「なーなー、レオー。これ何年前だっけ?」
ベッドに寝転んで本を読んでたカニが呼ぶ。
「んー?って、本読んでたのかと思ったらアルバムかよ。」
覗き込むとまだガキだった俺、カニ、スバル、フカヒレの四人が写っていた。なぜか男三人はボロボロだったが。
「んーと・・ああ、出会ってすぐの頃のやつだな。たしか・・」
思考が過去へと戻る、乙女さんのことは忘れていた俺だがこの頃のことは思い出せる。



あれは俺がこの町に越してきてすぐ、引越しの荷物整理に飽きた俺は周りを探検しようと外に出たときだった。
「おー?だれだお前?」
なんかやたらちっこい女の子が不思議そうに聞いてきた。
「えーっと、僕は対馬レオ。今日ここに引っ越してきたんだ、君は近くの子?」
結構かわいいなとか考えつつ自己紹介。でも女の子は
「レオ?ちきしょーやたらかっこいい名前じゃねーか。」
とかぶつぶつ言いつつ、うつむいていた。
「ええと・・ちょっと?」
「ああ、わりーわりー。あたしは隣に住んでる蟹沢・・・」
その子はなぜかいったん考えてから
「蟹沢れいかにしよう。いやいや、蟹沢れいかだ。」
しよう?
「ええとれいかちゃんでいいのかな?」
「おう、でもちゃんづけはなんかムズムズするから呼び捨てでいいぜー。」
やたらうれしそうにニコニコしてる。
「んで、レオはなんかこの後用事あんの?」
「いや、荷物の片付け飽きたんでその辺回ってみようかと思ったとこ。」
「そかそか、んじゃ案内してやんよ。着いて来なー。」
言うなり手を引いて歩き出すれいか、女の子と手を繋ぐのは少し気恥ずかしかったけど嫌ではなかった。



しばらく回りの商店街とかを見て回る。そしてそのうち公園へとやってきた。
「へー、広いなー、あの船が町の由来なんだろ?」
言葉は自然にタメ口になっていた、なんかれいかの口調がざっくばらんなんでそれに慣らされた感じだ。
「おー、戦艦松笠だな、すげーんだぜ、あれ実は変形してロボになるんだぜー。」
それはウソだろう。そう口にしようとしたときだった。
「あれ?きぬじゃん。なにしてんの?」
ちょいと目つきの鋭いおれと同い年くらいの男の子が声をかけてきた。でもきぬ?
「ス、ス、ス、スバルッ!!」
れいかがやたら驚いていた。知り合い?そう聞こうとしたけど男の子はやたらと俺をにらんで
「だれ?コイツ?っつうかきぬ。お前今日なんか習い事とか言ってなかったっけ?」
れいかはやたらとうろたえてたが、やがてなにかを諦めたかのように大きなため息をついて
「うう、ピアノだったけどサボった。つまんねーんだもん。でもって」
俺のほう見てもういちどため息をつく
「こいつは対馬レオ、今日隣に越してきたんだって。レオ、こっちは伊達スバル目つき悪いけど時々でけぇフーセンガムくれるいいやつだ。」
れいかが紹介してくれる
「ええと、対馬レオだ、さっきれいかの友達になった。」
伊達は怪訝そうな顔をして
「れいか?誰だそれ?・・・って、おいきぬおまえまた名前ウソ教えやがったな。」
は?ウソ?俺の顔を見て事情を悟ったのか伊達が説明してくれる。
「こいつ自分の名前が嫌なみたいでな、その時々で適当にウソの名前言うんだよ。ほんとの名前は蟹沢きぬだ。」
れいか・・じゃなくきぬがばつの悪そうな顔してそっぽむいてる



「こら、きぬ。いつもそーいうのはよくないって言ってるだろう。ちゃんと謝れよ。」
「うー、なんだよもーいいじゃねーかよー、ていうかスバルもきぬっていうなって言ってるだろー。」
「ダメだね、ちゃんと謝るまできぬって呼び続けるぞ。」
「わーったよー、ええと、レオ、わるかったな。だましたみたいで。でもきぬって名前やなんだよー。」
おれは思わず吹き出してしまう、あははこいつおもしれー
「んだよ、笑うこたーねだろー。」
きぬが不機嫌そうに言う
「いや悪い、まあ気にしてないよ。でもなんて呼ぼうか」
ちょっと考えて
「じゃあ蟹沢だからカニでいいか?」
「それもちょっと微妙だがぜーたくは言えないな。んじゃそれでいいよ。スバルもそー呼べよなー?」
成り行きを見守っていた伊達に向かってそう告げるカニ
「くくく、カニか、りょ−かい。んじゃ改めて」
俺のほうを向き
「伊達スバルだ、き・・カニのダチだってんなら俺のダチだ、スバルでいいぜ、よろしくなレオ」
そういい、右手を差し出すスバル。
「よろしくなスバル。」それを握り返した。



「しかし、オレ見てよくびびんなかったな。」
カニがやたらと走り回っている中、木の下でスバルと話す。
「はは、なんつーかあの程度の殺気ならそよ風みたいなもんだ。」
苦笑しつつ言葉を返す、そうあの程度ならかわいいもんだ。真の恐怖とはあんなもんじゃない・・いかん思い出したら寒気が・・
「それに、カニに怒ったろ?」
寒気を押し殺して会話をつづける。
「ああいう風にダチが間違ったときにちゃんとそいつのために怒ってやれるやつはいいやつだって、いとこのねーちゃんが言ってた。」
いとこのねーちゃんという単語にまた体が震えそうになるががまんした。
「・・・」スバルは照れてるのか無言だった。
「こらー、なんかあたしだけ走り回って馬鹿みたいじゃないかー、お前らもきやがれー。」
カニが叫んでた。なんかあの子は・・
「馬鹿みたいじゃなくて、馬鹿なんだよカニは。」
スバルが俺の思ったとおりの言葉を口にする。おもわず顔を見合わせて爆笑してしまった。
「うお、なんだなんだ?変なやつらだな?」
結局その日は夕暮れまで木登りや走り回って遊んで一緒に帰った。



次の日、ちょっと荷物を片付けてまた外に出る。カニはいなかったので一人で公園にやってきた。
昨日俺らが木登りした木には先客がいてなにか考え事をしていた。
「よう、どうしたの?登るの?」
とりあえず声をかけてみる、困ってるなら助けないとな。オレ正義の味方だし。
「うわわわわ、ごめんよねーちゃん、もう逃げないからゆるしてよー・・ってだれ?おまえ?」
ひとしきりおびえた後に名前聞かれた。そんなにびびんなくても・・まあいいや
「えっと、オレは対馬レオ。昨日この町に越してきた。」
「ああ、わりーわりー、ねーちゃんかと思ってびびっちまったぜ。オレは鮫氷新一、シャークって呼んでくれて構わないぜ。」
「新一ね、オレはレオでいいよ。なにしてたの?木登んないの」
「シャーク・・まあいいや、いやな、ねーちゃんに見つからないようにこの公園にきたはいいんだけど。」
ねーちゃんよほど怖いんだな、おれもいとこのねーちゃん怖いけど。
「ただここにいたんじゃ見つかるかもしれないし、木にでも登ろうかと思ったけど」
「けど?」
「落ちたら痛いし、考えたら俺木に登れんのかよとか、つうかやっぱ高いとこってこえーよなーとか考えてた。」
こいつコンジョーナシだな。しかしまあその気持ちもわからんでもない、昨日初めて登った時登る前怖かったしな。よしそんじゃ
「平気平気、登ってみると結構面白かったぜ、一緒に登ってみようぜ。」
そういい、まず自ら登ってみせる。目指すは二股に分かれてるとこまでだ。
「おお、見ると簡単そうだな。」
新一もするすると登ってくる、結構器用じゃん。
「なんだ、やってみるとすんなりできるな、このくらいならそんな怖くねーし」
要領を掴んだようで危なげなく登り、木の枝に腰掛ける
「よし、ここならねーちゃんにも見つからないだろう。ここを緊急避難場所にしよう。」


しばらく新一と遊んでるとスバルがやってきた。
「よー、スバルー。」
木の上から声をかけると
「ん?レオか来てたのか・・・って、おまえ鮫氷か?なにしてんの?」
「だ、伊達?」
「なんだお前ら知り合いかよ、新一とはさっきダチになったんだ。」
「おいレオ、お前伊達の知り合いかよ?」
新一がオレにしか聞こえないような小さな声で聞いてくる
「うん、昨日ダチになった。」
「伊達とかよ、おまえすげえな。あいつ怖くねえ?この前なんか6年生と喧嘩して勝ったって聞いたぞ。」
「はあ?あいつはいい奴だよ間違いないね。話せばいい奴だってわかるさ、降りるぞ。」
小声でやり取りして、木を降りる。
「で、新一とスバルは知り合いなんか?」
「ああ、小学校同じクラスだ。あ、ちなみにカニもな。しかし・・」
スバルが新一に目を向けて
「鮫氷がダチとは、いやまあいいや、レオのダチってことなら別に言うこともねえ。」
スバルが薄く笑う、まあ、嫌ってるわけではないようだ。とりあえずなんかして遊ぼうかとはなしていると。
「お、レオにスバルはっけーん。」
カニが突っ込んできた。オレの腹に
「ぐふっ、・・・てめえカニ〜。ちったあ落ち着けよ!つうか今確実に狙ったよなおい!?」
突っ込んできたカニの首根っこを捕まえて説教。なんかこの子は俺らが躾けないとダメになる気がする。
「おい、カニ、お前また習い事サボりかよ、大丈夫なのかよ?」
「へへーんだ、あんなつまんねーことやれるかよ、親もそろそろ諦めムードだしもうちょっとしたら完全フリューゲルだね」
フリーダムと言いたいのか?
「あれ、鮫氷じゃん、どったの?」
「蟹沢もダチなんだ?」
疲れたように新一がオレに確認を取る。答えはもちろんYESだね。
「そうか、つくづくすごいなお前・・尊敬するぜ。」
なぜか疲れたようにそう言われた。

その後はまた夕暮れまで遊んだ、今度は4人で。最初はぎこちなかった新一も遊んでるうちに慣れたのか思いっきり笑ってた。
帰り際に「伊達っていいやつだな、カニもおもしれーし。」そんなことをつぶやいて家に帰っていった。


数日後
「レオーーー、遊びに行こうぜーー。」
昼過ぎにカニが呼びに来る、ここ数日でもはや恒例行事のようだ。ここに越してからずっとカニやスバル、新一と遊んでる。
「おー、今行くー。じゃ、行ってくるねー」
台所に居る母さんに一声かけて遊びにいく。うちの親は結構放任主義だから勉強しろとか言われないのでありがたい。
「で、今日はどうするんだっけ?」待ってたカニに今日の予定を聞く
「んー、まあついたら考えようぜ、スバルや鮫氷ももうきてるだろうし」
公園へと歩く、毎日出歩いたためか道は完璧に覚えた。が、公園に着くとなにやら騒がしい。
「なんだ?なんか怒鳴り声が聞こえるな?」中へと入ると、スバルと新一が上級生数人に囲まれていた。
まだ状況の掴めてないカニに向かいここでじっとしてろと言い走り出す。

「なんかねー、お礼参りだってよ」
「囲まれてんの、4年の伊達だろ生意気なやつ」
「ああ、あの目つきの悪い奴ね、んじゃ、あれか夏休み前の」
「あの、囲んでる真ん中のでかいのがやられた奴だろ、奥歯折れたってやつ」
「原因はなんなんだ?」「さあ?いきなり殴られたとか言ってたけど」
「それにしても6年五人で4年一人を囲むってだせえよな」

野次馬が好き勝手ほざく中スバルの元に駆けつける。すでに何発か食らっているようで顔に痣がある、
新一にも痣がありのびているのをスバルがかばってるようだった。
「待てっ!」スバルたちの前に立ち上級生をにらみつける。
「スバル、事情を説明してくれ。お前から売った喧嘩か?」
上級生をにらみつつそうでない確信を持ってスバルに訪ねる。
「違う、売られた喧嘩だ。理由は・・・後で話す。」
「よし、なら助太刀するぜ、新一!起きたらあっち行ってカニ抑えといてくれ」
向こうで自分の頭ほどある石を投げようとしているカニの世話を頼む。
「んだ、てめえいきなり出てきて正義の味方ごっこかよ。」
にらみつけた上級生がようやく口を開き、周りの4人もそれに続く。
「うるせーよ、てめえらよくもオレのダチ殴りやがったな。スバルを殴る奴はオレが殴る!」


ボロボロだった、相手は5人、こちらは2人。しかも相手は上級生。それでも、
途中結局カニが乱入してきて、なし崩し的に新一も加入して
男3人がボロボロに殴り合ってるのに、カニは持ち前のすばやさで逃げまくり隙を見て石投げて反撃して
ボロボロに殴られたけど
逃げたのは相手のほうだった。

「づあ〜、いてえ・・とりあえず家で手当てだなこりゃ・・」オレがぼやき
「でも、勝ったな」スバルが満足そうに笑い
「いてててて、うう、シティボーイのおれがなんで喧嘩なんて野蛮なこと」新一が嘆いて
「うるせー、勝ったんだからいいだろー」カニがご機嫌で先頭を行く。
このあと、母さんに呆れられながらも手当てしてもらい、ちょうど帰った父さんに記念だと言われて写真を撮られた。

そして、カニが一足先に帰ったあとにスバルが喧嘩の理由を教えてくれた。実にスバルらしい喧嘩の原因
「あいつがカニを馬鹿にしたからだ。カニは確かに馬鹿だが他人がカニのよさを知らずに馬鹿にするのは許せない」
でも、カニには言うなよテレくせー、そう一言付け足してスバルも帰って行った。
「やれやれ、ほんとにスバルはいいやつだよ、レオの言うことに間違いなかったな。」
ちゃんと付き合うお前もなかなかのもんだよ新一、口には出さず、新一も見送る。

もう何年前か、こっちに越してたった数日でオレは大事なダチたちに出会えたんだ。

「おーい、レオー、どーしたー?ぼけっとして、ついにボクの魅力にメロメロか?指先一つでダウンか?」
おっとつい、思い出にひたっちまったぜ。なんかカニが図々しいこと言ってやがる、とりあえず泣かそう。
「はっはっは、だれが甲殻類にダウンされるか。」ほっぺたをつねる
「いひゃい、いひゃい、へめー、ひきひょー、ははへほー」
泣きながら訴えるカニのほほを引っ張りつつ、今日も一日が終わろうとしている

「レオ!いい加減やかましいぞ!!っと!!!」

蹴りを喰らって昏倒してな。


(作者・89氏[2005/10/21])

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