暖かい春の日。ともねぇが突然海が見たいと言い出した。二人でラスカルに乗って、海にでかけた。
太陽のの斜光が海に反射して、きらきらと光る。海鳥が群れを成して風に舞っている。
あまりにものどかな風景に、空也はためらいすら感じた。
「天気がよくて良かった……」
少し風がつよいけど悪くない。二人で思いっきり伸びをする。
そしてビニールシートを敷いた。その上に二人で体育座りをした。
「気持ちいいね!」
「うん、海の匂いがするよ……。風も気持ちいい……」
「ともねえは海好き?」
「うん。ずっと空也と二人で来るのが夢だったんだ……」
「なかなか二人っきりで出かけないしね」
夢か……。いつもはふたりで家事やるだけだからな。それでも忙しすぎろくらいだし。
「ともねえ。 夢はもっとでっかく持とうぜ!」
「ううん。 私は空也と少しずつ夢をかなえていきたいんだ……」
少しずつか……。空也は、巴がわからないように一抹の寂しさを手のひらに隠した。
小さいころから変わらない、江ノ島の風景がそこにはある。
来る機会がないから近いということを忘れそうになる。でもこれから何度もお世話になるような気がする。


空也はつぶやく。
「あの日の約束ずっと忘れないよ」
「空也が私を捕まえくれた……。ずっと離さないって……」
そんなこと言ったっけ。
「捕まえたときはもう夕暮れだったもんな」
「捕まえるときはお姫様お迎えに参りましたって言ってた……」
あれ?
「その後しばらく動けなかった」
「キスしたあと、しばらく君だけを見ていたいって言ってた……」
完全に事実とかみ合ってない。
「ともねぇ!」
「……なんだい?」
「言ってて恥ずかしくない?」
「あう……女の子にそんな質問しちゃだめだ」
おこられちゃいました……。
「ともねぇはかわいい乙女だもんよ!」
「あう!」
冗談だったけど嬉しそうな表情を見るとつっこむ気持ちも失せた。……しばらく海を見ていた。

ともねぇがバックから大きめのタッパーを2つ取り出した。
「空也、はい、お弁当」


「わーい」
ともねぇ特製弁当だった。おにぎりがマルの顔の形だった。タッパーのお弁当とはともねぇらしくない感じだけど……
「ともねぇがいつも使ってるキャラクターの弁当箱は?」
「今日は空也と二人だからおそろいがいいと思って……」
「やだ!
やだ
!
やだ!ともねぇはあのかわいい弁当箱使ってくれなきゃやだ! これ弟からのお願い!」
「あう……わかった。今度お姉ちゃんとおそろいの買おうな」
多分キャラもの……俺たちバカップルかな?
ともねぇがおにぎりを食べている。とてもおいしそうに食べる。俺もからあげを噛み締める。
そしておにぎりに手を出す。そのとき口元になんか付いた。砂かな……風強いし。
「空也、口元にご飯付いてる」
「え!」
体が反応してともねぇの方を向いた。するとちょうど唇と唇が重なった。
「あう」
ともねえはびっくりした。口元の米粒をキスで取ろうとしたらしい。でも結局普通のキスになってしまった。
なんか普通より恥ずかしい。だって……
「ともねぇ、自分でご飯粒つけたでしょ」
「あう…………あう……」
ダメだもんよ。しっかりばれてるもんよ。
「うん……前に海がやっているのを見て、羨ましくて、つい」
「でも、失敗しちゃったね」
「あう…………あう……ごめん。 忘れて!」
このまま終わるのも惜しいな。
ともねえの顔がりんごのように赤いのだが。
「今度はうまく出来るよね!」


「え! うん……」
ともねぇが恐る恐るキスをする。胸の鼓動が聞こえそう。それで胸揺れてねえ?
……今度はうまくいった。
「空也!」
「ともねぇ、おめでとう」
「あう!」
悔しいのでキスの仕返しをした。

「そろそろ、 かえろうか」
「うん……」
二人の歩く海沿いの道は紅く染まっていた。
「きれいだな……」
空也は巴の手を強く握った。
「またくる?」
「うん……いつか、また……きっと」
空也は巴を抱きかかえる。
「いつかじゃないさ」
「うん……」
「しんじてないでしょ」
「だって、 いろいろ普段は忙しいから……」
巴は笑ってごまかした。
「じゃあ、 記念日にしよう」
「えっ……」


巴は目を丸くした。そして、突然強い風が吹いた。
「せめて、 忘れないように」
空也がそっと小指を差し出す。

「ゆーびきり、げんまん」
「う〜そついたら」
「はりせんぼん」
「の〜ます」

「ゆ〜びきった!」

紅い世界がいつまでも二人を包んでいた。


数年後……

「あ〜〜、 お姉ちゃん、今後の予定プリーズ!」
「空也〜。 明日の夕方に大事な会議が入ってるんだけどね〜」
「うん」
今日四本目のマムシドリンク注入。
「初めて二人で夕方の桟橋で見つめあった記念日がはいってるんだよ〜〜」
「じゃあ、 パス!」
「まかせといて〜〜」
「次はいつあいてんの?」
「あさっての夜かな〜〜」
「あっ! でも、みんなで蛍を見に行った記念日がはいってるよ〜〜」
「じゃあ。 それもパス!」


みんなというのはポイント高いな!
「その次は、 お姉ちゃんにキス見られちゃった記念日なんだけど〜」
「じゃあ、そこ」
「しぼむ〜〜」
空也は電話を手に取った。
「もしもし、ともねえ……今日は帰るから」
「でも、むりしなくていいよ……体が大事だし」
「かえる〜〜の!!」
「あう……」
「ともねえ。 スパイス!」
「スパイス!」
「マムシ」
「マムシ」
「メイクミラクル」
「メイクミラクル」
「それって無理なんじゃ……」
「ダイジョ=ブ!!」
「わかった……じゃあ、ぽえむちゃんに代わるね」
「くーくん、 お仕事大変そうだけどがんばってね!」
「ありがとう、 ねーたん。 こんど暇ができたら占いでもしてよ」
「うん、 でも今のくーくんには占いは必要ないよ」
「!」


「くーくんは自分で運命を切り開く人だから」
「そんなことないよ」
「くすっ」
「わらわないでよ〜」
「じゃあ、 巴さんと夕飯作ってまってるから」
「ok!」

俺の力だけじゃないんだけどね。運命を切り開くには……

fin………………


(作者・ちくわ氏[2006/07/02])

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