「ヤー!!ヤー!!」

「あ痛っ!」

「私とっ!美鳩以外にはっ!必要以上にベタベタしないようにとっ!
 あ・れ・ほ・ど!言ったのにっ!」

「そうですそうですー、レンちゃんは私のものなんですから
 他の女の子に目を向けるのも許され……」

「私『たち』の!というかメイン私!」

……俺とナトセさんのちょっとした事故から起きてしまった
過剰なスキンシップを運悪くミューさんに見とがめられてしまい
今はこうしてキビシイおしおきを受けている。
何故か鳩ねえも同席。とめるどころかミューさんに同調気味。

こんな女性ばかりのお屋敷で、執事として働いている以上
多少の触れ合いが起きるのはやむを得ないと思うのだが……
なんて考えていたら、顔に出てしまったらしい。

「……その顔は、納得できていないようね」

「いえ、そのようなことは」

「どうやら、今一度、自分が誰のものなのか
 そのカラダに覚えこませる必要があるわね。
 美鳩、例のものを」

「はいー♪」

……何か絶望的にイヤなヨカン。


「……半ズボンすか」「半ズボンよ」「半ズボンですー」

鳩ねえがとりだしたのは、ピシッとアイロンのかかった半ズボン。
執事の制服にデザインがあわせてある。
まあ、半ズボン姿でセクハラまがい……いやもろセクハラされるのは
もうわりと慣れてはいるが、ここまでしますか。

「こんなときのために、わざわざ作らせたかいがあったわ。
 レン、今日は一日、これをはいて仕事をなさい」

「い!?ずっとですか!?
 あの、俺には遊撃としての仕事もあってですね?」

「大丈夫よ、大佐には了解を得ているから」

何考えてんだあのオッサン。

「さあ、さっさとはきかえなさい」

しょうがない、この場を取り繕うためにも
今だけは半ズボンはいておくか。
後で見ていないところで着替えなおせばいいだろう。

ヌギヌギ。ハキハキ。

「これでよろしいでしょうか」

「レンちゃん……似合ってます……ハァハァ」

「思った通り……いえ、予想以上の破壊力……!やるわね、レン!……ハァハァ」

何やら評価が上がった。イヤな上がり方だが。


「それでは、失礼して遊撃につきます」

さっさと退出して、誰かに見られる前に着替えちまおう。

「もう少し愛でていたい気もするけど……よろしい。デニーロ?
 この不埒者が途中で着替えたりしないよう、見張っていなさい」

「よぉーし、まかせとけ」

ぐあ、お見通し!?

「すいません、やはり今日は専属でつかせていただきたく」

ていうか部屋から出たくねえ!

「それも魅力的だけど、今回は罰を与えるほうを優先するわ。
 それに、私は今日はこれからショッピングに出かける予定だけど?」

「……遊撃に……つかせていただき……ます」

部屋を出る。後は……トコトコとついてくるコイツを懐柔するしかねえ。

「なあ、デニーロ。俺達、トモダチだよな?
 だったら、ちょっと見逃して着替えさせてくれよ」

「トモダチでもそうはいかねえよ。主の罰だ、甘んじて受けな」

「罰ったってよぉ……どう思うよこのカッコ?」

「キモイな」

ミもフタもないトモダチだった。


その後。

「アーッハッハッハッハッハ!」

ベニに笑われ。

「お前……けっこうカワイイな」

森羅様にイジられ。

「ワ、ワイルドなはずのレン兄ぃが……」

ハルに落胆され。

「ほえ。新しい個性だねー……ちょっとうらやましいかな」

夢になぜかうらやましがられ。

「ご、ごめんね………で、でも似合ってるよ?」

罰を受ける原因の一旦だったナトセさんには
うれしくないフォローを入れられ。

散々恥ずかしい思いをしながらも
執事としての仕事はキッチリこなす。
そうこうするうちに、お目当ての人物に遭遇。

「ほう、頑張っているなレン」

そう。ダンディでスペシャルなこの漢なら……!

「大佐!大佐的にはこのスタイルの執事は問題なんじゃないんすか!?」


「うむ。未有様からご相談を受けたときは
 あまりに見苦しいようであれば着替えさせます、と申し上げたのだが
 ……それほどでもないようだな」

え、ありなのかよコレ!?
やめさせてくれると思ってたのに!

「むしろ、動きやすそうだし、これから暑くなることもある。
 正式に夏服として考慮しても……」

……ヤブヘビだっただろうか。

「いや、正式採用とかありえないから」

「そうか?ナトセやハルは充分似合いそうだぞ。
 お前ですらそれぐらい似合っているのだからな」

似合ってるとか言われても全然うれしくねえ。
が、ハルはともかくナトセさんの半ズボンか……
あのスラリとした脚が剥き出しに……

「……いいかも」

は、しまったついポロリと本音がっ!

「ふむ。ではさっそく試作品を手配するとしよう」

「ちょ、待てって!」

だが、一人納得してスタスタと大佐は行ってしまう。
ヤブヘビどころではなかった。
まあ……ナトセさんの半ズボン姿はちょっと見てみたいが。


そして、数日後。

「未有様」

俺と居間でくつろいでいたミューさんに
背後から大声がかけられる。大佐だ。

「何かしら大さ……ヒィーッ!?」

振り向いた俺達の前に下だけ半ズボンの大佐がっ!?

「正式に執事用の夏服として、半ズボンを採用しようかと思いまして。
 試しに私のスペシャルな半ズボンスタイルを専門家であらせられる未有様に……」

試作ってナトセさんとかにしとけよ!自分で試すなよ!

「来ないで!寄るな!フーッ!(←威嚇)」

「いや、お近くでよく見ていただかなければ。
 今では私も半ズボン。何故ならば、私もスペシャルな存在だからです」

ズンズンと迫り来る半ズボンムキムキヒゲオヤジ。

「見せないで!汚される!私の半ズボンを愛する心が汚されるぅー!」

脱兎の如く走り去るミューさん。
この後、しばらくミューさんは半ズボンの話をしなかった。
オッサンがいる限り久遠寺家で半ズボンが正式採用されることはないだろう。

「おかしいな?おいレン、もう少し丈は短いほうがいいのか?」

たぶん、永遠に。


(作者・名無しさん[2007/05/27])

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