俺達は今、小型艇に乗って船釣りを楽しんでいる。
…いや、あんまり楽しんではいないか。
ねぇねぇと釣りに出かけようということになり、それを見たお姉ちゃんがついて来たのだ。
しかし、これが全く釣れなかった。
ならばということで、ねぇねぇが泊めてあった小型艇を勝手に拝借し、ちょっと沖まで来たというわけ。
俺もお姉ちゃんもやめとけと言ったんだけど、全然聞く耳を持っちゃいなかった。
そして結果は…完璧にアウト。
長い時間糸を垂らしてはいるが、まったく手ごたえがなかった。
「釣れないね…」
「釣れないにゃー…」
「ほんとだね…ねぇねぇ、仕方ないからそろそろ帰ろうよ」
「うん、そうだね。うみゃ、エンジンかけて」
「はーい。それにしても、なんだか嫌な天気になってきたな〜…」
さてところで、ハプニングとは予期せぬ時に起こるものだ。
嬉しい事だろうが、嫌な事だろうが、全然身構えてもいないときに起こるもの。
そう、それはこの時もだった。
「あれ?おかしいな〜」
お姉ちゃんがエンジンをつけるのに四苦八苦している。
どうしたんだろう、機械には強いはずなのに。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「くーや、エンジンがつかないんだよ〜」
「どれどれ…」
俺はちょっと様子を見てみることにした。原因はすぐわかった。
それは不幸のどん底への始まりとも言えるかもしれない。
「ねぇねぇ、どうしよう…」
「どうしたのさ」
「…燃料切れなんだ」

…かくして、俺達は漂流するハメになったのである。


「いいか、これは『島流し』である。日曜日の夕方に迎えに来るので、それまでの2日間を生き延びるがよい」
全員の血の気がひいていくような感じだった。
完全に騙された。これはすべて館長の策略だったのだ。
楽しい合宿は一変、地獄のサバイバルへと変貌したのである。
館長が言うには、俺達はそれぞれが高い能力を持っているにも関わらず、協調性がなさすぎるとのこと。
で、この様な処置をとることになったというわけだ。
…祈先生に尋問した結果、発覚した事だった。
島に打ち揚げられていた小型艇も、俺達の目の前で館長が爆破してしまったし、とにかく協力して生き延びるしかない。
「それにしてもさ、なんでこんなとこにちっこい船があったんだろ」
「もしかして、私たちのほかに誰か島にいるのかも…」
「こ、怖いこと言ってるんじゃねーよ、よっぴー」
「だって…」
「まぁ、それはそれでいいんじゃない?その人たちとっ捕まえて遊ぶってのも面白そうだもん」
姫はこの状況までも楽しんでいるらしい。
さすが神経が図太いというかなんというか…
「そういえば温泉が上のほうにあったわ。男子と女子、交代で入りましょ」
「そんなものがあったのか。私は温泉大好きだぞ」
「温泉で素っ裸になったみんなの胸を揉める…一人ずつ…ウフフフ…」
…大丈夫か、この人。
「それじゃ私たち女性陣が先に入るわね」
結局姫が勝手に順番を決めてしまい、俺達男性陣は砂浜で待機。
「さて、覗き大作戦を開始するぞ、レオ」
「フカヒレ…さすがはこういうときには決断を素早くする男だな」
「じゃあ行くぞ、対馬二等兵」
「了解であります、上等兵殿!」


うふふ、温泉温泉♪
カニっち以外の対馬ファミリーには悪いけど、レディーファーストは守ってもらわないとね。
それに何と言っても、ここにいるみんなの胸を揉める…
よっぴーも、なごみんも、祈先生も、乙女先輩も、みんなみんな。
あ、カニっち忘れてたわ。まぁ、ちっさいから別にいっか。
さぁ着いたわよ。早速みんなの裸を拝んで…
「む?ちょっと待て、姫」
「な、なんですか乙女先輩。私は別に胸を揉んだりしようとか考えてませんよ?」
「嘘をつくな、嘘を。そうじゃなくて、どうやら先客がいるみたいだぞ」
湯煙でよく見えないけど、何かが動いてるってのはよくわかったわ。
温泉でメチャクチャはしゃいでるみたい。
「誰でしょう。あたしたちしかいないはずなのに」
「いや、そうとも限らんぞ。砂浜に打ち揚げられていた小型艇の持ち主かもしれん」
「それなら、事情を話して迎えが来るまで一緒に生き延びればいいですわ」
「待ってください、祈先生。それは相手が善良な者であればの話。
 もしよからぬ輩であったとするなら、それで全員に危険が及ぶことになるかもしれません」
じゃあ、ここは乙女先輩に任せてみようかしら…ってちょっと!
すでにカニっちが相手に接触してるじゃないの!
しかもいつの間にか服脱いでるし。
「おい、オメーら。ここは今からボクたちが入るんだから、とっとと出ていきな」
「うみゃ、何このちっこいのは」
「さあ、なんだろね〜」
「食べれる?」
「茹でればいけそうかもよ〜」
「オイオイ、何ワケのわかんないこと言ってんだよ」
何か変なこと言ってるわね…
別にカニっちがどうなっても私が無事ならそれでいいけど、一応会長だから何かあったら困るのよねー。
やれやれ、ここは出て行くしかないか。
「ごめんなさいね。ところで、あなたたちは誰?」


あ〜あ、結局途中の崖でアウトになっちまったぜ。いくらなんでも急すぎるよ。間欠泉もあったし。
これは乙女さんたちが戻ってくる前に、さっさと砂浜に戻ったほうがよさそうだ。
フカヒレは例のごとく転げ落ちてしまったわけだが…ま、とくに目立った怪我も無い。
肩を貸してやって、ゆっくりと砂浜へ向かっていった。
「ん?レオ、ちょっとふせろ」
「どうした?」
「アレ見ろよ、アレ」
フカヒレが指をさした先は、俺達が夕食のバーベキューをやった場所だ。
そこで奇妙な影が動いている。食べ残しを回収しているんだろう。
その先にはスバルがいるが、どうやら完全に眠りこけて気づいていないらしい。
「土永さん…じゃないよな」
「見りゃわかるだろうが。それよりも、どうする?」
「…俺達でとっつかまえるか?」
「正気かよ?乙女さんもいないし、スバルはアレだし…」
「バカ、あれが美人のお嬢さんだったらどうする?きっと漂流して助けを待ってたんだ。
 そんなときに俺達が登場すればどうなる?涙を流して感激し、俺にだきつき、そのまま夜のお付き合いを…」
「はいはい、それはともかく、ひょっとしたら打ち揚げられてた小型艇の持ち主かもしれないな」
影は一通り食べ物を集めたのか、森のほうへと動き始めた。
俺達にとっても食べ残しとはいえ、貴重な食料であることに変わりはない。
持って行かれるのだけはカンベンだ。
「待て!」
俺は飛び出してそいつの前に立ちふさがった。このまま行かせてなるものか。
せめて乙女さんが戻ってくるまではくいとめてみせるぞ!
「それは俺達の食料だ!勝手に持って行くなってんだ!」
「フッ、このクールガイと戦おうってのか?怪我するぜ、そこをどきな」
「泥棒しといて、なにがクールガイだ…」
「う、うるせぇ!さっさとどけっての!お姉ちゃん達が待ってるんだからな!」
そんなやり取りをしているとき、後ろから乙女さん達の声がしていきた。これでもう大丈夫だ。
とそのとき、いきなり俺を飛び越して女が男に抱きついた。その動きはもはや人間じゃない。
「クーヤ!」


俺を飛び越していった女は、男に抱きついたままでキスを連発している。
そして今度は、俺の横をものすごいスピードで通り抜けてまた男に抱きついた。
「瀬芦理お姉ちゃんずるいよ〜。くーや、大丈夫だった〜?」
「う、うん。大丈夫だから二人ともちょっと離れてくれよ」
「愛が足りないにゃー」
「しぼむ〜」
俺とフカヒレ、そして起きたスバルもこの状況が理解できないでいた。
とりあえず、一緒に戻ってきた乙女さん達に事情を聞くことに。
「乙女さん、これは一体どういうこと?」
「ああ、砂浜に小型艇が打ち揚げられていただろう?
 それの持ち主の柊瀬芦理さん、妹の海さん、そしてそちらが弟の空也さんだな」
「なんでも、船釣りで沖に流さたそうですわ。今まで魚と貝しか食べてないと言っていました」
「まったくマヌケな連中だぜ」
カニはちょっと不機嫌そうだった。多分、どちらも胸が大きめだからだろう。
「いやいや、それにしても助かったよ。探検しても誰もいなかったから、もうこの島で一生を迎えるのかと…」
「でも、お姉ちゃんなら本州まで泳げそうだよ〜?」
「そういえば、俺達が乗ってきた船が見当たらないな…」
あ、もしかしてこの人たちは館長が船をぶっ壊したことを知らないのか…なら、教えてやるとしよう。
「……というわけなんです」
「さすがにアタシでもそんな真似はできないにゃー」
「ま、まぁともかく、2日後には迎えが来ますから」
「私たちのじゃないのに〜」
「へ?」
「ううん、こっちの話〜」
こうして、突然のゲストを交えてのサバイバルが幕を開けることになった。
大変である事に変わりはないが、これはこれで結構楽しそうだぞ。
「フカヒレ、どうした?」
「いや、どっちも超美人だなぁと思って…ハァハァ」
「…やれやれ」


天気は快晴、ジリジリと照りつける太陽の日差しを浴びて俺は目覚めた。
姫が中心となり、まずは食料の調達をすることに。
「カニっちと対馬君、それに海さんと伊達君は山で食料調達。
 瀬芦理さんとフカヒレ君、なごみんと乙女先輩は魚をとってきて。
 空也さんとよっぴーと私は調理係ね」
「ありゃ、祈ちゃんはどーすんのさ?」
「だって役に立たないもん」
「そっか」
…生徒から役立たずのレッテル貼られてるぞ、祈先生。
「え〜、くーやが調理係なら私もそっちやる〜」
「「!!」」
何だ?空也さんも瀬芦理さんも、急に顔色が変わったぞ?
そんなに危険なのか?
「あら、そうですか?それなら調理係に…」
「お、お姉ちゃん!そんなことしたらそっちが人手不足になっちゃうじゃないか!
 俺は大丈夫だから、食料調達を頑張ってよ!ね!?」
「うう〜…くーやがそう言うなら…」
「じゃあ、海さんは山へ行ってください」
「ほっ…」
どうやら何かわからんけど危険らしい。
まぁ、もし料理がマズイと言ってもカニほどじゃないだろ。
「さぁ、それじゃ各自出発!」
俺は山だな。よし、頑張ってくるか。


拝啓、レオとスバル。お元気ですか。
俺は今、青春とは何たるかをひしひしと感じています。
これはどういうめぐりあわせだろうか。まずは姫に感謝したいです。
美人3人と一緒にいることができるとは、これほど嬉しいことはありません。
ハーレムですよ。夢にまで見たハーレムですよ。
「センパイ、何ニヤニヤしてるんですか。キモイです」
俺の横には椰子が座って一緒に糸を垂らしています。
乙女さんと瀬芦理さんは、素潜りで捕まえた方が早いと、そのまま陸に上がってこようとしません。
でも、俺は見ました!あの瀬芦理さんの完璧なボディを!
90はあろうかというあの巨乳!
カニの馬鹿にも少しは分け与えてあげれればと思ったりしています。
「おーい、バケツ頂戴。…なんだよ、変な笑い方してさ」
「いえいえ、どうぞ」
「どうだ鮫氷、何か釣れたか?」
「いやぁ、全然。椰子は釣れてるようですけど」
「どれどれ…おぉ、クロダイがいるじゃないか。椰子はなかなかやるなぁ」
「…どうも」
「よーし、そんじゃそこの君、まずはこれをクーヤのところまで持って行ってよ」
「ウッス!」
「ああ、そうだ。ついでだからあっちから水を持ってきてくれ」
「扇ぐ物もお願いします」
「オッケイ!まとめて全部面倒見ちゃうよ!」
いやぁ、俺って愛されてるなぁ。レオ、ついに俺の時代が来たみたいです。
おこぼれ頂戴しようなんて思っても無理だからな。

「なんかずっとニヤニヤしてたね。ちょっと気持ち悪いよ」
「まぁ、フカヒレセンパイですから」


「山〜の中〜で鳥が鳴く〜♪今日のおかずはなんだろな〜
 ♪おいしい〜おいしい〜き・く・ら・げ〜♪」
聞いたこともない謎の歌を歌いながら海さんは山菜を採っていた。
なんだか電波が飛び交ってるような気がしてならない。
もしかしてあのちょこんと出っ張った髪から受信してるのかも…
「それにしてもだりぃなー。もっと簡単にとれねーのかよー」
「文句ばっかり言うなっての。とらなきゃ食い物がないんだぞ」
「だってよー」
「まったくしょうがねぇ子蟹ちゃんだな」
そういいながらも、スバルの顔はほほえましそうだった。
そんな俺達を、海さんがじっと見ているのに気がついた。
「どうかしたんスか?」
「私って6人姉妹の末っ子なんだけど、その子が私のお姉ちゃんの一人に似てるなって思ってたの〜。
 なんとなくだけどね〜」
6人姉妹ってメチャクチャ多いな。空也さんも大変だ…
「えっ!?ってことは、ボクのような純情で可憐な天使のようなお姉さんってこと?」
「う〜ん、そのお姉ちゃんって、
 ツインテールでワガママでタカビーで貧乳で短気でマヌケでヘタレでツインテールなお姉ちゃんなの〜」
「あんまりこいつとの接点はないな…雰囲気が似てるってことか」
「ちょっと待てや!それって相当ヘタレってことじゃねーか!ヘタレはレオで十分だっての!」
「なんかえらい言い様ッスね。恨みでもあるんスか?」
「え〜、恨んでなんかいないよ〜。だって私、お姉ちゃん大好きだもん。
 お姉ちゃんのためなら脱税だって余裕でしちゃうよ〜」
微妙だ…本当に大好きなのか?


食材が運ばれるまでの間、俺は火をおこすことにした。
まぁ、こういうのは親父との修行の時にイヤと言うほど叩き込まれた。
覚えとかないと、本気で死にそうになった事もあったし。
「へぇ、上手じゃない」
「本当だ。誰かに教わったんですか?」
「ああ、ウチのクソ親父にね」
また死にそうになった時のことが頭の中にフラッシュバックしてくる…
ここはちょっとジョークでも。
「ついでに君のハートにも火をともしてやるよ。俺に惚れるなよ?」
「あ、大丈夫です。そんなこと天地がひっくり返ってもないですから」
「今のセリフ寒ーい。フカヒレ君みたい」
…だめだ、こんな美人なのに俺になびこうともしない。
しばらくしてから鮫氷君と伊達君が食材を持って来た。
山に行っていたほうは全員が戻ってきたようだ。
「おーい、魚獲ってきたぞー」
「こっちも山菜、だいぶ集めてきたぜ」
「フカヒレ君、あなた以外は?」
「みんなまだ取る気らしいぜ。それにしても瀬芦理さんってスゲェな。
 あの乙女さんと互角の運動神経してるぜ。乙女さんが二人いるみたいだ」
「胸は瀬芦理さんのほうがあるけどねー。ああ…揉みたい…」
なんか胸の話をしてると、この霧夜さんって目がキラキラしてるよな…
とにかく、これでなんとか料理はできそうだ。
「よし、腕をふるっちゃうぞ。佐藤さん、手伝いお願いね」
「はい、いいですよ」
「お姉ちゃんもやる〜」
「い、いいよお姉ちゃん!大丈夫だから!」
「しぼむ〜…じゃあ、お姉ちゃんは旗を振って応援してるね〜」


ねぇねぇ達が帰ってきたころ、もうほとんど料理はできていた。
余ってしまった魚は、丁寧に開いて干物にしておく。いざというときの非常食だ。
全員がおいしいと言ってくれたのは、素直に嬉しかった。
とりあえずの腹ごしらえをした俺達は、引き続き食料調達に勤しんだ。
ちなみに、祈さんが起きたのは食事ができてから。この寝起きの弱さは要芽姉様といい勝負だぜ。
そうこうしている間に空が赤く染まり、夜を迎えようとしていた。
「さあて、これから夜の一大イベント!肝試しのはじまりはじまり〜!」
「イェーイ!」
お姉ちゃんがどこからかクラッカーを取り出し、パンと景気のいい音を鳴らす。
まあ、定番と言えば定番のイベントだな。
「なぁ、ほ、ほんとにやるのか?」
「なんだ、怖いのかカニ」
「こ、怖くない!怖くないもんね!いちいちうっせーんだよ、ココナッツ!」
「それじゃー、私がアミダを作るわね。ええとまずは…」
砂浜に霧夜さんがアミダを書いていく。それを見たお姉ちゃんが一言。
「そのアミダ、ちょっとおかしいよ〜。霧夜さん、自分の思うとおりの組み合わせにしようとしてない〜?」
(す、するどい…ボーッとしてるようだけど、観察力はすごいわね…)
「そうなのか?姫」
「そ、そんなわけないじゃないですか、乙女先輩」
「どうも信用ならんな。じゃあ、私がアミダを作ってやろう」
(チッ)
結局、乙女さんが作ったアミダでグループが決まった。

第1班:伊達・蟹沢
第2班:霧夜・対馬
第3班:椰子・瀬芦理
第4班:海・鮫氷・佐藤
第5班:空也・鉄

「祈先生はここで待機です。それじゃ、順番にレッツゴー!」


第1班:伊達・蟹沢
「大丈夫か、子蟹ちゃん。やっぱ怖いんじゃねーのか?」
「こ、怖くない…怖くないもんね…」
やれやれ、そうは言ってるけど、体にべっとりくっつかれたんじゃ説得力ねーぜ。
歩きづらいったらありゃしねぇ。別に幽霊とかでるわけじゃないのにな。
こんなに震えちまって、まったく…
本当に世話がやけるねぇ。
「あのよー、スバル…」
「ん?」
「もしも…もしもだよ?自分の身近に好きな奴がいてさ、でもそいつが他の奴を好きだったらどうする?」
「そうだな…もし他人だったら…無理矢理にでも女を奪っちまうかもしれねぇ」
「んじゃ、友達だったら?」
「決まってるだろ。レオやフカヒレだったら、俺は喜んで身を引くぜ」
「そっか…スバルらしいね」
「そうか?」
「うん。あ、でもフカヒレはありえないんじゃね?」
「ん?おお、そうだな。あいつを好きになる奴はよっぽどのモノ好きだ。
 俺としたことが、気がつかなかったぜ」
「あはははは!」
まったく…人の気を知ってるのかね、この子蟹ちゃんは。


第2班:霧夜・対馬
「ちょっと、顔が真っ赤よ?対馬クン」
「そ、そうかな?」
そりゃそうもなるだろうがよ…ってまたからかわれてしまった。
すぐそこに姫がいる。俺と一緒に歩いている。自然と胸が高鳴る。
でも、姫は俺のことなんて眼中にないんだよなぁ…
「ねぇ、対馬クン…聞きたいことあるんだけど」
「ん?」
「あの瀬芦理さんと海さんってさー、だいぶ胸大きいと思わない?」
何をいきなり言い出すんだ、この人は。
「特にあの瀬芦理さんはすごいわよ!アレは90はあると見たわね」
「はぁ…」
目がキラキラしてる…ホントどうしようもないな。
今度の体育祭の借り物競争で『ダメ人間』が出たら、真っ先に姫を連れて行こう。
多分ギリギリセーフのはずだ。
「ちょっと、聞いてるの対馬クン!」
「あいた!頭叩かなくったっていいだろ!」
「あーら、別にそんなにつまってるわけでもないんだからいいじゃない」
「うぬぬ…」
「あーあ、女の子と一緒がよかったなー」
はぁ…佐藤さんの気持ちがわかるような気がするよ。
「そういえば対馬クンさ」
「何?」
「ぶっちゃけ、伊達クンとはどこまでいってるの?どっちが受け?」
「!!!!!?????」


第3班:椰子・瀬芦理
「あ、そこ足元気をつけなよ」
「どうも」
うーん、この子全然しゃべらないから苦手だにゃー。
モエは恥ずかしがって話さないってタイプだけど、この子はしゃべりたくないオーラがにじみ出ちゃってるもん。
…ひとりぼっちなのかな。ううん、そんなことないよね。
だって、あんなに沢山の仲間がいるんだもん。この子、幸せだよ。
「うう〜ぁぁぁぁ!」
「どうしたんですか?」
「もーダメ!全然しゃべんないのはもうやめ!つまんないもん!」
「で、どうするんですか」
「ジャンケンして勝ったら先に5歩進む!今からアタシたちはこのルールで行きまーす!」
「はぁ?(ギロリ)」
そんな睨んだって、要芽姉のほうがよっぽど怖いもんね。
その程度じゃなんてことないよーだ。
「睨んだってダメだよ!もう決めちゃったもんね!ジャンケンポン!」
「あっ…」
「キミ出さなかったからアタシの勝ちー!1、2、3、4、5!」
「何を…いいでしょう、そのルールでいこうじゃないですか」
「おっ、ノってきたねー」
「勘違いしないでください。勝負から逃げたと思われるのがイヤなだけです」
「はいはい、そういうことにしとくよ。ジャンケンポン!あ…」
「あたしの勝ちですね。それじゃ5歩と」
「こらー!歩幅広すぎるぞー!アタシの2倍は進んでるじゃないかー!」
「だって、そんなこと決めてませんから」
「よーし、だったらこっちも遠慮しないからね!ドンドン行くよー!」


第4班:海・鮫氷・佐藤
俺の名はシャーク鮫氷。
この真っ暗闇の中、俺の両手には可愛い女の子がいる。
早速よっぴーをおどかしてやれ。
「よっぴいぃぃぃ〜」
「きゃあぁぁぁ!鮫氷君、怖いよう」
基本に忠実な反応をありがとう、よっぴー。
うう…なんて俺は幸せなんだ。これはきっと、神様が俺にご褒美をくれたに違いない!
さて、どうしようか…どっちからいっちゃう?
よっぴー?いやいや、ここは海さんからいこうじゃないか。
空也さんだったっけ、今から俺はあなたと兄弟になります!
「う〜みさ〜ん!」
シャーク鮫氷超奥義・ルパンダ〜イブ!
かの有名な大泥棒が編み出した技を受けてみよ!
「海さん、危ない!」
「おっと〜。電気ショック〜」
「あばばばばばば!」
ど、どこからスタンガンを…無念。

「どうしよ〜。さすがにちょっとやりすぎちゃったよ〜」
「うん…でも別にいいですよ」
「このままほっとく〜?」
「そうですね、明日になれば気がついてひょっこり出てきますよ」
「佐藤さんってさ〜、なんだか普段は猫かぶってな〜い?」
「あはは、そんなことないですよ」
「そうかな〜?」


第5班:空也・鉄
この暗闇の中、男の女が一人だけ。
そうなればヤルことは決まってるんだけど…
俺はこの人には手出しできないでいた。襲ったら逆に蹴り殺されそうで怖い。
お化けよりもこっちのほうが恐ろしいぜ。
しかし、俺はこんなことぐらいでめげはしない!
何せあのお姉ちゃんたちから日々しごかれ(いじめられ)ているんだから!
これぐらいの障壁なんてどうってことない!
乙女さんってなかなかの美人じゃないか。これほどの美人、抱かなければ負けかなと思っている。
名前の通り、まだまだ可憐な『乙女』なのかもしれないんだからな。
それに、俺のテクの前にはどんな女でもイチコロさ。
「どうかしましたか、空也さん」
「うん、ちょっと足をくじいちゃったみたいで…」
「そうですか?診せてもらえますか」
屈んだ俺に不用意に近づく乙女さん。
フフフ、さてそれじゃ…
「いっただっきまーす!…アレ?」
がばっと襲い掛かったけど、そこにはもう乙女さんの姿はなかった。
おかしいと思う瞬間もなく、俺の体は投げ飛ばされていたのだ。
「ぐえっ!」
そのまま俺は木に激突してしまった。そして、目の前には怒りをあらわにした乙女さんが。
「なかなか度胸のあることをしてくれるじゃないか」
「はは…冗談!冗談だってばさぁ乙女さん!ちょっとしたチャメっ気だよォ〜ん。やだなぁもう〜。
 本気にした?ま、まさかこれ以上痛めつけたりしないよね?木に激突して背中痛いんだけど」
「あなたには何も言うことはない…とても愚かすぎて…何も言えない」
「うわぁぁぁぁぁー!」

ボグシャーン!


なんだかんだで、戻ってきた頃には仲良くなった俺達。
もどってきた俺はお姉ちゃんとねぇねぇに快方されていた。
「あーあ、またやったねクーヤ」
「いたた…」
「心配しているのはわかりますが、原因を作ったのはそちらです」
「わかってるよ…だから謝ってるじゃないか」
「その程度で許されると思うな!」
ゲシッ!
「イテェ!」
「あ〜!もうこれ以上やると、私が容赦しないよ〜!」
「…!(なんだ、この気迫は…只者ではない!)」
ここで、霧夜さんが間に割って入った。
「はいはい、もういいでしょ。どっちもおさえておさえて」
「しかし姫…!」
「この状況よ?こんな行動をする人が一人くらいいても不思議じゃないって」
「うぬ…まぁ、今回は私にも実害はなかったからよしとするか」
「ほら、クーヤ。もう一度ちゃんと謝って」
「どうもすみませんでした…」
「まったく…次はありませんよ」
はぁ、なんとか許してもらえたか…ま、全面的に俺が悪いんだしな。
とりあえずは反省しておこう。
「あれ、そういえば一人足りないような…」
「気のせいだと思うよ」
「そうかな?」


本日も朝から快晴なり。
こんなところにずっといたら干乾びてしまう。
相変わらず男性陣は海岸でゴロ寝だ。
「さて、それじゃ早速食料調達を…あら?」
「む、あれは館長の船じゃないか。予定よりも随分早いようだが…」
確かに、こっちに向かってくるのは館長の船だ。
「おー、ヘイゾーも早く迎えに来るなんて気が利くじゃねーか。…ん?知らねー人が乗ってるぞ?」
「あれは…おーい!モエー!タカー!ひなのーん!」
「瀬芦理姉さーん!」
へ?それじゃひょっとして、アレがこの人たちの言っていた家族か?
すげえ、どれも美人ぞろいじゃないか。
船が海岸に到着すると、真っ先に長身の人が飛び降りて駆け寄ってきた。
「みんな…よかったよう…うえぇぇ…」
「巴お姉ちゃん、泣かないでよ〜」
すると、今度はやたらと元気なツインテールが向かってきた。
「このバカイカ!心配かけさせんじゃないわよ!(バキャッ!)」
「グエー!!い、いきなりイナズマレッグラリアートかよ…」
「むう、荒削りだがいい蹴りだな」
いや乙女さん、そこは感心するところじゃないよ。
なんだか賑やかな家族だな。まぁ、俺達もそんなに変わらないかな?
「おい、せろり」
最後に館長に抱っこされて船から降りてきた少女がこっちに来た。
しかし、見た目とは違って威厳のようなものが感じられる。
こりゃヘタなことはできないな。
「あ…ひなのん。いやー…そのー…」
「今回はお前が事の発端らしいな。他所様のものを勝手に拝借するとは何事だ!」
「ばれてたか…まぁいいじゃん!こうやって無事に再会できたんだし…」
「ええい、黙れ黙れ!帰ったら説教だ!覚悟いたせ!」


館長は何故早く迎えに来たのかを帰りに話してくれた。
「昨日の夜の事なのだがな、急にそちらの3人の方々が訪ねてきたのだ。
 どうやって烏賊島に漂流したのかは知らんが、助けてほしいと頼まれたのだよ」
「そういえばともねえ、どうやって俺達があの島に漂流したかわかったの?」
「う、うん…ぽえむちゃんに占ってもらったんだよ」
「ぽえむはお前達のためだと張り切ってくれたのだぞ」
「で、アタシ達が迎えに来たってわけよ」
「こちらについたとき、瀬芦理が船を無断で借りていたことがわかったのだ」
占いって…祈先生みたいな人がいるんだな。
やっぱその人も胸がデカくて駄菓子ばっかり食ってるのかな?
「そういえば、要芽お姉ちゃんはどうしたの〜?」
「かなめは仕事で手が離せなくてな。ぽえむとほなみには留守番を頼んでおいた」
「ま、大したケガもなくて一安心ね」
「あれ?姉貴、俺の心配してくれてるの?」
「そ、そんなわけないでしょうが!アンタなんかもう一回漂流されてこい!」
「…にぎやかすぎ」
椰子のやつはその光景を遠くからじっと見ていた。
でも、嫌な気分とかそういうのじゃなくて、なんだかうらやましそうな顔をしていた。
カニは毛布と荒縄でぐるぐる巻きにされた瀬芦理さんにちょっかいを出している。
スバルがそれをやめさせようとしているが、全然やめる気配はなし。
海さんまで一緒になって遊んでる始末だ。
「こらー!うみゃー!いいかげんにしろー!」
「えー、だってそんなカッコしてたら遊んでくださいって言ってるようなものだよー」
「言えてるぜ。よーし、次は鼻の穴に指つっこんでやる」
「おいおい、やめとけって」
「くそー!おぼえてろー!フガガガ!」


無事に帰ってきた俺達は、約2日間一緒に過ごした柊家の人々と別れることとなった。
船が着いた所には要芽さんという人が車で迎えに来ていた。
巴さんと空也さんはバイクに乗って、あとの人たちは車の方へ。
瀬芦理さんはあの格好のままトランクに押し込められていた。
「皆の者には空也達が大変世話になった。柊家を代表し、改めて礼を言うぞ」
「いえいえ、私たちも楽しかったです。お二人の胸を見れただけで私はもう…」
「こら姫!…失礼しました」
「ふふ、よいよい。そちらがよかったら、いつの日か柊家を訪ねてくるがよいぞ」
「ありがとうございます。それでは…」
「うむ、さらばだ」
帰路へと向かう柊家のみんなを俺達は見送り、そのまま解散になるはずだったんだが…
「おい、そういえばフカヒレの奴はどうした?」
「ありゃ、言われてみればいねーな」

「おーい、誰かいませんかー。おーい、おーい…
 俺を置いてみんなで帰るんじゃねーよー!
 ちくしょー!結局俺はこんな役回りかよー!
 絶対幸せになってやるぅ〜〜〜〜!」


(作者・シンイチ氏[2005/11/22])

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