午後の家事を一通り終わらせて居間でお茶を飲んでいると、
高嶺が居間にテレビを見にやってきた。
 そうだ、高嶺におめでとうを言わなきゃな。
 「高嶺!お、おめでとう。やったじゃないか」
 「えっ?何がかしら?」
 「嫌だなぁ。私たち姉妹なんだから、け、謙遜なんかしなくて良いんだぞ」
 「え? 何のこと? 謙遜なんかしてないんだけど…。
 また何か尊敬されるような事を気が付かないうちにやっちゃったのかしら?
 さすがアタシね……。でもなんだろう…」
 高嶺は私の言った事がわかってないのか、顎に手を当てて考え始めた。
 あう?私の思い違いだったのかな?
 間も無く海が居間に入ってきたので、確認の意味で聞いてみる事に。
 「海、高嶺のことなんだけど…」
 海に話しかけると、海は高嶺をちらりと見た後、チイィッっと舌打ちをして、
 「あ〜!おめでとう〜。裏切りツインテールさん」
といつもと変わらない調子で、しかし額に青筋を浮かべて言った。
 「ちょっ、ちょっと何よ! 海。アタシが何したって言うのよ!」
 「高嶺お姉ちゃんが陰でこそこそやるのはツインだからと今まで目を瞑ってたけど、
今回ばかりは鶏冠にキちゃったよ〜」
 「海!高嶺の成功を羨む気持ちはわかるけど、お、怒るのはよくない!」
 「だって〜、一人だけ抜け駆けだよ〜」
 「えっ? 成功って? どんな凄い事やっちゃったの? アタシ?」
 「どんなって…。PS2のつ、『つよきす』に高嶺も出るんだろう?
 瀬芦里姉さんから聞いたんだけど、赤い髪のツインテールでツ、ツンデレの女の子が、
新ヒロインで登場するって。……高嶺、だよね?」
 私が問うと高嶺は目に生気の篭っていない、気の抜けた顔で力なくニコリと笑った。
 あぅ、この笑顔から察するに、出演してないんだな。
 ご、ごめんよ高嶺。


 「あ、あの娘じゃないかな?」
 あの後高嶺が「アタシのアイデンティティーを真似る奴がヒロインなんて
絶っっっっっっっ対に許せない!とっちめてやるんだから」と興奮しながら
家を出て行ったので、私と海は高嶺を止めるためについて来た。
 今、私の指差す方向では、赤い髪のツインテールの制服姿の女の子が、
クラスメイトらしい男女とラーメン屋台の暖簾をくぐって行った。
 暖簾が邪魔して顔が見えないので、私たちは横隣の屋台へ陣取る事に。
 隣の屋台から例の女の子の顔を横ざまにまじまじと見る。
 「フン!アタシの方がよっぽど美少女じゃないの。で、名前はなんていうの?」
 「う、うん。瀬芦里姉さんの追加調査によると、あの娘の名前は近衛 素奈緒。
 し、身長とか3サイズまで書いてあるよ…。どうやって調べたのかな?」
 「で!3サイズは何?」
 高嶺が素奈緒ちゃんを確認してから、ずっとぴりぴりしている。
 その証拠に、ツインテールを結んでいる青いリボンが
ぴくぴくと天に向かって波打っている。
 「ス、3サイズまでばらしちゃったら、あの娘がかわいそうだ」
 「何よ! 巴姉さんがアイツの3サイズ見るのは良くて、
アタシにはその権利はないってわけ!?」
 「高嶺お姉ちゃん、あんまり大きな声出すと、向こうに気付かれちゃうよ〜?」
 「それもそうね…。ホラ、巴姉さん、3サイズ!」
 「あぅ…、わ、わかったよ。身長は163センチ、
3サイズは上から79、53、77」
 「ホラ見なさい!アタシの方が胸が大きいじゃない」
 「え〜。大きいって言っても、たったの1センチだよ〜?
 それに向こうのほうが高嶺お姉ちゃんより4センチも背が高いじゃない。
 高嶺お姉ちゃんは、タダ背が小さくてまな板なだけだけど、
向こうはスレンダー、って言う言葉がぴったりじゃないかな〜?」
 「ぬぅぅぅ…言いたい放題いいやがって。覚えてなさい!」
 「わ、私は背が小さいほうが可愛くて好きかな」
 「それフォローになってないわよ。巴姉さん。」
 「ご、ごめんよ…」


 「それじゃあ、いよいよアタシがアイツをとっちめて、めでたしめでたしね」
 高嶺が目を光らせ席を立ち上がり、隣の屋台に向かおうとしたので急いで止める。
 「た、高嶺!だめだよ。」
 「何よ!勝手に人のチャームポイント真似しやがって、黙ってられないわ!」
 「せっかく絶滅危惧種のツインテールの仲間が見つかったんだし、仲良くしなよ〜。」
 「人を天然記念物みたいに言うなっ!」
 「高嶺、今、せ、接触はやめておこう。このSS書いてる人もあの娘が、
どういう喋り方するのか分からないみたいだし」
 私が言うと、海に羽交い絞めにされて暴れていた高嶺がピクリと大人しくなり、
 「? 何言ってるの巴姉さん? 何よ、『このSS』って」
 「何その気持ち悪い表現。 巴お姉ちゃん、大丈夫〜?」
 「あぅ……、自分で言っておいてなんだけど、何の事だか分からないな」
 「……なんか巴姉さんが変な事言うから、戦意が削がれちゃった。
 あ〜あ、バカバカしい、帰りましょう」
 「そうだね〜。私も次の用事があるし、先に帰るよ〜」
 ・・・

 「何だか、隣の屋台がうるさかったな」
 「フン、放っておけば良いのよ。あんな人たち」
 「くー!」
 ・・・

 海が先に帰ってしまったので、私と高嶺で二人っきり、日の落ちた夜道を歩く。
 高嶺がさっきからしきりに自慢のツインテールを撫でては不安そうな顔をしている。
 「……た、高嶺!私は何が起ころうとも、高嶺のことがだっ、大好きだからな」
 続けてツインテールを愛おしい気に撫でていた高嶺の手を取った。
 「なっ、何よ突然!びっくりするじゃない。」
 びっくりしたのか、高嶺は手を振りほどこうとしたが、私は繋いだ手に力を込めた。
 「いやだ!高嶺と、手を繋いで帰りたい…」
 「……巴姉さんが我侭言うなんて珍しいわね。しょうがない、家の前までよ。」
 「うん!」 
 私が答えると、高嶺もぎゅっと力を込めて、二人でしっかりと手を繋ぎ、家路に着いた。


(作者・SSD氏[2006/01/31])

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