「しょうらいのゆめ」 2ねん1くみ つしまれお
オレはしょうらい、せいぎのみかたになりたいです。
せいぎのみかたになって、わるいやつをみんなやっつけます。
そしてへいわなせかいをつくって、おとうさんとおかあさんと
いつもいっしょくらせるようになりたいです。

「せいぎは、かならず、かつ!」
今日は近所のガキ大将を喧嘩で負かしてやった。
前からムカツクやつだな、やっちゃおうかな、と思っていたけど、
『せいぎのみかた』は意味もなく喧嘩しない。
でも、今日のあいつは、砂場で遊んでいた女の子をいじめていた。
ボロボロ涙を流す女の子を見たら、いつの間にかガキ大将に殴り
かかっていた。
相手は身体が大きくて力も強かった。殴られた頬が少し痛くて
熱かったけれど、泣いていた女の子の
「あの、たすけてくれて、ありがとう」
という言葉と笑顔に、もっと熱くなっていた。
なんだかその子の顔を見ていられずにそっぽを向いたオレは
「オ、オレはせいぎのみかただから…」
とボソッと答えたのは、ちょっと格好悪かったかなぁ。
でもこれで「せいぎみかた」にまた一歩近づいたよな!

そう、思っていたのに……。


その日、『せいぎのみかた』は初めて敗北した。
しかも一つ年上の女の子に、身も心も打ち負かされてしまったのだ……。

その女の子とは出逢いからして衝撃的だった。
なにしろ、物陰からいきなり竹刀で叩かれたんだから。
「いってぇーーーー!」
「あれ?……よ、よけられなかったのか。おまえはよわいなぁ」
「ムッ! オレはよわくないぞ、ヒキョーモノめっ」
「わたしがひきょうだと? おまえがよわいのがいけないんだ!」
怒った女の子が殴りかかってくる。逆ギレかよ!
でも卑怯者とはいえ、相手は女の子。女を殴るなんて
『せいぎのみかた』のやることじゃない。そう思っていたけれど、
このコはとっても強くって、いつの間にか本気になっていた。
なのに『せいぎのみかた』は『ひきょうもの』に負けてしまった……。
「いてて……オレがまけるなんて。おまえ、ほんとうはオトコか?」
「わたしのどこがオトコだ! おとめにむかってシツレイなやつだな」
いたっ! また蹴りやがった。
「おまえのどこが『おとめ』なんだよっ」
「わたしのなまえは『おとめ』という。わたしにピッタリだろう?」
「おこめ?」
「おとめだ! おとめねーさんとよべっ」
まったく、人を馬にするような奴のどこが『おとめ』だっていうんだ。
くそぅ、もっともっと強くならなくちゃな。
『せいぎのみかた』への道のりは遠い……。


その頃、私は弱かった。修行を初めて数年、爺様からいつも
そう言われていたのだ。
「乙女ぇ〜、今のお前はまぁ〜だまぁだ弱い!」
「じゃからけぇっして誰かと喧嘩しようなどと思ってはいかんぞ!」
「じゃがな、毎日毎日こうして修行しておれば、数年後には
 飛騨の山奥の大猿でも、北極の大熊でも素手で倒せるほど
 つよぉ〜〜くなれる!!」
修行は本当に厳しくて辛かった。
いくら頑張っても自分が強くなっているとは思えなくて、
私の心はだんだん挫けそうになっていた。

そんな時、私は鉄家の血族だという対馬家の人間に出会った。
その人達はなんでもクローだかシローだかいう化け物と戦う
研究をして世界中を飛び回っているらしい。
そして、この人達の息子のレオくんは、将来『せいぎのみかた』に
なると聞いた。
スゴイ! 私よりも年下なのに『せいぎのみかた』だなんて!
爺様達も「せいぎのみかたとは、なんとも頼もしいのう!」と
嬉しそうに笑っていた。

対馬夫妻が持ってきた写真は、母様がアルバムにしまったけれど、
私はそこから写真を1枚こっそりぬいてきてしまった。
傷だらけなのに楽しそうに笑う『せいぎのみかた』の写真は、私の宝物になった。


それから私の生活は変わった。
こっそり胴着にレオくんの写真をしまっていると、厳しい修行も
頑張ることができた。きっとレオくんもこんな修行を笑顔で
乗り越えているのだろうから。
夜は枕の下に写真を入れて、レオくんの夢が見れるようにお願いした
こともあった。
夢の中で、私は『せいぎのみかた』を助けるヒロインだった。
悪い奴らをやっつけたヒロインは、『せいぎのみかた』と
ちゅ、ちゅーを…………あああああああっ!
そこで目覚めた私は、顔を真っ赤にして布団の上を転げまわった。
転げまわる私を見た爺様達は「乙女は朝から元気じゃのぉっ!」
と笑っていたが、母様は何か気づいているようだった。
私は、赤い顔をもっと真っ赤にしながら、一緒に笑った。

その年の夏休みは、鉄家と対馬家で一緒に旅行に行くことになった。
細かい打ち合わせをしに、母様が対馬家に行くという。
私は母様にお願いして、一緒についていくことを許してもらった。

前の日の夜は、布団に入ってもドキドキが止まらず、最近やっと
できるようになった片手腕立てをして気を落ち着けようとしたが、
余計に目がさえてしまった。
しかし様子を見に来た母様に教わったように、用意しておいた
とっておきのお出かけ用の服を着て布団に入ったら、あっと言う間に
眠ってしまった。
さすが母様! わたしもいつか母様のような人になりたいな。


当日。
私はレオくんとの出会いを衝撃的に演出するため、前々から計画
していた作戦を実行することにした。
この前見た七人の侍が出てくる映画でやっていたように、
レオくんに物陰から竹刀で襲い掛かるのだ。
もちろんレオくんは、映画で見たように華麗に避けてみせるはず。
そして、このイベントを乗り越えた彼にお願いして、まだ弱い私
だけれど『せいぎのみかた』の仲間にしてもらうんだ!

この作戦はタイミングが重要。
あと、私はいつも爺様に「乙女ぇっ! 気合いが足りにゃいぞぉっ」
と叱られているから、本当に殺すくらい気合いを入れないといけない。
そして私は、最高のタイミングと気合で、部屋から出てきた
レオくんの頭に竹刀の一撃を出すことに成功した!
「いってぇーーーー!」
「あれ?……よ、よけられなかったのか。おまえはよわいなぁ」
思わず私はそう言っていた。
「ムッ! オレはよわくないぞ、ヒキョーモノめっ」
なんとレオくんは、私のことをいきなり卑怯者呼ばわりしてきたのだ!


悔しくなった私は、いつの間にかレオくんに殴りかかっていた。
爺様からは喧嘩をしないよう強く言われていたし、
レオくん相手に無謀なのは承知の上だ。

けれど『せいぎのみかた』は私の足の下でうずくまっている。
あげく、私をオトコ呼ばわりしてくる始末。
レオくん、いやレオがこんなコンジョーナシで、よわくて、
失礼なやつだったなんて、私は、私は……。
「きめた」
「おまえはだれかがめんどうをみてあげないと、だめなタイプとみた」
「だから……」

それから私は今まで以上に毎日毎日一生懸命に修行するようになった。
レオを鍛えるには、私ももっともっと強くならなくてはいけない。
弱い私の胸に、今は大きな夢ができていた。

「しょうらいのゆめ」 3ねん1くみ くろがねおとめ
わたしはしょうらい、『せいぎのみかた』のおよめさんに
なりたかったです。
でも、『せいぎのみかた』はコンジョーナシでした。
だから、わたしが『せいぎのみかた』をきたえて、いちにんまえの
『漢』にすることきめました。
そしていつか、わたしが『せいぎのみかた』をめとって、
しあわせにしてあげたいとおもいます!


(作者・名無しさん[2005/09/25])

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