「おいレオ。ちょっと魂の交換しようぜ」
何をぬかすフカフィレ。
「だってさ、お前が『対馬レオ』ってだけで、乙女先輩といちゃいちゃしたり
姫といちゃいちゃしたり、椰子といちゃいちゃしたり、祈センセといちゃいちゃしたりずるいよ!」
カニの名前が挙がってないぞ?
「あ〜。カニはいいや。俺がやりたいのはおっぱいだから」
幾つか単語が抜けてるが、ようはいちゃいちゃしたいんだな?
「だって、レオだけずるいじゃん!
変わってくれないなら、お前の夢に裸で出てやるからな!」
そんな事言っても、無理なものは無理……って、おま、その手に持ってる鉄パイ――
「少しの間眠っていてくれ――うッひッひ」
〜〜暫くお待ちください〜〜
「お〜! 身体も声も、すっかりレオになったぜ。これで女の子とエロエロし放題だぁ!」
死んだように気絶しているオレ(フカヒレ)の体を保健室に寝かせておいて、教室に戻る。
レオになった役得の第一は、乙女先輩の手作りおにぎりだ。
レオはいつもブーブー文句を言いながら食っているが、そんなぜいたくも今日はオレのもの。
さっそく頂くぜ、悪いな、レオ・・・と思ったら、カニに食われて影も形もなかった。
「カニ、てめー!」
「ヘンっ、ボクはそんなの知らないもんね!」
「テメーのほっぺに米粒がくっついてんだよ!」
何も言い返さずにカニは逃げていった。
ちくしょう・・・結局、大学食でヤキソバパンを買ってイガグリたちと食べる。
いつもとかわらねーじゃんか。
放課後、そ知らぬ顔で竜宮へ行く。
「あ、対馬くん、いいところに来てくれたわ」
姫が何の疑いもなさ気にオレに声をかけてきた。
「なに? 姫」
つとめてレオっぽく言葉を返す。
「実は竜鳴祭に使う看板が出来てるはずなのよ。フカヒレ君と一緒に取って来てくれない?」
「OK」
・・・二人で運ぶべき看板を一人で運ぶ羽目になった。
いいさ、仕事が終わったら姫がチョコをくれるもん。
「はあはあ・・・あれ、姫はって・・・誰もいねーじゃん」
疲れきって竜宮に戻ってきたが、もはやみんな下校してしまった後らしい。
とりあえず鍵をかけて、祈先生に渡しておかなくては。
祈先生の豊かな胸のふくらみに頬をうずめる妄想をしながら職員室へ急ぐ。
「祈せんせー・・・」
ガラっと職員室の扉を開けると、祈先生の机の上には土永さんがいて、しょうゆせんべいをついばんでいた。
「おー、対馬か。ご苦労だな、祈は見たいテレビがあるらしいので帰ったぞ。我輩が鍵を預かっておいてやろう。
あー、それから明日は佐藤が休みらしい。明日の朝、2-Cの教室の鍵を開けるのを忘れるなよ」
「げ、オレかよー」
「当たり前だ。お前は生徒会のメンバーになった時点で自動的にクラス委員の代理をしなければならない。
そして、お前のクラスの生徒会メンバーでもっとも階級が高く、かつ仕事が忙しくない人間がお前というわけだ。
まあせいぜい頑張りな」
「レオー。聞いてないぜー」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありませんです、土永隊長」
いいもん、今日はレオの家に帰って・・・乙女先輩と一つ屋根の下・・・グフフフフ・・・。
「ただいまー」
レオの家に上がり込むと、想定どおり乙女先輩がいた。
しかもエプロンをして、食事を作ってくれている!
え? 何でそんなに悲しそうなんですか、乙女先輩?
「すまない、レオ・・・これはチャーハンのつもりだったが・・・まあ食べてみてくれ」
いや、これは炭と言わないか?
これがチャーハンだなんて話は聞いてない、聞いてないもんね!
炭屑のようなものを無理矢理に腹いっぱい詰め込むと、夜のロードワークが待っていた。
「蟹沢が言っていたが、お前は最近、いろんな女子にモーションをかけてもてはやされてるらしいな。
性根を叩き直してやるから覚悟しろ」
カニの嫉妬が乙女先輩にも感染しているらしい。
レオ、いい加減オレは限界だ。
元に戻るべきかもしれない・・・。
夜道で乙女先輩とはぐれる。
正直に言うとロードワークについていけなかったので、置いてけぼりにされた。
「はあ、もうダメ・・・」
駅前のベンチで休もうとしていると、綺麗な黒髪ロングがどこかのヤンキーにからまれているのが見えた。
「椰子・・・助け・・・はあ・・・でもレオの体力があってもレオみたいなケンカが出来るわけじゃねーよな・・・」
悩んでいる間に、椰子がヤンキーを殴り倒し始めた。
「おお、椰子、つえーよ。さすがつっぱるだけのことはある。これは助けなくてすむかも」
「ヒザキさん、こいつやっちまって下さい!」
「なんだテメーら、女に負けてんのかよ、情けね−な・・・」
やばいぞ、この展開はまずいぞ。
いくら椰子でもこのあたりじゃ名の通っているヒザキさんには勝てねーぞ」
震える手で携帯を取り出す。
「スバル・・・スバル・・・頼むよ・・・くそっ、こんな時になんで留守電なんだよ!
乙女先輩・・・あー、オレの携帯には乙女先輩の電話番号入ってねーよ!
レオの携帯持ってくるんだった! あー、もう!」
見れば、椰子が無理矢理にヤンキーたちに連れ去られようとしている。
あああああっ!
ん・・・・・・・がああああああああっ!!!!
いつの間にか、オレはヒザキと呼ばれる男の背中にとびついていて、目ん玉が飛び出すほどタコ殴りにされていた。
「対馬くんっ! たいへん、鉄先輩を呼ぶからね!」
この声は佐藤さん?
どうやら、この後に乙女先輩がかけつけてくれたらしいのだが、すぐに気絶してしまったので正確なことはわからない。
「大丈夫? 対馬くん・・・」
オレが目を覚ますと、佐藤さんが心配そうに見下ろしていた。
どうやらどこかの病院の一室にいるらしい。
時刻はおそらく真夜中か。
それにしても、フカヒレに鉄パイプで殴られたのは覚えているが、全身のこの痛みはなんなのだろう。
なんでいきなりあんなことをしたのか分からないが、フカヒレのヤツ、絶対にゆるさねー。
と思っているうちに、いきなり唇を何か柔らかいものでふさがれた。
「う・・・・佐藤さん・・・・?」
「対馬くん、すっごくカッコ良かったよ・・・・」
オレが気絶してる間に何があったんだ?
フカヒレのヤツ、いったい・・・?
(作者・名無しさん2名の連作[2005/11/09])