「ったく、レオのやろー、最近乙女さんばっかとイチャイチャしやがって。
 ちっともボク達の相手してくれないのな。」
 生徒会が終わってからの帰り道、前を行くラブラブなレオと乙女さんを
見ながら、その後ろでボクとフカヒレが最近のレオの態度について熱く語っている。
 「まーったくだぜ。乙女さんとあんなになる前は、毎晩のように
レオの部屋に集まってたのに。
 今じゃ当たり前のように俺の部屋かカニの部屋だもんな。」
 ボク達の一歩後ろを歩いているスバルが口を挟む。
 「でも良いんじゃねぇの?
後ろから見ていてもいかにも幸せです!
ってオーラが出てて、幸せそうだぜ。レオ。」
 「スバルにはボクの気持ちなんかわからねーよ!」
 「そうだそうだ!お前みたいなイケメン怪人に、
俺の気持ちがわかってたまるか!
 あー、俺もよっぴーとあんなふうに手を繋いで帰りたいぜ。」
 「・・・オレは分かってるつもりだぜ。お前の気持ちをよ。」
 「だー!俺は男になんか気持ちが通じたって、嬉しくねえんだよ!」
 「・・・」
 スバルがやれやれと言う顔をしている。
 「あー、それにしてもこのボクのもやもやの責任は
誰が取ってくれるんだぁー!
 全部オメーのせいだぞ!レオ!」
 ボクの隣に居るレオの首筋にチョップを放つ。
 「い、いてぇ!何すんだよいきなり!」
 ん?なんでついさっきまで通学路で乙女さんとボク達の前を歩いてたレオが、
今レオの部屋でボクの隣に居るわけ?
 見回すとフカヒレとスバルもレオの部屋での定位置でくつろいでいた。


 ボロロンと、フカヒレがギターを軽く鳴らす。
 「それにしてもカニはレオに対する態度があからさまだよなー。
さっきの愚痴だって『レオ、ボクをかまってくれなきゃ寂しい!』って事だろ?」
 ってレオの目の前で何を言ってくれてるんだこのメガネザルは!
 「なっ、フカヒレオメー、何か勘違いしてるんじゃねーだろうな?」
 「いや、確かにフカヒレの言うとおりだ。
誰が見てもはっきり、カニはレオが好きだってのが分かるよな。妬けるぜ。」
 「スバル!オメーもボクを怒らせるとどうなるのか忘れているようだな。」
 ・・・ってさっきからどうも様子が変だぞ?
 場面が通学路からいきなりレオの部屋になったし、
フカヒレやスバルの言動も少しおかしい。
 何よりも二人がボクとレオをからかっているのに、レオが全く反応しない。
 ・・・もしかして、これって夢なのかな?
 よし、ためしに―――
 「フカヒレッ!宇宙まで飛んでけパープルストライクッ!」
 ボクが必殺技名を叫びながらフカヒレにパンチすると、
 「ありがとうございまっす〜〜・・・」
 と部屋の中なハズなのに、天井が透けて夜空に飛んでいくフカヒレを観測できた。
 やっぱり夢だ!
 夢の中で夢だって気が付くなんて、さっすがボク。
 なんか得した気分だぜ!
 夢の中って、夢の割には人の反応とかリアルだかんね。
 いろいろ現実では試せない事とか試してみよ。
 そうだな〜、まずはココナッツをコテンパにして、上下関係ってものを
はっきりさせてやる事から始めよっかな。
 んでんで、ボクがすべての教科で満点とって姫の度肝を抜いてやるのも良いかな。
 それからそれから・・・いや、いつ夢から覚めるか分からないから、
一番やってみたいのを最初に持ってこよう。
 ・・・やっぱり、レオにボクの気持ちを伝えてみようかな。
 現実じゃぜってぇ出来ないけど、ど、ど、どうせ夢なんだろ?
 見てるのはボクだけなんだろ?
 じゃ、じゃあ何も恥ずかしがる事ねぇじゃん。


 「ゴホン・・・それじゃ早速・・・。」
 場面を誰も居ない放課後の教室に切り替える。
 一人机に突っ伏して寝ているレオを、ボクが揺さぶり起こす。
 「オイ、レオ。ちょっと話があるから起きちくり。」
 「んーなんだよ。せっかく気持ちよく寝てたのに。」
 さっきまでいつものメンバーと部屋で話してただろ、
と言う突っ込みは夢の中だからしない。
 「あっ、あのさーレオ。」
 自分で声が上ずってるのが分かる。
 ゆっ、夢だとわかっても緊張するな。
 「だからなんだよ?改まって。」
 「オメーさ、鈍感だから気が付かなかったかもしれないけど、さ。」
 「はっきりしないなんてカニらしくないな?
またなんか道に落ちてるものでも食ったのか?」
 「さっ、最近はそんなことしてねーよ!
 ・・・そうじゃなくてさ、ちょっとだけ真面目に聞いちくり。」
 レオが姿勢を正してこっちに向き直って、ボクの顔を見た。
 夢の中だって言うのに、顔が真っ赤になっているのが分かる。
 現実でこんな事、ボクだったら恥ずかしくて死んじゃうな。
 「ボクさ、前々から・・・いつごろからだったかは忘れたけどさ!アハハ・・・。
 その・・・レオの事が気になってたん・・・だよね。」
 「だからなんだよ?」
 レオがきょとんとした顔でボクを見ている。
 「〜〜〜〜っう!ったく、オメーは夢の中でも気がきかねーな!
 好きだから付き合ってくれって言ってんだよ!」
 言った!言っちまった!
 さあ来い!
 ボクがレオの顔を凝視すると、レオが一瞬考えた後、口がピクリと動いた。
 開きかけた口から言葉が出るまで、ひどく時間がかかっているように感じる。
 「カニ、俺は―――」


 はっ、と目が覚めた。
 ここは・・・ボクの部屋?
 デジタル時計を見ると、まだ夜中の二時を少し過ぎたぐらいだ。
 「んだよ・・・。まだ寝てから一時間ぐらいしかたってないんじゃん・・・。」
 ムクリと上体だけを起こすと、世界がグルグル回ってる感覚が襲う。
 そっか・・・最近レオのヤツがぜんぜん部屋開放しないからって久々に開放させたら、
乙女さんとののろけ話ばっかされたんだっけ。
 で、オアシスでヤケ酒して・・・、スバルに家まで連れてきてもらったんだった。
 「う〜〜気持ち悪り〜。」
 ふとカーテンの端を持ち上げて窓の外をうかがうと、
レオの部屋の電気はついているが、カーテンが閉まっている。
 ・・・
 「んだよ・・・ちくしょー。人がこんな気分だってのに・・・。」
 あと少しな所で目が覚めちったな。
 「・・・せめて夢の中でぐらい、ボクの事好きって言ってくれたって罰は当たねーのにさ。」
 ぼすっと勢い良くベットに仰向けになる。
 その衝撃と酔いのせいで、頭がひどく痛んだ。
 「うお・・・いてーっ・・・。
 あんま痛いから、痛いから涙出てきちゃったよ〜。
 痛くて涙が出るのなんて、ひっ、久しぶりだな。おー・・・いてーなー。」
 震える声でこんな事を言っても、説得力が全くない。
 痛みはすぐに引いても、涙がぼろぼろと出続ける。
 「やっ、やっぱヤケ酒なんかするもんじゃね〜な。
 涙がっ、止まんね〜や。まだ酔ってるのかな〜?ボク。」
 そのまま窓に背を向ける形で横になる。
 「・・・コレが現実じゃなくて夢だったらよかったのにな。
 ・・・・・・寝よ。」
 何も考えないように目を閉じるが、まぶたの裏が未だに熱い。
 「ちくしょー。レオのばかやろー・・・。」
 とりあえず、今は何も考えないようにしよう。
 明日の二日酔いの心配だけして、後は何も考えないように・・・。


(作者・SSD氏[2005/11/11])

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