5月5日、それは柊家にとって単なる端午の節句ではない。
今日は俺と海お姉ちゃんの誕生日なのだ。
いつものことなんだろうけど、今日はもう朝からお姉ちゃんがべったりとくっついている。
「ハッピーバースデー、くーや♪」
「ハッピーバースデー、お姉ちゃーん♪」
「ハッピーバースデー、ディア、くーやぁ!」
「お姉ちゃーん!」

ガシッ!

まぁ、こんなカンジ。
ちなみに、今日で10回目。
「まったく、クー君も節操がないね」
「で、でも、仲が良くていいじゃないか」
「うむ。 仲良きことは良いことだ」
そう言いながらも、雛乃姉さんは少々呆れ顔の様子だ。
今日の晩はお隣も呼んでの盛大な誕生パーティーをするそうな。
もちろん、主役は俺とお姉ちゃんなので、料理の用意はしなくていいことになっている。
珍しいことだ。
「今日はずっとくーやにくっついているからね〜」
「オネイチャーン」
「絶対誰にも渡さないからね〜」
「へ? 何のこと?」
「ううん、気にしなくていいよ〜。 くーやは、今日はお姉ちゃんとずっと一緒にいるんだもんね〜」
「ね〜」
「やれやれ、であるな」
「あはは…私は買い物に行ってくるよ。 行こう、ぽえむちゃん」
「うん…それじゃ行ってくるね、クー君」
「いってらっしゃーい」


…さてその頃、とある喫茶店にて…

「…4番」
「やった〜☆ いっちばーん!」
「2番! 2番よ!」
「ちぇー、3番かー」
「それじゃ、今日の『空也ちゃんを個人的にお祝いしちゃおう☆
ポロリばかりよ☆』の順番はこうなりましたー!」
「私が最後だなんて…」
「しょーがないよ、要芽姉。 大丈夫、ちゃーんと要芽姉の分も置いといてあげるから」
「それにしても、高嶺ちゃんが参加するなんて意外ねっ」
「ア、アタシは…だって、その……」
「はいはい、自分の気持ちを素直に表現できないタカなのでした」
「うっさいわね!」
「フフ…まぁ、高嶺も大人の女らしく頑張ってみなさいな」
「クーヤもこの企画を聞かせれば、感激する事間違いなしだもんねー。
 なんてったって筋金入りのスケベだし」
「そうそう。 あ、でもみんなの出番ないかも。
ワタシのこの体で、骨抜きにしちゃうんだもん☆」
「チッ……それはそうと、一番の障害がいるんだけど」
「ああ…確かに」
「そうよね、アレをクリアしないことには…」
「強敵だね」

…ザ…ザザ……
「高嶺お姉ちゃんのリボンに仕掛けた盗聴器が役にたったね〜。
 くーやは私が必ず守ってあげるからね。 こんな人たち全員を相手にしたら、くーやが干からびちゃうよ〜」


夜、ねぇやとねーたんを含む全員が食卓を取り囲み、そしてコップを手に取った。
「それでは…くうやとうみの誕生日を祝って、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
雛乃姉さんが音頭をとり、宴は始まった。
料理も酒もすぐなくなり、その度にともねえが後から後から出してくる。
お姉ちゃんも料理を作りたかったそうだが、それは全員から全力で却下された。
お祝いの席で殺人料理を出すわけにはいかない。
「ほらほら、モエも飲め飲め〜」
「あう、私は…」
「これ、強要してはならんぞせろり」
「今日はいいじゃありませんか…はい、姉さん」
「む、これはすまんな。 しかしかなめよ、お主何か企んでいないか?」
「いいえ、滅相もありません」
「はい、ぽえむちゃんも飲みましょっ」
「え、でも…うん」
「ほら、アンタ達も飲みなさいよ」
「それじゃ、お言葉に甘えて…」
「ありがと〜。 でも、高嶺お姉ちゃんにしては何だか親切だな〜」
「ア、アタシはいつもこんなもんよ」
ねぇねぇやねぇや達がやたらと他の人に酒を勧めていたのが気になるが、まぁそんなに深く考えことはないだろう。
案の定、雛乃姉さんとねーたんとともねえは、酔いがきてしまったのか早めに部屋で休むこととなった。
俺とお姉ちゃんも、一緒に休むことにした。
ホント、こんなに優しくてずっと傍にいてくれるお姉ちゃんがいて、俺は幸せ者だよなぁ。

「…どうやら全員眠ったみたいね」
「どうやらイカは気づいてなかったみたい。 海はわからないけど」
「うーん、こりゃ気づいていると考えてよさそうだね」
「ルールは一人ずつ空也ちゃんのところに突入し、思いっきり可愛がってくること。
 失敗したら、そこで終了だからね☆ それじゃ、レッツスタート!」


お姉ちゃんと一緒に寝ることになった俺。
ただ、今回はちょっと違うことがある。
それは、現在一緒にいる部屋がなんとお姉ちゃんの部屋であることだ。
何でも俺に渡したいプレゼントがあるらしい。
「はい、コレがお姉ちゃんからのプレゼントだよ〜」
かぶせられた布を取ってみると、なんとプラズマテレビが!
いかにも高そうだ…
「も、もしかしてコレがプレゼント?」
「どうしたの〜? 気に入らなかったとか…」
「いやぁ、そんなことないよ! メチャクチャ嬉しいよ! でも、高かったんじゃ…」
「気にしなくていいよ〜。 お姉ちゃんにどんと任せて〜」
そう言って自分の胸を力強く叩くお姉ちゃん。
こんなに高価な物をポンとプレゼントしてくれるなんて、やっぱり底が知れないぜ。
とりあえず、明日になったら部屋に運ぼう。
「こ、これじゃあ俺のプレゼントって、つり合ってない気がする…」
ちなみに、俺はお姉ちゃんに髪飾りをプレゼントした。
何も考えつかなかったもんで…
「ううん、そんなことないよ〜。 だって、くーやからもらったことがとっても重要なんだもん」
「お姉ちゃーん!」
「くーやぁ!」

ガシッ!

「ところで、何で今日はお姉ちゃんの部屋で寝るの? 俺の部屋にあんな仕掛けまでしてさ」
「それはね〜、邪魔されないようにするためだよ〜」
「?」
「それに、後でね……」


「ぬっふっふ、ワタシが一番だもんね〜☆」
抜き足差し足忍び足、空也ちゃんの部屋まで接近中よっ。
海ちゃんが一緒になって寝てるらしいけど、一緒に楽しんだらOKしてくれるわよね☆
待っててね、空也ちゃん。
今夜はこの帆波お姉さんが、空也ちゃんをたーっぷり可愛がってあげるんだから。
あんなことしてー、こんなことしてー…
「あらら、ヨダレが出てきちゃった」
いけないいけない☆
ここは抑えておかないと。
起こしちゃマズイから、そーっと扉を開けて、と。
「失礼しまーす…いたいた」
布団を二つ敷いて、仲良く寝てるわっ。
もしかして二人ともお楽しみが終わっちゃったのかしら?
随分とよく寝てるみたいだけど…
「そんなことよりも…ふっふっふ、いくわよ、空也ちゃん!」
必殺・ルパンダーイブ! 抱きつき!
「あ、あら? これってただの抱き枕…」
(バリバリバリバリ!)
「あばばばばばばば!!!」
そ、そんな…抱き枕二つに電流が流れる仕掛けを…
「む、無念……(ガクッ)」
<犬神帆波・リタイア>

「あれ? なんかすごい音がしなかった?」
「気のせいだよ〜(・ε・)」
「そういえば、言っていたギャング映画、録画してくれた?」
「もちろんだよ〜。 ちょっと見てみる〜? アレってくーやに声が似てたよ〜」


「あの人は海の人間性ってもんを全然理解してないわ」
だからあんな風に痛い目を見ることになったのよ。
まぁ、イカの部屋はハズレってことがわかっただけでも良しとしましょ。
問題は海の部屋にどうやって入るかよね…
「とりあえず接近して、と…」
『動くな。 そのままだ。 口をきくことも許さん』
…へ? 扉ごしなのに、もうバレたの? つーかイカのくせに偉そうね。
『いいか、ポケットの中身を全部ぶちまけろ』
「何よ、アタシに指図す……」
『しゃべるなと言っただろうが! (バンッ!)』
い、今のってピストル!? な、なんなのよこれは〜!
『ようし、俺が10数える間にさっさと消え失せるんだ。 でないとこのマシンガンが火を吹くことになるぜ』
「…ああ…あああああ……!」
『1…』
「ひぃぃぃ!」
『10!』
(ババババ! バババババババババ! ガチャン! バリン!)
『ウワーッハッハッハ!』
「きゃぁぁぁあぁぁぁぁ!」
『フーッ……釣りはとっとけ、このクソッタレ野郎』

「こら、たかね! 夜中に騒ぐとは何事だ!」
「ひひひ雛姉さん、ううううう海の部屋……!」
「うん?(トコトコ)」
「ああああ……!」
「何もないではないか! 我の眠りを妨げるとは!
ええい、夜も更けておるが説教をしてやる!
来い!」
「そんなぁ〜!(ズルズルズル…)」
<柊高嶺・リタイア>


バッカだねー、タカも。
ま、タカの死はムダにはしないよ。(死んでない)
要するに、真正面から突入するからダメなんだよ。
「ということで、アタシは屋根裏にいるのでした」
ここからうみゃの部屋まで一直線、まさか屋根裏から来るなんて思ってもいないよね。
部屋にたどり着いたら、とりあえずうみゃには黙ってもらって…
いやいや、一緒に楽しむってのもいいかもね。 うん、そうしよう。
「まっててねー、クーヤ。 お姉さんがおっぱいで挟んであげ…あ、あれ?」
か、体の動きが……に、鈍いぞ……
「あ!? う、動けない! そ、そんな!」
『どうやらそこまでのようだね〜。 ちなみにこの高性能メカ高嶺の言葉は、あらかじめ私が録音しておいたものだからね〜』
出てきたのは例のメカ高嶺か!? しかもバージョンアップしてるの!?
『そこにはトリモチと、頭が出っ張ったクギを仕掛けておいたんだよ〜。
 動けば動くほど、クギが服に食い込んで動けなくなるよ〜』
よ、よく見ると床からクギが出っ張ってる…ズボンとかに食い込んでる!
「こ、こんなもんは無理矢理でも…うわっ!」
『残念〜。 多分無理矢理ひっぺがえそうとしただろうけど、上にもトリモチが仕掛けられているんだな〜』
「くそー、うみゃー! 助けてくれないと、後で舌を掴んで泣かせちゃうぞー!」
『はい、そろそろ時間切れ〜。 ちなみに、このメカ高嶺にはステキな接着剤がたっぷりと内蔵されてるよ〜。
 あと30秒で自爆して、周りに接着剤をぶちまける仕組みになってるからね〜。 30、29、28…』
「ちょ、ちょっと待ってよ! こら! 悪ふざけもいいかげんにしろー!!」
『…3、2、1、0。 それじゃね〜』
「わーっ!!!!!!」

ドカーーーーーン!
<柊瀬芦理・リタイア>

「今度は上から変な音が…」
「気のせいだよ〜(・ε・)。 それじゃ行くよ、くーや」
「へ? どこに?」
「こっちこっち」


まったく、まともな人間はいないのかしら?
帆波も瀬芦理も高嶺も、結局は海一人にしてやられて…
「だが、しかし…」
もうワナは出尽くしただろう。
空也の部屋にはダミー、それにひっかかって帆波が再起不能。
高嶺はよくわからないけど、どうやら軽くあしらわれてしまったみたいね。
天井裏も瀬芦理が完全に捕まってしまった状態…
アナタ達の犠牲は決してムダではないわ。
足音を立てずに空也の部屋の前まで接近し、まずはゴム手袋をして扉に手をのばした。
無論、これは電流対策。
おそらく海は私が来る事を知っているだろう。
そこで初めから海の部屋ではなく、空也の部屋で寝るつもりだったに違いない。
隙を見て空也の部屋に移ったと考えたほうがいいだろう。
海、私の裏をかいたつもりでしょうけど、そうはいかないわよ。
「どうやら問題ないみたいね…しかし、どこに行ったのかしら?」
中に入って見回してみたが、どこにも空也と海の姿が見えない。
しかも、気絶している帆波がそのままになっていた。
これは予想がはずれたのかしら…
(カチッ)
「何かしら、今の音?」
するといきなり、天井から毛虫か何かよくわからない虫が、糸につけられ一斉にぶら下がったのだ!
こんなどこかのコントのようなワナを仕掛けていたとは!
ま、まさか…クッ……!
「こ…この柊要芽が……ごふっ」
<柊要芽・リタイア>


「相手の裏の裏をかかないとね〜」
「何の話をしてるの?」
「何でもないよ〜」
俺達が今いるのは、なんと要芽姉様の部屋。
お姉ちゃんはちゃんと了解をとってあると言っていたが、よく姉様が承知したなぁと思う。
わざわざ俺とお姉ちゃんの部屋をつなぐ抜け穴を通り、
さらに窓から庭に出て玄関までまわってから家の中に入ったのが気になるけど。
しかも、俺の部屋ではねぇやが寝てやがるし。
何でそこまで遠回りして行く必要があったのかはわからないが、とにかく姉様の部屋で寝ることにしたわけ。
まぁ、考えれば考えるほど頭が痛くなるから、考えるのをやめたんだけどね。
「う〜ん、それにしてもこのベッド、フカフカだな〜」
「本当だね〜。 こんなにフカフカなの独り占めにするなんて、要芽お姉ちゃんズルイよ〜」
いかに要芽姉様が恵まれた環境で寝ているか、改めて実感してしまう。
「それじゃおやすみ、くーや」
「おやすみ、お姉ちゃん」
二人揃って布団の中に入り、そのままお互いを見つめあったまま眠りにおちた。
自然と俺達の手は、固く握り合っていた。
大好きな大好きなお姉ちゃん、俺の大事なお姉ちゃん。
これからも仲良くいようね。

(くーやは私が守ってあげるからね。 これからもずっと、ずーっとだよ)


オマケ
…次の日…

「くーや…朝だよ…わぁ! か、要芽姉さん!? 帆波さんも…」
「んん…? あら、巴……な、何で私が帆波と寝ているの!? 巴、説明しなさい!」
「そ、そんなこと言われても…」
「ムニャムニャ……アン…空也ちゃんったらダイタン……」
「この馬鹿女! 私と空也を一緒にするな! 離れろ!」
「あうぅ、喧嘩はやめてよ…」
「…空也ちゃん、ちゅう〜」
「あ、ン……チュ………プハッ! こ……こんな女とキスするとは…なんたる屈辱……!!」
「や、やめてってばぁ! ……それにしても、瀬芦理姉さんはどこに行ったのかなぁ…」

「…暑っ苦しいなぁ、ここ。 おーい、誰かいませんかー?
 ここから出してくださいよー……
 おねがーい! 頼むから出してー! 助けてー!
 うみゃー! クーヤ! 頼むからさー!!」


(作者・シンイチ氏[2006/05/04])

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