バレンタインデー 【ツン】
「あれ、佐藤さん1人?」
「あ、対馬君」
竜宮ではよっぴーがが1人書類整理をしていた。
「何か手伝えることないかな?」
「あっ、じゃあこっちの整理お願いできるかな」
「わかった。まかせて」
暇なのでレオはよっぴーを手伝うことにした。
しばらく2人無言で書類整理を行う。
「よし、これでお終い」
「対馬君、手伝ってもらってありがとう。これよかったら食べて」
よっぴーは暖かいココアと小皿にチョコを載せて持ってきた。
「エリーにあげた残りなんだけどね」
「……佐藤さん、姫にチョコあげてるんだ」
「……チョコをあげないと、エリーって駄々こねて、すねるんだもん」
糸目になったよっぴーが遠い目で言った。
「……ありがたくいただきます。お、これおいしい」
チョコを食べるレオをよっぴーは微笑んで見ている。
「でね、エリーったらホワイトデーにお返しだって凄いお返しをしてくるんだよ。嬉しいんだけど少し困るの」
「……ふーん。ま、余りものだけどいただいたことだし、ホワイトデーには何かお返しするよ。姫に比べたらしょぼいけど」
レオはココアを飲み干してから言った。
マターリした2人の間に甲殻類が乱入してきた。
「レオはいねがー。今年もボクの手作りチョコの時間だぞ〜」
怪しげな塊を手にカニがレオに迫っていく。
「さあ、大人しくボクのチョコを味わえ! そして感激の涙で溺れてしまえ!」
「やかましい! 毎年毎年毒物を生産しやがって、誰が食べるか!」
どたばたと狭い竜宮で追いかけまわったあげく、外へ飛び出したレオを追いかけてカニも出て行った。
「……やっぱりカニっちが障害になりそうね。でもレオ君からお返しがもらえるようにしたし、今日のところはいいか」
そしてレオの使ったカップを取り、口つけた所に自分の唇を重ねた。
「……ああんっ、レオ君〜」
よっぴーはしばらくの間、くねくねと赤くなりながら悶えていた。


バレンタインデー 【ンデ】
「対馬君、そこに座って待ってて」
よっぴーに呼び出されたレオは竜宮にやってきた。
「今日はバレンタインデーだから、はい」
小皿に載せたトリュフチョコレートとコーヒーが運ばれてきた。
「えっ、俺にチョコ? ありがとう佐藤さん」
「うふふ、本命だよ対馬君」
手で口元を隠しても判るほど、よっぴーは赤くなった。つられてレオも赤くなった。
「さっ、対馬君、食べて食べて」
「うっ、うん。いただきます」
レオはトリュフチョコをつまんで口に運ぶ。チョコを口に入れて、ココアパウダーの付いた指をなめ、味わう。
「おいしい!」
「よかった。口に合うか心配だったんだよ。作るの初めてだったし」
「えっ、これ佐藤さんの手作りなの!?」
「うん。がんばって対馬君のために作ったんだよ」
にっこりと微笑むよっぴーにレオはまた赤くなった。
レオはテレをごまかすようにもう1つチョコを口に運んでコーヒーを飲む。
よっぴーはそのしぐさを熱っぽく見つめる。ちろりと唇をなめ、瞳を欲情に潤ませて。
「本当においしいよ」
そう言ってもう1つチョコを口に入れたレオの手を、よっぴーがそっと抑えた。
そしてココアパウダーの付いたレオの指を自分の口に運び、咥えた。
「佐藤さん!?」
驚くレオをよそに、よっぴーは指に付いたココアパウダーをなめ、舌で指を味わうように弄りだした。
くちゅくちゅと小さな水音が響く。
パウダーの付いた指をすべてなめ尽くしてから、ちゅるんと指を吐き出した。
それからよっぴーはレオが逃げられないようにしっかりと顔を押さえ、そのまま無言でレオの顔に自分の顔を近づけていく。
「こっちも綺麗にするね」
レオの唇についたパウダーもなめとる。
「ふふふ……。これで全部綺麗にしたからね」
「……う、うん」
真っ赤になるレオとよっぴー。
「……好きだよ、レオ君♪」


バレンタインデー 【デレ】
「良美〜、用事って何〜」
呼び出されて、レオは竜宮にやって来た。
「あれ? いない。ん?」
竜宮は空だった。しかし、机の上には何かある。
それはよくみると粉々に砕けたチョコレートだった。原型が判らないほど細かく執拗に砕かれている。
「……レオ君」
バタンと扉が閉められ、ガチャリと鍵がかけられた。
レオが後ろを振り返るとドアの前にいつのまにか良美がいた。いや、おそらく最初からドアの影に隠れていたのだろう。
「よ、良美、どうしたんだ」
「とりあえず、座って。今、お茶持ってくるから」
そう言って台所に消えるよっぴーにレオはガクブルで椅子に座る。
目の前には粉々に砕かれたチョコレートがある。もともとはハート型だったのだろうか。ハートの包装紙の上に砕けたチョコが山となっている。
その横には砕いたと思しき小ぶりのハンマーがある。
よっぴーが戻って来て無言で紅茶をレオに差し出し、レオの対面に座って紅茶を一口飲んだ。
「……俺、何かしたかな」
おそるおそる切り出したレオに、よっぴーはことりと小型録音機を取り出し、再生ボタンを押した。
『レオ、今日はバレンタインデーなんだろ』
『乙女姉さん、バレンタインデー知ってたんだ』
『お前私を馬鹿にしてないか? まあいい、ほら私からだ。最近鍛錬もしっかりやってるしな、ご褒美だ』
『……びっくり、ありがとう乙女さん』
「……これは朝の会話!!」
『レオー、今年もありがたいチョコがやってきたぞー。……よしよし、寝てるな』
『……ん〜。むがむがむぐむが』
『よしよし、しっかり食べるんですよ〜。最近ふつーにやっても逃げるかんな。寝てる間に食べさせるなんてボク頭いー』
「!! 朝起きたらチョコまみれだったのはやはりカニか!?」

録音機を止め、うつむき表情を隠したよっぴーが口を開いた。
「レオ君、どうして、他の人から、チョコを、貰ってるのかな?」
「いやまて良美これはどう考えても不可抗力だ乙女さんは断ると鍛錬と称してボコボコにされるしカニに至っては俺の意識は夢の中だ
それ以前になぜ盗聴が録音されているかについて聞きたいんですがダメですかそうですか」
あわてて弁解するレオ。静かに顔をあげたよっぴーの目には暗い炎が燃えていた。たぶん。
「……このままじゃ、幸せになれないよ。どうしてなんどもなんども言っているのにわかってくれないの?」
静かに語るよっぴーに喉の渇きを感じたレオは紅茶を飲み干してさらに弁明をした。
「……お茶入れてくるね」
会話を遮り、よっぴーは二人分のティーカップを持って台所に消える。
一時的に重圧から開放されたレオだが、あまりにマズ過ぎる展開に冷たい汗がとまらない。
「はい、おかわり」
表面的にはいつもと変わらず、しかし表情は無表情でいるよっぴー。正直取り乱すより恐ろしい。
「レオ君はお砂糖使う?」
「いやいいです」
その時、レオは砂糖の瓶の横に見慣れない小瓶があることに気が付いた。化学の実験で使うような茶色い小瓶である。それを手に取り確かめる。
「……えーっと、た、タ…タ○ウム!? まさか巷で噂のタリ○ム!? なんでこんなものがここに!!」
「ああ、それ、害虫駆除に使うんだよ」
よっぴーはなんでもないかのように、にこやかに応じる。
「……レオ君によってくる害虫を駆除するのにね」
レオの顔色が青を通り越して白になった。
「……良美、とりあえず落ち着いて話し合おう」
「そうだね、私もレオ君にまだまだ聞きたいことあるし」
にっこりとレオに微笑むよっぴーの目は、カミソリよりなお鋭かった。


バレンタインデー 【デレデレ】
「レオ君、今日は一緒に帰ろうよ」
「ん、わかった」
レオはよっぴーからの暗号で、今日も泊まりか乙女さんへ連絡しなきゃと思う。
2人の間ではよっぴーが「一緒に帰ろうか?」と聞いてくる時はHあり泊まりなし。
「一緒に帰ろうよ」と誘ってくるときはHあり泊まりあり。特に何も言わない場合は普通に一緒に帰るだけ。
「さっ、レオ君、帰ろう」
よっぴーは上機嫌で今日は特別に激しそうだなぁとレオは覚悟を決めたのだった。
部屋に入るとよっぴーはレオを寝室ではなくリビングに案内して、自分は着替えに行った。
「……珍しいなぁ。いつもは玄関開けたらキスフェラパイズリのコンボで攻めたててくるのに」
いつの間にかよっぴーの部屋でのエロ単語に違和感がなくなっているレオであった。
「おまたせ、今日はバレンタインデーだからチョコレートだよ」
よっぴーがチョコレートケーキを持って現れた。
「おー凄いなー。……ってその格好は!?」
「何って? 裸エプロン〜♪」
ケーキを机の上に置いてから、よっぴーはクルリと一回転してみせる。
「……キワドイ」
中核は見えそうで見えなかったらしい。
「まずはケーキから食べてね〜レオ君♪ はい、あーん」
「あーん」
よっぴーお手製のケーキを手ずから食べさせてもらう。
「おいしいよ良美。また上手になったんじゃないか」
「もうレオ君ったらぁ。褒めてもダメだよ〜♪ はい、あーん」
よっぴーは嬉しそうにレオに食べさせ、同じフォークを使って自分も食べる。
いや、フォークをしゃぶっていると言ったほうが正しいだろう。既に顔が赤い。
そのフォークでケーキを食べさせられるレオも、しだいに興奮で顔を赤くしてきた。
「……だめ、もう、我慢できない」
臨界点を超えたよっぴーがレオの唇を奪う。チョコレート味の濃厚な口付けが交わされる。
互いに息が苦しくなるまでむさぼり、口を離すと、つっと唾液が糸を引いた。
よっぴーは肩紐をずらし豊満な胸を露出させ、そこにケーキからチョコクリームを取って塗りつけた。両手を広げ、よっぴーはレオを誘う。
「さっ、レオ君、私を食べて」
桃色空間展開のため、中継不可。


(作者・ノネコ氏[2005/11/21])

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!