「しかしこのエコノミーってのは狭いわねー。
エコノミー症候群って病気ができるのもわかるわ。」
「やっぱりエリカはファーストクラスに変えてもらえば良かったんじゃないか?
慣れてない分辛さも増すんじゃ?」
心配してくれるレオ。それはありがたいけど、
「皆で行く修学旅行、自分から仲間外れになるのも変じゃない。
それに、狭い分レオと近くになれるのは嬉しいわよ。」
「うっ!」
一瞬で顔が赤くなる。相変わらずからかいがいがあるわね。ま、嬉しいのは本当だけど。
「おいこら前のバカップル!公衆の面前でうぜーことやってんじゃねえー!!」
「カニっち、声が大きいってばあ。」
後ろに座るカニっちからつっこみ。
最近よく絡まれる。幼馴染のレオをとっちゃったからかな?
私には幼馴染というのがいないからわからないわね。
ううむ。よっぴーが誰かにとられるようなものかな。それは確かに嫌だ。なるほど。
「ま、新鮮な体験としていいわよ。今後の部下の扱いの参考にもなるしね。」
「そういうことならいいのかな。定期的に座りながらでもできる体操とかして、
体動かすようにね。」
「はいはい。体が痛くなってきたらレオにマッサージしてもらおうかしら。」
「そうだな、痛くなったら言ってくれ。」
くっ、やられた。今度はこっちが顔を赤くしちゃったじゃない。
レオはたまにこうやってまっすぐ返してくるから困る。まあ、そこも好きなんだけどね。
「けど、スウェーデンでオーロラ見物か。楽しみだ。」
「そうね。あんまり寒いのは御免だけどね。」
バラも出せないような寒さは嫌よ、と付け加える。
私たちは今回の修学旅行の行き先をスウェーデンに決めた。
館長とアバラチア山脈を攻めてみるってのもおもしろそうだったけど、
よっぴーがスウェーデン希望だったし、オーロラをレオと眺めるのも悪くない。
折角の修学旅行、今回は楽しむのに徹しよう。


機内食が配られる。味は、・・・まあ仕方ないか。
のどが渇いたのでカバンからペットボトルを取り出す。
「あれ、エリカ、飲み物は出てるのに何で空港で買ったお茶飲んでるの?」
「どうもこういうところで人に入れられる飲み物ってのが信じ切れないのよ。
家にいるとね、そういうのに睡眠薬いれられるとかって話、よく聞くし。」
「・・・なるほど。佐藤さんや俺が入れたのを飲んでくれるのは信用してくれてるからなんだ。」
そりゃね、と答える。
「じゃあ、俺も合わしておこうかな。」
レオも来る時に買っていたお茶を取り出した。
「別に合わせる必要は無いわよ。」
「いいや、ナイトとして姫にだけそういうのをさせるのは無理だね。」
「全く・・・言ってなさい。」
ちょっと顔が赤くなってしまった。
そんなこんなで機内食を食べ終わり、食後のドリンクが配られる。
特に喉は渇いていないと断った。レオも合わせて断る。
おなかも膨れ、そろそろと皆が寝静まり始めたその頃に、その異変に気がついた。
「ちょっと、レオ、起きてる?」
「んん、どうしたのさ?」
レオが目をこすりながらこちらを向く。ちょっとかわいい。
ってそんな場合じゃない。
「まだ確証ないし、絶対に騒がないで聞いてね。」
「まさかこの飛行機がハイジャックされたとか?」
「意外。気づいてたんだ。何で気づいたの?」
「って、えええええ!?マジ?もがっ・・・」
あわてて口を押さえる。
「ちょっと、静かに!気づかれたらどうするの?
まあ、まだそうと決まったわけじゃないけどね。
さっきからスチュワーデスが一人も見当たらないのよ。
普通なら所定の位置で客の様子を伺ったりしてるのに。」
頭を押さえたままレオに周りを見回させる。


「確かに、いないね。」
「一人いいおっぱいの人がいたからチェックしてたんだけど、
前の方に行ったっきり戻ってこないのよ。それで気になってね。」
「おっぱいで気づいたのかよ・・・」
あきれた口調で返すレオ。いいじゃない、趣味なんだから。
まあそれは置いといて、と座席の前に取り付けられた個人用テレビの画面を操作する。
「あと、どっちかって言うとこちらの方が重要なんだけど、
さっきから前の画面の航空経路が映し出されないのよ。
普通は今の位置とかが出るもんなんだけど・・・」
「ああ、確かそんな機能があったっけ。さっきから映画見てたから気づかなかった。」
「ま、ほとんどの人はそんなもんよね。だからまだ騒ぎ出す人もいないのかな。」
「ほんとにハイジャックなのか?」
「わからないわよ。現状ではその恐れがあるってぐらいね。
だから、確かめに行くわよ。」
「わかっ・・・ってえええもがっ。」
「だから静かに!今のところ特に何かあるってわけじゃないんだから、
騒ぎ立てるのも変だし、放っておくには事が大きすぎるでしょ。
とりあえずの確認よ。」
「でも危ないんじゃ。」
心配してくれるレオ。ありがたい。けど、
「その時はナイト様がついていてくれるんでしょ?」
「くっ。」
案の定詰まる。伝家の宝刀ね、この言葉♪
「仕方ない。けど危なそうになったらすぐに引き返すぞ。それだけは約束。」
「もちろん(おもしろそうだったら残るわよ)。」
「何か小さい声で言わなかった?」
「何にも〜。」


二人でそろそろと前の方の席を目指す。
周りを見渡すと、ほとんどの人が眠っていた。
「確かに、スチュワーデスが一人もいない。これはやっぱりおかしい。」
「そうね。それにしては犯人らしいのまで見かけないわね。
一体どういうことなのかしら?」
「!!エリカ、ファーストクラスの方がおかしい。」
「スチュワーデスが縛られてるじゃない!前の方の人たち、何で気づかないの!?」
後ろを見ると、不自然な感じがした。
ほとんどの人が寝静まっている。ああ、なるほど。
「やられた、薬ね。」
「薬?」
「ここまで皆寝てるなんて不自然だわ。
きっとさっき出た飲み物に睡眠薬が混ざってたのよ。
私たちは飲まなかったでしょ。他の人は皆飲んじゃっだみたいね。」
「まあ、普通飲んじゃうよな。」
「動けるのは私たちだけってとこかしらね。」
ひそひそ声で話しながら前方に聞き耳を立てる。
縛られているスチュワーデスの横から話し声が聞こえてきた。
隠れながら覗くと、二人の男が話している。意外に普通な感じの輩だ。
「しかしハイジャックとは・・・ね。」
「天下の・・・財閥の・・司が・・・。」
「・・・スチュワーデスが・・・しっかり見張ってないとな。」
ちょっと聞こえづらいけど、なるほど、こいつらが犯人か。
目的は私の身代金ってとこかしらね。
しかし何でまたこう、流れを話してくれてるような親切な犯人がいますかね。
ご都合主義万歳!・・・けどお約束すぎよね。
まあ、楽といえば楽だけど。
「レオ、左の奴任せた。二人しかいないみたいだし、一気にいくわよ。」
「げっ、マジでやるの?」


「あったりまえでしょ。級友を守って戦うヒーロー!くーっ、燃える!」
「やっぱとめても無理か・・・まあ確かに、この状況はたしかに放っておけないな。」
どうやら火がついたみたいね。頼もしい時の目つきになってるし。
この目のレオは信頼できる。
「じゃあ、いくわよ。」
「おう、任せろ。」
小声の打ち合わせは終了。二人同時に飛び出し、一息に襲い掛かる。
「何っ!?」
こっちに気づいた敵Aが瞬時に貫き手を放ってきた。
意外にできる!レオは大丈夫!?一瞬頭によぎる。
しかし今はそんな余裕はない。左手で攻撃を流し、
「調子にのりすぎね!」
相手をつかんで空中に放り投げ、エリアルコンボを決める。
「後悔なさい!」
「ぐあっ・・・。」
受身は取ったようだが、追撃で入れた背中への一撃で昏倒した。
「ここまでよ!こっちは良し、と。レオっ!!」
横を見ると、レオが相手の懐にもぐりこんでよくわからない蹴りを決めるところだった。
「取った!これで決める!」
「あべしっ!!」
吹っ飛ぶ敵B。壁にぶつかり、こちらも昏倒した。
「やるじゃない、レオ。こいつら意外にできたから心配したわよ。」
ほっとしながら、レオに近寄る。
「姫のナイトとして、がんばらなきゃいけないからね。
乙女さんに厳しめにしごいてもらってる成果が出てくれたかな。
それよりエリカ、怪我はないか?大丈夫か?顔赤いけど。」
「だっ、大丈夫、怪我はないわ。ちょっといきなり動いたから疲れただけよ。」
レオ、私のためにがんばってくれてるんだ。何か照れるじゃない。


「それはそうと、早く縛られてるスチュワーデス達の縄を解くわよ。」
「ああ、わかってる。ついでにその縄でこいつらも抑えとくか。」
「そうね。」
二人で手分けしてスチュワーデス達を解放していく。
「大丈夫、怪我はないかしら?」
スチュワーデスは状況が掴めないのか目を白黒させていたが、
周りを見渡して落ち着いたのか機内の更に前方を指差した。
「もう一人、犯人がいます。操縦室の方に向かっていきました!」
なるほど、スチュワーデスを人質に操縦室から乗っ取るつもりか。
「姫、どうする?」
「残りの奴もとっちめるに決まってるでしょ。
折角のレオとの修学旅行にケチつけたんだから、
きっちり落とし前つけさせてもらうわ。」
まあ、レオと二人でハリウッド映画の主人公みたいになってるのは面白いけどね。
しかしなごめたのもつかの間、前方から一人の男が現れる。
「やはりですね、機長の方まで・・・むっ、これは一体!」
「あらら、戻ってきちゃったようね。」
「何かエリカの方が悪者っぽい・・・」
けど意外。そこに立っていたのは見るからにぼっちゃんという奴だった。
ハイジャックなんてするんだからと、ごついのを想像してたのに。
「あなたがこいつらの親玉ってわけね?」
「その呼び方には少し違和感がありますが、一応主ですね。」
「あなたの子分たちはもうおねんねしちゃったわよ。」
「ますます悪者っぽいー!」
レオ、うるさい。
「確か、霧夜のお嬢さんですよね?落ち着いてください。」
男の手にはいつの間にか花が握られている。
「むっ、あんたもバラが出せるのか!?」
「いえ、これはクチナシですが。」


「良かった、バラじゃないのか。エリカの負けず嫌いが発動して、
バラ出し勝負とか奇人対決でも始まるんじゃないかと心配したぜ。」
レオ、さりげなく失礼なこと言ってない?
「けど、私の素性まで知ってるってことはやっぱり!」
「いえ、何度かうちの主催のパーティーで見、っ!」
「問答無用!」
一息に踏み込んでお嬢様キックを放つ。
が、男は軽やかにかわした。
「ちょっと、避けないであたりなさいよ!」
古武術の動き!?こいつ、さっきの奴ら以上にやる!
「く、何故かあなたの声を聞いていると言うことを聞きたくなってきてしまう、
なぜだろう?き、聞いてください、私の名前は摩周慶一郎と言います。」
その名を聞いて、攻撃の手をとめる。
「摩周財閥の御曹司の名前じゃない。って、そういや確かに見たことあるような気が。」
よくよく見れば、このちょっと抜けたような顔は確かに。
「霧夜家は何度かうちのパーティーにお呼びしていますから。」
ああ、なるほど。それでか。って、それじゃ
「ちょっと待って、じゃあおかしいわ。何で後ろの連中は皆寝かされているのよ!?」
「やはり勘違いしていたようですね。私たちは襲われたから取り押さえただけです。」
「くっ、成る程ね、ぬかった!つまり本当のハイジャックは・・・」
気がつけば先ほどからレオの声が聞こえない。
レオっ!?
「気づいたようね、霧夜のお嬢様。本当のハイジャック犯は私たち。
全く、摩周家のぼっちゃんまで乗ってるのは計算外だったわ。
SPに飲み物の睡眠薬にきづかれちゃって襲ったけど、
返り討ちにあっちゃったしね。ラッキーと思ったけど、
二兎追うものは一兎も得ずになるところだったわ。」
なるほど、そういう状況だったわけ。


後ろを向くと先ほどのスチュワーデスの一人が、
かばっていたレオを羽交い絞めにしていた。
後ろに控える奴も含めると6人・・・多すぎる!
「まさかスチュワーデス全員がすり代わってるとわね。」
「ふふふ、それだけの価値があなたにあると感じる人がいるってこと。
あなたのおかげで形勢を逆転させてもらったから教えといてあげる。
機長も私たちの仲間。睡眠薬はおまけでね。一度北朝鮮に着陸させて、
武器を手に入れてからゆっくり抑える予定だったのよ。
全く、中々予定通りには行かないものね。」
おおげさにため息をつくスチュワーデス。
プロね・・・話しながらも隙がない。私の親族からの回し者か・・・
「まあ、あなたを簡単に取り押さえられる状況が来たのだし我慢しましょうか。
この子は貴方の大事な人なのでしょう?」
抑えこんだまま、レオの首を軽く締め上げる。
「ぐっ!」
苦悶の声をあげるレオ。
「・・・どうすればいいわけ?」
「とりあえずは、おとなしくつかまってもらおうかしら。
あと、後ろで動こうとしてる摩周のぼっちゃん!
あなたが動いてもこの子が痛い目にあうわよ。」
「くっ・・・」
後ろで動いてくれようとしていた摩周さんもけん制された。
「仕方ないわね・・・」
「ぐっ、や、やめろ、エリカ。お、お前ら、計画通り行かなかった上、
こ、こんな状況になって自分の計画垂れ流してる奴なんて典型的な死亡フラグだぜ!
ぐあああああ!」
「だまりな!」
反抗するレオの首を締め上げる。
「やめて!おとなしく捕まるから!」
仕方ない、ここは一度捕まってから策を練るしかないか・・・。


一度は抑えられる覚悟を決めたその時、
「うるさい・・・。」
あっ、あれは確かうちの顧問弁護士の、氷の弁護士こと柊要芽!?
「な、なんだお前は?」
「さっきからうるさいのよ。寝れないじゃない。黙れよ。」
げ、現在の状況わかってない?けど、なんていう威圧感なの!?
「えっ、えっ・・・」
犯人まで怯えちゃってるし。
それでもさすがプロ、犯人の見せた隙は一瞬。すぐに立て直す。が、
「今よ、摩周さん!」
「はっ!」
私たちはその一瞬の隙を見逃さない。
見逃すわけには行かない!
摩周さんは犯人に飛び掛り、同時に飛び掛った私がレオを奪取する。
「レオ、大丈夫!?」
「げほっ、げほっ・・・だ、大丈夫。問題ない。」
「良かった・・・。全く、レオをこんな目に!許さないわよ!」
レオを奪取したとは言え、気は抜けない。
相手は6人もいる。私たちだけで、勝てるか!?
焦りを感じたその時、こちらの動きにこっちへ目を向けた、
後ろの方で後部席へ目を光らせていた犯人の一人が崩れ落ちる。
「レオ、姫、遅れてすまねえ!」
「スバル!」
ナイス援護!しかしいきなり現れるとは・・・もしやレオへの愛の力!?
「よくも俺のダチの首をしめてくれやがったな、ゴラァ!」
一気に畳み掛けるスバル君。
後ろから不意に迎撃され、唐突に挟み撃ちの形にされた犯人は脆かった。
こうして、犯人はスバル君と摩周さんによって一気に沈黙させられた。


「二人とも、大丈夫か!?すまねえ、助けるのが遅れた。お前らがいないのに気づいて、
見に来てみたんだが、ちょうどレオが捕まっている状況だったんでな。」
「そんなことない、すげえ助かったよ。」
「そう、本当に助かったわ。」
スバル君が来なければ、どうなってたかわからなかったわね、実際。
さすがに真正面から戦っていたら厳しかったと思う。
「けどスバル、お前はドリンク飲まなかったのか?睡眠薬が入ってたらしいんだけど。」
「ああ、俺のは全部カニに取られちまったんで、途中で買った飲み物飲んでたんだ。」
カニっち…。一応、感謝なのかな?
後ろでは摩周さんと柊要芽が話している。
「全く、とんだ行程ね。摩周家のSPとかいうのも役に立たないものね。」
「申し訳ありません、要芽さま。次こそは鉄の者を口説き落として見せます・・・。
イギリスへ行く前への気晴らしと、私自身が提案したオーロラ見物だというのに、
こんなことになってしまい本当に申し訳ありません・・・」
「まあ、仕方ないか。貴方のせいではないし。」
「要芽さま・・・」
あまり興味がない、といった感じで柊要芽が話を打ち切った。
摩周のぼっちゃんを使えない部下扱いとは・・・やるわね。覚えておきましょう。
話が途切れたようなので、話しかける。
窮地は抜けたが、もう一つ大事なことが残っている。
「先ほどは犯人と勘違いしてしまい、すいませんでした。
そして彼を助けていただき、ありがとうございました。
ところで、先ほど機長の方も犯人とのことでしたが、どうしましょう?」
「ああ、先ほど犯人の一人を利用して、操縦室をあけさせて取りおさえておきました。
今は私が連れてきた、資格を持つSPが操縦しております。ご安心を。
おそらく、一度中国あたりに着陸することになるでしょう。」
なるほど。って、実は私たちが来る前に事件はもう解決してたの!?
もしかして私たち、事を蒸し返して、ややこしくしただけ!?
ぬかったあああああ!!!顔から火が出そうになる。


「フフフ、可愛いわね。」
柊要芽がこちらを見て笑っている。くっ、からかわれてしまった。
「ところで、エリカ。」
レオが話しかけてくる。正直この状況はきつかったんで助かった。
「何かしら?」
「さっき、やめろといったじゃないか。何で投降しようとしたんだ!
何とかなったから良いものの、もし捕まってたらどうなったかわからないんだぞ!
俺なんかを切り捨てられないようじゃ、世界なんてつかめない!」
まじめな顔をして説教してくる。思わず頭を抱えて、ため息をついてしまった。
「な、何だよ。」
意外そうな顔をするレオ。全く、わかってないわね・・・
「いい?よく聞きなさい!レオのいない世界なんてね、つかむことを考えられないの。
私の覇道はね、もうレオと一緒に歩むものってことになってるの。
私が世界をつかむのに、あなたを切り捨てるなんて選択肢は無いのよ!」
「・・・っ!」
「大体、全てをつかんでみせるのが私って言ったのは貴方でしょう、レオ。
両方とってこそ私。もし捕まってたってね、絶対どうにかしてみせたわよ!
レオ、貴方は私を信じたんでしょ?だったら最後まで信じつくしなさい!」
あー、もう、私もレオの熱血病がうつっちゃったのかしら。
自分でもちょっと無茶言ってると思う。多分、今の私の顔の色は真っ赤だろう。
「・・・わかったよ、エリカ。ごめん。」
レオの顔色も赤い。
「わかればいいのよ!」
これ以上恥ずかしくて耐えられないわよ、全く。
耐え切れず、後ろを向いてレオに背を向けた。

「熱いわね・・・私にも、ああいう考え方ができれば違った結末もあったかしら・・・」
後ろで聞いていた要芽は考える。
「次に会えたらその時こそは、か。」
流れ行く外の景色を見ながら呟いた。


結局飛行機は中国の大連空港に着陸し、ハイジャック犯を受け渡すことになった。
本来ならこんなことになったら修学旅行は中止なんだろうけど、
「折角の修学旅行がそれではつまらんだろう」という橘館長の一声で、
そのまま大連組に合流することに決まった。さすが館長といったところか。
柊要芽たちはそのまま飛行機を乗り換え、イギリスへ向かっていった。
いつかきちんとお礼をしたいと思う。
その時にできればあの二人を仲間にできないものかとも思う。
私たちは今、二人で大連市内をまわっている。
旅行先は変わってしまったが、まあレオとの修学旅行というのは続けられたのだし、
良しとしよう。
「レオ、次はどこ?自由時間は少ないんだし、さくさくいくわよ!」
「ちょっと待ってくれ、いきなり目的地変わったんだから全然わかんないよ。」
「もう。じゃあ、どこでもいいから歩きながら探しましょ。」
「えっ、それでいいの?」
「いいのよ。レオとならどこでも楽しいわ。」
「っ・・・」
フフフ、また顔赤くしちゃって。あんなことがあったからか、私今少し大胆かも。
ま、旅行中くらいはいいでしょ。帰ったら、さらに忙しく動かなきゃいけないしね・・・。
「ほら、行くわよ!」
レオの手を取り、二人で異邦の街を走り始めた。

END


(作者・89氏[2005/11/20])

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