「だからっ、私と付き合ってください!!」
―――姫に一方的に別れを告げられ、はや1週間。
姫のフォローをしにきたと思っていた佐藤さんにいきなり告白されて、
逆境に弱い俺は、頭を冷やしつつ、暫し返答を考えていた。
ここまで俺を好きになってくれる女の子なんて、これから先多分いない。
佐藤さんは良い娘だ。本気で愛しく思える。
しかし『こんな俺でよければ、付き合ってくれ』と言えてしまうほど、不思議なくらい俺の心は落ち着いていた。
それは姫との経験で場慣れしているからだし、
今現在は熱くなれるほど佐藤さんのことを好きだと思っていないから。
しかも、姫への思慕を捨てきれていないのに
佐藤さんと付き合うなんて、佐藤さんに対しても失礼だ。
 「・・・俺は・・・。
  俺は、佐藤さんとは、今は付き合えないよ。佐藤さんの気持ちはとても嬉しいけど」
 「・・・」
 「姫と別れたばっかりで未練タラタラだから、こんな状態で付き合っても佐藤さんに失礼だしね。
  でもさっきみたいに俺のこと元気付けてくれるなら、そんなに遠くない未来に付き合える日が来るかもね」
佐藤さんにフォローを入れつつ、無理やり作った笑顔でやんわりと断る。
 「ありがとう。俺、その言葉だけでかなり元気になれたよ」
 「・・・そうだよね。まだ1週間しかたってないんだもん。気持ちの整理だってついていないよね。
  私、対馬君の気持ちの整理がつくまで待ってるよ」
 「ごめんね」
 「ううん。こっちこそごめんね。対馬君の気持ちも考えないで。
  それじゃ、また明日ね。またお弁当作ってくるから」
 「うん・・・」

佐藤さんは告白を断られたのに、妙に嬉しそうに屋上から出て行った。


 「対馬クン、おはよう」
 「・・・。よぉ姫、おはよう」
 「何?まだ凹んでるの?よっぴーに慰めてもらえばいいのに。何で断ったりしたのよ?」
 「姫の差し金だったのか・・・。今みたいな中途半端な気持ちじゃ付き合えるわけないよ」
 「・・・なるほどねぇ。ヘタレモードの時はすごく計算高いわけね・・・。」
 「ん?なんか言った?」
 「い〜え、何にも。でもまぁ、幾分元気になったようね」
 「佐藤さんに励ましてもらったからね」
 「ふ、ふーん。良かったわね」
 「エリー、対馬君、おはようっ」
 「よっぴー、おはよー」
 「佐藤さんおはよう」
告白を断られたばかりなのに普通に話し掛けてくる佐藤さん。まぁ、気まずくなるよりはよっぽどいいけど。
 「はぁ・・・はぁ・・・走ってきたから疲れちゃったよ」
 「佐藤さんにしては珍しいね。よし、昨日のお礼に鞄持ってあげる」
 「え?いいよ」
 「いいからいいから」
佐藤さんの鞄を半ば無理やり持ってあげつつ、並んで歩き出す。
姫は一瞬むっとした後、いきなり驚いた顔をして何かぶつぶつ言っていた。

昼休み。一学期と同じく生徒会長専用席で佐藤さん手作りのお弁当を食べる。
朝普通に会話したことで姫と一緒に食べることへの抵抗はなかった。
が、周りからの奇異なものを見る視線が痛い。
 「うわっ、お重ときたか。
  いくら『心の傷埋めてくれたら付き合える』って言われたからって、気合入り過ぎじゃない?」
 「心に傷つけた姫が言うなよ・・・。まぁ、いいや。いただきまーす」
 「あ、食べさせてあげるね。はい、あーん」


――なんか佐藤さんからすごい威圧感を感じる。笑顔なのに有無を言わせない感じだ。
 「ううぅ。あ、あーん」
 「どう?」
 「うん。美味いよ」
 「・・・なによ。真っ赤になって鼻の下伸ばしちゃって」
 「ん?エリー、何か言った?」
 「なんでもないわよっ」
 「ほら、対馬くん。もう一口。はい、あーん」
 「いや、もういいって」
姫の機嫌が悪いみたいなので断っておく。それから、
 「なんか、姫機嫌悪いみたいだから、ここは大人しくしてよう」
と小声で佐藤さんに忠告する。
 「そこ!何コソコソ話してんのよ」
 「な、何でもないよ。エリー」
 「そうそう。何でもないよ。てゆうか、何で怒ってんの?」
 「あれ?そういえばなんでだろ?」
姫は首をかしげて悩んでいた。
 「悩んでる人はほっといて、俺達はさっさと食べちゃおうぜ。」
 「そうだね」
 「そうえばさ、作ってもらっておいてなんだけど、ちょっとしょっぱいかな」
 「あれ、そうなの?1学期に言ってくれればよかったのに」
 「流石にあの頃は文句は言えなかったんだよ。
  大きな声じゃ言えないけれど、おにぎりから解放されただけでもう十分だったし」
会話しながら、お重を平らげていく。姫はたまにお弁当をパクつきながら、まだ悩んでいるようだった。


―――翌日。朝ドブ坂で待っていたらしい佐藤さんと登校する。
姫より話が合うので会話が弾んでいたが・・・。佐藤さんがコケそうになったのを慌てて支えた。
 「・・・やっぱ佐藤さんて、結構ドジっ娘属性あるよね」
 「え〜、そんなことないよぅ」
 「俺の周りが周りだけに癒されるなぁ〜」
  ドゴォッ
 「マガンダン ウマガ、よっぴー!」
 「お、おはよう、エリー・・・。というか、いい加減対馬君の上から退いてあげなよ。」
『しょーがないなー』と言いつつ、姫はMTBから降りて器用に折りたたんでいく。
やっと衝撃と重量のダメージから解放され、俺は立ち上がった。
 「やっ、対馬クンおはよっ」
姫が明るく挨拶してくるが、俺は挨拶する気にもならない。一瞬姫をジト見し、制服の埃を掃った。
 「つ、対馬君、大丈夫?」
 「・・・あぁ、なんとかね。んじゃ行こっか、佐藤さん」
 「え?」
佐藤さんが怪訝そうな顔をしてる。
 「ちょ、ちょっと、対馬クン!この私を無視しようとは良い度胸じゃない?」
 「・・・姫。1学期と同じことを言わせる気なの?『そんなイタイ愛情表現はいらん』と言ったろ?
  付き合ってた1学期は我慢できたけどさ、今やられてもむかつくだけだよ。
  しかも自分で俺のことフッたくせに。」
姫も佐藤さんも驚いてちょっと引いている。
 「これだって、立派な傷害だぜ?どこぞの絶対零度の弁護士でも連れて来なけりゃ、
  訴えれば勝てるぞ。・・・ったく、いってーな」
 「た、確かにちょっと軽率だったわね。音もちょっと派手だったし・・・。
  い、今は何ともないかも知れないけど、ちゃんと検査受けた方がいいんじゃない?
  私持ちでいいから」
 「・・・。また、金かよ。ほっんと俺の言ったことなんて聞いちゃいないんだね。
  別に打ち身くらいだから必要ないよ。ちゃんと受身は取ったし。
  行こう、佐藤さん」
 「う、うん・・・」
呆然と立ち尽くしている姫を残して、俺は佐藤さんの手を引いて学校へ向かった。


―――放課後、竜宮に行く気など毛頭なかったので、俺は屋上に来ていた。
深紅に染められた世界で、ぼーっと朝のことを考えていた。
一体何のつもりなのだろう。
野心と俺を天秤にかけて、野心の為に俺を捨てたと言った姫。
佐藤さんをけしかけて、心の傷を癒してもらえと言った姫。
その割には佐藤さんに癒されている俺に突っかかってくる。
 「そっか。俺に佐藤さん取られるのが嫌なのか。自分でけしかけといて、何やってんだか」
やりたい放題やっていて、今まで姫に注意してやる人はいなかったのだろうか。
実力が伴っているだけに誰もいなかったんだろうな。
上に立とうとするなら、尚更規律は守るべきだ。
いくらカリスマ性があっても、実力があっても、あれじゃ下はついて来ないだろう。
日の沈んでいく空を見上げる。
・・・どんどん姫に幻滅していく俺がいる。
嫌なところばかり見えても、姫のことばかり俺は考えていた。
ガチャッ 音のしたほうを見ると、椰子だった。
 「椰子じゃないか。竜宮に行ったんじゃなかったのか?」
 「行きましたよ。お姫様が不埒な悪行三昧に及んでいるので隙を見て避難してきました」
 「はぁ・・・、またか。相変わらず、好き勝手に生きてるな」
 「よく2ヶ月もあんなのと付き合ってられましたね」
 「ホントだよな。自分でも驚いてるよ」

 ぴんぽんぱんぽーん。
うっ、何か嫌な予感・・・。
  「生徒会副会長 対馬クン、至急生徒会室まで出頭しなさい」
 「あーあ、やっぱり俺かよ・・・」
 「・・・ご愁傷様です」
椰子が嘲りの微笑を浮かべて、こっちを見ている。
バックレたいところではあるが、後が面倒だし行っておくか・・・。
それにしても、あのマイクは恐ろしいな・・・。
これから先もつまらん事で呼び出されてしまう。


 「・・・チャーッス」
姫はひとりで海に沈み行く夕日を眺めていた。
 「なんだ、姫一人なのか?」
しかも、不埒な悪行三昧に及んでいたという割には、機嫌が悪そうというわけではない。
 「・・・」
 「で、なんの用なの?」
 「・・・」
 「用がないなら、俺帰るよ?」
 「・・・対馬クン。今から大事な事言うから良く聞いてね」
 「あぁ」
 「・・・私のモノになってよ。あなたは私にとって必要な人材だったみたいなの」
 「・・・はぁ?」
ってことは今朝の行動は・・・?
 「・・・対馬クンがね、よっぴーと仲良くしているのを見ているとね・・・。
 胸が苦しいの・・・。辛いのよ」
 「・・・自分でそうなるように仕向けたんでしょ?野心を叶える為に。自らを高めていく為に」
 「それでね、気付いたの。私には、あなたが必要なんだって」
 「話が噛み合ってないな。まぁいいや、それで?」
 「やり直しましょ。まさか嫌じゃないわよね?」
 「・・・嫌だね」
 「え・・・?」
 「あれだけ言っても人の話聞いてないし。まぁ、モノが喋るわけないから当然か。
 とうとうモノ扱いになったわけだ。流石に人をモノ扱いするような人とはちょっと・・・」
 「ちょっと待って!私、そんなつもりで言ったんじゃ・・・」
姫が涙目になって、しがみついてくる。
 「どんなつもりか知らないけど、結局あんな台詞になったんだからそうゆう事なんでしょ?
  で? いきなりフッて、いきなりやり直して、また飽きたらフるんでしょ?
  ・・・子供がおもちゃを捨てるのと同じように。
  あ、間に親友けしかけてってのが入るか。これで俺がOKしたら佐藤さんになんて説明するのさ?
  まぁ、付き合ってるわけじゃないけどね」
 「よっぴーに嫌われるのは覚悟してるわ。でも必ず元通りの関係になれるって思ってるから」
 「・・・だってさ。どなの? 佐藤さん?」


 「よ、よっぴー・・・。いつからそこに?」
 「『やり直しましょ』辺りだったかな?」
 「うん、そうだね。
  エリー、あなたがつけた対馬君の傷を治してきたのは私だよ?
  それを完治直前で掠め取るつもりなの?それって裏切りだよねぇ?」
 「べ、別に裏切りってわけじゃないわよ。勝手な言い分なのは認めるけど・・・」
 「それは、姫にとっては、でしょ?
親友から男奪ったら普通は絶交だよね。
  まぁ、あくまで一般的には、だけどね」
 「・・・わ、私は・・・」
俺と佐藤さんに責められ、姫は今にも泣き出しそうだった。
 「私達、誓ったよね?
オマジナイしたよね?
  あそこまでやった私にまで、そんな勝手なマネするんだね」
 「・・・」
俺と取り合って、親友同士が喧嘩している。
男冥利に尽きる話ではあるが、正直気分は最悪だった。
 「対馬君、この際だからはっきり決めてよ。私を選ぶのか、エリーを選ぶのか」
佐藤さんが俺に向かって手を伸ばす。
 「・・・わかった。んじゃ、姫も佐藤さんに習って。2人とも目を瞑ってくれるかな?」
姫が佐藤さんの隣に立って手を伸ばすと、2人は大人しく目を瞑る。
 「俺の答えは・・・、こうだ」
両方の手を同時に取り、ひとつに重ねる。
 「悪いけど、今のところどっちとも付き合えない。
  2人の友情にヒビ入れていれてまで、どっちかと付き合うなんて俺にはできないし。
  俺はそんな価値のある男じゃないよ」
佐藤さんは呆然としていたが、姫は泣き出していた。
 「あ。あと、もう俺の弁当要らないから。佐藤さん、今までありがとう。それじゃ」
2人に背を向け、ドアへ向かう。
 「ま、待って!対馬クン!」
姫が呼びかけてくるが、振り向くことなく部屋を後にする。
ドアを閉めると同時に姫の嗚咽が聞こえてくる。
ちょっと胸が痛んだ。


 「・・・はぁ」
ベットの上で壁に背中を預けて溜息をつく。
 「なんだ、坊主? また、溜息か」
 「・・・まぁ今日はいろいろあってな」
 「いいタイミングで今日も俺しかいないんだから、話してみろよ」
 「・・・まぁ、スバルならいいか。
 ・・・(説明ちゅ)・・・と、こういうわけよ。明日、明後日は土日だからいいけどさ。
  月曜のこと考えると気が重くてなぁ・・・」
 「ふーん。あの姫がなぁ。よっぴーはともかく」
 「なんで『佐藤さんはともかく』なんだ?」
 「あぁ、よっぴーは前々から全て計算づくで行動してるように見えてたからな。
  姫にそんな言葉かけたとしても驚かねぇよ。まぁ、気付いているのは少ないだろうがな」
 「え”、マジかよ。てことは、今まで俺にだけパンツ見せてたのも、今週1週間のことも
  全ては俺を落とすための行動だったって事か?」
 「まぁ、そうなるな。捉え様にもよるが。・・・にしても、あの姫がなぁ」
 「・・・姫にこだわるね。姫だって人間なんだから、泣きはするだろ」
 「そこじゃねぇよ。あのお姫様が一度捨てたものを拾いにきたってことに驚いてんの。
  で、姫のことはどうなんだ?」
 「放課後はまでは、幻滅してく一方だった。だから、断った」
 「放課後までは・・・ね。んで、断ったのは冷静に考えた上でか?」
 「いや、計算なんかじゃない・・・と思う。今日は朝から姫の事ムカツいてたしな。
  これで2人の仲がいつも通りに戻ったら、両方断った甲斐もあるんだけど」
 「その答えを聞く限り、計算としか思えないんだが・・・。じゃあ、今はどうなんだよ?」
 「正直、わかんね。ただ、姫が嫉妬してたって事には驚いたし、
  なんか知らないけど泣き声聞いてたら心が痛んだ」
 「心が痛んだって事だけで、もう答えは十分出てるだろ。よっぴーフッたのはなんとも思ってないのに。
  相変わらず、お前の妄想と現実の霧夜エリカのギャップが激しすぎて引いてるだけのようにしか
  俺には思えないがな」
 「・・・」
 「まぁ、折角の土日だ。じっくり考えてみるんだな」
そう言って、スバルは窓から消えていった。
 「妄想と現実のギャップねぇ・・・。フカヒレじゃあるまいし・・・」


月曜日。週始めだけに気分は最悪。
まぁ、姫と佐藤さんが仲直りしてくれていればそれでいいか。
結局、姫をどう思ってるかなんて答えは出ず仕舞い。
姫と佐藤さんが一緒に登校している。
仲も元通りになったみたいだな。悪役買って出た甲斐があったようだ。
これで俺も2人と普通に話せればいいんだが。
 「おはよう、2人とも」
 「・・・」
顔を見合わせている姫と佐藤さん。あ、やっぱりだめなのね。沈黙が痛い。
 「じゃ、じゃあ、先行くねー」
俺は、姫と佐藤さんを残して駆け出した。

・・・俺も含めて元通りとは、流石に虫が良すぎたか。
しかし、2人とは執行部でも顔を合わす。何とかしないといけないな・・・。
ん?メールか。 !!! 姫からっ!?
  ”執行部で手伝って貰いたい事有。放課後竜宮へ来られたし”
・・・とうとう、会話も無しですか・・・。こんな業務連絡までメールでなくても・・・。
何だか、クラスメイトですらなくなってる気がした。
佐藤さんも、いつもなら話しかけに来てくれるのに・・・。
・・・そうか。それも計算だったのか。そんな必要ももう無くなったってわけだ。
やっぱ女って怖ぇ・・・。

  「蟹沢さん、バスケ部が応援要請を出してます。体育館へ向かって下さい」
カニめ、また小遣い稼ぎしてやがる。
『運動神経いい方だからフリーのほうがいい』って言っていたがこういうことだったとは。
竜宮からの放送か・・・、もう姫は仕事始めてるみたいだな。


 「チーッス、言われたとおり手伝いに来たぜー」
 「あ、対馬クン」
言うと同時にドアに向かう姫。
 「待ってたわよ」
 「・・・と言いつつ、なんで鍵閉めてるんだ? まさか・・・」
 「勘違いしないでね。二人きりで話したいだけだから」
 「んじゃ、手伝いってのは?」
 「・・・ごめん。嘘」
 「そっか。それで俺が絶対来る様な内容にしたってわけね。
  『佐藤さんの事を気遣って、話しかけてこないんだろう』とか俺が考えると見越して」
 「まぁ、そういうことね。2ヶ月で多少なりとも、あなたの事理解したつもりだから・・・」
 「で、佐藤さんとは仲直りしたのか?微妙なままじゃ、俺が悪役になった意味ないんだけど」
 「今はよっぴーのことは言わないで!私の事だけを見て!」
姫が必死にしがみついてくる。しかも、すでに涙目だ。
 「・・・姫?」
 「金曜日にフラれてからね、ずっと対馬クンのこと考えてたの。週末の間ずっと。
  対馬クンのこと思うとね、何も手につかないの!日課だった事も何もかも。
  ・・・それでね、確信したの。私にはあなたしかいないんだって。
  だから、お願いっ!ずっとそばにいさせて欲しいの!」
 「・・・『いさせて欲しい』? 『いて欲しい』じゃなくて・・・?」
 「・・・あなたがいないのなら、何も意味ないもの・・・。」
 「・・・」
 「あなたがいないのに野心を達成したところで、そんなの虚しいだけだもの。
  だから・・・。
  だから、私はあなたの為なら、全てを捨てる覚悟をしてきたわ。
  あなたは騎士なんでしょ? なら、私のことだけを守ってよ!」
 「野心と男だったら、間違いなく野心をとるんじゃなかったっけ?」
 「昔の話を持ち出して、はぐらかそうとしないで。
  今は野心への思いよりも対馬クンへの想いの方が大きくなった。
  野心よりも大きな夢が、実現したい夢ができた。それだけのことよ」
 「親友である佐藤さんとの仲も俺の為だったら捨てられる・・・と?」
 「よっぴーのことは・・・、正直つらいわ。あなたが現れるまでは唯一気のおけない仲だったから。


  でも、あなたと一緒にいられるなら乗り越えられる」
 「・・・姫、そこまで俺の事を・・・。姫の気持ちは十分わかったよ。
  じゃ、俺も言いたい事言わせてもらうよ」
 「・・・うん。今度はちゃんと聞くから」
 「正直、先週は姫に幻滅していく一方だった。
  1学期は言動一致してたからいいようなものの、先週はめちゃくちゃだったし。
  でも、何だかんだ言って俺もずっと姫のことを考えてたんだ。佐藤さんじゃなくて。
  で、スバルに言われて気づいたんだけど、姫って自分の暗い部分普段は絶対に見せないから
  それを初めて見せられて、引いてただけなんじゃないかって。
  ・・・1学期末と同じミスをしてたってことだね。それも姫の一部なのにさ」
 「対馬クン・・・」
 「こんな同じミス繰り返すようなバカでもいいなら、またよりを戻したいと思う」
 「対馬クン・・・。ありがとう・・・」
そっと俺に抱きついてくる姫。また、この温もりが胸の中に戻ってきて感無量だったが、
ひとつやらなきゃならないことが残っている。
 「――というわけで、対馬レオにべた惚れな姫の熱い告白と、
  その告白を優しく受け入れた対馬レオでした。
  校内に残っている生徒諸君並びに先生方、御静聴感謝します」
マイクの電源をOFFにする。
 「なっ。ちょっと!対馬クン!まさかずっとマイクONだったの・・・!?」
 「みたいだね。気づいたのはついさっきだけどね。まぁ、いいじゃん。嫌な訳じゃないでしょ?」
 「嫌じゃないけど・・・。なんか自分だけカッコよくしてたのがなんかムカツく!!」
ゲシゲシッ と、思いっきり手加減された蹴りが飛んでくる。
 「あははは」
笑いながら防ぐ。久々のじゃれ合いがとても楽しい。

トントン。控え目にドアがノックされる。
 「私だけど、入れてもらえるかな?」
 「・・・佐藤さん」「・・・よっぴー」
俺と姫の言葉が重なる。顔を見合わせた後、俺は鍵を開けた。


 「佐藤さん、ごめんっ」「よっぴー、ごめんね」
 「・・・すでに息ぴったりだよね」
佐藤さんが入ってくるなり、俺達はいきなり謝り倒していた。
 「・・・話は全部聞かせてもらったよ。今校内にいる人全員で、だけどね。
  ――私には、エリーと対馬君の二者択一なんて無理だから・・・。これでいいんだよ」
 「よっぴー・・・」
 「おめでとう、エリー。それから・・・。さよなら、対馬君」
佐藤さんに唇を奪われる。触れるか触れないかの軽いキス。
 「これくらいは、許してね。エリー」
姫は多少の引け目を佐藤さんに感じる事になりそうだが、丸く収まってよかった。
俺は、ほっと胸を撫で下ろした。

――――翌日。登竜門で広報部が号外を配っていた。
  『竜宮陥落!生徒会長 霧夜エリカ[姫]、副会長 [ナイト]対馬レオに猛烈アタック』
   〜竜宮の中心で愛を叫んだお姫様〜
俺は当然の如く『ナイト』になっていた。しかも安いサブタイトル付とは・・・。
教室へ向かうと、2−Cは野次馬でごった返していた。
 「ナイト レオのお出ましだぞ〜」
フカヒレのあげた一声で道が開いていく。
 「おはよっ、対馬クン」
号外なんぞ、姫は意にも介していないらしい。
 「おはよ・・・。姫」
挨拶を交わしただけなのにどよめきがおきる。俺達はいい見世物になっていた。
しかもクラスの奴等は、姫をいじると後が怖いらしく俺ばかりをいじってくる。
 「くっ、何で俺が・・・」
 「・・・ちょっと、私の対馬クンで遊ばないでくれる?
  言いたい事があるなら、私に言いなさいよ」
姫に釘を刺され、静まり返る教室。・・・これじゃどっちがナイトだかわからない。


――――昼休み。
流石に佐藤さんはカニ達と食事を取っているらしい。
いつもの指定席に二人きり。
 「レオ、今日は私が作ってきたわ」
姫はいつの間にか二人きりの時には名前で呼ぶようになっていた。
 「えっ、姫料理できないんでしょ?」
 「・・・もう。二人きりのときくらいエリカって呼んでよ。
  ちょっとやってみたのよ。よっぴーのお弁当の効果が絶大だったみたいだから。
  ここの調理実習はお菓子ばっかりで役に立たないから、家のコックに教えてもらってきたの。
  味は保障できないけどね」
姫の手を見ると、何箇所か指先に絆創膏が貼られてる。
 「作ってくれたのは嬉しいけどさ。・・・味見くらいしようよ。カニと同レベルだけはマジ勘弁してくれよ?」
 「ちょっと〜! 勘違いしないでね。口に合うかどうかって意味だから」
 「なんだ。よかった。で、どのくらい練習したの?」
 「大体、2〜3時間くらいかしらね。やってみると料理するのって結構面白いわね」
 「それだけの練習でお弁当作れるようになるとは・・・、流石というかなんと言うか・・・」
 「・・・あなたの為だもの。まぁ、とりあえず食べてみてよ」
 「さらっと嬉しいこと言ってくれるね。それじゃ、いただきます」
 「はい、召し上がれ」
 「ん。流石になんでもこなすよなー。うまいよ。」
 「ほんと?」
 「あぁ、マジでうまいよ。実は家のコックにつくってもらったんでしょ?っていうくらい」
 「じゃ、明日からも作ってくるわね」
なんか、あの姫がいきなり尽すタイプに転向してる・・・?
 「え、いいの!?」
 「ええ、モチのロンよ。レオの食べてる顔見てたら、こっちもやる気出てきたわ」
 「姫の作ったお弁当を毎日食える日が来ようとは・・・」
 「オーバーねぇ・・・。はい、あーん」
 「・・・またそれですか。それ、すげー恥ずかしいんだけど」
 「なによ〜。よっぴーとはできるのに、わたしとはできないってわけ?」
 「はいはい、わかりましたよ。・・・あーん」
 「どう? 私に食べさせてもらうと、また格別でしょう?」


 「う〜ん。ようわからないな。恥ずかしさが先立って味なんかしないんだけど。
  なんかギャラリー盛り上がってるし」
―そう、大食堂の海側のカフェテラスの特等席に陣取っている俺達は注目の的だった。
皆、昼飯そっちのけで俺と姫の一挙手一投足を観察しているようだ。
西崎さんも熱心にシャッターチャンス窺がってるし。
 「とりあえず、やってみりゃわかるよ。ほら、あーん」
 「あ〜ん。・・・うん、美味しさ倍増じゃない」
 「周りが見えていないのか・・・? 姫・・・」
 「周りなんて全然気にならないわよ? レオしか見えていないもの」
すごい台詞をあっさりと言ってくる。
 「・・・俺が気にしすぎなのかな? んじゃ、もう一回挑戦」
口をあけて待つ俺。傍から見ればきっとアホ面してるんだろうが、気にしない気にしない。
 「はい、どーぞ」
 「・・・。ふむ、意識しないようにすると結構いけるね」
 「でしょ? どんどん食べてね」
食べさせつつ食べさせられつつ、楽しい一時は過ぎていった。

 「ちーっす」
 「レオ〜」
 「おっと、姫だけか?」
放課後、竜宮に入るなりいきなり抱きついてきた姫を受け止めつつ、俺は尋ねた。
 「うん。見ての通り私だけね」
といいつつ頬擦りしてくる。
 「ねこ好きだけに、じゃれ付き方がねこっぽいよ」
 「ぅにゃ〜ん。にゃんにゃ〜ん」
 「はいはい。わかったわかった」
 「で、何かやる事は?」
 「私とじゃれ合う」
 「・・・とりあえず、仕事は無し・・・と」


なら、やることはひとつだな。すでに擦り寄ってきてるし。
 「う〜ん。ほんと人が変わったみたいだね。俺が前に言った通りになったな」
 「うん。気が付けばもうレオなしじゃ生きられないわ」
 「全部言わなくてもわかっちゃうのね。んじゃ・・・」
 「お茶ね。ちょっと待って」
ホントに何も言わなくてもわかるのね。
 「あつっ」
 「おいおい、やってくれるのは嬉しいけど気をつけなよ?
俺がやるから姫は座ってなよ」
 「いいからやらせて。レオは座ってていいから」
フォローに行こうとするが、あっさり断られる。なんか完全に別人に思えてきた。
 「はい、どうぞ」
 「ん。ありがと。あれ? 結構熱いけど、大丈夫なの?」
 「私のは先に淹れたから」
 「そっか」
姫は隣に座り、そのまま擦り寄ってくる。
 「おっと。いきなりは危ないよ。溢すとこだった」
 「こうしてるとね・・・。実に和むの。すごく心が安らかになるの」
 「夏休みとは逆じゃん」
 「そう言われてみればそうね。でも今はこっちがいい・・・」
 「って、姫?」
・・・寝てるし。それは和み過ぎだろ。相変わらず寝るの早いなー、おい。
 「しょうがないなぁ。よっと」
あだ名のとおり、お姫様だっこでソファへ。自分の肩を枕代わりにして頭を固定してあげる。
 「ん・・・。レオ・・・」
寝言でまで、俺の名を呼んでいる。いつの間にか手も握られてるし。実は起きてるんじゃないのか?
――夏は、寝顔だけなら可愛い眠り姫だったのに、今やもう完全に可愛いお姫様になってる。
 「・・・俺も寝よ。おやすみ、エリカ」
姫の頭を枕代わりに俺は眠りに付いた。


 「クスクスッ ちょっと、やりすぎじゃない?かにっち」
 「これ位やんなきゃ、おもしろくねーだろ?
よっぴー」
 「くくくくくっ」
 「やべ、起きちまったか」
 「ふぁ〜。何だ、カニ来てたのか」
横を見やると姫はまだ寝ていた。なんか、佐藤さんと椰子が笑いを堪えている。
 「・・・てめぇ、甲殻類の分際で、俺の顔に落書きしやがったな?」
 「ふん、そんな顔で凄んでもおもろいだけだぜ?
  こんなとこで、幸せそうに眠りこけてるテメーが悪いのよ。
  おぉっと、でけー声出すと『愛しのお姫様』が起きちまうぜー? サザンの名曲でも聞くか?
  折角ナイトらしく威厳ありそうな髭描いてやったんだ。ありがたく思いな」
 「素敵ですよ? ナ・イ・ト先輩」
 「くっ!てめ、写真撮ってんじゃねぇ、マネージャー通せ!」
カニめ後で絶対泣かせてやる。
 「というか、佐藤さんがいながら俺にこんなことさせるとは」
 「ごめんね、もう吹っ切れたから」
 「うぁ、はやっ。ってよく見れば、姫にも描いてあるし」
 「こんな時でもないと、日頃のお返しできないからねぇ」
佐藤さんの目が細くなっている。正直、マジで怖い。
 「・・・ん。あ、よっぴー来てたんだ。ってダークになってるし」
 「あ、姫。起きちゃったか」
 「ぷっ、ちょっと対馬クン? なにその顔!」
 「・・・寝てる間に落書きされたみたいだよ。俺達」
 「達って・・・。私も?」
 「うん。流石に姫は控えめだけどね。水性なのが救いかな」
 「・・・何冷静に喋ってるのよ?」
 「あははは・・・。なんか佐藤さん怖いし、俺は動けなかったから」
 「何言ってるの? 私は普通だよぉ? ねぇ、エリー?」
 「う、うん」
 「・・・あーなると、暫く手がつけられないからやりすごしましょ」
 「じゃ、顔洗いに行こっか」
 「・・・仲良いんだねぇ。流石見せ付けてくれるよねぇ、エリー?」


佐藤さんの普段からは想像もつかない鋭い視線に、姫が驚いてしがみ付いて来る。
一緒に騒いでいたはずのカニも、ぽかんと佐藤さんを見ていた。
 「昨日の時点で話はついてるはずだろ、佐藤さん? それにもう吹っ切れたんでしょ?」
 「対馬クン、いいから放っておきなさいって。鎮めるには、放置しておくかトコトン付き合うかしかないわ」
 「む・・・。そうなのか・・・。」
 「何をこそこそ喋ってるの?」
 「な、何でもないわよ。よっぴー。それじゃ、顔洗ってくるね」
佐藤さんが何か言いかけてたが、俺達は外へ避難した。
 「・・・佐藤さんこえーなー。スバルの言ってた通りだったな・・・」
顔を洗いながら、佐藤さんの豹変振りに改めて感嘆をもらす。
 「たまに、ああなるのよねー。で、伊達君なんて言ってたの?」
 「普段全て計算づくで行動してるって」
 「・・・近いものはあるわね。ああなると感情剥き出しになるから、手がつけられなくなるのよねー。
  でも、庇ってくれてすごい嬉しかったわ」
 「まぁ、彼氏ならそれぐらいはするよ」
 「・・・顔、赤いわよ?」
 「姫だって真っ赤だって」
どっちからともなく顔を寄せ合い、軽く口づけ、笑いあう。
 「そろそろ、戻ったかな?」
 「たぶん・・・」
 「どっちにしろ、鞄が竜宮だから戻んなきゃ帰れないからね。覚悟決めて行きますか」
 「エスコート、お願いね。レオ」
 「あいよ。まかせとけ」
 「ただいま〜」
 「あ、おかえり対馬君。エリー」
あ、戻ってる。良かった・・・。――ヤシガニは死に掛けてる。怒りのはけ口にされたのだろう。
 「じゃ、日も暮れてきたし、そろそろ帰りますか」
 「そうね。よっぴー、一緒に帰ろー?」
 「私は良いよ。かにっちと椰子さん放っておけないし、2人の邪魔しちゃうし」
 「別に気を使う事ないのに。じゃ、また明日ね。よっぴー」
 「じゃね、佐藤さん」
 「バイバイ。エリー、対馬君」


 「なぁ、姫」
 「ん? な〜に?」
2人だけの帰り道。夕焼けが2人の影を細長く創りだしている。
姫が俺にくっついてきているので、多少歩き辛いがあまり気にならない。
 「やっぱ、米軍基地の入場許可証ってそう簡単には手に入らないのかな?」
 「まず無理でしょうね。私はIDカード持ってるけど、
  敷地内に家があるだけってことで、正規のIDカードとはちょっと違うみたいだし」
 「やっぱ無理か・・・。1度遊びに行ってみたかったんだけどな」
 「それなら、今度の一般開放日にいらっしゃいよ。情報公開してないから、いつになるかわからないけど」
 「わかった。ってゆうか家行くのあっさりOKしたね」
 「当然じゃない。将来レオも住む家じゃないの」
 「・・・おいおい」
 「え? まさか私を捨てるとでも・・・?」
上目遣いで瞳をウルウルさせながら、姫は俺を見上げている。
――いつもの姫からは想像もできない衝撃的な光景だった。普段はねこなのに、こんな時は子犬かよ・・・。
 「そ、そんなわけないだろ。何を馬鹿な事を」
 「だって・・・」
 「俺が言いたかったのは、気が早すぎるってことだよ」
 「・・・別に早くはないと思うけど・・・よかったっ」
すかさずとびついてくる姫。
 「あれ?米軍基地はこっちだろ?そっちは俺の家の方だよ。」
 「うん。合ってるじゃない」
 「あー。うちに寄って行くのね?」
 「別に嫌ならいいわよ。少しでも永く一緒にいたいけど」
 「・・・嫌なわけじゃないけどさ。言っとくけど、多分乙女さんいるからね。
  あっ、ちょうどいいや。ちょっと英語でわからないとこあるから、教えてくれるかな?」
 「ええ、いいわよ。何気に頑張ってるのね」
 「バカは嫌いなんだろ? 嫌われたくはないからね。ロードワークも張り合いあるから習慣化してきたし」
 「そんなことしなくても、嫌いになる事なんか一生ないわよ?
  それとも、やりたい事見つかったの?」
 「いや、相変わらずだよ。やっとく事に越した事はないさ」
 「がんばってね。応援してるわ」


――昼休み。今日も特等席で特製のお弁当。
 「流石だなー。昨日の今日なのに味付け上達してるし、どんどんレパートリー増えてくし」
 「愛情たっぷりですから」
 「おぉ?とうとう愛になったのね」
 「当然じゃない。そうじゃなければここまでできないわよ」
 「そりゃそうだよね。んじゃ、俺の野心も叶いそうだな」
 「野心?レオ、やりたい事見つかったの?」
 「そりゃもちろんあるけど?」
 「え?だって昨日の帰りはないって・・・」
 「いや、俺そんな事言ってないよ。相変わらず1つしかないって意味で」
 「そうだったのね。で、その心は?」
 「あれ、言ってなかったっけ?・・・姫の隣で世界の頂点を見る事だよ」
 「え・・・。だって、私は・・・。私は野心を諦めて、あなたと共に歩むと決めたのよ?」
 「はぁ? ・・・てことは、最近俺といちゃつく事に全力を注いでたって事?」
 「今まで通りじゃレオのお弁当作る暇なんてないもの」
 「おいおい・・・。捨てる覚悟をしてたのは聞いたけど、捨てたとは聞いてないよ?」
 「だって、野心のために努力しつつ、レオの心を繋ぎ止めて置く事なんて私にはできそうにないもの・・・」
 「変わったな。姫・・・。1学期の君だったら決してそんなこと言わなかったろうに・・・」
 「そうさせたのは、あなたよ。レオ?」
 「・・・別れよっか。これじゃ意味がない」
 「――!! どうしていきなりそうなるのよ!?」
 「俺が憧れて惚れた霧夜エリカは、遥かな高みを見据えて自分を曲げない女だった。
  俺にはできなかった自分の信念を貫くことを実践し続けている眩しい存在だった。
  最近は俺の事もかなり気にかけてくれてるとは思ってたけど・・・。
  まさか、俺しか見てなかっただけだったとは・・・。
  正直がっかりしたよ。両方こなしているもんだとばかり思ってたから。
  だから、俺は昔の姫に戻って欲しい。俺が憧れていたころの姫に・・・。
  『俺か野心かのどちらかしか取れない。無理だ。』と言うのなら、俺は身を引くよ。
  姫が・・・、いやエリカのことが好きだからね。
  自分でもそこまでの価値が自分にあるとは、今は思ってないから」
 「レオ・・・」
 「短い間だったけど、より戻せて嬉しかったよ。毎日が楽しかった」


 「・・・ちょっと、待ってよ。言いたい事好き放題言ってくれちゃって。
  いいわよ、やってやろうじゃないの!
  そんな事あなたがいなきゃ、余計できないわよ。
  ・・・それが、レオの為でもあるならば辛くはないわ。あなたと別れる方がずっと辛いもの・・・。
  でも、レオにも協力してもらわなきゃできないし、辛い思いをさせるかもしれないわよ?」
 「わかってるよ。俺は元よりそのつもりだし、一歩後ろで、なんて気はさらさらないから。
  パートナーなんだから、対等であるべきだろ?」
 「ふんっ。横に並べるようになってから言って貰いたいわね」
 「おっ。らしくなってきたじゃん。言われなくたってわかってるさ。
  お弁当は毎日作ってきて貰いたいけどね・・・」
 「対等なんでしょ?毎日交代ね」
 「OK。それじゃ、行きますか。エリカ」
 「ええ、行くわよレオ。世界の高みへ!もちろん、二人で一緒にね」
 「・・・いや、とりあえず教室行こうぜ。授業始まるから」
 「もう!ノリ悪いわねー。今まで熱く語ってたくせに!」
 「あははは」

 Isolation・・・


(作者・名無しさん[2005/11/06])

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