレ君も?)

「オイ、コラ。ココナッツ! なんでテメーがここにいんだよ!」
「知るか、バカガニ。ここにいて何が悪い」
「おいおい、オマエらちょっとはこの状況考えろよ」
「そーだぜ? スバルの言うとおりにしとけよ」
「うるさい! 潰すぞ!」
「ヒイィッ!? ごめんなさい!」
「懐かしい光景だな、オイ」
「オ前タチ、何ヤッテイル!!」
一人の兵士が銃を構えて、4人を威嚇する。
「だってさ、大人しくしてようぜ」


〜Scene 3 : 男が狙うモノ〜

沖縄に着いたのか?
あれ、動けない?
「対馬君! 起きて!」
「ん? 佐藤さん、おはよ〜」
「おはよ〜。じゃないよ対馬君!」
「馬鹿者。この状況が分からんのか」
俺と佐藤さんは拘束具、乙女さんなんてすごく頑丈そうなのがついていた。
「……新手のSMプレイ?」

(しばらくお待ちください)

「この馬鹿者が!」
「この状況でボケるなんてすごいね……」
「…ツ、ツッコミありがとうございます…」
ちなみに食らったのは連続ヘッドバッド。(手足使えないので)

乙女さんから今までの流れを説明してもらった。荷物で携帯電話は取り上げられている。俺も携帯電話は取り上げられたが、胸ポケットの中にあれがあるのを確認して安心した。佐藤さんもアクセサリーやメガネは取り上げられてない。
「…まあ、状況は分かったけど。どうする? 乙女さん」
「まあ、まずは姫がどうなるかだな。見たところ犯人は姫に用があるようだからな」
俺達は地下の部屋に閉じ込められているらしい。トイレ付きみたいだけど。
脱出方法を探さなければならない。
とにかく、俺はエリカが心配だった。


「表向きは共産主義者のテロリスト集団による犯行によるものになるでしょうな」
ここはこの男の屋敷らしい。さっきの空港が一望できるほどの小高い丘の上にある。
このハイジャック事件はこの国のなんらかの情報操作を受けるだろう。そしてこの男が首謀者であることは闇に消されていくに違いない。
部屋は広く、豪華な装飾品などもすぐに目に入る。
自己紹介によれば、この男の名前はクルスト・ノイマン。20年前、この国に亡命。経済的手腕を発揮し、ノイマン財団を発足させるに至る。現在、この国を裏から操る実質的支配者である。日本には隣国経由で何度も旅行に行ったことがあるので日本語はかなり流暢。
現在、この国は日本とは国交を開いていない。

「エリカ殿、この紅茶がお気に召さないようで? 最高級の物なんですがなあ」
「あいにく、私は猫舌ですので」
猫舌なのは嘘ではないけど、また薬を飲まされたらたまったもんじゃないわ。
向こうから自己紹介の後、目の前に座る男との会談に臨んだ。手足は不自由なままだけど。
「で、何が目的なのかしら?」
まあ、金なのは確かでしょうけど。
「……プロジェクト・EIK(エイク)」
その言葉を聞いて、私は焦った。なぜ外部の人間がこの事を知っているのか。最高幹部クラスしかこのプロジェクトを知らないはずだった。その原因は一つしか無かった。
(スパイね……!)
まさか足元に敵がいたとは。私もまだまだ甘い。
「データの入ったメモリーがあるはずですよ」
「仮にそんな物があったとしても渡せないわね」
「…ほう。こちらで存在する事実は確認済みなのですが。まさか何の意味も無しに人質をとったと思ってるんじゃないのですか?」


「!!」
「まあ、あなたが私と手を組んでもらえれば無駄な血を流す事は無いのでしょうが。良いでしょう。あなたに少しの猶予をあげましょう。6時間差し上げます。お連れしなさい」
屈強な男2人に部屋へ連れて行かれた、んじゃ無くて担がれた。部屋に入り、ソファーの上に降ろされると手足の拘束具が外された。
男2人は黙って出て行った。しっかりとドアをロックしていったが。
部屋はかなり綺麗で、ホントに自分が人質なのか疑いたくなった。ティーセット、フルーツの盛り合わせ、TVにラジオ、ベッド、冷蔵庫、あらら、それにパソコンまで。でも食べ物には手を出さないほうが良いわね。監視カメラはしっかりとついてる。に、しても…
(助かった〜)
私はお手洗いへと駆けて行った。
(「アレ」は間に合ってくれるかしら? ここから出るのはレオ達次第ね…)


〜Scene 4 : 野望は私のために〜

「結局、ここにいなきゃなんねえんだな」
オレ達は外で色々確かめられて、また飛行機の中へ戻された。
「なー、スバル。あの連れてかれた人らって…」
「なんだ、カニ。気付いてたのか」
「あたりめーだろ。間違うワケがねー」
「お姫様も連れてかれたみたいですね。佐藤先輩も」
「乙女さんが捕まってるってのは意外だったな。どう思うフカヒレ?」
「捕まって、乙女さんも、姫も、よっぴーも色々な道具で拷問されて……ハァハァ」
「「「 市ね 」」」

ボグシャーン!!

「時と場合考えやがれ!」
「このダボがぁ!」
「キモいです」
オレ+カニ+椰子のトリプルキックが炸裂。フカヒレの顔面には靴の痕が3つ。
「レオ達を助けてやりたいんだがな。あそこの屋敷に向かって行ったみたいだが」
「無理でしょう。外に見張りもいますし」
椰子は冷静だった。


部屋に3人の兵士がやって来た。
すると、俺と佐藤さんの手足の拘束具を外した。
「妙ナマネヲシタラ、アノオンナノ命ハナイゾ」
「コノオンナノコウソクグハハズスコトハデキナイカラナ」
そう言って兵士は出て行った。
「一体何なんだ?」
「あの…対馬君?」
「はい?」
「ちょっとトイレに行ってくるね…(ぽっ)」
「佐藤……。私もだ」
あらら、こういうことだったのね。乙女さんのお世話は佐藤さんの担当に決定。


軟禁されてる部屋にあった猫のジグソーパズルも完成させてしまってやる事が無い。TVも見る気にならないからベッドに横になる。外もすっかり夜になっている。
もうすぐその時がやってくるだろう。少しの猶予をくれるとは言ったが、待ち時間を6時間くれるとは。少しじゃないでしょ!
まあ、でもこれでうんと確率が上がる。私もかなり運が良いわ。
その時、さっきの屈強な男たちが部屋に入ってきた。
(さあ、作戦開始といきましょうか!)
私は再び会談に臨む事になった。


「さあ、返答はいかに?」
「そうね〜、世界の頂点に立つにはこのプロジェクトは必要なんでしょうけど」
そう、プロジェクト・EIKは世界の頂点に立つための先代から続く極秘プロジェクト(名前は最近つけたんだけど)。まだ計画段階だが、いつか私の野望を実現させるために不可欠。そんな物をヤツに渡せないわ!
「ん〜。ノイマンさん? この交渉は無理ね。交渉決裂〜♪」
「良いのですかな?」
「あなたと組めば実現は早いかも知れないけどね。でも、それはあなたに屈しろってことでしょう? そんなの勘弁。私はトップじゃなければ嫌なのよ!」
「では、力ずくで行きましょうか? 手荒いのは嫌いなんですが」
「あなたたち、そのうち痛い目に会うわよ?」
「救出部隊でも来ない限りは助かりませんぞ?」
「あら? 救出部隊ならすぐそこに来てるわよ?」
(タイミングはドンピシャだったみたいね♪)


「そろそろかしらね……」
「どうしたの? 佐藤さん」
「もうすぐ救出部隊が来てくれますよ! エリーが知らせてくれました」
「なんだって!? なんでここにいることが…」
「なあ、佐藤。姫はどうやって連絡したんだ?」
「え!? あ、あの〜、エリーに聞いてください! とにかく、脱出準備をしましょう!」
「あ、ハイ…」
「まずは鉄先輩の拘束具を外さないと……。これ、外れるの?」
「乙女さん、そろそろ良いんじゃないの?」
「そうだな……ふんっ!!!」
一気に特殊合金製と思われる拘束具が粉々になった。やっぱすごいや、乙女さん。
「ふ〜、肩が凝ったぞ。オマケに恥ずかしい思いもしたがな」
「え? それってどんな…」
「対馬君?」
メガネを光らせ、一気に威圧感を俺にぶつけてきた佐藤さん。
「だめだよ? そんな事聞いちゃ」
「分かりました…」
「おい、2人とも行くぞ。私が先鋒を受け持つ。レオは佐藤を守れ!」
「了解。乙女さん」
「そろそろ来ますよ?」
俺達はその時を待った。


〜Scene 5 : 仲間たち〜

基地のレーダー室。
「! レーダーが利きません! ジャミングが……」
それから数秒後。基地内で爆発が相次ぐ。
基地は混乱に陥った。


オレ達は飛行機の貨物室の中にいた。
「おい、ココナッツ。貨物室なんかに入ってどうすんだ?」
「…いや、大切な物があって。それを取りに来た」
「それって……人には見せられないアレとかソレとか、ハアハア」

ボグシャー

「「「 潰すぞ 」」」
本日二度目のトリプルキックがフカヒレの顔面に突き刺さる。
ホントにバカだ。コイツは。
「も、もうちゅぶれへうって…」
「んで、何なんだ?」
「料理道具ですよ。愛用の包丁とか」
「へえ。料理人ってワケか。おっ、フライパンまであるとはね」
「何があるか分かりませんから、最低コレだけは持って行きたいんですよ」
「ボクも何か持っていかなきゃ」

ドドドドド

「なんだ?」
「席に戻ってみようぜ」


席に戻ると、他の乗客が騒いでいた。
窓から外を覗くと炎が上がっていた。
装甲車が空に向かって発砲しているのが見えた。夜空が明るくなっている。
「何なんだ? 戦争でも始まったのか!?」
「何か降りて来ますね」
外の滑走路には2機の輸送機が着陸していた。
すると、飛行機のドアが破られ、数人の兵士が入ってきた。
「皆さん、我々は国連の救出部隊です! 我々の誘導に従ってください!」
「さあ、こっちです! 落ち着いて!」
「スバル、カニ、ココナッツ! 行こうぜ!」
フカヒレが我先にと駆けていった。

飛行機の外。空には戦闘機やヘリが飛んでいるのも見える。
乗客が輸送機に向かって走っている。当然、オレ達もあそこへ走らなければならない。
「……オマエら、先に行っててくれ」
「どうしたんだよ? スバル」
「オメーまさか、レオの所に行こうとしてんのか?」
さすが幼馴染。察しがいい。
「オイ、スバル! 今逃げなかったら死ぬかも知れないぜ!?」
フカヒレはオレを止める。
「オレはあいつを見捨てる事なんてできねえ」
「……ボクも行く! 助けなかったら後悔しちゃいそうだし」
「お前まで? あぁもうしょうがねえな!」
「私も行くんですか?」
「お? ココナッツ。怖えーのか? ハン! オメーはさっさと家帰ってクソして寝ろ!!」
ここで挑発するか? 
「な……!! こんなクサレガニにバカにされたまま黙って帰れるか! 良いでしょう、私も行きますよ」
あれま。挑発にのせられちゃって。
「んじゃ、一気に向こうまで走るぞ!」


〜Scene 6 : 逆襲、そして救出〜

「はああああぁぁっ!!!」
乙女さんは道を塞ぐ敵を一気に蹴散らす。鉄一族の本領発揮。
その鉄一族の血が入っている俺も佐藤さんを守りつつ敵を倒す。
乙女さんとの訓練が役に立ってる。
「対馬君! 危ない!!」
しまった! 後ろをとられた! と、思ったのだが、

パコーン!!

俺の後ろにいた敵は佐藤さんのハイヒール投げによって戦闘不能に陥った。
「やるね、佐藤さん!」
「え!? はは…」
しかし、相手が銃を持っていても倒しちゃうんだな。乙女さん。
まあ車より早いし。
銃に対しては一気に懐に詰めれば相手は脆いらしい。
それにしてもエリカは何処に?


「さーてこの辺ででサヨナラしようかしら?」
「何故だ、何故この場所が……!?」
「この私に指図しようだなんて1億年早いのよ!」
「小娘が……! 無事で帰れると思うな!」
「無事で済まないのはそっちかも?」
その時、ドアを破ってレオ達が突っ込んできた。ドアの破片と一緒に見張りも飛んできた。泡を吹いて気絶してる。痛そ〜!


「大丈夫か!? エリカ!」
「何故、あれが外れている!? レーザーでなければ切れないあの拘束具が!」
「ふっ…。お前たちは鉄一族を甘く見すぎてるようだな! あの程度の拘束具ではな。それにあんな薬ではアクビしか出んぞ!」
「捕まったのは演技だったというのか!?」
そう、乙女センパイは拘束された時、センパイ自身が脱出するのは簡単だったが、私達や他の乗客に危害が及ぶために捕まった「フリ」をしていた。
「まあ、私は佐藤の言葉に従ってここに来ただけだが」
「よっぴー、さすがね♪ メガネに発信機追跡装置を組み込んで正解だったわ♪」
某探偵マンガかい。
「話はここまでだ! 成敗!!」
「構わん、こいつを殺せ!」
ノイマンが側近2人に命令し、その男たちがが拳銃を取り出した瞬間、センパイは横に飛び、壁を蹴って消えた。2人は発砲したが壁に穴が空いただけだった。
「私はここだ!」
センパイはノイマン達の背後にいた。
「はあぁぁぁっ!!!」
竜○旋風脚のような技でノイマン達は吹っ飛んだ。さすが一騎当千の鉄一族!
「さあ、長居は無用だ。姫、行くぞ!」
「それじゃーねー☆」
私達は脱出するためにこの部屋を後にした。

「くっ! 小娘がぁ!」


〜Scene 7 : 竜鳴館生徒会、再び〜

「1番機に乗客の収容は完了しました!! あとはエリカ殿を待つだけです!」
「状況は!?」
「滑走路周辺の敵は一掃しました! あの屋敷周辺の敵と交戦中です!」
「よし、1番機は発進! 2番機は待機。10分後に部隊を回収後、発進する!」
輸送機の操縦席。この部隊の指揮官と思われる男は、この10分の間にエリカが到着するのかどうか疑問だった。もし間に合わなかったら、見捨てるしかない。軍人は非常なものだ。当のエリカも了承してる事だ。
ただ、祈るばかりだった。
飛び立った輸送機は夜空に溶け込むように消えた。


「エリー、大丈夫?」
「大丈夫よ、よっぴー。ケガはないわ」
屋敷の外に出たは良いが、俺達は囲まれていた。なんとか建物の残骸に身を隠す事は出来てるが、すぐに見つかってしまうだろう。
「レオ、何か突破する方法は無いか?」
乙女さん一人なら突破できるのだろうけど、未熟な俺が足を引っ張ってるのだと思うと悔しくてたまらない。
「そんな深刻な顔をするな。知恵を絞れ」
「そうよレオ。何かいい方法を考えなきゃ!」
「対馬君、みんなで考えればいい方法があるよ」
そう言われてもなあ。
「あと10分もしないうちにあの輸送機は飛びたってしまうわ」
時間は無いか……。真っ直ぐ輸送機に行かなければとても間に合わない。
真っ直ぐ? 真っ直ぐ……。
「!」
「どうしたの!? レオ?」
「エリカ、乙女さん、ちょっと……」


10人ほどの兵士は脱走者の捜索にあたっているが、夜間のため視界が悪い。暗視装置でもあればいいのだが。
「!!」
カランコロンと音がして、振り向いたが誰もいなかった。
その瞬間、その兵士は意識を失った。

「今だ! 走れ!」
空き缶を転がして、注意を引きつけ、その瞬間に乙女さんとエリカによる投石をお見舞いした。
エリカの速球は140km/h以上出るし、乙女さんの球はレーザービームだった。骨折は免れないだろう。乙女さんは残った敵の掃討に向かい、残りの3人は急いで輸送機へと向かった。だが、
「うわっ!!」
俺は倒れた。何かに躓いたようだ。
俺は油断していた。倒れたはずの敵が俺に足払いをかけた。
その敵は倒れた俺に馬乗りになって俺を殴る。口の中が切れたようだ。血に味が滲む。
「レオッ!!」
「対馬君!!」
相手も訓練を受けた兵士。反撃出来ない。
クソッ! どうしたら…
俺に気が付いた乙女さんが向おうとしたら、その敵は派手に吹っ飛んだ。
「オラアァ!! 俺のダチをよくもやってくれたなゴルァ!!」
その後一歩的なサンドバッグ、じゃなくてミートバッグ。
そいつは泡吹いて失神している。
「スバル!!」
「よお、坊主。 大丈夫か?」
「おい、まだいるぞ!!」


バゴン☆

兵士がまた一人倒れる。現れたのはフライパンを手に持った椰子。
「チッ。せっかくのテフロン製が……」
俺にエリカが駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
そう言ってハンカチを出し俺の口元の血を拭う。
「レオ、来たのはオレらだけじゃねえぜ?」
暗闇から顔を出したのは、カニ、フカヒレ。
「なんでお前らが…?」
「細かい話はナシ! ボクが来たからには大丈夫だよ?」
「カニミソ、お前は何もしてないだろうが」
「ウルセー! ココナッツ! テメェは逃げて帰ろうとしてたじゃねーかよ! このチキンが!」
「誰がチキンだ」
「ひゃ、ひゃなへー(は、はなせー)!」
椰子がカニの頬を引っ張る。
「なんか懐かしい光景だな」
「そうね…」
「そうだな」
「そうだね……じゃなくて! あと5分! 早くしないと輸送機が〜!」
佐藤さんがそう言うと、時間が無い事に気が付く俺達。
「ウソ!? あと5分経つとここで俺たち死ぬの!? 嫌だぁ〜!」
フカヒレが叫ぶ。
「そんな事言ってない! フカヒレ、早く行くぞ!」
俺達はとにかく走った。


〜Scene 8 : シークレット・メッセージ〜

全力疾走で向かったのだが、ところどころで足止めに会い、間に合うか微妙になった。
相手は発砲してくるので、下手には動けない。乙女さんのレーザービームでなんとか対処したが、相手は数がいるので下手に手出しは出来ない。
「一気に突破するぞ!」
乙女さんがそう言うと、人の頭の倍以上の大きさの岩を空中に投げ、ジャンプして蹴り砕いた。砕けた岩は無数の破片となり、警戒にあたっていた複数の兵士を巻き込んだ。
「走れ!!」
俺達は力の限り走った。

「部隊の収容状況はどうか?」
「収容完了しました」
「よし。発進させろ」
「よろしいのですか?」
「離陸開始しろ。……それと発光信号を。敵に読まれてしまうが構わん。『ハロー・サンシャイン』と送れ。生きてる事を願うしかない」
「了解」
レオ達を乗せる筈だった輸送機は加速へ入った。
指揮官はこの信号を見ていてくれる事を願った。

「しまった! 発進を開始してる!」
輸送機は完全に加速体制へと入ってしまっていて、乙女さんの足でも追いつかない速さになった。
「止まってくれー!!」
叫んでも聞こえる筈が無く、走るのを諦めてしまった俺達。
ただ、輸送機が何か光らせているのが見えただけだった。
そして輸送機は姿を闇に溶かしていった。

(ハロー・サンシャイン……。オーケー! 待ってるわよ!)


「どうすればいいんだあ?」
嘆くフカヒレ。他のみんなも落胆の表情が見える。
エリカを除いて―――
「さあ、諦めるのは早いわよ?」
「エリカ、そんな事言っても…」
「何よレオ! どんな状況でも諦めたら終わりよ!?」
「姫、何か考えがあるのか?」
乙女さんは何かに気付いたようだ。
「さっき屋敷の窓から見えたんだけど、ずっと向こうに何か施設みたいなのがあったの。結構大きかったわ」
「そこに行って何するのさ?」
カニがつっかかる。
「まあまあ、聞いて。おそらく救出部隊はまた夜明けに来るわ。多分ヘリで来るはずだから…」
「ヘリポートか広い屋上があると思われるあそこに行くというわけですか?」
「なごみん、ご名答! 屋上にはヘリポートみたいなのが見えたわ」
「あの山を越えなきゃならないか。キツそうだ」
スバルにとっては大したこと無いと思うのだが。
「月が出てる…」
佐藤さんは空を見上げて言った。
「さあ、追手が来ないうちに早く行きましょう」


〜Scene 9 : それは突然に…〜

山中を俺達は行進する。エリカが見た施設までは距離で言えばそんなに大したこと無いのだが、暗闇の山の中で道という道も無く早く行動できない。懐中電灯(何故かフカヒレが持っていた非常用)は持っているのだが、敵に見つかるという理由で点けることができない。
みんな(一部除く)に疲労の色が見えていた。
「この辺で休憩を取りましょう」
エリカがそう言うとみんなが一斉に腰を降ろしてへたばる。俺も例外ではない。
「なんだ、レオ。この程度で、まだ修行が足りないな」
乙女さんが俺に説教する。さすがに疲れるよ。
「それにしても竜鳴館生徒会、全員集合ってところかしら?」
エリカは嬉しそうだった。
「だって、なごみんの(乳を)揉めるんですもの」
ニヤニヤしてるエリカ。さっと避ける椰子。
「お姫様は相変わらずだ」
フッと笑う。
「なんか懐かしい感じがするよ、ねえスバル」
「ああ、タイミングは悪いがな」
カニとスバルは顔を合わせて笑う。なんかこの2人雰囲気変わったような…。
「全く、こんな所で再会してもなあ」
と、フカヒレ。
「同感だ。よりにもよって、だな」
乙女さんはため息をつきながら空を見上げた。その時、乙女さんに険しい表情がはしる。
「全員、静かに!!」
みんなが静まるとあの音が聞こえる。ローター音。
「ヘリよ!! みんな物陰に隠れて!!」
みんなは急いで木や岩の陰に隠れた。サーチライトが見えたが、見つかる事は無かった。
「ふぅ。早く行かないと見つかりそうね。あと5,6分したら行きましょうか」
「俺はもう疲れたぜー」
フカヒレが腰を降ろす。
「フカヒレ君、もう少しなんだからがんばらなきゃ」
佐藤さんも腰を降ろす。


「そう言えばさ、よっぴー、メガネかけてるんだ?」
「え? 卒業してから目を悪くしちゃってね」
「メガネ姿のよっぴーに萌――――!」
その瞬間、エリカのハイヒールがフカヒレの顔面に刺さった。
「よっぴーに何するのよ!」
「何もしてないっス……」
フカヒレはしばしの眠りについた。

エリカは俺の隣へと腰を降ろした。
「なあ、エリカ。捕まってた時、どうやって佐藤さんに連絡したんだ?」
「え? あれはね、発信機からよっぴーのメガネの受信機に電波を送ったの。コレは非常用だから余程のことじゃなきゃ使わないわ(あの人たちにと通信もしたんだけどね)」
エリカはポケットからパチンコ球ほどのサイズの物を取り出した。
「そんな物何処に持ってたんだ?」
「ここよ。コ・コ♪」
そう言ってエリカは下半身に指差す。
「マジかよ!!!」
「あら? 実際、クスリの密輸とかでもやるのよ? この方法。ゴムとかに入れてね。でも実際使うとは思わなかったわ」
すげえな。女の体ってすごい。フカヒレが聞いたらどんな事言うか。
「あれ? そこに落ちてるメモリーみたいなの何?」
俺はエリカの足元を指差した。
「あ! やばっ」
「何それ?」
「なんでもないわ!」
「何のデータか知らないけど、気をつけろよな」
「あ、うん」
(今、発信機を出したときかな。後でしまい直しておこう。こんなとこに保管してるだなんて言えないわ)


「それにしても……」
俺はみんなを見る。
「懐かしいな」
「……ええ」
エリカへの憧れから入った生徒会。なんだかんだで楽しかった日々。それを甦らせる。
なのに、今はこんな状況。キリヤカンパニーの代表になった時から命を狙われる事は覚悟していたのだが。
ここは死と隣り合わせの非日常の世界だった。
「みんな、どうしてるのかしら」
「さあね」
C組の面々、イガグリ、豆花さん、浦賀さん、祈先生、橘館長、村田、西崎さん……


よっぴー、レオを含め、卒業してからも忙しかったから同窓会には顔を出していない。
「なあ、エリカ」
「ん、何?」
「ここから、みんなで脱出したら、日本へ帰ったらさ…あのさ…」
「何よ? はっきりしてよね!」
「け……結婚して欲しいんだ」
「!!! レ、レオ…?」
「コレを受け取ってくれ」
レオはポケットから小さな箱を取り出した。受け取って開けると、中には腕時計。裏にはERIKAと名前が彫ってある。
「オーダーメイドで作ってもらった時計さ。指輪じゃ普通すぎるかなって思って」
「いつの間に……?」
「この前スイスに行っただろ? その時に注文して日本に送ってもらったんだ」
言葉が出ない。
「同じ型が無い一つだけの時計だからな。エリカには貧相すぎる物かも知れないけど」


「ありがとう……」
「え?」
「ありがとうって言ってるの!」
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。熱い。
「! …でも、今は受け取れないわ」
「え? な、なんで?」
「後ろを見なさい!」
後ろには私達を見ている人達。
「いやー、お二人さんお熱いようで」
「2人で別世界作らないでよぅ」
「まったくこっちが恥ずかしいぞ」
「クッソー、絶対に幸せになってやるー!!」
「バカップルだね! レオ!」
それから私達は恥ずかしくなってうつむくだけだった。
異境の地でこんな目に会っても、今のような楽しい時間がいつまでも続けばいいのにと思わずにはいられなかった。


〜Scene 10 : 臨時料理ショー〜

施設にたどり着くまであとわずかとなった。
「しかしまあ、ずっと何も食ってないから腹減るなあ」
スバルがぼやく。もう0時を回っていた。
「あそこで何か調達できるかもしれないからそれまで我慢ね」
エリカは俺の真後ろにくっつくようにして歩く。
「あのさあ、レオ」
「どうした? カニ」
「おしっこしたいんだけど」

ズドーン

みんなでコケる。
「あそこに着くまで我慢しろよ!」
「もうモレそうなんだけど…」
もじもじするカニ。
「お漏らしでもしてろ。カニ」
「うっせーココナッツ! お前も漏れそうなんじゃないのか!?」
「何言ってる」(←実は少し我慢してる)
「バカ! あんまり大きい声出すな!」
スバルがカニの口を塞ぐ。
「しょうがないわね。カニっち、行ってきていいわよ。待ってるから」
「私が護衛に行こう」
「わわ、乙女さん、ボクは覗かれるのはカンベン!」
そそくさと行ってしまった。
「む、まあしょうがないか」


きぬは用を足し終え、その場を後にした。
「 ! 」
何か悪い予感。

「わああぁぁ!!」

「何だ!?」
「カニ!?」
俺達が動こうとする前にスバルが駆け出した。

「カニ! 大丈夫か!?」
スバルが駆けつけると、そこには男が一人倒れていた。きぬはブルブル震えていた。
「スバル〜!!」
きぬはスバルにしがみつき、涙目になっていた。
「泣いてなんかないもんね!」

俺達が後で聞いたのは、カニはあの男に後ろから捕まえられそうになり、驚いて金的を蹴ったそうな。
かがんだところをシャイニングウィザードをかまして失神させたらしい。
勇ましいヤツだ。
「斥候がそこらをうろついてるって事ね。早く行かないと」


「結構古いわね……」
エリカは周りをキョロキョロしながら呟く。
下から見上げると施設は意外と大きく、5階建てであり、構造が学校の校舎に似ていた。
どうやら既に使われていないらしく、砕けた窓ガラスや、崩れた壁が廃墟を感じさせる。
中に入ってみると月明かりで廊下が照らし出されていて、何か不思議な感覚を得る。
生徒会合宿の時もこんな感じだったかも知れない。あのサバイバルゲームは熱かったなあとしみじみ思いだした。


俺達は2階で、何かホールのような広い部屋に出た。
暗くて見えないので、フカヒレが懐中電灯を灯して辺りを照らす。どうやら食堂のようだった。
椅子やテーブルも並んでいる。窓には紺色のカーテンが閉まっていた。
「もしかしたら食糧が見つかるかもしれないな」
俺はそんな期待を抱いていた。
「じゃ、手分けして探すとしましょうか」
エリカが号令をかけるとみんなは一斉に散らばった。

意外といろんなものが見つかったようで、レトルト食品、フリーズドライ食品、ミネラルウォーター、、お茶類、インスタントラーメン etc。
「ワオ! 人がいなかった割にはたくさんあるじゃない!」
喜ぶエリカ。
「早速食おうぜー」
カニが手を出そうとするのをスバルが静止する。
「何すんだよ〜! スバルー!」
「まあ待て、ここは一つ、このままただ食っても味気ないからな、アレンジでも加えようかな、ってね」
ここにはプロパンガスが残っていたらしく、火を使えるらしい。簡単な調理器具もあるようだ。
「ここからなら外に明かりがもれないようだし、賛成ね!」
厨房からは窓まで光が届かないようだ。
「頼むぜ、スバル」
俺も賛成だった。あいつの料理を一番食ってたのは俺だからな。あいつの料理の腕は保障できる。
「では、よっぴーと椰子も宜しくな」
「え!? 私が?」
「私もですか?」
「2人とも料理の腕は抜群だろ? 椰子は料理人だし、よっぴーの方は……なあ? 姫」
「うん! よっぴーの腕は私が保証するわよ」
「では調理開始といきますか」


30分後…

「「「すげー!!」」」
「むむっ!」
「すごいわね…!」
出来上がった料理はホントにさっきここにあった物と同じ物かと疑うくらい別物になっていた。
もちろん良い意味で。
俺とフカヒレは感動。カニと乙女さんは落ち込んでいた(orz←こんなの)。まあ…ねぇ?
「じゃあ早速いただきましょうか!」
「いただきます!!!」
全員一斉に料理に手を伸ばした。

「美味い!!!」

全員一致のその一言を聞いて、スバルはニヤリと、佐藤さんは微笑み、椰子は「フッ」と笑った。
「よっぴー、ふーふーしてよ〜」
エリカは未だに佐藤さんに甘えっぱなしだ。


〜Scene 11 : Knight embraced her at night.〜

食事を終えると、何人かはテーブルに突っ伏す。乙女さんはお茶をすすっていた。エリカもさすがに疲れているようで、頬杖をついている。
「ちょっとレオ、いいかしら?」
「いいけど、何?」
「こっちに来てくれないかしら?」
俺はエリカに招かれるままについて行った。

食堂の奥の部屋らしく、倉庫に近い感じだった。暗いのでライターの火を灯し、エリカの顔を見る。
綺麗な顔だった。昔から綺麗だったが、大人になってから更に磨きがかかっている。日々自らを向上させようとするエリカの日々の努力の成果だ。こんな事態の中でもそう思ってしまう。
「あのね、レオ……」
「なんだい? エリカ」
「あのプロジェクトの事が外部に漏れてたの」
「! なんだって!?」
「向こう側のリーダーはメモリーの引渡しか私が下に付くか迫ってきたわ。それがハイジャックの理由だった」
リーダーはあの男か。と言うと、あのメモリーはプロジェクトの…? プロジェクト・EIK。俺はまだそのプロジェクト名しか知らないのだが。
「わたしのせいでみんなを巻き込んじゃって……」
らしくなかった。エリカらしくなかった。
俺は、ライターの火を消し、そっとエリカを抱きしめた。
「レオ…?」
「データを渡してもいけないし、誰かに従うのもダメだ。エリカの夢を捨てちゃいけないし、エリカは常にトップにいなきゃな? 昔言っただろ? 『騎士となってどこまでもついていく』ってさ。邪魔するヤツは許さないし、俺は命をかけてエリカを守る!」
「うん。そうね。レオ、ありがとう…。そうそう、あれの事なんだけど、帰って、一段落したら、……ね?」
暗闇の中で、互いの顔は確認できなかったが、俺達は互いの唇のぬくもりを確かめ合っていた。


午前2時を回る前、計画の最終確認をとった。乙女さんと俺が交代で見張りに立ち、みんなは休息をとる。夜明けの時刻が近づいたら、屋上へ一気に移動開始。そこで救出部隊のヘリと合流。

エリカはやはり、さっき部屋で寝ていた。昔から他人の前では寝ないようにしていた。一緒にいてあげたかったが、心配だったので、佐藤さんに付き添ってもらった。佐藤さんの前では寝るし。
午前3時、1時間の仮眠をとった俺は、乙女さんと交代した。1時間の見張りの後、また仮眠をとった。そして次の見張り、5時を回り、空はやや明るくなった。少しぼんやりとしていたが、突如違和感を感じた。ハッと気付くと後ろには乙女さんが立っていた。
「……乙女さん、気付いた?」
「ああ、これは…」
すると、エリカも起きていた。
「タダじゃいかないってワケね。これから一仕事ありそうね」
どうやら戦いはまだ終わっていなかったようだった。
ナイトの仕事はまだ始まったばかりだ。


〜Scene 12 : 最強! 竜鳴館生徒会〜

エリカは全員を起こし、来るべき事態に備えた。
俺と乙女さんは、食堂からかなり離れた2階階段付近で待ち構える。
「乙女さん、どうなってる?」
「結構な数だ…。屋敷で相手にした数よりかなり多い。囲まれてるかもな」
おいおいマジですか?
ちなみに乙女さんは「気」のみで敵の情報を探っている。人間離れしてるのは元々だが。
「窓に近づくのではないぞ。何があるか分からないからな」
「ああ、分かってるよ」
「そんなに不安になるな。お前は私の後ろで援護にまわってくれればいい。大半は私が相手する。お前はまだ未熟だし、姉が弟を守るのは当然であろう」
「俺も乙女さんみたいになれるように修行するよ」
そう、エリカをこれからも守れるように。
「!! レオ、来たぞ! 非常階段からも来るから気をつけろ!」
「了解!!」

「マジかよ! 囲まれてるのかYO!!」
フカヒレ君は錯乱している。
「どうやって脱出すんだよ! 姫〜!」
カニっちも同じく。
「んで、何か策はあんのか?」
スバル君は眠そうな顔でいる。
「ここにあるもので何とかね」
「さすがはお姫様ですね」
「なごみんはあそこでわめいている2人と協力して今から言うものを用意してね。よっぴーもヨロシク☆」
「わかりました」
「わかったよ、エリー」
「それで、スバル君は私と一緒に入り口の守りにつきましょう」
「お? 姫も戦うのか?」
「なるべく、自分の身は自分で守らないとね。向こうではナイトが頑張ってくれるんだし」
そういうとスバル君は笑いだした。
「あいつも熱血モードに入ったかな?」


「来る…!」
階段から登ってきた敵をまずは一人、乙女さんは蹴り飛ばす。
(こいつら、銃を持っていない!?)
次々と後続が来たが、どいつも銃は持っておらず、漆黒に身を包むような戦闘服とガスマスクのようなものを被っていた。素手ではなく、こいつらは手に鉤爪をつけていた。
「レオ! ボーっとするな!」
乙女さんの声でハッとする。
目の前に来た敵を俺はバックステップでかわし、拳を顔面に叩き込んだ。吹っ飛んだ敵は窓に頭を突っ込み、ぐったりした。
乙女さんは言うまでも無く、無傷で10人以上倒している。俺はかすり傷を負ったが、2,3人を倒した。
「まだ来るか! はあぁっ!!」
乙女さんは非常階段方面の廊下から続いて来た敵の先頭に、掌をすさまじい速さでぶつけ、後続をまとめて吹っ飛ばした。俺も階段を登ってきた敵を食い止めていた。

その頃、

「なんか弱いわねー」
私とスバル君は進入してきた敵10人ほどを10秒で片付けた。いきなり窓を破ってくるし。上の階を使ったようだけど。
「妙なアクセサリーつけてても動きがまだ甘いわよー」
「乙女さんや館長に比べたら屁でもないだろうな」
スバル君のいう通りね。


今まで何人倒したか分からないが、かなりの時間が経ったと思う。
「乙女さん、そろそろ行こう!」
「ああ、そろそろ時間だな。分かった!」
俺は廊下にあった消火器をぶちまけて、相手がひるんだスキに乙女さんと一緒に食堂へと駆けていった。


「レオ達が来た!」
「準備はいいな!?」
「OKよ! 行くわよ!」
全員、食堂へと入っていった。


俺達は食堂の真ん中にいた。食堂の扉はロックしてある。
「部屋中にこれをみんなぶちまけてくれ、後はベランダまで来ればいい!」
「? 何故これを?」
椰子が問いかける。カニもフカヒレも佐藤さんもポカンとしていた。
「とにかくやってくれ!」
コーンスターチ、小麦粉、コショウ、砂糖……

レオ達を追いかけてきた何人もの兵士が殺到していた。
食堂の扉がなかなか動かず苦戦している。
やっと扉を破り、中へと殺到。


「もうすぐで来るぞ! エリカ、スバル、準備はいいか!?」
「任せなさいって!」
俺達はベランダへ出た。
「なー。何をやるんだよ?」
「カニ、気にすんな。ちょっと爆発させるだけだから」
そして、スバルはプロパンガスの栓を外し、粉だらけの食堂の中へと転がした。
「爆発? ふーん……って何やんだ!?」
カニに続き、椰子、フカヒレ、佐藤さんが驚愕の表情でこっちを見ていた。
ちなみにエリカ、乙女さん、スバルは知っていた。
すると、中に兵士たちが侵入したようだ。
「それでは、たーまやー♪」
エリカは火炎瓶に火をつけ、食堂の中に放り投げた。
「!!! わ――――――!!!??」


〜Scene 13 : 跳んでボンバー〜

食堂は一気に爆発した。
火炎瓶に気付いた兵士たちは逃げようとしたが、爆風で壁に叩きつけられた。広い食堂だったのが幸

いしたか、何人かは難を逃れた。
粉塵爆発。空気中に浮遊する小麦粉・砂糖・プラスチック粉などが火花などによって引火し、起きる

爆発。オマケにガスボンベを放り込んだのでかなりの爆発になった。

エリカは火炎瓶を投げたあと、すぐさま跳び、俺は佐藤さんを、乙女さんは椰子を、スバルはカニを

抱きかかえ、ベランダから跳んだ。
そして、地面に着地。地面が土なので大したことは無い。
全員着地成功した。
そして、フカヒレが空から降ってきた。
「ぼふぉべぼ!?」
悪い、忘れてた。
フカヒレは地面に突っ伏し、ぐったりしてる。
乙女さんが、フカヒレの背中に気合を入れる。
「はうっ!!! ……やめてよぅ。コードレスでバンジージャンプなんてさせないでよぅ。……は!!」
姉さんの夢をみてたようだ。


「ほんとビビったよ」
カニは涙目になっていた。
「ククク、カニ、泣いてるのか?」
椰子がつっかる。
「泣いてなんかないもんね!」
また始まったよ。
「で、いつまで抱っこしてるの? レオ」
「え? おわっ!!?」
俺は佐藤さんをお姫様抱っこしたままだった。佐藤さんはちょっと顔を赤くしていた。
「ごめん!」
「え? あ、あのいいって! 対馬君!」(←残念そう)
俺は佐藤さんを降ろした。
(対馬君に抱っこされちゃった……♪)
「さあ、屋上へ行くわよ!」


〜Scene 14 : 共謀者〜

非常階段を昇って屋上へ来ると、向こうには1機の輸送ヘリがあった。
「やっと来たわね!」
みんなは喜んで安堵の表情を浮かべていた。

「……何かがおかしい」
乙女さんは何か警戒していた。
「何が? 乙女さん」
「ヘリが来たなら、音で、来た事ぐらい気付くはずだろう」
「確かに、最初からいたとか」
「屋敷から姫が見たときはいなかっただろう。いたなら見えたはずだ。とすれば……」
「山の中を歩いていたとき!」
「だろうな。あの遭遇したヘリの可能性が高い。おそらく夜明けまでにここに来る事が向こうにはバレてたんだろうな。まあ、向かった方向が分かればここだって事は簡単に分かるだろう」
「あのヘリに乗っているのは…」

「私が向こうに知らせてきます」
佐藤さんが向こうへ駆けて行く。
「ダメだ! 佐藤! 戻れ!」
「え?」
乙女さんが叫んだその時、視界が真っ白になった


「煙幕弾…!?」
視界が戻ると佐藤さんの姿は見当たらなかった。と思ったら、ヘリの前に5人の人影が。
一人は佐藤さんだった。
「よっぴー!!!」
エリカは前に出ようとした。
「おっと、動かないで欲しいですなあ」
聞き覚えのある声。ノイマンだった。一瞬で佐藤さんをさらったこの男。一体何者だ?
ノイマンはナイフを佐藤さんの喉元に当てている。佐藤さんは震えていた。
「久しぶりだな、エリカ」
「!! あなたは……」
エリカが驚愕の表情でノイマンの隣にいる男を見た。後ろに拳銃を持った黒服の男2人を従えている。
「エリカ、あいつは誰なんだ?」
「……叔父よ。叔父の霧夜光輔」
「覚えていてくれたか? お前にキリヤカンパニーから追い出されて、ずいぶん屈辱的な日々を味わったよ。本当に、心の底からお前を殺してやりたいがな」
「霧夜、殺してはならん、プロジェクト・EIKが潰れてしまうぞ。内通者が教えてくれたのだからな」
あの計画、プロジェクト・EIKを知ってるのは私とよっぴーとレオ、先代からの幹部数人。
やっぱり内通者がいたか。
「すべて分かったわ…! あなたがカンパニー専用機を故障させて…」
「ご名答。工作員を潜り込ませたわけだ。プラス、連絡員の家族を人質にとって、情報を操作したのさ。無理矢理あの便に割り込んだのはお前たちだけではない。」
「……よっぴーをどうするつもり?」
「こいつか? こいつは人質だ。お前は我々に従ってもらうぞ」
「……私が人質になるわ」
「エリー! ダメ!」
「こんな事でよっぴーを危険な目にあわせられないわ」


「姫、行くな!」
乙女さんが叫ぶ。続いてみんなも叫んだ。
「エリカ!!」
俺も叫んだ。
「ありがとう。でもこれは私の責任よ。さあ、よっぴーをこっちに」
「あなたが先だ。エリカ嬢」
ノイマンがそう言うと、エリカが前に出てきて、黒服の男2人がエリカの両脇を固めた。
そして佐藤さんがこっち側へ突き飛ばされて返される。
佐藤さんをカニと椰子が受け止めた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「よっぴー!」
「うん、大丈夫…。でもエリーが…」
エリカがこっちの様子を確認した。そして、
「うわっ!」
「ぐはっ!」
エリカは一気に拘束を振りほどいて男2人を蹴り倒す。持っていた拳銃も吹っ飛んだ。
「やるな、姫!」
「やるじゃん!」
スバルとフカヒレがガッツポーズ。
「誰が人質になんか……うっ」
エリカは鳩尾に拳をうけ、かがんだ。ノイマンは一瞬にして近づき、あのエリカを沈めたのだ。
「く……!?」
「大人しくしてなさい」
やはり、ノイマンは只者ではなかった。
「昔から武術の心得はありましてな。まあ、特殊部隊にいたときより腕は落ちましたが」
そんな男にガッチリ拘束されてエリカは動けずにいた。ナイフを突きつけられている。
空が明るくなってゆく。
(! ……乙女さん)
(なんだ? レオ)
(これから、俺の言う通りにして。考えがあるんだ)


〜Scene 15 : ハロー・サンシャイン〜

「それでは、私達はこれで失礼するよ」
「君たちに待っているのは死だけだ。もうすぐ別の部隊が来るのだろうからな! ハハハ!」
(うまくいってくれよ!!)
俺は飛び出して落ちている拳銃を拾い、ノイマンにその銃口を向けた。
とっさに構えるノイマン。
「……レオ?」
エリカが俺を見る。
「ほう? この私だけを撃ってこのお嬢様を助けようと? そんな正義のヒーローみたいな真似が出来ますかな?」
「そいつは見当違いだぜ? ノイマンさんよ?」
俺の位置を見てみな。俺がいる位置は、乙女さんたちの斜め前。お前達に近い。当然、お前達の視界にも乙女さん達は入る。お前達から見て俺がいる方角は……。
「うおっっ!?」

―――そして、日は昇る。

東だ!!
(ごめんな、エリカ!)
俺は奴等がひるんだ隙に発砲した。
「くぅぅ!」
当たったのは、ノイマンでもなく、霧夜でもなく、エリカだった。
銃弾はエリカの足をかすめた。
外したワケじゃない。そこが狙いだった。人質が動けなくなれば、犯人にとってそれは足かせにしかならなくなる。エリカはバランスを失い、倒れ掛かる。それにつられてノイマンもバランスを崩した。
ノイマンはヘリへ逃げようとしたが、俺は前に飛び出して、ノイマンの顔面に拳をぶち込んだ。そして、エリカをノイマンから引き離した。続いて乙女さんが突っ込んで、ノイマンを蹴り飛ばし、ヘリに叩きつけた。泡を吹いて失神した。、次に、霧夜の顔面に蹴りをいれ、KO。
その後ヘリの操縦士を拘束した。


そして、エリカの救出は成功した。

「レオ!!」
「エリカ!!」
俺は強くエリカを抱きしめた。
「エリカ、ゴメンな。痛かっただろ?」
「うん……。でも、今はいいの」
言葉が出てこない。
「良かったな、レオ」
乙女さん、ありがとう。
「坊主、久しぶりに熱いところみせてもらったぜ」
笑うスバル。
「すげーじゃねーか。さすがはボク達のレオだよ!」
白い歯を見せて笑うカニ。
「ヒーローになりてー」
お前には無理だ。フカヒレ。
「フッ」
クールに笑う椰子。
皆はそんな俺たちを見てただ笑っていた。
「これで大丈夫だと思うけど……」
止血をしていた佐藤さんはうつむく。
「私がもっと注意してれば……」
「よっぴー、終わりよければ全て良し、よ」
「……うん!」


「そうだな……。 ―――!!」
その時、俺はエリカの肩越しに霧夜が銃口をエリカに向けているのが見えた。
さっき落とした、もう片方の拳銃が!?
俺はエリカを突き飛ばして―――

2発の銃声が、朝を迎えた空に響き渡った。

―――騎士となってどこまでもついていく

「レオ……?」
突き飛ばされたエリカは、レオの元へ行き、倒れ掛かったレオを受け止めた。レオの肩にエリカの頬があたった。そっと押し返すと、レオは仰向けに倒れた。そしてエリカの頬には、真紅の液体が塗られていた。
「―――! きゃああああ!!」
「対馬君!!」
「レオ!!」
全員がレオの元へ集まる。レオの左肩と左胸には弾痕があった。
「このクソがあああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
スバルが霧夜に向かって飛び出し、顔面を蹴った。そして倒れた霧夜に馬乗りになり、殴り続けた。
泣きながら殴り続けた。
「クソッ、クソッ、クソッ!!」
「やめろ! 伊達! 死ぬぞ!!」
乙女がスバルを止める。霧夜の顔面は血だらけになり原型をとどめてなかった。血達磨という表現が合う状態になった。スバルは親友の死を目の当たりにしてただひたすら泣き続けた。
乙女も涙を流していた。
「嫌よ!! レオっ!! 死んじゃいやあぁぁー!!」
エリカもひたすら泣き続けた。
『ふん、いい気にならないでよね。そこまで私にお熱っていうなら盾になって死ぬ覚悟してもらうわよ』


エリカのあの言葉が本当になってしまった。騎士として盾として。
「対馬君、対馬君!!」
「レオー! 死ぬなよぉ〜!!」
「レオ―――!!」
「先輩っ!!」
良美、きぬ、新一、なごみも涙ながら必死にレオに呼びかけた。
「レオっ!! まだこれからだっていうのに―――!」

「……まだ死ねるかよ」

「レオ!!」
その声を聞いて、全員がレオに駆け寄る。
「まだエリカが世界の頂点に立ってないのに死ねるかよ」
「レオ……良かった」
「泣くなよ、エリカ」
エリカは安堵の表情を浮かべた。
「何で、何で、胸に当たってるのに……」
良美が不思議そうに見る。
レオは左胸の辺りを探った。すると、
「コレのおかげか」
取り出したのは小さな箱。それには穴が空いていた。フタを開けると時計の文字盤に銃弾がとまっていた。


「コレ、台無しになっちゃったな」
エリカは止血をしていながら笑顔で言った。
「いいのよ。レオがいれば」
そしてエリカはレオに抱きつき、涙を流し続けた。
悲しみの涙ではなく、幸せの涙を―――

その後、救出部隊が到着した。ノイマンの増援部隊を殲滅していたため、遅れたらしい。
レオとエリカは隣国の病院に入院する事になった。

朝日は優しい光を照らし続ける。
姫と、盾となり姫を命懸けで守った騎士を祝福するかのように―――

〜おわり〜




〜エピローグ〜

エリカの怪我はすぐ完治した。俺は退院したが完治はしていない。貫通していたのが幸いだった。
みんなは海に入り遊んでいる。俺はただ一人その光景を見つめていた。
「レオー!」
エリカが駆け寄ってくる。眩しい水着姿。
「つまらないだろうからここにいてあげるわ」
「ありがとな」
あの事件のあと、俺達は一週間の休暇をもらった。会社のほうも了承してくれた。
エリカの計らいで、旧生徒会のメンバーで沖縄に遊びに来ている。
あの後、あの国の政権交代のニュースが流れた。
あの2人はあの「国連軍」が拘束したが、行方は分からない。ハイジャック事件は国連の交渉によって解決とニュースで流れていた。やはり情報操作は行われていた。
どういうわけか、俺達は被害者のリストには載らなかった。
もちろん、口外禁止。それは他の乗客も同じだろう。でも、いつかは真実が伝えられるかもしれない。その時は俺達にも何らかの影響は出るに違いない。

「なあ、エリカあの救出部隊って、国連じゃないんだろ?」
「やっぱりバレてたのね。あれはね、私がスポンサーに参加してる『秘密のお友達』ていった所かしら? 知ってるのはよっぴーだけだったんだけどね」
結局、エリカも軍隊を持ってるわけで。予算の不明な巨額の出資の原因はこれだったか。
「後もう一つ。あのプロジェクト・EIKの中身って結局何なんだ? 名前しか知らないんだけど。あと世界を取るためって事ぐらいしか」
「それは秘密♪ いずれ分かるわよ」
ホントに後で分かることになる。それはずっと後の話。


「ちぇっ!」
「じゃEIKの意味だけ教えてあげる」
「へえ。なんて意味なんだ?」
「Erika is king の頭文字よ!」
俺は吹き出しそうになった。
そういや姫じゃなくて王様って呼ばれたいって言ってたなあ。エリカらしい。にしてもネーミングセンスが無いな。美的感覚ゼロは本当だ。なんて言えないけど。
「ねえ、レオ。あの事なんだけどさ」
「何の事?」
「何の事じゃないでしょ!! あなたから言っておいて!」
「悪い悪い。その事で何?」
「あのね、結婚は見送って欲しいの」
「そうか、ダメか……」
「で、でもね結婚がダメって事じゃないの! まだやらなきゃならない事があるって」
「やらなきゃならない事?」
「足元の不穏分子、内通者の一掃よ!」
なるほど、今回の事件につながっちゃたしな。
「だから、その後で、ね?」
エリカは微笑んでいた。

「レオー! レオも海に入ろうよ!」
こっちに来たカニが俺を引っ張る。
「バカ、やめろ! 怪我が治って……うわあ!!」
スバルとフカヒレにも捕まり、海に放り投げられた。
佐藤さん、椰子、乙女さんは一斉に俺に水をかけてきた。
俺は息をする事が出来なかった。



その光景を見てただエリカは微笑んでいた。
そして、立ち上がり愛しい彼の元へ走っていった。


まだ結婚はまだ先になりそうだけど、今はこれでいい。
俺は、野望を成し遂げようとするエリカについて行く。
盾となり剣となり、騎士としてエリカを守っていく―――。

永遠に、ずっと―――


「騎士であるために」 
THE END


(作者・KENZ-C氏[2005/12/11])

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