ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ…

「う〜ん、ふわぁぁぁ…」
もう朝か…さて、起きるとするか。
うるさい目覚ましを止めて、と…
「着替え着替え」
いつものように寝巻きを脱いで、クローゼットを開け、いつものメイド服に着替え…
…メイド?
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
な、なんで俺がメイド服を着なくちゃいかんのだ!?
って、よく見ると…
「なんで俺の胸がふくらんでるんだよぉぉぉ〜!?」
しかもベニ公ぐらいの大きさか!?
どうせだったら鳩ねぇぐらいのほうがよかったっつーの!
「どうかしましたか、レンちゃん?」
「うわぁぁぁ! 鳩ねぇ〜!」
「? 私は姉じゃなくて、兄ですよー? ほら落ち着いて、『おはよう鳩にぃ』は?」
「お、おはよう鳩にぃ」
…なんで鳩ねぇが男になってるのさ。
これはひょっとして、俺と鳩ねぇの性別が入れ替わってる…
いや、もしかしてみんなの性別も入れ替わってるんじゃ…
「ちょっと寝ぼけてるみたいですねー。 さぁ、顔を洗って、今日も元気に頑張りましょうー」
「う、うん」
「ほらほら、お兄ちゃんが洗面所まで連れてってあげますよー」
鳩ねぇ…じゃなかった、鳩にぃに連れられて、俺は洗面所で顔を洗った。
そこで鏡を見て改めて、俺は自分が女になってしまってることを実感したのだった…


悩んでても始まらないし、とりあえずは今日一日頑張っていこう。
納得はできないが、今は仕方がない。
俺は下に降りていくと、えらいもんを見てしまった。
「おい小娘。 ちょっと降りてくるのが遅いぞ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「おい、どうした? 私がどうかしたか?」
な、なんで大佐が…いや、予想はしていたけど、どうして顔がそのままでメイド服なのさ…
「謝れ! 全国のメイドさんに謝れ!」
「何を言っているのだ? まだ寝ぼけてるのか?」
「まったく、何やってんだよバーカ」
目に毒を盛られて倒れてる俺を見下すかのように、ベニ公が立っていた。
「ほら、大丈夫かい? レンさん」
そして、俺を抱えて起こそうとするナトセさん。
二人とも執事の服だが、ナトセさんはいつも通りなので違和感はない(いつもと同じ)。
ベニ公のほうは、胸がなくなったおかげでか、意外と様になっている。
「今日も一日頑張りましょう、レンねぇ」
「お、おう」
「ああ…女の子なのにその勇ましい声…惚れ惚れしますぅ…」
ハルはメイド服…全然違和感がねぇのが悲しいところだな。
「とりあえず、全員揃ったようだな。 それでは、今日も一日頑張ろう!」
「「おー!」」

…不安だ。


「小娘、朝食の準備ができたから夢路お坊ちゃまを起こしてこい」
「えっ? 俺?」
「専属なのだ、当たり前だろう。 さっさと行ってこんか」
つーか、夢お嬢様は夢路お坊ちゃまということなのか…名前がちょっぴり変わってるな。
「おい、待て」
「はい?」
「俺という言葉使いは直せよ。 それと、人の話を聞く時は目を見んか」
「す、すみません」
アンタのメイド姿なんか直視できるか! と、心の中で叫んだ俺は、3階に上がっていった。
あんな大量破壊兵器をこんな身近に置いてもらいたくないもんだ。
夢お嬢様…じゃなかった、夢路お坊ちゃまの部屋のドアをノックし、声をかける。
「夢路お坊ちゃま、起きてください。 朝ですよ」
…当然のごとく返事はない。
「入りますよー」
そして当然のごとく、ベッドの中でまだすやすやと寝ていた。
とりあえず体をゆすってみる。
「う、うーん…まだ寝てるよー…」
「早く起きないと遅刻しますよ」
「今日は『遅刻してもいいデー』なんだってば…」
「はいはい、さっさと起きてください」
なかなか起きないのはいつものこと。 しかし、今日は以外にもあっさりと起きてくれた。
「うーん…おはよう、レンさん」
「おはようございます。 もう朝食はできてますよ」
「うん。 じゃあ着替えてすぐに下に行くね」
あっさりと起きてくれのはありがたい。 俺は部屋を出ると、すぐにベニ公と遭遇した。
そういえば森羅様を起こしてくるんだったな。
「どうしたんだ?」
「いや…別に……」
やたら顔が赤くなっていたベニ公はそのまま下に降りていった。


下に降りると、今度は外で体操していたミューさんに遭遇した。
「おはよう。 レン」
「おはようございます、ミューさん」
「ミューさんじゃなくて、ミュータさんだろう。 …ま、構わないけどね。 じーっ」
「な、なんですか?」
「いや、別に(やはり彼女にはミニスカートが似合いそうだな…うふ、うふふふ……)」
何ニヤケてたんだろう…?
もともと体型が体型のためか、そこらへんの少女…じゃねぇ、少年と全く変わりなかった。
言葉使いでしか判別できなかったぜ。

ちなみに半ズボンだった。

どうやら人によっては、名前が微妙に違うらしいから、気をつけないとな。
そして、いつもの朝食。 森羅様は最後にやってきた。
「おはよう、みんな」
「おはようございます、森羅様」
「うーむ…朝イチ抱きつき!」
「うおっと!」
いきなり森羅様が抱きついてこようとしたので、俺は慌てて回避。
「チッ…なかなかやるな、レンは」
「メンドが嫌がることはやめろと何度も言っているだろう、兄さん」
「そうだよ森羅お兄ちゃん。レンさんは、夢路の従者なんだから」
性別が変わっているだけで、中身は全くといっていいほど変わっていなかった。
待てよ? じゃあさっきベニ公の顔が赤かったのは……想像するだけにしておこう。
朝食を済ませた夢路お坊ちゃまは、鞄を持って出かけるようだ。
「見送りに行こう、レンさん」
ナトセさんに連れられて、俺も一緒に外に出た。
外では既に、夢路お坊ちゃまの友達が待っていた。


「うっす、上杉の! 今日もメイドってるか?」
「おはよう、上杉。 とりあえず、これを」
「ムチ? なんでまた…」
「おはようの挨拶…蔑んだ目で『おはよう、この豚』と…ハァハァ……」
稲村圭子は…全く変わっていなかった。 名前は違うだろうけど。 元がアレだし、むしろこっちのほうがしっくりくる。
ミィさんもいつも通りで安心した(?)が、男でコレは余計マズイような気がする。
「あれ? 揚羽君は?」
「あいつ、ちょっと遅れてる…いや、向こうから来たぜ」
目をやると、ドドドドドという爆音と共に凄まじい速度で何かがこっちに向かってきた。
「遅れてすまんな。 ハーッハッハッハッハ!」
身長がバカでかくなった九鬼揚羽が、いつもの高笑いと共にやってきたのだった。
しかも、今は完全に廃れたバンカラ仕様。 しかもゲタ。 やたら厳ついんですが。
そして遅れて…えーっと、メイド服の小十郎がやってきた。
つーかさ、どうして大佐といいハルといい、顔がそのまんまでメイド服なのさ。
「遅かったね、アゲハ君。 どうしたの?」
「この小十華(ことか)が我の弁当を忘れていたので、取りに戻ったら遅くなったのだ…この馬鹿者!」

バキッ!!

「ぐはッ! 申し訳ありません、揚羽様!」
いつもと全く変わらない動作で、極めて自然に小十郎を…じゃなくて、小十華をブン殴っていた。
…性別が入れ替わってても、全く変わりのない二人だった。
「ああ…羨ましい……ハァハァ……」
こっちも変わらなかった。
とりあえず男が女を殴るという構図はマズイだろうから、警察に捕まらないように祈っておこう。
「それじゃ、いってきまーす!」
そうういうと夢路お坊ちゃまはみんなと一緒に学校に向かった。
いつものパンチラは当然のようになかったので、ちょっと寂しかった。


とりあえずはいつもの仕事。
ハルと共に掃除をこなし、回ってきた回覧板はお隣に。
ベニ公の食材の買い物に付き合い、ナトセさんと庭の花の手入れをしていると、すっかり夕方になった。
「あー、疲れたー…性別が違うせいか体も思うように動かないし、余計疲れちまったぜー…」
女の体ってこんなに動きづらいもんなのかな。 やっぱこの胸ぶらさげてるのがいかんのか…
いやいや、それは鳩ねぇに対して失礼だぜ。
「どうしたんですか、レンちゃん?」
「鳩ねぇ…じゃなかった、鳩にぃ」
「随分お疲れのようですねー。 今日は晩ご飯食べたら、しっかりと睡眠をとるんですよ?」
「うん」
「正直でかわいいですねー」
ほっぺすりすりされた。 やっぱり変わってないぜ。
晩飯を済ませて片づけを済ませた後は反省会。
さて、ベニ公のドアを開けて…その先にはクオンジティータイムがハルに炸裂していた。
「何をやっとるんだ、お前は。 つーか、やめてやれ」
「いいじゃん別に。 いつも定期的にやってるんだから」
…この構図もかなりマズイ。 男が女の上に乗かってお茶飲んでるんですよ?
明らかなドメスティックバイオレンスですよ。
「とりあえずやめとけって。 な?」
「そんなこと言ってると、お前にやるぞ? あ?」
「あ、それよりもそこの床に何か落ちてるぞ」
「ん? どれどれ…」
「隙アリ! ミラージュドリル(カンチョー)」
「マーベラス!」
「ありがとうございます、レンねぇ!」
「いや、助けてくれたのは鳩にぃだけど…ま、いいか」
何だかハルに感謝されてしまった。


「はぁぁぁぁ…」
なんだかんだで一日も終わり、か…部屋に戻ったら眠くなってきたな。
俺、このまま女として過ごさないといけないのかな? まさかな…意外と夢オチじゃねーのか、これ?

コンコン

「誰?」
「レンねぇ、私です」
ドアを開けると、ハルが立っていた。
「どうしたんだよ、ハル…っておい! なんで服を脱ぐんだ!」
「私…いや、僕はずっとレンねぇのことが好きでした…」
いや、ちょっと待て。 女同士のアブノーマルな展開は…あれ?
「なんでハルちゃんは…股から棒が出っ張ってるのかな?」
「だって僕、男ですもん。 メイド服なのは、森羅様の趣味です」
「はぁぁぁぁぁぁ!!??」
「レンねぇに助けてもらって…もう僕はレンねぇに心底惚れてしまいました!」
「いや…その……」
「安心してください、レンねぇ。 優しくしてあげますから…僕も初めてですけど」
なんでコイツだけ男のままなの? で、俺は今からどうされるの? ま、まさか…
「レンねぇ、僕のここを見てどう思いますか?」
「別に…大きくはないな……」
「これから大きくなるんですよ」
ギャー!! 目がマジだ! かくなるうえは…
「お前を気絶させて…あれ?」
「抵抗してもダメですよ、レンねぇ」
なんとまぁ、ハルなんぞに押し倒されてしまった! 女になって力が一気に衰えちまったのか!?
「いきますよ…」
「やめろー! 助けてー! 夢なら覚めてくれー!」


ツプッ…

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「はうあ!」
「どうしたんですか、レン兄ぃ。 すごくうなされてましたけど…」
俺は目が覚めた。 思わず股間を触ってみたが、ちゃんとついてる。 胸も調べてみたが、全く問題なし。
「よかった…夢か…」
「大丈夫ですか?」
そういえば昨日、怪談大会をベニ公の部屋でやったら、ハルが怖くなって一緒に寝てたんだったな。
「お前のせいで悪夢を見たぞ」
「ええええええ!? そ、そんなことを言われても…」
「ま、いいか…さてと、起きようぜ」
「はい! 今日も一日頑張りましょう!」
悪夢から目覚め、意外にも俺の体調はいいほうだ。
ハルもさっさと自分の部屋に戻って着替えをしている。 俺は顔を洗いに…

ガチャリ

「…またきやがったわね、この下男!」
「……はー」
「な、何よ」
「いや、よかったなぁってしみじみ感じてたとこ」
「ふざけんなこのボケー!!」

ボクシャーン!!

「おおおぉお…」
いてぇ…いてぇけど、元に戻ってよかったって思えるぜ……ところでさっきから気になってたことがあるんだけどさ。

なんでケツが痛いの?


(作者・シンイチ氏[2007/06/10])

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