沢山の人が私の横をすれ違う。火照った体を覚ますための、日課の夜の散歩。
でも、さすがに同じコースを歩くのも飽きてきちゃったから、今日は別のコースを通ってみることにした。
「はぁ…」
対馬君はナオちゃんと付き合うようになっちゃったし、伊達君もカニっちとなんとなくいい感じ。
西崎さんだって、村田君と…私だけ、なんだか置いてけぼりされてるのかなー。
エリーにそれとなく相談してみたけど、

「下々のことなんてどうだっていいわよ。それより、私はよっぴーがいればいいもーん」

と、いつもと変わらない状態だった。
本当に私、幸せになれるのかな…できることなら、違う自分になってみたいな……
そんなことを考えていると、いつの間にか松笠公園まで来ていた。
昼間はいつも、ここに来るととても癒される感じがする。
たまに夜にも来るけど、痴漢の騒ぎとかも聞かないから安心する。
でも、今日は何か違う雰囲気だなぁ。
なんとなく冷気のようなものが、公園全体を覆っているようだった。
だけどどうしてだろう、それでも今の私には恐怖がない。
むしろその不思議な雰囲気に、自分の足が意志と関係なく動いているようだった。
そして海の見える場所まで来ると…
「ギャギャーッ!」
「うおぉぉぉ!」
突然、凄まじい叫び声が聞こえてきた。
そっちに目を向けてみると、草むらのほうで化け物同士が戦っている。
「あ…ああ……」
足がすくんで動けない。どうしよう、気づかれたら殺されちゃう。
逃げないといけないのはわかっていても、体が言うことを聞いてくれない。
「ギギ…?」
鳥のような化け物が、私に気がついてしまった。そして…
「グゥゥ…ゴアァァァ!」
「ひぃ…っ!」
私のほうに飛び掛ってきた!


ドキャッ!
「ああ……ハッ!」
「ぬぅ…うぐっ……」
襲い掛かってきた鳥の化け物の手が、私をかばった虫の化け物の体に深々と突き刺さっていた。
どうして私のために…
「ううぅ…うおぉぉぉぉ!」
刺さった相手の腕を掴み、もう片方の手で虫のほうは渾身の一撃を叩き込んだ。
鳥の顔に拳がめり込み、そのまますごい勢いで海まで飛ばされていった。
そして、海に落ちた直後…
ドォォォォォン!
爆発が起きて、その衝撃で海面から水柱ができあがった。
とりあえず、私は助かったみたいだけど…
「ケガは…ないか……ぐふっ」
虫のほうも、力尽きてしまったのか、その場で倒れてしまった。
「あ、あの…大丈夫ですか…?」
どうやら危険な人じゃないみたいだけど、やっぱりその見た目は怖い。
虫の人は弱々しい声で、私に話しかけた。
「…もう…私は……ダメだ……後は…君………が…」
それ以上言葉を話さなくなり、ぐったりとしてから、その人は霧のように消えてしまった。
なんだったんだろう、これって夢なのかな? 試しに自分のほっぺたを引っ張ってみた。
「痛い…やっぱり夢じゃないんだ」
このこと、警察を呼んで話したほうがいいのかな? でも、こんな現実離れしたこと、信用してくれるかな…
「あれ?」
自分の足元を見てみると、指輪が落ちていた。
ちょっと不思議なデザインの、今まで見たこともないような指輪だった。
「これ…」
私は何かに引き寄せられるかのように、その指輪を拾ってそのまま帰った…


次の日。
私は何も考えずにその指輪をはめて登校した。 特に理由もなく、ただ何となく。
教室に着いて、いつも通りエリーと会話をしていると、すぐにエリーはそれに気づいてくれた。
「あら?
よっぴーってば、指輪なんかしてるの?」
「え、マジ? ボクにも見せてよ」
それを聞いて、カニっちも私のところへやってくる。
「う、うん。 昨日外で売ってる人がいて、何となく買ってみたんだけど…」
「うーん、ボクとしてはイマイチかな。 なんか不気味なカンジがするぜ」
「そうかしら? 私はいいと思うわよ」
「マジかよ…」
エリーに言われてもあんまり説得力ないよ…そうだ、対馬君にも聞いてみよう。
「ど、どうかな? 対馬君」
「俺に聞くのかよ? そうだなぁ…やっぱカニの言うとおり、イマイチかな」
「レオもそう思うだろ? やっぱ姫のセンスがおかしいぜ」
そうなんだ…予想はしていたけど、あんまり評判は良くないなぁ。
「おい、対馬。 2-Aの近衛さんが、おめぇを呼んでるだ」
「ん? ああ、わかった」
「ほほえましいねぇ。 俺はレオをとられて寂しいよ」
「いいかげんにその冗談は頼むからやめてくれ」
「そーだぜ。 大体、スバルにはボクというプリチーな妖精がついてんだろーがよ」
ナオちゃんがドアの教室の入り口の前で手を振っている。
対馬君はそれを見て、とても恥ずかしそうだ。

……笑ってるけど。

「ちくしょう、どいつもこいつも幸せそうにしやがって。よっぴー、こんな寂しい俺を慰めて」
「…邪魔しないでよ」
「ひいっ!?」
なんだろう、前まではこんなことなかったのに…今は…憎い。
憎い? 私が? 誰を? …どうしたんだろう、こんなこと考えるなんて。


放課後、私は生徒会室に行く前に、祈先生に頼まれて集めたプリントを職員室に持っていった。
祈先生は相変わらず、椅子に座って飴を舐めて待っていた。
「はい、先生。 持ってきましたよ」
「ありがとうございます、佐藤さん。 あら?」
先生も私の指輪に気がついたようだ。
「佐藤さん、随分と変わったものをしていますわね」
「え? あ、これですか? すみません、何だか気に入っちゃったから…明日からは外してきます」
「別にそんなことを咎めようなどと思いませんわ。 佐藤さんも年頃ですしね。 ただ…」
先生は私の手をとると、指輪をじっと見つめだした。
いつもの先生からは想像もできない、すごく真剣な目つきだ。
「…佐藤さん、もう行ってもよろしいですわよ」
先生は手を離すと、またいつものように飴を舐めだした。
「それじゃ、失礼します」
「ええ…それと、今日は私は生徒会室には行きませんので」
「はい、わかりました」
めずらしいな、祈先生が生徒会室に行くか行かないかを伝えるなんて。
とにかく今日も仕事があるし、早くあっちに行かないと。
そう思った私は、生徒会室へ駆け足で向かった。

「祈よ、どうかしたのかー?」
「…土永さん、もしかしたらとんでもないことになるかもしれませんわよ」
「とんでもないことだとー? 一体それはどういうことだー?」
「まだ確証はありませんが…これは調べる必要がありそうですわ」
「そうかー。 ま、我輩を頼る時はいつでも言えよー」
「そうですか。 では早速、月白先生にこのことを伝えてくださいませんか?」
「おーう、我輩はあの女、少々苦手なんだがなー。 まぁいいだろうー」


遅くなっちゃった。 対馬君…まだいるかなぁ?
「ごめん、遅くなっちゃって」
部屋の中にはエリーが一人だけでパソコンをいじくっていた。
「よっぴー、おそーい。 おかげでみんな帰っちゃたわよ」
「え…そうなんだ」
エリーは手を左右にひらいて、やれやれといったポーズを見せた。
「カニっちはスバルクンと一緒に帰ったし、まぁフカヒレクンはいつものようにとぼとぼ帰っていったけど…
 対馬クンなんか、ラブラブなところを見せ付けてまぁ…なごみんなんか、知らないうちに帰ったし」
そうか…ということはナオちゃんと一緒に……
どうしてなんだろう? 私はこんなに優しいのに。 私ならもっと対馬君を幸せにしてあげれるのに。
対馬君はなぜ私に振り向いてくれないの? ああ、そうか…そうだよね……
振り向いてくれないなら…
「バカップルはんたーいってカンジ…あれ、よっぴー? どうしたの?」
「う…ううん、なんでもないよ。 さ、早く仕事終わらせようよ」
「ふーん…」
そういうと、エリーは私の目の前に近づいて、じろじろと顔を見た。
何だか初めて出会った、好奇心をそそられる何かを見つけたような目で…
「どうしたの?」
「いや、なんかいつものよっぴーとどこか違うかなーって」
「そう? 私はいつも通りだよ?」
うん、そうだよ。 私は佐藤良美。 エリーの友達。
そして私は対馬君を…って、何考えてるんだろ、私。
どうかしちゃったのかな?
「それじゃ、さっさと終わらせますか!」
「うん、頑張ろう!」
結局、私とエリーは夕暮れまで仕事をして、その後レストランで夕食を食べてから、帰ったのだった。

「何かしら。 いつものよっぴー…しかもダークよっぴーでもない、嫌な感じがしたわ…」


エリーと食事をしてから帰る途中、今日も私は松笠公園に足を運んだ。 というより、自然と足が動いていた。
もうすっかり暗くなって、また昨日と同じ不気味な空気が流れているみたい。
人もいないし、こんなところで一人でいる私って、ちょっと変かな?

ガサッ

「誰!?」
草むらから音がしたかと思うと、今度は突然、大きな何かが私の上を跳び越していった。
間違いない、昨日見たのと似ている鳥の化け物。 化け物はそのままゆっくりと地面に足をつけた。
それから私のほうを睨みつけ、ジリジリと近づいてきた。
「やっぱり…いたんだ……」
何故か私は落ち着いていた。 昨日とは違って、自分でも恐ろしいぐらい冷静だ。

『自分の望む姿を…頭の中に…思い浮かべるのだ……そして叫べ…纏身と……』

突然、頭の中に声が響いた。 ふと気がつくと、指輪が光っていた。
この指輪が話しかけてるんだろうか? それよりも…
「さすがにあの虫の人になるのは嫌だよね」
そんなことを考えて、つい笑ってしまった。 命の危険だというのに、なんて不謹慎なんだろう。
ちょっと怖いけど、とにかく今はこの化け物をなんとかするのが一番だよね。
それじゃえーっと…うーん……あ、そうだ。
「この前エリーが私に着せたあの衣装…確かこんな感じだったよね」
イメージ、イメージ…うん、できた。

「纏…身!」

「ギュワッ!?」
指輪から光が溢れ、私の体を包んでいく。 そしてその光が、私の体を作り変えていくようだった。
恐怖はない、どちらかといえば気持ちがいい。 光が晴れると、そこにはいつもと違う私になっていた。
「え、えーっと…ま、魔法少女マジカル良美! これでいいのかなぁ…」


前にエリーが悪ふざけで持ってきた魔女っ娘衣装をイメージしたら、こんな姿になっちゃった。
えっと、とりあえず周りには誰もいないよね? 名乗ってみたけど…すっごく恥ずかしいよう。
でも良く考えたら…これからどうすればいいんだろ?
「ギャース!」
「わわっ…」
ダメ! やっぱり怖いよう!
「こ、こないでー!」
お腹の底から声を出すと、その声が化け物に向かって衝撃波となって襲い掛かった!
「グギャァァ! グゥゥ…」
い、今のって…私の叫びであそこまで吹き飛ばされたんだよね?
すごい…今の私って、すごい!?
「そ、それじゃこの手に持ってる杖を使えば…えいっ!」
杖を相手に向かって振ると、今度は杖の先から電撃が走った。
感電した化け物は、がくりとその場に膝をついて、もう立ち上がれないみたい。
「や、やった! 今のうちに逃げないと…」
あれ? 私が逃げたらこの化け物、どうするんだろう?
誰もとどめを刺す事なんてできないし、このまま回復したら…
他の人が襲われる。 エリーも、カニっちも、伊達君も、対馬君も…

対馬君?

対馬君があの化け物に殺される?

「……そんなことさせない……」
私の中で何かが変わった。 杖を自分の前で回し、頭の中で思い浮かんだ呪文のようなものを口ずさむ。
「カオス・デストロイ・ヘル……(以下略)」
呪文の詠唱を終えると、杖を相手に向けた。
「粉微塵になっちゃえ、オーヴァー・デス……!」
「グギョワァァァァァ!!」
大きな火の玉を受けた化け物は、その場に自分の姿が消えるまで、もがき苦しみ続けた。


化け物が消えて、すっかり静かになった。
私の姿は元に戻り、もう指輪も光っていない。
今でも自分があんな力を手に入れたことに、私自身が驚きを隠せないでいた。
でも、良く考えたら…
「これって、誰も私に逆らう事なんてできないよね」
どう考えても、今の私は鉄先輩より強い。
多分館長よりも強い。

私は強い。
私の前なら誰だって平伏す。
でも対馬君だけは別。
対馬君は私だけのもの。
私は対馬君だけのもの。

「ああ、そうだ」
そういえば対馬君はナオちゃんと付き合ってたんだっけ。
返してもらわないと。
だって…

「レオ君は私といるほうがいいんだから…」

待っててね、レオ君。
今日はちょっと疲れちゃったけど、明日には必ず迎えに行くからね。
ナオちゃんよりもずっと、ずーっと幸せにしてあげるから。
私のすべてを、私の世界をレオ君にあげるから。
だから、待っててね。


ガサガサ…

「帰ったようですわ」
「大江山先生に呼ばれて何かと思えば…まったく、OKじゃないわね」
私と大江山先生は、彼女が担任のクラスの佐藤さんという生徒の様子を、気づかれないように監視していた。
それにしても驚いたわ。 まさかあの指輪が、あの娘の手に渡っていたなんて。
「やはりアレは、私が昔に読んだ古文書に書いてあった通りのもの…
 以前に月白先生に見せてもらったものと似ているから、もしやと思いましたが…」
ちょっと前に、童貞のかわいい少年を紹介してもらった時(その時は確か3Pだった)、ちょっとした気まぐれで見せたことがあった。
まぁ、大江山先生は占いとか呪術とかに興味があるようだし、私も面白半分だったから。
性格が性格だからか、それほど驚いたりするようなこともなかったし。
「それにしてもあの娘、かなりヤバイわね」
「そのようですわ。 まさか佐藤さんにあのような内面が存在していたとは…
 それに対馬さんは、私も目をつけていましたのに(ちょっと前までは)」
「確かにアレもヤバイけど、もっと他のことよ。 OK?」
「と、言いますと?」
「あの指輪…『エゴの指輪』は装着者に対する精神的負担が他のものとは段違いなのよ。
 よほど強い精神の持ち主でなくては、例え纏身をしていなくても、次第に蝕まれていくの」
よりによって一番厄介なものを持っているとはね。
あの指輪は欲しいけど、一筋縄ではいかないことは確かだわ。
「なるほど。 どのような経緯で佐藤さんが指輪を手に入れたかはわかりませんが、このまま放ってはおけませんわね」
「ええ。 いくらなんでも、あの娘がもっているのは危険極まりないわ」
「何とかなりそうですか?」
「…私一人ではキツイかもしれないわね。 あの力、あまりにも強すぎるわ。
  気乗りしないけど、応援を呼びましょうか……」
「あらあら、お知り合いがいるのですか?」
「ええ。 かなりの甘ちゃんだけどね」
そう、もう一人の指輪の持ち主、トモちゃんを……


「起きて。 起きて空也」
「んん? う〜ん、今何時…って、外は真っ暗じゃないか」
こんな真夜中に、ともねえはどうしたんだろう? 俺、まだ眠いよ…
「ごめん、空也。 でも、これをちょっと見てもらいたくて…」
ともねえはそういうと、自分の携帯を俺に見せた。 どうやらメールらしい。
そのメールの差出人は透子さんだった。

『ちょっと急ぎの大事な用事があるの。 すぐに海岸まで来てもらえるかしら?
 電話では話しにくいことなので、お願いね。 OK?』

「透子さん? 透子さんがこんな夜中に何の用事なんだ?」
「わからない。 でも、どうしたらいいかなって…」
確かに、あの人なら罠を仕掛けてともねえを倒そうとすることだって十分考えられる。
とはいえ、最近はあの人もおとなしいけどなぁ。
「うーん、とりあえず行ってみようよ。 俺もついて行くし」
「本当? だったら今から出かけよう」
俺とともねえはみんなを起こさないように注意して、家を抜け出した。
バイクを飛ばして、海岸まで一気に突っ走る。 それからすぐに、海を眺めている透子さんを見つけることができた。
「お久しぶり、お二人さん」
バイクから降りて近寄った俺達に気づいた透子さんは、こっちよりに先に挨拶をした。
「ど、どうもお久しぶりです。 それで…何の用なんですか?」
ともねえはいつでも纏身ができるように警戒しながら質問した。 透子さんはやれやれとした表情で話した。
「そんなに身構えなくてもいいじゃない。 実はね、最後の指輪が見つかったの」
「ほ、本当ですか?」
「ただ、ちょっと厄介な事になったの。 その娘は女子高生、一見どこにでもいそうな女の子よ」
「じょ、女子高生!? なんでまたそんな娘に…」
「経緯は私にもわからないわ。 問題なのは、その娘が精神汚染のような状態になってるの。
 ヘタをすると、人格崩壊もありえるんじゃないかしら」
そう言うと、透子さんは胸元から写真を取り出し、俺に渡した。
写真から透子さんの甘い香りが…って、そんな場合じゃないだろ!


「これが…うーん、優しそうな娘だけどなぁ」
「私はその娘が纏身したところを見たけど…トモちゃんの……その…」
なぜかはわからないが、とても話しにくそうだ。
「なんだっけ……マジカル…とも…ねえ……だったかしら、あの姿にそっくりなのよ」
「いいっ!?」
マジカルともねえ…以前にともねえが試した『超纏身』によって誕生した魔法少女だ。
あのでかい体もすっかり小さくなり、その可愛らしい姿と魔法で悪い子をいい子にする…
そのはずだったんだけど、魔法で洗脳しているんじゃないかと考えたともねえはそれっきり、その姿になるのをやめた。
というより、あの姿は一度きりで、二度となれないんだけど…
「あの痛々しい姿はともかくとして、私としてはその娘の指輪を取りあげたいの。
 これは私の同僚の頼みでもあるんだけど、私一人じゃ荷が重そうだから…協力してくれないかしら?」
「あぅ…そういうことならいいですけど……あぅぅ…」
ともねえは『痛々しい』という言葉にかなりのショックを受けたようだった。
「でも、どうやって指輪を取りあげるの? 確か指輪って、死なないと取り外せないんだろ?」
「そうだね。 死なせるわけにはいかないし…」
「あら、私は別に構わないわよ?」
「ど、どういうことですか!?」
透子さんの今の言葉に、ともねえは語気を荒げた。
「トモちゃん、やっぱりアナタは甘すぎるわね。 この娘、どうやらある一人の男の子を自分の物にしようと考えてるみたいよ。
 確か…『対馬レオ』とかいう子だったかしら。 それこそ『どんな障害も排除する』という構えでね。
 そんな娘が全力で私達にかかってくるのよ? それも、いつ火の粉が他の人にふりかかるかもわからない状態なのよ。
 一人の命でみんなが助かるなら、安いものじゃなくて? OK?」
「そ、そんなこと!」
透子さんはどうやら帰ろうとしてか、俺達から離れるように歩き始めた。
「ま、一応伝えたわよ。 早ければ明日にでも動きがありそうだわ。
今日は力を使いすぎて疲れてるだろうからね」
そのまま暗闇の中へと姿を消していった。 海岸に残っているのは、俺とともねえの二人だけ。
「ど、どうするんだよ、ともねえ」
「……この娘を助けないと」
「じゃ、決まりかな?」
「うん。
頑張ろうね、空也」


昨日は眠れなかった。 いつも以上に体が疼いて仕方がなくて、一睡もせずに自分の体を慰めていた。
でも、なぜか私の体は元気そのもの。
これが自分の指じゃなくてレオ君なら…どんなに気持ちがいいだろうかなぁ。
「あ…」
レオ君だ。 でも、その横にはナオちゃんがいる。
「またシャツ出っ放しよ」
「わりぃわりぃ。 へへ…」
「な、何よ」
「いやぁ、今日もお前は可愛いなってな」
あんなにレオ君と楽しそうにしてる…許せないなぁ。
レオ君を幸せにしてあげられるのは私だけなのに。
「そ、そんなお世辞…」
「素直じゃないなぁ」
「それ! 名前ネタNG!」
「おはよう。 レ…対馬君、ナオちゃん」
「あ、おはよう佐藤さん」
「おはよう」
「今日は早いんだね。 カニっちは?」
「こいつがさっさと起きろってうるさくてさぁ」
「もう、アンタがだらしないからでしょ!」
そうなんだ…ナオちゃんったら、毎朝レオ君を起こしに行ってるんだね。
「カニは昨日、俺のゲームのデータ消しやがったから置いてきた。 あいつ、人の部屋に無断で…」
それからの声は私には聞こえなかった。 耳がほとんど受け付けなかった。
聞いたふりして相槌をする程度。
やっぱり私、レオ君がほしい。
どうにも抑えられない。
でも、今は我慢。
こんな大勢がいる前でなんて、さすがにダメだよ。
そう、必ず今日…


「もうすっかり日が暮れてしまったな」
今日はレオは近衛と夕食を食べるそうだから一人で夕食か、少し寂しいな。
いや、いかんいかん。 姉である私が、そのような弱気な状態にあっては、レオに示しがつかんからな。
「うん…? 何だ?」
家の近くまで来ると、家の前に見知らぬバイクと、これまた見知らぬ人が二人いるのを見つけた。
ひょっとして、レオの客人だろうか?
「あの、この家の者に用でしょうか? ……っ!?」
男性の方はそれほど大したことはなさそうだが、この女性の方は…!
何やら内なる力を秘めている、そんな気がする。
「あ、すみません。 この家の人ですか?」
「ええ、そうですが」
「対馬レオ君は、今どちらに?」
む、やはりレオに用のある者か…悪人ではなさそうだが、油断は禁物だな。
「レオにどういった用事でしょうか? 用件なら、姉であるこの私が連絡いたしますが」
「あぅ、できれば…その…本人に…」
「失礼ですが…レオとはどういったご関係でしょうか?」
「その、関係とかそういうわけじゃ…あうぅ……」
ええい、はっきりしない人だな。 できるかと思ったが、どうやら見掛け倒しらしい。
「ともねえ、今は…」
「う、うん、そうだね。 すみません、また出直してきます」
「あ、ちょっと…」
二人はバイクに乗り、そのままどこかへと去っていった。
一体どういう人なのかわからないが、とりあえずレオの耳に入れておいてやるか。
「電話は…いかん、そういえばこの前、私が壊してしまったんだな」
まったく、ちょっとボタンを押しただけで壊れるとは、軟弱な電話だ。
仕方がないな…夕食が終わったら鍛錬のついでに、ちょっとレオを探しに外を回ってみるか。


「アリガトゴザイマシター。 マタ来テクダサイネー」
オアシスで夕食のカレーを食べた俺達は、そのまま公園まで行くことにした。
体が熱いおかげもあってか、海の風が気持ちいい。
「うーん、それにしてもおいしかったわね〜」
「いつ食べてもオアシスのカレーはうまいからなぁ」
「そ、そんじゃさ…こ、今度アタシがカレー作ってあげよっか?」
「そんなこと言って、レトルトで済ませましたーとか言うんじゃないだろうな?」
「もう、そんなわけないじゃない!」
そんな他愛もない話を続ける。 それだけだけど、それでも十分楽しい。
近衛と一緒に過ごせる時間が、俺にはとても楽しいんだ。
「ううっ…」
「どうした?」
「うん、ちょっと寒くなってきたかなって…」
「そういえば…なんだ、この霧?」
いつのまにか、俺達がいる公園の広場には霧が立ち込めていた。
まるでこの広場と外を隔離するかのような雰囲気すら感じられる。
すると突然、茂みから音がして、誰かが現れた。
「あ…さ、佐藤さん?」
「こんばんは、ナオちゃん。 それに…レオ君」
ん? 何だか様子が変じゃないか? 俺のことをレオ君って呼ぶなんて…
「ど、どうしたんだよ佐藤さん。 何だか様子が変だぞ?」
「いやだなぁ、レオ君。 別に私は変じゃないよ」
「で、でも…」
「ナオちゃん……レオ君はね…私のものなんだよ。 だから返してもらおうと思ったの」
「な、何を言ってるのよ! 対馬は…その…ア、アタシの…えっと……」
何だかドス黒いオーラを放っている佐藤さんに、近衛がかみついた。
「うるさいなぁ、ナオちゃんは…」
佐藤さんはゆっくりと自分の手を上にあげると、途端に、その手から不思議な色の光が発生した。
ファンタジー映画とかで良く見そうな光だった。

「纏身…」


「うわあっ!」
「な、なんなのよこれ〜!?」
光の中から現れたのは、いかにもフカヒレが好きそうな魔女っ娘の格好をした佐藤さんだった。
「えーっと…佐藤さん?」
「うふふ。 この格好、変かな?」
いや、変とか言うレベルではないほど痛々しいのですが…しかし、そんな姿の佐藤さんの目には全く光がない。
その外見からは想像もできないほど、狂気のようなものが感じられる。
「そうかもしれないけどね…こういうこともできるんだよ」
佐藤さんがゆっくりと手を前に出すと、近衛の体が少しだけ浮き上がった。
「キャァッ! ちょっと、何するのよ!」
近衛はもがいたが、どうすることもできなかった。
「言ったよね、ナオちゃん。 レオ君は私のものだって。
だから…ナオちゃんが邪魔なの。
 大丈夫だよ、死なない程度にするから…」
「や、やめろ佐藤さん!」
「ほぅら…バァン」
一気に近衛の体が弾き飛ばされた。 このままじゃ公衆トイレの壁に叩きつけられちまう!
「あくっ! あ…あなたは……」
「誰…?」
突然誰かが現れて、近衛の体が激突する寸前でキャッチしてくれた。
「本当にこうも早く行動に移すなんてね…」
今の佐藤さんのことを少なからず理解しているらしいその人は、どちらかと言えばヒーローというよりも悪役に近い。
しかし、近衛を助けてくれたのは確かだし、とりあえずは何とかしてくれそうだ。
「あ、あの…」
「ごめんなさい、ちょっと気絶していてね。 OK? 当て身」
「はうっ」
その言葉の後すぐ、近衛は急にガクリとした。
「ちょ、ちょっと!」
「安心しなさい。 気を失わせただけだから。 さてと…」
そして白い魔人は、今度は佐藤さんのほうに向き直った。
「その力、アナタには過ぎた力よ」
「邪魔するんですね…あの化け物じゃないけど、消えてもらおうかな」


「ハッ…! これは…」
「ともねえ、どうしたの?」
「うん、透子さんの気配を感じる…あっちのほうから」
俺達は『オアシス』という名前のカレー屋で夕食を食べていた。
そこで今後の行動を考えていたんだけど、どうやらもうその必要はないらしい。
ともねえが感じた方向は、この町でも一番目立つ公園。 透子さんは多分、もう纏身して戦っているんだろう。
「行こう、ともねえ!」
「うん…だけどもう一つの気配、何だか怖い…」
よく見ると、ともねえの体が小刻みに震えていた。
ということは、相手はかなり恐ろしいやつだってことか…?
「と、とにかく急ごう、空也」
「よし! すいませーん、お勘定お願いしまーす」
「はいはーい! 海軍カレー中辛2つで1400円でーす!」
「それじゃ、2000円」
「2000円のお預かり、残り500円のお釣りでーす!」
「…計算間違ってるけど?」

「ムッ…!?」
鍛錬のため軽くジョギングをしていたのだが…何だ、この妖気は。
どうやら松笠公園のほうから感じるようだが。
ふと、帰宅した時に家の前で会ったあの二人のことが思い出される。
まさかとは思うが、レオにもしものことがあっては、レオの両親や近衛に会わせる顔がない。
「行ってみるか…」
少し心配になり、私は公園のほうへと足を向けた。


俺達は気配のするほうに向かってバイクを飛ばした。
到着したその場所は、霧の結界に覆われているような状態だった。
でも、普通の人はそれに気づくこともない。 帰り道の途中でも、ジョギングのコースでも。
結界に囲まれたその場所が、そこにあることすら気づかないようだ。
だけど、そこにいた先着はその気配に気づいているようだ。
それは俺達が夕方に出会った、凛とした女の子だった。
「あ、あなた方は…」
「もしかして…君、この気配がわかるの?」
「いえ、なんとなくですが…とても嫌な予感がします。 もしかして、レオに何か関係が…」
ちょっと考え込んでいるようだったが、もう一刻の猶予もない。
「ともねえ! もう始まってるかもしれない! 中に入ろう!」
「待ってください。
私もお供します」
彼女は決意に満ちた目で俺たちを見つめて言った。
「き、危険だよ…あぅ…」
「大丈夫です、日ごろから鍛えてありますから」
その自信がどこからくるのかよくわからないが…相手は普通の人間じゃ太刀打ちできないようなやつだぞ?
「どうしよう、ともねえ」
「駄目と言っても行きますよ」
「わ、わかった。 君も、弟が大事なんだね」
「な、なぜ弟と?」
「だって、私の姉さん達や妹達と同じ目をしているんだもの。 え、えっと、名前は…」
「鉄です。 鉄乙女」
「うん、それじゃ行こう、鉄さん! それと、今から目にすることは、誰にも言っちゃだめだよ」
「わかりました」
ともねえは霧の結界の前に立つと、いつもの構えをとった。
ついつい、俺はごくりとツバを飲み込んでいた。
「はぁぁぁぁ…纏身!」
ともねえの体は光に包まれ、あっという間にジガの姿へと変わった。
「こ、これは…!? そうか、これこそ私が感じていた内なる力…」
「行こう。 多分ジガのパワーなら、こんな結界だって壊せると思うから」


近衛を助けてくれた白い魔人はもうボロボロだった。
魔女っ娘に姿を変えた佐藤さんに近づくこともできず、ただ玩具のように振り回されているだけ。
力の差は歴然としていた。 どれだけ凄いパワーを持っていても、当たらなければ意味はない。
突っ込んでいっても見えない壁に遮られているかのように進めず、衝撃波や電撃でたちまち攻撃されてしまう。
「クッ…まさかここまでとは…OKじゃないわね……」
「あれ? おかしいなぁ…私を倒すんじゃなかったんですか?」
ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべる佐藤さん。 もうそこには、あの優しい佐藤さんはいなかった。
「そこまでだ、佐藤!」
い、今の声は…乙女さん!?
声のするほうを見ると、そこには乙女さんと、白い魔人に似た黒い魔人、そして俺と同じぐらいの歳の男がいた。
「…遅いわよ、二人とも」
「透子さん…ごめん。 二人とも、透子さんと他の人を頼むよ」
「うん、わかった。 みんな、危険だから離れるんだ」
空也と呼ばれた男に促されて、俺達は佐藤さんと黒い魔人から距離をとった。
その二人の間の空気が歪んで見える。
「むぅ…」
「乙女さん、加勢しないの?」
「…悔しいが、今の私では力不足らしい。 世の中にはまだまだ上が存在するんだな。
 せめて、地獄蝶々があれば…」
熊や虎でも倒せそうな乙女さんですら、戦う前から勝敗がわかっているなんて…
今にも激しいバトルが展開しそうなその時、突然黒い魔人が普通の女性の姿になった。
いや、これは戻ったというほうが正しいのか。
「トモちゃん、何やってるの! アナタ、本気でその娘を止めるつもり!?」
「大丈夫ですよ、透子さん。 私、大丈夫ですから」
こっちを向いてニコリと笑った後、すぐに佐藤さんの方に向き直った。
「もう一度、あの時の私に…私は傷つけたくないんだ…」
女の人は目を閉じて、指輪をはめた手をゆっくりとかざした。
「…まさか、またアレになるっていうの!? 無理なんじゃ…」
「ともねえはあの娘を助けたいんだ。 人を守るという気持ちがあれば、そんなことは乗り越えられるって、ともねえは言ってたよ」
「す、凄い気だ! これは、今の佐藤と…いや、それ以上か!?」


「超・纏・身!」
ともねえと呼ばれていた女の人の体がものすごい光を放った。
「むぅ…こ、これは!」
光が晴れたその先にいたものは、杖を頭の上でクルクルと回してからキメポーズをとった。
「魔法少女マジカルともねえ! みんなのピンチに即参上! あう!」
「やった…やっぱりともねえは凄いぜ!」
さっきの背の高い、ちょっとキツめの外見はどこへやら。 今俺達が目にしてるのは可愛い魔法少女だった。
「…や、やっぱり痛いわね…それにしても、不可能を可能にしちゃうなんて…トモちゃんは凄いわね」
「用は心なんだよ、透子さん。 それこそがともねえの最大の武器なんだ」
白い魔人はやれやれという感じだった。
「佐藤さん、だったよね? だめだよ、仲良くしなくちゃ。 その魔法は、みんなを幸せにするためにあるんだよ?」
「うるさいなぁ…消えちゃえ!」
電撃が彼女を襲ったが、目の前で突然消えてしまった。
「!? そんな…」
「みんな、みんな仲良く! ミルク・クッキー・チョコプリン……(以下略)」
杖を頭の上でクルクルと回し、呪文を唱えだした。 つーか、呪文長いよ。
しかしまぁ、律儀な事に佐藤さんもそれをずっと聞いていた。
手を出しちゃいけない気がするのかな?
「黒き心に愛の浄化を! いい子になーれ! パープル・ストライク! あう!」
かざした杖の先から暖かい光線が放出され、佐藤さんの体全体を包み込んだ。
「う…ううぅ…!」
佐藤さんは抵抗していたが、次第に力が抜けていくような感じになっていった。
「今だよ、対馬君! 佐藤さんに、君の気持ちを正直に伝えるんだ!」
「え…お、俺!?」
突然のご指名に、俺はちょっとパニックになってしまった。
「レオ、佐藤のためにも言うんだ。 すっぱりと諦めれば、佐藤も元に戻るかもしれんのだぞ」
「乙女さん…うん!」
佐藤さんを止めるのは俺しかいない…俺がやらなくちゃいけないんだ!
そう考えた俺は、佐藤さんの前に飛び出した。


いい子になぁれ いい子になぁれ いい子になぁれ いい子になぁれ いい子になぁれ…

頭にひびく…ダメ、立っていられない…
こ、こんなことって…これじゃレオ君を私のものにできない…そんなの…
「そんなの…嫌……」
「佐藤さん!」
「レオ…君…?」
レオ君が私に向かって叫んだ。
「私、どうしてもレオ君を手に入れないと…幸せになれない…」
「佐藤さん、俺のこと好きだってのは、嬉しいよ。 でも、俺には近衛がいるんだ!
 これは近衛のことが心の底から好きなんだ! 愛してるんだ!」
「私だって…レオ君のこと…」
「…ゴメン、佐藤さんの気持ちは良くわかる。 だけど……」
「レオ君…」
「君にはもっと他に幸せになれる方法があるはずなんだ! 頼むから…あの優しい佐藤さんに戻ってくれ!」
そんな…私…どうすれば……
「う…対馬…」
「近衛! 大丈夫か!?」
ナオちゃんがうなされている。
「逃げて…対馬…」
「逃げるもんか! お前を置いてなんてできるもんか!」
…そっか、そうなんだ…私、間違ってたんだ。
どこかでこうなったらいいなって思い続けて、レオ君は気づいてくれなくて…
そのままズルズルいっちゃって、知らないうちにレオ君がナオちゃんと付き合って…
どんどん嫉妬しちゃって、あの変な指輪を手に入れちゃったらそれが一層強くなって…
ナオちゃんに酷い事して、それでレオ君が傷ついちゃった…わかってたのに…
そうだよね、レオ君傷つけたら…意味無いよ。 頭の中のどこかで、いけないことだってわかってたのに…
謝らなくちゃ、二人に…そして、私はまた別の道で幸せにならなくちゃいけないんだ。
「対馬君、ナオちゃん、ごめんね…」
その時、私の心から黒い霧のようなものが晴れていったような気がした…


…今日は近衛と遊園地にデートの日だ。
あの後、佐藤さんは元の姿にもどり、乙女さんは姫を呼んで一緒に家まで送ってあげた。
姫の話だと、あれから丸一日目を覚まさなかったそうだ。
もちろんそのことについて姫から質問されそうになったが、そこは乙女さんが姫にきつく言いつけたおかげで事なきを得た。
佐藤さんはどうやら指輪を手に入れた後の事は記憶にないようで、またいつもの通りの優しい佐藤さんが戻ってきた。
むしろ今までよりもずっと優しくなったようで、ちょっと敬遠気味だった椰子も、佐藤さんとの付き合い方が少し変わったようだった。
指輪はというと…

「透子さん、どうしよう…」
「どうしようって言ったって…バラバラになったものね。 こんなもの、いらないわよ」
「じゃあ、すぐそこが海だし、ばらまいちゃおうぜ。 こんな危険な物、ほったらかしたらヤバイからな」

と、破片を海へと捨てていた。
それから『今日のことは他言無用。 もししゃべったらどうなるか…OK?』と脅された。
つーか、こんなこと言ったところで誰も相手にしないだろう。
あ、カニとフカヒレなら信じるかもしれないか。
ところで、あの人達はどうしてるんだろうか…
「何ボケっとしてんのよ、対馬」
「あ、いや…その…近衛は可愛いなって思ってた」
「な、何よ…そ、そんなこと…えっと…」
「ははは、さあ行こうぜ。 次は観覧車にでも乗るか?」
「う、うん! 行きましょ行きましょ!」
近衛は俺の手を引っ張って、乗り場へと向かった。
佐藤さんも元に戻ったし、俺のこともすっかり諦めたようだった。
近衛も無事だし、これで全部丸く納まった。
そして、俺は近衛のことを、これからもっと大切にするように、何があっても守るように心に誓うのだった。

オマケ

「えっと、こうだったかしら…ま、魔法少女マジカル透子! なんて…」
「あ……」
「く、空也君!?」
「いや、その……あ、あはははは…それじゃ俺はこれで……」
(ガシッ)
「このことは誰にも内緒…いいわね、OK?」
「は、はは……」
「OK!?」
「…イ、イエッサー!」
(言ったら間違いなく殺されそうだ…)


(作者・シンイチ氏[2007/04/29])

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