―1―
 空から照りつける日差しがアスファルトの照り返しをより一層し強くし、街路樹からは
蝉の大合唱が聞こえている。
 この状況下では誰もが熱いというだろう。それもそのはず今は8月の初旬なのだ。
 そんな中、帽子を被った男が大きな石像の下で立っている。ここは待ち合わせに良く使
われる場所だ。彼は額から溢れる汗をハンカチで拭っている。
「熱いな・・・・。」
 男の名前は対馬レオ、竜鳴館高校に通う2年生だ。
 彼は別に好き好んでこんな場所にいるのではない、人を待っているのだ。
「しかし・・・遅いな。」
 レオが今日5回呟いたとき、一人の女性が彼の元にやってきた。
 その女性は胸元が大きく開いた服を着ており、そしてそれに負けてない位大きな胸をし
ている。
 しかし歩く速度は遅かった。
「お待たせしましたわ、対馬さん。」
「先生・・・30分の遅刻ですよ。」
「申し訳ございませんわ〜。」
 この女性の名前は大江山祈。レオの通う高校の教師をしており、なお且つ担任でもある。
「道が混んでいたので急いで来ましたけど、どうやら間に合わなかったようですわ〜。」
「急いでるならせめて走って来てくださいよ。」
 レオは呆れた顔でそう言った。
「そう細かいことを気にするようでは将来大物には成れんぞ。」
 肩に止まっている鳥がそう言った。
 この鳥はオウムという鳥で、皆から『土永さん』と呼ばれている。
「土永さん、祈先生が家を出たのは何時?」
「おおっと、それは口が裂けても言えんなあ。」
「後で唐揚げ買うから。」
「ぐっ、・・・いやいや、我輩そんな買収には応じないぞ。」


「じゃあ2つ。」
「ぬう・・・・・・しかたがない小僧、我輩がありがたい話しでもしてやろう。いいか祈
が家を出た時刻は・・・・。」
「それ以上喋ったら1週間ご飯抜きですわ。」
 祈がそう言った時、土永さんは固まった。
「・・・・おおっと、我輩熱さにやられて家を出た時刻を忘れてしまったようだ。」
「先生、それ卑怯ですよ。」
「世渡り上手とおっしゃってください。」
「屁理屈。」
「屁理屈も理屈の内ですわ。」
「はぁ〜・・・・・・。」
 レオは大きなため息をついた。
 一昨日の夜急にレオの携帯が鳴り、今日の約束を取り付けられたのだ。
 しかもその本人が遅刻してきたのである。
「それよりも対馬さん、今日はどちらへ行くのか考えてくれましたか?」
 祈は何事も無かったかのようにそう言った。
「えーと・・・・とりあえず映画を見にいって服でも買いにいこうかと思います。」
「なんだか普通ですわねー。」
 祈はお菓子を取り出し食べ始めた。
「普通が1番素敵なのです。」
「仕方がありませんわね・・・では参りましょうか対馬さん。」
 祈とレオは映画館へ向かった。
「そういえば先生。」
「なんでしょうか?」
「いつも同じ服着ているけど、他の服は着ないの?」
「他の服を着て欲しいのなら原画さんに頼んで下さい。」
「原画?」
「今のは大人のジョークですわ。同じ服がたくさんあるのですよ。」
「そうですか。」


 そうこう話しているうちに映画館の前に来た。
「じゃあこの『惑星戦争3』を見ましょう。」
「そうですわね。」
「我輩暗い場所は苦手だ、外で待っているとしよう。」
「鳥目だからなぁ。」
 2人は映画館に入った。映画は話題作であって面白い。
 外に出ると土永さんがすぐに祈の肩に止まった。
「我輩をのけ者にして見た映画は面白かったか?小僧。」
「そんな言い方しないでもいいじゃないですか。」
「事実を言ったまでだ。」
「はいはい、土永さんも対馬さんも喧嘩しないで下さい。」
 祈が嗜めるように言った。
「次は服を買いに行くのですわね?」
「そうです。」
「では我輩に似合う服を売っている店にでも行こうか。」
「そんな店無いです。」
「なんだとー、犬がタキシードを着るというのに我輩の服ぐらいあってもよいだろう。」
「その前にお昼にしません?」
「そうですね。」
 その後2人と1羽は昼飯を食べ、服を買いに行った。その後色々な所で遊んだ。
 そして日も暮れはじめた頃。
「先生少し休みませんか?」
「まあ・・・対馬さんったらお盛んですわねー。」
 祈は少し顔を赤らめ笑いながら言った。
「そう言う意味じゃ無いです。そこの公園で少し休みましょうと言う意味で言っただけです。」
「野外プレイはできれば勘弁していただけませんこと?」
「そっち方面から離れてください。」
「冗談ですわ。」


「そう言う会話は人前ではやめて頂けないかね。」
「土永さんの前だから、鳥前かな?」
 そして公園の中に入った。大きな噴水が水で美しい形を作っている。2人はそれが真正
面で見える位置に座った。
 しばらくして、さわさわと風が吹き始めだした。
「気持ちいですわねー。」
「そうですね。」
 祈は目を瞑り気持ちよさそうにしている。レオはその姿を見て笑顔になった。
 因みに土永さんは2人に気を使ったのか、少し離れた所にある木に止まっている。
「今日は夕方から涼しくなるそうですよ。」
「そうでしたか。」
 そして2人は風に己の身を任せた。
 しばらくしてレオが祈の方に目をやると、彼女は目を少し伏せ、真顔で砂場の方を見て
いる。
 そこには仲のいい姉妹が砂の山を作って遊んでいる。
「先生・・・・・。」
 その目は冷ややかな目をしていた。手にはあのペンダントが握り締められている。
 彼女は人前では絶対にそんな顔はしなかった。しかし一人になった時、よくそういう顔
をする。
 レオは祈と独特の歩調で付き合っている。その歩調に合わせるのはレオ自身いやではな
かった、むしろ楽しんでいた。しかし彼は彼女のそんな顔を見るのが辛い。そしてそれを
回避する術が自分には無い事に対して非常に歯痒かった。
「対馬さん・・・・私とお付き合いして楽しいですか?」
 2人の付き合いが始まった頃にはそんな質問はしてこなかった。
 しかし最近こういう質問をよくするようになる。
「楽しいですよ。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「・・・・・・そうですか。」


 2人はしばらく押し黙った。沈んでいく夕日の中、ひぐらしの鳴き声だけがやけに大き
く聞こえる。
 吹いていたはずの風も止み、レオは額から汗が垂れていくのを感じた。
「では対馬さん・・・。」
 祈は口を開いた。
 レオはゴクリとつばを飲む。
「これからどこに行きますの?」
 あっけらかんにそう言った。
「え、ああ・・・・。」
 レオは少し拍子抜けした顔になる。
「まずは夕食を食べに行きません事?」
「そうですね。」
 レオは少々戸惑いながらもそう答えた。
「その後はまた考えましょう・・・・。」
「因みに我輩は焼き鳥が食べたいぞ。」
 いつのまにか土永さんが肩に止まっている。
「今日唐揚げ2袋も食べたじゃないですか・・・。」
「焼き鳥は別腹だ。それにビールと焼き鳥が無いと1日が終らないのだ。」
「どこのおっさんですか・・・それに俺、未成年ですよ。」
「馬鹿もーん、貴様は18歳以上だと明言したではないか。」
「まあ対馬さんも土永さんの言う事放って置いて、どこかおいしい店に行きましょう。」
「そうですね。」
「こらー、我輩を無視するなー。」
 そして2人と1羽は公園を後にした。


―2―
 お盆も過ぎると人の賑わいはだんだんなくなってくる。それはこのドブ坂でも同じ事だ
った。そんな中レオは疲れたように歩いている。
「先生も会いたいときは夜中だろうが電話かけてくるのに・・・そうじゃないときは全然
かけてくれないからな。」
 ため息混じりにそうぼやいた。
 8月初旬にデートをしたっきりで、それ以降2人で遊べていない。
 だから疲れているのである。
 レオもただ手をこまねいた訳ではない。自習という名目で学校に何度も足を運び祈先生
に会いはした。だが忙しいらしく、ろくに時間も作ってくれない。
「まあそのうち会えるだろう・・。」
 そう考えてレオは家路についた。
「さて、夕飯どうしようか・・・・。」
 彼はいつも同居している従兄弟の乙女に飯を作ってもらっていた。
 彼女は非常にまじめである。だからレオの成績が悪ければ、きっと夏休み中勉強を教え
ていたであろう。
 しかし98点というレオの期末テストの英語の成績を見て、安心して実家に帰った。次
に戻ってくるのは8月末の予定だ。
「適当に買って帰るか・・・・。」
 近所にあるスーパーで適当に買い物をする。
 そして少し歩いた時、偶然祈と出会った。
「先生、こんばんは。」
 レオは祈に近づいてそう挨拶した。思いもよらない所で会って彼は少し嬉しくなった。
「こんばんは対馬さん。」
 そう答える祈、しかしレオは何か違和感を覚えた。
「・・・先生、どこか具合でも悪いんですか?」
 そう言った時、祈の視線は僅かに下に向いた。
「いえ、私はどこも悪いところはありませんわ。どうしてそんなことを聞くのですか?」
「いやいや、どうやら俺の勘違いだったみたいです、すいません。」
「変な対馬さん。」


 そしてレオは思いついたように、こう祈に聞いた。
「そういえば先生、今日は夕食どうするつもりですか?」
「このまま家に帰って食べるつもりですわ。」
「じゃあ俺の家に来ませんか?」
「いやですわ。」
 祈はきっぱりと答えた。
「えー、どうしてですか。」
「だって対馬さんは・・・・ねえ?」
「俺に聞かないでください。」
 レオがそう言うと、祈は笑いながら答えた。
「冗談ですわー。」
「はぁ〜・・・・・。」
「早く行きますわよ。」
「そうですね・・・・。」
 祈とレオはもう1回買い物をして家に帰り、夕食を食べた。
 そして今テレビを見ながらのんびりしている。
「対馬さんお茶を下さいな。」
「どうぞ先生。」
 レオは空いた茶碗にお茶を注いだ。
「こういう時間はいいですわね〜。」
 目を細め、お茶を飲みながら答える祈。
「そういえば対馬さん、夏休み中にどこか行かれましたか?」
「いえ、バイトで3日ほど海に行きはしましたがそれ以外はどこにも。」
「寂しいですわね〜。」
「そう言う先生はどこか行ったんですか?」
「そんなめんどくさい事しませんわ。」
「まあ・・・そうだろうとは思いましたけど。」
 レオはやれやれといった感じに答えた。
「たしかにどこにも行きませんでしたけど、みんなでバーベキューはしましたよ。」
「みんなとは伊達さん、カニさん、フカヒレさん、の3人ですか?」


「そうです。」
 そしてレオはバーベキューの事を話し始めた。
「家の庭でやったんですけど、おいしかったですよ。」
「そうですか。」
「カニの奴が考えなしに肉を焼いたり、フカヒレがそれで焦げた肉を無理やり食わされた
りと色々面白かったですよ。」
「楽しそうですわね・・・・。」
「スバルが作った特性タレが肉に良く染みておいしいんですよねー。」
「いいですわね・・・・。」
「あとは・・・・・。」
 祈はその話しを寂しそうに聞いている。レオは話すのに夢中になってそれに気がついて
いなかった。
「・・・・とまあそんな感じですね。」
「3人とは学校でも仲が良いですわね。」
「そりゃあ付き合っている年数が違いますから、奴らは親友ですからね。」
「それはいいことですね・・・・。」
「・・・・どうしました先生?」
 レオは今になって祈が寂しそうにしている事に気が付いた。
「なんでもありませんわ・・・。」
「でも・・・・・。」
「対馬さん、もし3人がいなくなったらどうなさいますか?」
 祈はレオに突然そんな質問をする。
「・・・・想像もつかないです。」
「まあそうでしょうね・・・。」
「そんなこと考えた事もないです。」
「そんなものですわよね・・・。」
「先生・・・・・・。」
 祈はまたあの暗い昏い顔になる。レオは自分の家なのに妙に落ち着かなくなった。そし
て静寂が訪れる。
 しばらくしてレオはその空気に絶えられなくなり、何か話そうとした。


「あの、先生・・・・。」
「対馬さん、今日はご馳走様でした。」
「いえ・・・・・。」
「私そろそろ帰りますわ、土永さんも待たせてある事ですし。」
 そして立ち上がった。
「あと休み明けテストを作ったりと忙しくなりますら、しばらくは会えませんわ。」
「えっ?」
「そういうことですので、ではさようなら。」
 祈は帰る準備をし、レオに振り向くことなく帰った。
 後に残されたレオは不安な気持ちになっていく。
「先生・・・・。」
 そしてその不安はいつまでたっても消えなかった。それはあの時感じた違和感にも思え
た。


―3―
 夏休みが残り1日となった日の夜、レオはベッドに横になってボーとしていた。
 あの時会った日から彼は祈には会ってなかった。
 いや学校に行けばいる事は確かなのだが、全く相手にしてくれなかった。
「先生・・・・何してるんだろ。」
 レオはあの夕食を食べた日のことを思い出していた。
「先生の力になりたい。」
 しかし今の自分に何ができるのか。
 もし力になれたとしてもそれを受け入れてくれるのか。
 考えても考えても良い答えは出てこなかった。
「一体どうしたらいいんだろ・・・。」
 その時レオの携帯が鳴った。
「誰だ・・・・えっ?先生?」
 画面には祈と出ている。レオはすぐに携帯をとった。


「もしもし、レオです。」
『対馬さん今お一人ですか?』
「はいそうです。」
『じゃあ今から家に向かいますので扉を開けておいてください。』
「分かりました。」
 そして電話は切れた。
 しばらくしてピンポーンと鳴る音がした。レオは玄関に向かった。
「こんばんは対馬さん。」
「こんばんは先生・・・・こんな遅くにどうしたんですか?」
「いえ・・・・ただ貴方としたくなりまして。」
 祈は表情を変えずそう答えた。
「ああ、はい・・・・・・。」
「それではシャワーをお借りしますわ。」
「じゃあ上がって下さい。風呂場はあっちにあります。」
「対馬さんは、少し待って下さいね。」
「2階にいます。」

 祈は今シャワーを浴びている。
 そしてレオは混乱している。
 彼はこれまでに何回か経験はした。
 以前ならこれから起こる事を考えてドキドキしただろうが、今はそんな気分には到底な
れなかった。
 数分後バスタオルだけを巻いた祈が現れた。
「さあ対馬さん始めましょう・・・。」
 シャワーを浴びた祈は色っぽい。
「はい・・・。」
「ですがその前に貴方に聞きたいことがあります。」
「なんですか?」
 そして祈はバスタオルを脱ぎ、裸になってレオの隣に座った。


「私は今日危険日です。」
「えっ・・・?」
「それでも私を抱けますか?」
 祈はまじめな顔をしている。
「もし妊娠したら貴方は学校をおそらく辞めなければいけないでしょう。そうするともう
4人で集まる事は出来なくなります。」
 祈は淡々と語っている。
「そして私も教員を懲戒免職させられることになるでしょう。そうなればもうここにはい
られません。」
 そしてこう続けた。
「日常なんてすぐに破滅するものなのです。私もそれを感じた事がありましたから。」
 祈は遠い目をして何かを思い出している。
「それでも私を抱く事が出来ますか?」
 祈はレオを見つめた。その眼差しは真剣そのものである。
「・・・・・・。」
 レオはその目を見ながら考え始めた。考えた時間は数分のはずだが、それはお互いに無
限の時のように思える。クーラーが効いた室内は涼しいはずなのに、体は妙に熱かった。
 そしてレオは口を開いた。
「今は抱けません。」
「という事は、危険日でなければいいという事でしょうか?」
 祈は軽蔑の眼差しでレオを見つめた。
「それは違います。確かにみんなと過ごせなくなるのは辛いです。でもそういった事で抱
けない訳じゃないのです。」
「ではどういった理由ですか?」
「先のことを考えて抱けないのです。」
 レオは毅然とした態度でそう答えた。
「以前の俺でしたら抱くと答えたでしょうけど、今は違います。そんな考えではいけない
のです。」
 祈はいつのまにか真面目な顔になっている。


「なんでしたら高校を卒業して、ちゃんと就職するまではしないと言うのでも構いません。
むしろその方がいいと思います。」
 彼女は静かに聞いていた。
「こんな言い方は卑怯かもしれません。でも・・・・・・。」
「でも?」
「これが大人の、先生と一緒に過ごして成長した俺の考えです。」
 レオは冷静に熱く語り、祈を見つめる。
 彼の目には迷いが無かった。
 しかし祈は表情を全く変えない。
 しばらくして、レオの目を見つめてこういった。
「対馬さん・・・・合格ですわ。」
「えっ?」
「貴方の考えよく分かりました。」
「・・・・・・・。」
 いつのまにか祈は笑顔になっている。
「さすが対馬さんですわ。」
 祈は嬉しそうに言った。
 しかしレオは今の状況を理解する事が出来ない。
「・・・・・何であんな事聞いたんですか?」
 レオがそう言った時、祈はまた遠くを見つめるようにして話し始めた。
「最近また虚しさがこみ上げてくるようになったのですわ・・・・。」
「・・・・そんな感じはしていました。」
「それは貴方とのお付き合いが落ち着き始めた頃と一致するのです。」
「理由はなんですか?」
「はっきりとは分かりません、いつもの事だと思いましたわ。でも1つだけ確かな事があ
りますの。」
「それは?」
「私と貴方がいつまで続くのかと言う事ですわ。」
「俺はずっと続けたいです。」


「それに対して、どうせ時間が立てばすぐに希薄な関係に戻るだろうと結論づけたので
す。」
「そんな気持ちはありません。」
「ですから今日聞いたのですわ、貴方の覚悟を。」
「・・・・・。」
「そして貴方は正しい答えを出しました。」
 レオはあの時感じた不安や違和感が消えていくのを感じる。
 そして祈はレオの正面に正座で座ってこう言った。
「まだ先がどうなるか分かりませんが、今のところよろしくお願いしますわ。」
 祈りはお辞儀をしながらさらっと言った。レオはそれが信頼してくれている事の現れだ
と思った。だからとても嬉しかった。
「いえいえこちらこそお願いします。」
 レオもお辞儀した。
 そして
「では対馬さん、そろそろ始めますか。」
「えっ?でも危険日だって・・・。」
「あれは嘘ですわ。それに避妊薬を飲んでおりますから大丈夫ですわ。」
「でもあんな事言った手前だし・・・・。」
「貴方もゴムをつけてください。そうすれば妊娠する可能性はほぼありませんわ。」
「う〜ん・・・・。」
「それに私にこれ以上恥をかかせないでください。」
 そう言って祈は顔を赤く染める。そしてレオも赤くなる。
「・・・・分かりました先生。」
「では・・・・・。」
 2人は肌を重ね合わせる。この日レオは甘い時間をたっぷりと過ごした。
 翌日帰ってくる乙女の事をすっかり忘れて。


―4―
 空には鱗雲が浮かび山の頂上あたりでは紅葉が始まった頃、竜鳴館高校の片隅でレオと
祈がベンチに座っていた。
 正確には祈がレオに膝枕をしているのである。因みに今は授業中である。
「先生、こうして学校でゆっくり過ごすのもいいものですね。」
「ええ・・・。」
 レオは祈の膝の上で気持ちよさそうにしている。
「因みに俺と付き合って何か変わった事ありますか?」
「そうですわね・・・・睡眠薬を手放せた事ぐらいですわ。」
「それはいいことですね。」
 レオは嬉しそうに言った。
「それと乙女さんを説得してくれてありがとうございます。」
「いえいえ、大した事ありませんわ。」
 あの後祈はレオの家にそのまま泊まってしまった。翌日帰って来た乙女に見つかりひと
騒動起こった。
「鉄さんは単純な性格をしていますので、からめ手でかかればあっという間ですわ。」
「そうですか・・・。」
 最終的には無理やり乙女を納得させた形にはなったが、それにより自由に会う場所を確
保できた。
「今週末またお邪魔させて頂きますわ。」
「カニにばれないようにうまくしてくださいね。」
「彼女は勘が鋭いですから油断できませんわ。」


 祈は笑いながら言った。
「先生、俺このテンポでの付き合いが気持ちよくなってきましたよ。」
「それは何よりですわ。」
 祈は前より少し柔らかくなった。レオもそれが嬉しい。
「べたべたするより、こっちの方が長く続きそうだと思いませんか?」
「そうなるといいですわね。」
 口ではそんなことを言っている祈だが、内心続くだろうと思っている。
 そしてレオはずっと続けてみせると思っている。
 2人の付き合いは始まったばかりだ。
 しかしそれは永遠に続くであろう。
 2人に幸あれ。

END


(作者・区区氏[2005/12/11])

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