「よ、っと……ここでフタをして蒸らす、と」

森羅様ご所望のお茶を台所でいれていると

「いってくれれば私がやってあげたのに」

鳩ねえがやってきてティーポットの様子を見ている。

「や、俺も森羅様の専属だから
 お好みのお茶ぐらいはいれてさしあげられるようにならないとね」

「レンちゃん、お茶をいれるのも上達しましたね〜」

「今日みたいにベニ公が休みのときとか、俺がやるしかないからね」

「レンちゃんの成長がうれしくもありさびしくもあり……
 そんな心情を歌います。『弟よ』。聞いてくださいね」

お、ツイてるな。今日は止めるベニ公もいないから
たっぷり鳩ねえの歌声に酔いしれることが……
あ、イカン、お茶いれている最中だったじゃないか。

「弟よ〜♪私の胸の中で今〜♪ちーいさなー寝息を〜♪」

が、止めるまもなく鳩ねえは歌いだしてしまう。
とたんに眼前の世界が真っ白に。今日は飛ばしてるなぁ。

「美鳩ー、何を……な、なんなのこの声!?
 く、あ、あ、お、っ……は、半ズボ……ッ!」

あ、ミューさんが、と気づいたときには
すでに意識は宇宙の彼方に飛んでいた。


「…………は!?」

台所の床で目が覚める。
いかん、またトリップしていたようだ。

「…………う?」

目の前の俺も目覚めたようだし、早く森羅様に……

目の前の俺?

「う……あら、私も目が覚めたのね。
 それにしても、美鳩の歌があんな精神攻撃兵器だったとは……」

目の前の俺が女言葉でしゃべり、そして押し黙る。
俺も自分の体を見下ろして事態を把握した。
どうもまた、幽体離脱後入る体を間違えちまったらしい。

「……どういうこと?」

さすがはミューさん、落ち着いている。

「実は……(事情説明中)……」

「なるほど……美鳩もまだまだ謎が多いわね。
 それで、どうやったら元に戻れるのかしら?」

「それはですね……」

説明しようとした矢先

「こらー、レンー!お茶遅いぞー!」


しまった、森羅様にお茶をいれているところだった。

「まったく、何をやってるんだ?
 遅いぞ、レンー。一緒に飲もうって言ったのに……」

待ちかねたのか、台所までやってきてしまう森羅様。

「ん……なんだ、ミューも一緒か。
 何してたんだ、二人で?
 まさか、また私の従者にチョッカイ出してたんじゃないだろうな?」

「違うのよ、姉さん」

「主チョップ!」

「あ痛!?な、何をするの姉さん!?」

「主チョップ主チョップ主チョップ!」

ズビシズビシと音を立てて森羅様のチョップが俺の体にきまる。
俺に痛みはないが見ていると複雑な気分だ。

「い、痛い痛い痛い!痛いわ姉さん!」

「だーれがお前の姉さん、だ!」

だよなあ。中身がミューさんでも外見は俺なんだもの。
黙って見ていると収拾がつかないのでそろそろ止めるか。

「森羅様、もうそれぐらいで」

「?……今……何と?」


「ですから、もうそれぐらいで。お茶ならすぐにおいれします」

「お前が?私に?茶を……いれてくれるのか?」

「?ええ、森羅様の専属ですから」

「…………専属妹キターーー!!」

は、しまった。俺もミューさんの体に入っているんだっけ。

「やっと私のものになる決心がついたんだな(だきしめっ)!」

あー……こういう場合、どう反応するべきなんだろーか。
相手森羅様なので何となく抵抗できないし。

「さあ行こう今行こうすぐ行こう!私の部屋で……じっくりと……ハァハァ」

「こらー!少しは抵抗しなさーい!」

ミューさんからしたら自分の体がアレコレされるわけで
止めたくなるのもわかるけど……

「僕の分際で邪魔をするな!主キック!」

「痛い!だからやめてよ姉さん!」

「だから誰がお前の……ははぁん?嫉いているのか、レン?
 しかし……お前に『姉さん』と呼ばせるプレイか……
 ククク、それも悪くない、悪くないなぁ!
 ……まあ、それは夜にしよう。今はミューたんだ!」

ネジ、ゆるんでるなぁ。


1時間後。
ようやっと開放されて、台所にいたミューさんの元に戻る。

「……いつも……あんなこと……されてるんです、か……?」

「あら、早かったわね。これぐらい、姉さんの陵辱としては軽いほうだわ」

俺と……するときより……激しかった気が……

「とにかく、早く元に戻らなくては。
 どうすればいいの?あなた、経験あるんでしょ?」

「はい。もう一度鳩ねえの歌で幽体離脱してですね。
 体に戻るとき意識を集中すれば、何とか」

「なるほど……美鳩は今買い出しに出ているはずだけど
 戻ってくるのを待ってもいられないわね」

「ケータイで呼び戻しましょう」

「そうね。えっと……この場合、そちらのボディで呼び戻すべきね」

「わかりました。じゃちょっとミューさんのふりしてかけてみます」

ピポ。プルルル……チャッ。

「んーと……もしもし、美鳩?」

『あらぁ?レンちゃん、ミューちゃんの真似なんかしてどうしたんですか?』

何故か中身が俺とわかる鳩ねえ。
流石だぜ。


戻ってきた鳩ねえに事情を説明。

「……と、そういうことなので、美鳩。早くもう一度歌ってちょうだい」

「それじゃ、早速。新曲『弟海峡姉景色』です!」

鳩ねえが歌いだそうとしたその時。

「ただいまー!美鳩ー、お腹がすいたんだけど……あれ?」

あー。今度はナトセさんかー。

「ちょ……!ナトセ、来てはダメ!美鳩、歌……んぎぃ!?」

「うわ、うわ、うわわわわわ!?」

「どうしたのナトセさ……うひゃう!?」

あー。夢お嬢様まで来ちゃったかー。

「たっだいまー!お土産買って……ぐあ!?ま、またハト……っ!」

ヤベエ、ベニ公まで帰ってきやがった。

「なんだ騒がしい。私のいないところで楽しそうに……ぐぅっ!?」

そうですね。この際森羅様もいたほうがいいですよね(←もうヤケ)。

「ああああ〜♪弟海峡〜♪」

感動に皆がのたうちまわる。俺の意識も遠くなる。
やっぱり鳩ねえは……すげえ、ぜ……(ガク)


(作者・名無しさん[2007/06/03])

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