「まさかあの椰子とフォークダンスを踊れるとはなー」
少しも期待していなかったと言えば嘘になるが、未だに信じられない。
ドッヂボールからテンション上がっていたとはいえ、よく言ったもんだ。
そんな事を考えながら教室へと戻る途中、西崎さんを見かけた。
「あ、西崎さん、さっきは写真撮ってくれてありがとね」
「ううん。そ、それよりも……ご、ごめんね」
「どうして西崎さんが謝るの?」
「ドッヂ、ボール……」
ああ、そういえばオレは西崎さんの投げた球にノックアウトされたんだっけ。
「ご、ごめん…なさい」
深々と頭を下げられてしまった。
「あれは試合なんだから、そんなに気にしないで」
「でも……」
いかん。そんな風に謝ってほしくて声をかけた訳じゃなかったのに。
そのとき、西崎さんが首から下げたカメラを見て、ふと気づく。
「そういえばさ、西崎さんの写真は?」
「さっきの、ふたりのしゃしんなら、まだ……」
「いやオレ達のじゃなくて、キミ」
「くー?」
「皆の写真を撮るばかりで、西崎さん自身は撮ってもらっていなんじゃないの?」
「わ、わたしは……いい、から……」
慌ててパタパタと手を振る西崎さん。
普段のオレなら西崎さんのその言葉に、無理強いなんてしないけれど。
「西崎さん、ちょっとカメラ貸してもらえるかな」
そう言ってオレの指がカメラに触れた瞬間、


「私の魂にさわるなっ!」


「…………に、西崎、さん?」
このときオレは修羅を見た。
でもこの感じ、どこか親近感を感じるのはなぜだろう?
「くぅ!? あ、あの……」
よく見たらいつもの西崎さんだ。さっきのは気のせい、だったのかな?
そ、そうだよな、あの西崎さんが修羅になるなんて、ある訳ないだろ。
「こっちの……カメラなら」
そう違って渡されたのは、カードサイズのデジカメ。
ほのかに暖かいのは、西崎さんのプリンのぬくもりか。
しかし西崎さんも胸ポケットを活用していたとは、ま、まったく、人はみかけによらないぜ!
……いかん、いかん! 落ち着けオレ!
そのときオレの視界に、ある人物の姿が目に入った。
「お、おーい、村田ーーっ!」
「ボクの名前は村田だ! 何度言えばわかるんだっ」
「だから合ってるだろ」
「な、なに!? バカな、対馬お前まさか……」


「なんだよ」
「西崎の投げたボールが頭に当ったせいで、どうかしちまったんじゃないのか?」
「くぅ!? やっぱり……そう、なの?」
あわわわ、こいつ余計なことを!
「そ、そんなコトはどうでもいいからさ、ちょっと西崎さんの隣に並んでくれよ」
「それは構わないが……」
「はい、チーズ」(カシャ)
「こらっ、何を勝手に撮っているんだ!」
「お前構わないって言ったじゃん」
「さっきのはそういう意味じゃなくてだな」
「……よーへいは、わたしと、いっしょは、いや?」
「ぐっ」
「さっきのフォークダンスだって一緒に踊ってたじゃないか」
「そういうお前だって下級生と一緒だっただろ!」
「はいはい、じゃあいいよな」
「ああもう勝手にしろっ」
「くー♪」


「ありゃあ、レオと西崎さんか? 二人で……写真を撮るのか?」
「ああ!? ココナッツの次はくーに手ェ出すつもりか、あのダボがぁぁぁぁ!」
「あんまんか? あのあんまんみたいな、でっけー胸がいいってか?」
「ボクの二の腕だって、あんまんなんかに負けねーくらい柔らかいっつーーの!」
「落ち着けってカニ坊主。よく見たら、洋平ちゃんも一緒だぜ」
「どうやら、あの二人を写真に撮っているみたいだな」
「な、なんだ、そっか。そういうことなら、レオーー、おりも撮っちくりー!」
どこからともなくスバルとカニが現れた。
「せっかくだから、私も被写体になってあげても良いわよ」
「エ、エリー、邪魔しちゃ悪いよぅ」
さらに姫を止めつつも、どこか期待したような目でチラチラ見る佐藤さん達が登場。
「ん、レオが写真を撮ってくれるのか? よし、お姉ちゃんを綺麗に撮るんだぞ?」
「まぁまぁ落ち着けヒヨコども。ここはまず我輩と乙女のラブラブな写真をだなー」
「私、この角度からの写真写りには、ちょっと自身ありますわよ?」
乙女さんや祈先生達まで!
「ああもう、お前らいいトコロなだから邪魔するなっての!」
「そうだぞ! せっかくボクと西崎と二人の写真をだな……」
「確かに洋平ちゃん、すっげー嬉しそうだったもんなぁ。邪魔しちゃ悪いよなぁ」
「だ、伊達!」
「そんなコトより、ボクを撮っちくりよー。被写体が良いから、それはもう誰もが感動するような傑作が撮れること間違いなしですよ」
「あら、それは私でしょう。完璧な被写体だから、対馬くんの腕でも撮るだけで完璧な写真になるわよ」
「いや、ここはお姉さんの大人の魅力をだな……」
結局、いつもの面子が集まって、いつものように大騒ぎになってしまった。
「あ、あの……対馬、くん」
「西崎さん、ごめんな。もっと写真を撮ってあげたかったんだけど……」
「ううん……もう、充分」
「でもさ」
「ありがと、ね」
そう言って微笑んだ西崎さんは、間違いなく最高の被写体だった。


「まったく、2−Cのやつらにも困ったもんだ!」
今日の帰り道は、よーへいと一緒。
「いつもいつも何かあるごとに騒ぎを起こしやがって」
結局あの後、皆で一緒に記念写真を撮って解散になった。
家に帰ってから、早速現像して、明日にでも皆に見てもらおうと思う。
「奴らも少しは他人への迷惑というものを」「でも、よーへい」
「なんだ、西崎?」
「つしまくんたちと、いっしょにいた、よーへい……とっても、たのしそうだった」
「なななななな!?」
「よーへいも……つしまくんたちのなかまに、はいりたい、んでしょう?」
「バ、バカなコトを言うな、そんな訳ないだろ!」
「くー?」
「ホントだぞ、ホントにそんなコトないんだからな!」
「くーー?」
「ホントにわかっているんだろうな……」
「くー♪」
うん。よーへいのきもち、よくわかってるよ。
だって、わたしも、とってもとってもたのしかったから!


(作者・名無しさん[2005/09/29])

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