「おっす、上杉の!」
「チス、上杉」
天気のいい日曜日。
ハルと玄関の掃除をしていたら、稲村さんとミィさんがやってきた。
「これはどうも。 夢お嬢様にご用ですか?」
「まーな」
「それじゃあ、僕が呼んできますね」
そう言うと、ハルはお嬢様を呼びに屋敷の中へと入っていった。
「それにしても、夢のやつがバイトしだすとはねぇ」
「結構やる気になってましたよ。 そういえばお二人はバイトはしないんですか?」
俺は正直なところ、この二人のことは夢お嬢様から聞いたことぐらいしか知らないからな。
こういう時にでも、色々と話を聞いておきたいし。
「まぁ、俺は家の手伝いがあるからなぁ。 バイトみてーなもんやってるヒマなんかねーぜ」
「なるほど。 でも『こんなことやってみたいなー』とかは考えたりするでしょう?」
「そりゃあな。 俺だって他にやりてーことはあるけどよ。
 でも、今は親父の手助けになってやらねーとな。 親孝行だよ、親孝行」
親孝行、か…
「ん? どうした?」
「いや、別に…」
「そういえば、そっちはどうなんだよ?」
「俺も鳩ねぇも、これまで色々やってきましたから。 バイト経験は豊富ですよ」
「苦労してんだねぇ…」
「あぁ…はあぁ……」
俺と稲村さんが話していると、突然ミィさんが悶えだした。
「どうした、ミィ? また『放置プレイと思って』とかかよ?」
「それもあるけど…おケイの店でバイトしたときのことを思い出して……アァ…」
「そんなことがあったんですか?」
「あー…まぁ、あったことはあったんだけどよ…」


「すみませーん。 注文いいですかー?」
「ど、どうぞ…ご主人様……」
「いきなりやめろ!」

「ご注文を繰り返します…麻婆豆腐と坦々麺でお間違えないでしょうか…」
「あ、麻婆豆腐じゃなくて麻婆茄子ですけど」
「はあぁ…申し訳ありません…それでは、お仕置き…ですね」
「させんな!」

「お待たせいたしました」
「ちょっと、間違ってるわよ!? 何してんのよ、このバカ!」
「はぁぁぁ! も、もっと……私を罵ってください!」
「この野郎、客の前で悶えんなっつってんだろ! なんつーお願いしてんだ!」

「おい、あんまり近づくと油がはねるぞ」
「それを待ってるの…あぁ……」
「んなもん待つな!」

「冷蔵庫…冷たい…この体温をじわじわと奪われる感じが…はぁぁ……」
「開けっ放しにするんじゃねぇ!」

(バリーン!)
「い、いけねぇ! おい、ミィ! ほうきとちりとり、持ってきてくれ!」
「はい」
(ササッ、ササッ)
「んはぁあぁぁ!」
「今度何だ!」
「ガラスが指に刺さって…いい! いいのぉぉ!」
「だー!! いいかげんにしろテメー!!」


「…つーわけさ」
「そ、そんなことがあったんですか…」
「おかげでこっちは大迷惑だったぜ。 それからしばらく、微妙に客が減っちまったしな」
「私は楽しかった……あぁ…」
「そりゃオメーはな」
また悶えていた。
「ついには『みんなから白い目で見られるのがたまらない』とか言ってやがったんだよ」
「それは…ご愁傷様です」
「でもね」
「あ? なんだよ」
「私をアルバイトに誘ってくれたこと、すごく嬉しかったよ」
ミィさんはにっこりと笑って、稲村さんを見つめていた。
「な、なんだよ、照れるじゃねーか」
そんな稲村さんは頭をバリバリとかいて照れくさそうにしていた。
なんだかんだで、この二人は仲良しなんだな。
「また呼んでね」
「いや、それは断る」
「んああぁぁぁ! 頼りにされていないこの感覚…たまらない…」
「んなことで感じるんじゃねぇ!」
(ゲシッ! ゲシゲシッ!!)
「も、もっと! もっとおおぉ! あはぁぁぁ〜!」

……た、たぶん。


(作者・シンイチ氏[2007/10/04])

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