雨。
無機質な音をたてて、道行く人達に降り注いでいる。
傘をさして歩く人。屋根のある場所で雨宿りをする人。小走りに行く人。
その数多くいる人達の中に、彼女はいた。
昔は一人で。今は・・・・・二人で。

佐藤良美。それが彼女の名前である。

「良美、帰ろっか」
放課後。対馬レオが彼女のもとへといつも通りに行く。
一緒に帰宅。それが彼等の日常となっていた。
彼女――佐藤良美は窓の外へと視線を向ける。
雨が降っていた。雨の音は放課後で賑わっている教室内にまで
聞こえてくる。豪雨とまではいかないが、かなり激しいのは確かだ。
「う〜ん・・・」
良美は考える。これ以上激しくなる前に帰るべきか、
それとも教室で少し時間を潰して雨が弱くなってから帰るべきか・・・。
「帰ろっか、レオ君」
あっさりと結論を出す。
「ん。それじゃ行こう」
「うん」
レオはぎこちなく微笑み、良美は嬉しそうに表情を輝かせた。


「あ、レオ君あれあれ!あの女の人!」
「お!TVで見たことある。確か・・・氷の弁護士!」
「すっごい綺麗だよねー」
「つれっぽい二人もすごいな。同じ事務所の人か?」
他愛も無い会話。特に意味も無い会話。
だが二人にとっては幸せなひとときであった。
「んー、この小物入れ、なんかいいなぁ」
「・・・よしみぃ、それ昨日も見てたじゃんか」
「何度見てもいいものはいいの」
放課後は、いつも二人で色々な場所に行っている。
デートかどうかは当人達にもはっきりとは分からない。
だが、二人だけの時間だということは確かだ。
恋人関係となった当初、二人はただただ身体を重ねる日々を過ごしていた。
場所を選ばず、時間を選ばず。己の欲求を満たす行為ばかりをしていた。
たが、いつのころからか、そういった行為から離れていってしまう。
飽きたという訳ではない。それ以上のモノを二人は欲していたのだ。
身体を結ぶ関係から、心を結ぶ関係へ。
それが二人の望んだことだった。


二人の日常は良美の家で終わりを告げる。
「うー・・・ご馳走様」
「はい、お粗末さまでした。・・・あ、レオ君、お茶飲む?」
「それじゃ遠慮なく。あ、今は何か熱いお茶でも飲みたい気分」
「うん。了解したよ」
サッとお茶を出した後、テキパキと食卓の上に並べられた食器を片づける良美。
レオはそれを眺めながら、ぽつりと呟く。
「なんか俺達って、夫婦みたいだなぁ」

ガチャッ!!

食器を落としてしまう良美。何故か顔が真っ赤だ。
「あ〜ぁ、やっちゃった」
思わずレオは苦笑を浮かべる。立ち上がり、彼女の傍まで行く。
「だ、だって!レオ君がいきなり変なこと言うから!」
顔を真っ赤にして抗議する良美。
「変なことか?」
レオは食器を片しながら訊ねる。
良美はプイッとそっぽを向く。耳まで真っ赤だ。
もう一度レオは訊ねる。
「なぁ・・・変なことなのか?」
今度は真剣な表情で。良美の瞳を真っ直ぐに見つめてくる。


こういう時、いつも彼女は思う。

ズルい。レオ君はズルい。
こういうことを言われたら、私は何も出来なくなってしまう。

恥ずかしさのあまり何も言えない良美を、レオはキュッと抱きしめる。
彼女は思わず「あっ」と声を漏らす。
レオは抱きしめ、良美は身を預ける。
二人はただそれだけでお互いの意志を理解していた。

貴方がいるから闇の中でも歩き出せる。
君を支えるために俺は強くなれる。
貴方がいるから怖くはない。
君と共に前へと歩き出す。

心も身体も二人は一つ。
だがそこに依存性はなく、それゆえにとても強い絆。
だからこそ言える。
二人は恋人だ――と。


(作者・FspZBvIC0氏[2005/10/15])

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