彗星が地球に衝突するなど、誰もそれを信じなかった。
海が自分なりに計算をしてみたのも気まぐれにすぎない。
だが、パラメーターの見落としに気づき
再計算を始めたとき、海は全身に冷や汗をかいていた。

(……大変だ。この人の言ってること、当たってるよ〜)

海はモニターを睨み、コンピューターと対話を始める。

(Q.正しい計算が各国首脳に認知されるまでの所要時間は?)

(A.推定所要時間は現在より338時間17分後です)

約14日。計算では彗星の衝突までは後約1ヶ月。
人類は貴重な残り時間のおよそ半分を
何の対策もせずに無駄に過ごしてしまう計算になる。
震える指で、海はコンピューターに次の質問を入力する。

(Q.各国首脳が状況を認知してからの残り時間で
 人類が実現可能な生存策を全てあげよ)

モニターに映し出された結果は、無情なものだった。

(A.検索結果:0件。該当するデータはありませんでした)

どっと汗が噴き出す。さらに海は質問を繰り返す。

(Q.今から準備を始めて人類が実現可能な生存策を全てあげよ)

コンピューターは少し沈黙し、やがてモニターに結果を示した。

(A.検索結果:1件)


コンピューターがはじき出した計画は、膨大な資産を必要とした。
経済的にも、人的にも。物資、そして何より時間。
海は全ての資産と人脈を駆使し計画を進めた。
そして、各国首脳が正しい計算結果を知らされ
ただ愕然としていたときにも計画は着々と進んでいた。

5月24日。

(なんとか、ギリギリで間に合ったよ〜)

一般人は、何も知らされていない。
ほとんどの人が何も知らずに静かに滅びの時を待つ、その日に。

(ポチッとな〜)

計画を実行するボタンを押すと
海は大きく息をついて自分の部屋を出る。
何の皮肉か、彗星の予想落下地点は日本だった。
だから、計画が成功すれば何事もなく明日を迎えられるが
失敗すれば、眠っている間に、全てが終わる。
ならば、部屋を出て向かう場所は一つだった。

「くうや〜、一緒に寝よう〜♪」

「あれ……なんか久しぶりだね、海お姉ちゃんと寝るの」

「うう、このところ、ちょっと忙しかったんだよ〜。
 でも……お姉ちゃん、くうやのために頑張ったよ……」

愛しい弟をその胸に、守るように抱きしめて眠る。
世界なんて知らない。ただ、愛しい人が守れればいい。
海は久しぶりに深い眠りについた。明日二人で目覚めるために……


(作者・Seena ◆Rion/soCys氏[2006/04/20])

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