玄関に出て、郵便物をチェックする。
ポストの中の郵便物をあて先別に仕分けていくと
「久遠寺家みなさま」という宛名で
一通の封筒が届いていた。
差出人は裏返すまでもなくわかっている。

 ナトセさんだ。

 久遠寺家を出て、自分を見つめなおす旅に出ているナトセさんから
手紙が届くのはこれで4通目だ。
前の手紙から……1月半ってとこか。
今はどこにいるのだろうと消印を見れば……
なんだ、東京の葛飾区?えらく……近いな。
最初が仙台で、次が熊本、この前は群馬だったっけ。
ずいぶんあちこち周っているようだけど……

 いつ、帰ってくるのかな。

ずっと待ってるとは言ったけど、やっぱり寂しいよ、ナトセさん。
手紙が来るのは嬉しいけれど
それがかえって会いたさをつのらせているようで……
感傷に浸っていると、どこからともなく罵声が飛んでくる。

「こら下男!ボーッとしてないで……ん?手紙?ひょっとして、ナトセから?」

「おう。ベニ公、森羅様はどちらにいらっしゃる?」

「リビングよ。手紙、早くお持ちしなさい」

「ああ、わかってる」

リビングに向かう俺の横を、ベニ公も嬉しそうな顔でついて来ていた。


「それでは、読むぞー」

夕食後。みんなが集まったリビングで
森羅様が封筒を開き、ゴホンと一つ咳払いをして手紙を読み始める。

「『みなさんお元気ですか。わたしは元気です。
 わたしはいま、紫又というところにきています』……むらさきまた?」

「……柴又、が書けなかったのでは」

「『旅のしめくくりに、もういちどきたえなおすため
 ある武術の道場でおせわになっています』」

「ほう……柴又で道場となると……」

「大佐、心当たりが?」

「いや、ハッキリとはしませんが。失礼しました森羅様、どうぞお続けください」

「うむ。『ここで、あらためてじぶんの未熟さをしりました。
 もっともっと、わたしは心をきたえないといけないと
 ししょうにおこられてばかりです』」

「『でも、しゅぎょうは楽しいです。新しいともだちもできました。
 ししょうのお孫さんです。とても強いです。
 いつか、みんなにも紹介したいです』」

「『それにしても、旅をつづけているうちに
 ずいぶん遠くまできてしまいました』」

「『ここは、七浜からはずっとはなれているけれど
 わたしの心はいつも久遠寺家のみんなのところにあります』……」


「柴又って東京でしょ?そう遠くはないわよねぇ?」

「そうね。ここから電車で……1時間ぐらいかしら」

一区切り付いたところで皆が思い思いに口を開く。
そんな中、夢お嬢様がポツリとつぶやいた。

「会いにいったら、やっぱり、マズイのかな」

気持ちは、痛いほどわかる。俺だって会いにいきたい。でも……

「いや、せっかく私たちから離れて自分を見つめなおしているのに
 こちらから接触するのはマズイだろう」

「そ、そうだね……」

「では、続きを読むぞー。
『ところで、まえにベニが言っていたとおり
 ここ北海道は食べ物がとても美味しいです』……?」

「北海道!?」「柴又じゃないの!?」「消印は葛飾……だな」「だからあれほど地理を……!」

「ウホン!『ここでの修行がおわったら、七浜にもどるつもりです。
 帰りの飛行機が決まったら、また手紙を書きます。
 それではみなさま、ごきげんよう。
 美味しい北海道のお土産待っていてください』……」

「どうやったら東京の柴又を北海道と勘違いできるのよ……」

夢お嬢様が、またポツリとつぶやいた。今度はちょっと嬉しそうに。

「や、やっぱり迎えに行ってあげた方がいいかな?」


(作者・名無しさん[2007/06/20])

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