「なんだか雲行きがあやしくなってきたね」

「うん……夕立でも来るのかな」

ナトセさんと二人、庭の手入れの手を止めて空を見上げる。
ついさっきまでは青空だったのに
今は海の方から押し寄せた雨雲が空を覆っている。

「ベニのやつ、傘持って行ってるかな?」

「どうだろう。買い出しに出かけるときには晴れてたから
 持ってないんじゃないかな……」

なんて言ってるうちに

パラパラ……ザーッ!

「うわ、いきなり!」

猛烈な勢いで降ってきやがった!

「レンくーん、こっちこっちー」

「いつの間に!?」

ちゃっかり玄関ホールに戻っているナトセさんを俺も追いかける。

「ヒドイやナトセさん自分だけ」

「ご、ごめんね、降ってきたと思ったらつい反射的に」

そういえば、スコールの国の出身だった。


玄関で雨がやむのを待っていたが
雨足はいっこうに治まらない。むしろ強くなっているようだ。
ふと傘立てを見ると、見覚えのある赤い傘。

「ベニのやつ、やっぱり傘持っていってないのか」

「レンくん、迎えにいってあげたほうがいいんじゃないかな?」

「……いや、きっとどこかで雨宿りしてますよ。
 必要ならケータイで電話してくるでしょ」

「そう言いながら、落ち着かないね」

「いや、そんなことは……」

「ここはいいから、迎えに行ってあげなよ」

「そうスか?……じゃ、ちょっと……」

ベニの傘も持って、雨の住宅街を歩き出す。
途中で行き違いになるといけないので
ケータイで呼び出してみた。

「もしもし?俺だけど」

『あ、どしたの?』

「傘持ってないだろ。迎えにいくよ。今どこだ?」

『あ、助かるー。今元之町の入り口なのよー』

「わかった、すぐ行くからちょっと待っててくれ」


元之町商店街についたところで
店先で雨宿りでもしてるんだろうと
ベニの姿を探す。と

「あ、おーい、コッチコッチー!」

雨の中、両手で荷物を抱きかかえるようにして
ベニがバシャバシャと水を蹴立てて走ってくる。

「ベニ!?あ〜あ〜、何やってんだよもう」

あわてて傘を広げ、少しでも濡れないですむようにと
俺も走り寄ってベニに傘をさしのべた。

「いっやー、間に合うかと思ったらいきなり降ってきたわー」

「お前、あとちょっとなんだからあのまま待ってろよ。
 あーあ、ずぶ濡れじゃねえか」

「なんか、アンタが来るのみたらうれしくなっちゃって。
 でも、荷物は濡らさなかったわよ」

得意げに、ホラ、と荷物を掲げる。
掲げられた荷物を一つ受け取って
二人並んで久遠寺家に戻る。
と、さしていた傘を見上げてベニがつぶやいた。

「……あー、そういえばこの傘、壊れてるのよ」

「え、そうだったのか?」

「うん。しょうがないな、そっち入れて」


傘をパチリとたたんで、ベニが俺に寄り添ってきた。

「悪い、気がつかなかった」

「ん……いいのよ、傘立てに入れて置いたのアタシだし」

「お前にしちゃ珍しいポカだな」

「……えへへー」

怒るかと思いきや、ベニはなぜかニコニコと笑っている。

「相合い傘って言うんでしょ、こういうのって。雅よねー♪」

「ひょっとして、憧れてたとか?」

「そうね……ちょっと前までは、どうでもよかったけど
 今はこういうのも、悪くないかなーって」

「……ずいぶん濡れたけど、寒くねえか?」

「……ちょっと、寒いかな」

ベニの肩を抱いてやる。
少し冷えてるけど、すぐに暖めてやれるだろう……


翌日。すっかり雨もあがったので皆の傘を乾かそうとして
壊れているはずのベニの傘がまだ傘立てに入っているのに気がついた。
しょうがねえな、と思いながらも広げてみると……

どこも壊れてはいませんでしたとさ。


(作者・名無しさん[2007/07/13])

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