昔々、あるところに一匹のカニの『きぬ』がいました。
ある日のこと、お隣の『乙女さん』からもらったおにぎりを食べようとしていたら、
一匹のお腹をすかせた猿の『フカヒレ』に呼び止められました。
フカヒレはきぬに向かってこう言いました。
「なぁおい、そのおにぎりとこの柿の種と交換しようぜ。」
「いらねーよ、そんなもん。ボクは腹減ってんだ。オメーはそこで餓死してな」
「よく考えろって。これとそいつを交換して土に植えれば、お前はいつでもおいしい柿が食えるんだぜ」
「おお!?マジか!?」
すっかり言いくるめられてしまったきぬは、おにぎりと柿の種とを交換してしまいました。
「へっ、チョロイぜ」
「ん?なんか言った?」
「いーや、別に。そんじゃなー」

きぬは早速柿の種を土に植えました。
しかし、芽はなかなか出る気配がありません。

あたりまえだろーが、バーカ。

「ちくしょー!だまされたー!あの時交換なんかしないでおにぎりを食べとけば…!」

今頃気づくんじゃねーよ。
そんなに悔しいからって泣くなってんだ。

「泣いてない!泣いてないもんね!」
きぬの目から大粒の涙がぽろりと零れ落ちて、地面に落ちたのでした。
すると、奇跡が起こったのです。


その涙がきっかけとなったのか、なんとみるみるうちに芽が生えて成長しました。
そしてあっという間に、立派な実をつけた木へと成長したのでした。
「うおおおお!ボクの涙って命の水!?」
さすがのきぬも、これには驚いたようでした。
「よーし、とるぞー!」
しかし、きぬはそのことを全く考えていませんでした。
人間ならいざ知らず、カニそのままの姿のきぬには、いくらなんでもどうしようもありませんでした。
するとそこへ、フカヒレがやってきました。
「うお!?マジでもう育ったのかよ!?」
「あ、フカヒレ。ボクじゃとれねーから、オメーがとってきてくれよ」
フカヒレは自分では登れないので、ハシゴを持って来て、それをよじ登ってとりました。
「うめー!やっぱこいつはうめーなぁ!」
「おい、フカヒレ!ボクにもよこせよ!」
フカヒレは柿を採ると、そのまま自分で食べてしまい、きぬにはひとつもあげてはくれませんでした。
「お前ホントにバカだな。カニの姿のお前が、木に登れるわけないだろうが。
 おにぎりも柿もすべて俺のものというわけさ」
「…フカヒレ!?謀ったな、フカヒレ!」
「お前はいい友達だが、バカなのがいけないのだよ!ふはははは…」
「ちくしょー!よりにもよってこんな奴に騙されるなんて!」
きぬはじたばたしましたが、どうにもなるわけがありません。
「アホなカニめ!これでもくらえ!」
そういうと、フカヒレは青くて固い実を沢山投げつけました。
カニの姿では横にしか動けなくて、しっかりと避けることができません。
きぬは柿を思い切りぶつけられてしまいました。
「う、うーん…」
フカヒレはそのまま美味しそうな柿をかかえて、帰っていきました。


その夜、きぬは今日の出来事を栗の『よっぴー』、蜂の『エリカ』、うすの『なごみ』に話しました。
本当は乙女さんに話したかったのですが、乙女さんは武者修行に行っていて留守でした。
「バカだ…バカすぎる…」
「何をやってんだか。もうちょっと考えなさいよ」
「うるせー!」
柿をぶつけられただけなのに、きぬは大怪我をしてるかのように包帯を巻いていました。
「かわいそうにね、カニっち」
「さすがよっぴー。ボクはこの通り、あいつのせいで大怪我をしたってのに白状だね二人は」

大怪我はどうみても嘘だろーが。

「それに…あのおにぎりは、ボクのバ…いや、母さんに食べさせてあげるつもりだったんだ…」

いや、それも嘘だろ。

「…」
「どうしたの、なごみん?」
「いえ…だったら仕返しをこの甲殻類の代わりにしてあげようかと思いまして」
「マジかよ!うんうん、コイツもちょっとはいい奴になったねー」
「…フン」
お母さんを大事にしているなごみは、仕返しを約束してあげました。
それに便乗し、面白そうだからとエリカが参加し、強引によっぴーも仲間に入れさせられてしまいました。
「よーし、それじゃ早速明日に決行よ!」


次の日、フカヒレが家にいないことを確かめた三匹は、こっそりと家に忍び込みました。
よっぴーは囲炉裏の灰の中に。
エリカは水がめの後ろに。
そしてなごみは屋根の上に登り、フカヒレの帰りを待ちました。
しばらくすると、なごみは家に向かってくる影を見つけました。
「あ、帰ってきましたよ」
「オッケー。準備はいい?」
「ホントにいいのかなぁ…」
そのまま家の中に入り、体が冷えたのか囲炉裏へと向かいます。
囲炉裏に近づいてきた足音が止まった瞬間に、よっぴーはおもいきりはじけました。
「それー!」
「うぎゃぁぁぁぁ!熱い熱い!」
まともに攻撃を受けてしまい、ものすごく熱がっています。
しかしよっぴーも、勢いが良すぎたのか、天井に思い切り頭をぶつけて気絶してしまいました。
「水、水!」
水がめへと足音が近づいてきましたが、そこにはエリカが隠れていました。
「くらいなさい!」
向かい側に置いてあった水がめに近づいた瞬間に、エリカは飛び出しました
ブスッと針を相手のお尻に突き刺し、相手は一気にパニックに陥りました。
「ギャ〜っ!」
このとき、エリカは柱に頭をぶつけてしまい、やっぱり気絶してしまいました。
それはともかく、そのまま外に走って出てこようとした影を見た瞬間に、
なごみはとどめとばかりに屋根から飛び降りたのです。
「はっ!」
ドスンという音と共に、上からのしかかられた相手はぺちゃんこにされてしまいました。

しかし、どうしたことでしょうか。


「あー!」
「何やってんのよ、この子!」
「やっぱりバカだ…」
気がついたよっぴーとエリカもあっけにとられていました。
なんと、今までフカヒレだと思って攻撃していたのは、仕返しをされいるところを笑いにやって来たきぬでした。
「ちょっと、なごみん!来た時に気がつかなかったの!?」
「いえ…今日はメガネを忘れて…」
「くうう、ドジっ子だったとは…それはよっぴーの専売特許でしょ!」
「そんな専売特許持ってないよぅ」
「センパイ達も気がつかなかったんですか?」
「こっちだって必死だったんだから!頭ぶつけちゃうし…」
「それよりも、これどうしよう…」
しばらくして考えた後、あとの二人が出した結論は…
「…ま、別にいっか」
「そうですね。カニですし」
…それ以来、きぬはいつも泡を吹くようになってしまいました。

めでたしめでたし。

オマケ

「さすがカニ!やっぱりバカだよなー!わはははは!」
(ガラガラガラガラ)
「レオー!遊ぼーぜー!」
「うわっ!カニ!」
「お?なんだ、そりゃ。何書いてんの?」
「いや、なんでもねーよ」
「読ませろってー。減るもんじゃないし」
「ちょっと押すなって…わぁぁ!」
(ドスン!)
「どれどれ…」
「い、今のうちに逃げよう…」
「おい、待てや」
(ガシッ)
「テメー、ボクをこんな酷い目にあわせやがって!テメーにも同じ目にあわせてやる!」
「創作なんだからいいだろーが!」
「うるせー!淑女を嬲り者にしやがって!とりあえずケツだせ!」
(グサッ!)
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ〜!」


(作者・シンイチ氏[2005/11/11])

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