「ともねぇ、掃除代わりにやるよ」
「大丈夫、すぐ終わるから」
でも海お姉ちゃんの部屋は配線が入り組んでいて、掃除しにくい。間のほこりもやらなきゃいけないし。
「コンセントはえーと」
ともねぇはコンセントを探すのに困っていた。コンセントがいっぱいだったので、そのうちの一つを抜いた。
ウゥーウゥーウゥー!
「うわぁ、たいへんだ……」
ともねぇは慌てて元に戻した。一歩間違えば大変なことになりそうだ。
「じゃあ、これ……」
ともねぇは隣のコンセントを抜いた。
しーん!……
「大丈夫みたいだよ、ともねぇ」
「うん」
ともねぇはようやく掃除を始めた。この部屋に入るときは寿命がマジで縮む。
ジジジジジッ……
「あれ?」
「どうした、空也」
ともねぇが振り返る。
「いや、なんでもない」
なんか音が聞こえた。
ジジジジジッ……
まただ。どうやらともねぇの隣の機械らしい。まずくないか?……
「ともねぇ。その機械気をつけてね」
俺は音を出してる機械を指差した。
「うん。平気、平気」
ともねぇは余裕だ。


ピッピッピッ……
あれ?なんか数字が動いてる。あら、やだ。これ時限式じゃない。しかもあと7秒。
「ともねぇ!あぶない!」
「え?」
バーーン!!!……と爆発とともに、あたり一面煙が立ち込めた。
「あっ、あっ……」
バタンッ
「ともねぇ」
倒れてるともねぇに声をかけても返事がない。ただの気絶のようだ。
「うわ〜ん。助けて海お姉ちゃ〜ん!」
「は〜い!お姉ちゃんですよ!」
「お姉ちゃん。ともねぇが爆発に巻き込まれて気絶しちゃったよ〜」
「あ〜。これは訛り電波発生機だね〜。ちょっと今回は厄介かもね〜」
「なにそれ?」
「簡単に言えば〜。この機械の電波を浴びるとなまっちゃうんだよね〜。だから巴お姉ちゃんも」
「あう……」
あっ気が付いたみたい。
「いった〜。ほんま気うしなうとこやった」
あれ?
…………
「ようするにともねぇはこのまま3日間はなまっていると」
「う〜ん。自然に任せるのがやっぱり一番じゃないかな〜」
「ウチはぜんぜんOKやで。なんか今だと、なんでもできそうな気がするし」
じきに慣れるとは思うけど。


「じゃあ、お姉ちゃんは次、数学だから学校に戻るね」
「うん。ありがとうお姉ちゃん」
海お姉ちゃんは白いハンカチを振りながら寂しそうに帰っていった。
「さて、これからどうするともねぇ」
「ウチ、空也とデートしたい」
「え?」
「楽しいとこ連れてってや」

で、柏木町駅前にやってきました。でもここって初デートで使うと別れるってジンクスがあるんだよな。
まあ、とりあえずはじめは無難に店がたくさん入っているキングススクエアにいこう。
「空也、お姉ちゃんと離れたらあかんよ」
「うん、わかってるよ」
歩く歩道橋が流れていく。ともねぇがぐっと俺の手を握る。
ニコッ……ともねぇが微笑む。
「ともねぇ、ご機嫌だね」
「うん、だってせっかくの空也とのデートやもん」
ともねぇがつないでる手をぶんぶん振る。ともねぇ肩外れそう。
「とりあえず、ネズニーストアに行こう」
「うん……」
中には上の階まで続く長いエスカレーターがあった。俺が一段上の乗る。
するとともねぇと目が合った。エスカレーターに乗って、身長が同じなんて……
「空也……」
「なに?」
ともねぇが周りをきょろきょろする。そして、耳元でささやいた。
「今日は二人きりやから……お姉ちゃんに甘えても……ええんよ……」
いきなりの爆弾発言にびっくりした。ともねぇの顔が薄いピンクに染まっている。
でもいつも甘えてるし、ここは男を見せないと。俺はともねぇの腕を組んだ。


「空也……」
「大丈夫。今日は俺がエスコートするよ」
「でも…」
「するの〜」
「わかった……」
よし、ともねぇはやっぱりこうでなければ。

夜の柏木町のコスモスワールドのやってきた。
「空也、観覧車乗ろ。観覧車」
観覧車なんてともねぇらしいなあ。中身は変わってない感じ。
「うわぁ〜。やっぱり高いなあ〜」
案外いつもと変わらない?
一番上までやってきたとき。
「空也、ウチ一つ言いたいことあんねんけど……」
「なに?」
「ふふふ」
ともねぇがかなり恥ずかしがっている。
「えへ!」
「なに!なに!なに!」
こっちまでにやけてしまう。
「空也のこと、めっちゃ……好きやで……」
「ゴフッ」
一発KOされてしまった。
「空也はどうなん?」
「好きだよ……」
「あ〜、よかった」
手を握って、肩に頭を乗せてきた。
でも、なんだろう、この胸に広がる妙な罪悪感は。


…………
「というわけで。要芽お姉様。今日の夕飯はお寿司になりました」
「しょうがないわね。あの二人が動かないんじゃ。今回は大目にみることにするわ」
「でも、なんか納得いかないにぁ」
…………
「3日間ずっとあの調子かしら」
「さぁね。でもよくああまで変わるよね」
「訛りのイメージとか、潜在意識らしいけど。あれは特殊ね。しかもまるでこっちに気づいてないし」
「ほっとこ、ほっとこ、今張り合ってもしょうがないよ」
…………
「はい、あーん」
「あーん」
ともねぇがスプーンでプリンを食べさせてくれる。
「おいしい?」
「うん。おいしい」
「ほんま、空也はかわええなぁ。ウチの自慢の弟やわ」
いたわりつくせりなわけで。かわいすぎて、ともねぇが輝いて見える。でも何かちがう。
「このまま時間がストップすればええのにな」
「え?」
「だってウチ、もともと引っ込み思案やし、元に戻ったら空也とこんなことできへんし」
「ともねぇ」
「ウチは自分がかわいくないんや。好きやのに全然空也に言えへんし。大きいし。口べたやし……」
「そんなことない」
「え?」
ともねぇは固まった。


「ともねぇはかわいいし、優しい、おしとやかだし、料理うまいし、言うことないよ」
「それって……そんなほめてもなんもでてけえへんよ」
ともねぇが俺をにらむ。ここは勇気を持って……
「俺には今日のともねぇはいつもとかわらないよ」
「ちがう」
声がはりつめている。
「ちがくないさ。俺はともねぇ全部が好きなんだ。言葉が変わったくらいで心が変わるなんてないよ。
おおきいのも、口下手なのも全部含めてともねぇが大好きなんだ」

ともねぇは思わず顔を押さえた。伝わった。俺のほんとの思いが……。
「ウチ……いまめっちゃ申し訳ない気分や……こんなことなら……」
ともねぇの目からポツポツと涙がこぼれた。
「好きって言わなきゃよかった」
「空也?」
「俺もなんか違うなって、思ってたんだ。今、言い直せてよかったよ」
「空也……でも」
ともねぇをそっと抱き寄せた。
「嫌いにならないよ。嫌いになるもんか。こんなに好きになったんだから……」
「ウチ、間違ってた、…………でも空也、空也のこと…………大好き…………」
「わかってるよ」
ともねぇはむせ返った。長い間募った思いを吐き出すように。


「ともねぇはかわいいし、優しい、おしとやかだし、料理うまいし、言うことないよ」
「それって……そんなほめてもなんもでてけえへんよ」
ともねぇが俺をにらむ。ここは勇気を持って……
「俺には今日のともねぇはいつもとかわらないよ」
「ちがう」
声がはりつめている。
「ちがくないさ。俺はともねぇ全部が好きなんだ。言葉が変わったくらいで心が変わるなんてないよ。
おおきいのも、口下手なのも全部含めてともねぇが大好きなんだ」

ともねぇは思わず顔を押さえた。伝わった。俺のほんとの思いが……。
「ウチ……いまめっちゃ申し訳ない気分や……こんなことなら……」
ともねぇの目からポツポツと涙がこぼれた。
「好きって言わなきゃよかった」
「空也?」
「俺もなんか違うなって、思ってたんだ。今、言い直せてよかったよ」
「空也……でも」
ともねぇをそっと抱き寄せた。
「嫌いにならないよ。嫌いになるもんか。こんなに好きになったんだから……」
「ウチ、間違ってた、…………でも空也、空也のこと…………大好き…………」
「わかってるよ」
ともねぇはむせ返った。長い間募った思いを吐き出すように。


「ともねぇ、泣かないでよ」
「うん……」
頬に流れそうな涙を指ですくった。
「俺、ともねぇを守るから。ともねぇが愛してくれる分一生懸命守るから」
「空也……ありがとう」
翌朝
「空也、空也、起きて、朝だぞ」
カーテンが開いて、朝日が目を直撃する。
「おはよう、空也。もう朝ご飯出来てるぞ」
「マジで?ごめん」
「いいよ。別に。私が早く起きただけだから……それと昨日のことなんだけど」
「それは、いや、その」
恥ずかしくてあたふたしてしまう。それはともねぇも一緒だった。
「私はお姉ちゃんだから……空也を守るのは……私だ」
「は?」
「弟がお姉ちゃんを守ったら……変じゃないか」
「あ、ああ」
いつものともねぇ全開だ。
「わかった。ともねぇ。これからもよろしく」
「あう」
やわらかい光が差し込み、いつもの柊家の朝が来た。


(作者・名無しさん[2006/04/22])

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