毎日の日課みたいに、ボクはレオの部屋を見る。
最近は毎日のように閉じているカーテンが、今夜は開いていた。
だから、今日は乙女さんのレオじゃなくて、ボクら幼なじみのレオってことでいいのかな。
とりあえず、二階へ飛び乗って部屋に入ってみる。

「おーっす! みんなの癒し、蟹沢きぬ様が久しぶりに遊びに来てやったぜー!!
 って寝てんのかよ、つまんねーなあ……」
「zzZZ」
疲れてんのかなんか知らねーが、レオはベッドでグースカ寝ていた。
せっかくレオの部屋に入れたっていうのに、拍子抜けしちまった。
なんてまあ気持ちよさそうに寝ちゃってさ。レオと遊べると、一瞬すげえ喜んじまった自分が恥ずかしいぜ。

スバルもフカヒレも来てないし、何もすることがない。
レオが持っている漫画は全部読んじまったし、ゲームはレオが起きちまいそうでイヤだ。
前はこんな遠慮はしないで、レオが起きようがどうしてようが関係なく何でもやっていたのになあ…。
レオが乙女さんと、ボクに断りもなく恋人同士になってからどうもこういう事が気兼ねなくできなくなったというか……遠慮するようになっちまった。
ボクも甘くなったもんだぜ。


「う、ううん……」

レオが眠りながらうめき声を上げる。
起きたかと思ってびっくりしちまった。
最近は乙女さんの影響か、妙に逞しくなっちまったレオだけど、やっぱりヘタレな部分は残している。
さっきのうめき声とか、今の寝顔とか。妙に安らかで可愛くて、レオはいつまでたってもレオのまんま

だな。
……ボクの知っている、レオなんだ。

たったそれだけの事が、みょうに嬉しく感じるようになっちまった。

視界が揺れて歪んで、レオの寝姿が見えないけれど、ボクは泣いてない。
……泣いてないもんね。


幼なじみって立場に甘えてた。
何より近くにこいつがいたから、全然自分の気持ちに気づけなかった。
馬鹿だよなあ。スッゲェ馬鹿。
自分で自分を馬鹿なんて思いたかないけど、今回ばっかしはマジでボクは馬鹿だ。

どうしてもっと早くわからなかったんだろう。

ボクはレオのことが好きなんだって。

そりゃあさ、早いうちから気づいたとしても、この気持ちがレオに届くとは限んない事はわかってる。
でもさ……そうすりゃ、もっと別の”今”があったんじゃないかって、今でこそ思うんだよ。
レオが毛嫌いしていたバカップルにボクとレオがなっちまって、毎日毎日いちゃいちゃ楽しく暮らしている……とかさ。

自分で想像して、笑っちまった。
ホント、馬鹿みてえじゃねえか……ちっくしょう。


レオが乙女さんに惚れるのもわかるんだ。
ボクだってさ、乙女さんのいいところはたくさん知っているから。
綺麗だし、勉強はできるし、真面目だし、世話好きだし、強いし、
不器用だけどそれを補うほど一生懸命で、男らしいけどそれ以上に女らしいところもあって…
…祈ちゃんとかには負けるけどさ、胸もボクよか遙かに大きいし。
認めると悔しいけどな。
だけどさ、ならさ……ボクが乙女さんみたいだったら、レオはボクの事好きになってくれたかな?

……自己嫌悪しちまったよ。くそったれ。

おい、レオ。のんきにベッドで寝ているオメーがスッゲェむかつくぜ。
この可愛いきぬ様が、こんなにオメーの事で悩んで苦しんでいるってのにさ。
不公平だぜ。ちったあボクの事でも悩んじくり。

無茶な要求だけどさ。


「zzZZ…」
「レオ……」
レオの寝顔を眺めていると、ムラムラ……というか、衝動がわき上がってきた。

ちゅーしてえ。

ボクとレオは恋人同士じゃないけれど、いけない事とわかっているけどさ。
仕方ねーじゃん。ボクはレオが好きなんだもん。

「レオ……ごめんな?」

ちゅうっ……

レオの、乙女さんに対する気持ちを踏みにじってごめん。
キスするのがボクで、ごめん。
乙女さんにも、ついでにごめん。
いろんな「ごめん」を含めつつ、ボクはレオに唇を合わせた。


はじめてのレオとのキスは、塩っ辛い味がした。
自分の枕でもう何度も味わったことのある、涙の味だ。
泣いてないのに、なんでこんな味がするんだよ。ちくしょう。

それから、しょっぱい味に混じってほんのりと甘い味。
レオの味かな? 乙女さんのも含まれているのかもしれない。間接ちゅー、ってヤツか。
全然嬉しくないけど。

レオ、おまえ本当に乙女さんのものになっちまったんだな。
……ボクのじゃなくて。

なんかすげえ悲しくて寂しくて、胸が痛くて……ちょっとむかつく。
オメーはボクの気持ちなんか知るよしもないだろうし、ボクは告ってもフられてもないけどさ。
ボクはまだレオの事が好きだぜ。たぶんこれからもずっと。

だからさ……
また、ちゅーしてもいいかな。
返答は絶対に聞こうとも聞けねえけど。

ボクは唇に余韻を残しながら、レオの部屋を去った。


「ふあぁ……よく寝た……あれ?乙女さんいつの間に……」
「おはよう、レオ。疲れていたのか?
よく眠っていたようだが……」
「う〜ん……ちょっと疲れたかも。昨夜は結構頑張ったし……」
「む……あ、その……ま、まだまだ鍛錬が足りないな!わ、私はこんなに元気だぞ!!ほら!!」
「乙女さんは……ねえ?」
「……今失礼な事を考えなかったか?」
「いや!何も!」
「……まあいい。それよりも……だ。おはようの……」
「うん。キスだね?」
「直接的に言うヤツだな……んっ……ちゅくっ……ちゅっ…ちゅっ……」
「……ん〜……ぷはっ」
「…………?」
「……?
乙女さん、どうしたの?」
「……いや、何かいつもと違う味がしたから」
「? そう?」
(海鮮物の味……か)


END


(作者・AKI氏[2005/11/21])

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