「あ〜あ、今年もこの日が来ちゃったか…」
今日は2月14日のバレンタインデー。同時に、アタシの誕生日でもある。
でも、イカがいるせいでみんながほとんど忘れちゃってるのよね。
イカが修行から帰ってきて初めての2月14日なんか、もうみんな完璧に忘れてたもの。
みんなイカにチョコをあげることで頭いっぱいなんだから!
あの時なんて、一人寂しく自分で誕生日を祝ってたわ。
「…なんだか無性に腹が立ってきたわね」
とりあえず居間に行って、イカを発見。
ああ、もう!イカを見たら余計に腹が立ってきたわ!
「イカ!ストレス解消の道具になりなさい!」
「な、なんだよいきな…」
「うっさいわね!くらえー!」
新必殺技・トラースキック高嶺スペシャル!(ドゴォ!)
「おげぁぁぁ…」
あら、壁にぶち当たっちゃったわ。イカの奴、完璧に目を回しちゃってるじゃないの。
ま、別にコイツがどうなろうと知ったこっちゃないわ。
「あー、スッキリした。やっぱいざという時は、イカをいじめるのに限るわねー」
「また高嶺お姉ちゃん、くーやをいじめたね〜?」
「う、海…」
ヤバイわね、こいつに見つかっちゃうなんて…
「じー」
「な、何よ…」
「うぅ〜…仕方がないから今日は許しておいてあげるよ〜。ほら、くーや大丈夫〜?」
「う、うん…な、なんとかね」
…な、何なの?
すっごい不気味じゃない!海が報復をしてこないなんて!
絶対何かあるわ!油断しないように気をつけないとね…


雛姉さんと要芽姉様が仕事、海が学校に出かけていった。
巴姉さんとアタシは今日は講義はないし、イカと瀬芦理姉さんは当然のようにヒマ。
昼ご飯を済ませて何をしようかと考えていたら、部屋に巴姉さんがやってきた。
「た、高嶺…買い物に行かないか?」
「いいわよ。荷物持ってくれるなら」
「あぅ…べ、別にいいよ」
「そう?それじゃ行こうかしら」
どうせヒマなんだし、ショッピングでも楽しもうかしら。
しかし外に出てみると…全然楽しむ要素なんてどこにもない。
そこら中でカップルがイチャイチャしてる。
チョコを渡す奴までいて、もうイライラしてくるわ。
「あ、あの…高嶺…空也にチョコレートを買っていかないか?バレンタインだし…」
「何よ!あんな奴にチョコなんか買わなくていいわよ!あったまきた!もう帰る!」
「た、高嶺!」
みんな結局そうなのよ!どうせアタシの誕生日なんか覚えてないんだわ!
イカにチョコをあげることしか頭に無いんだから!
やっぱり今日は部屋でじっとしておくのが一番だわ!

家に帰って部屋に戻ると、隠してあったチョコを手にとってため息をついた。
「…どうしようかしら、コレ」
前の日にチョコはこっそり買っておいて、自分の部屋のあるところに隠しておいた。
ど、どうせ弟なんだし…もちろん義理だけどね、義理!
そんなの当たり前よ!
いきなり帰っちゃったけど、巴姉さんどうしてるかな…悪い事しちゃったな。
…なんだか疲れちゃったから一眠りしようっと。


起きたらもう夕方だった。
かなり寝ていたみたいね。体中がなんだかダルいわ。
「はぁ…」
イカに渡すはずのチョコ。かわいいラッピングをしてもらったのに…
「なんだか渡す気がなくなってきたわね…」
ゴミ箱にでも投げようかとした時、一階から瀬芦理姉さんの声が聞こえてきた。
「おーい、タカー。メシだよー」
「はーい」
チョコを捨てるのをやめて階段を下りてくと、どういうわけか明かりがついていない。
恐る恐る居間まで近づいてみると…
「タカ、誕生日おめでとう!」
(パン!パン!パン!)
やかましいクラッカーの音が鳴り響き、一斉に明かりが点灯した。
お隣も来てるし、机の真ん中には大きなケーキが乗っている。
「え?え?何なの、コレ…」
「何を言っておる、今日はたかねの誕生日であろう?だから誕生日ぱーてぃーをするのだ。
 ほなみとぽえむも呼んだのだぞ」
「いつも高嶺の誕生日、情けないことだけど忘れてしまっているでしょう?
 だから今年からは盛大にやろうと決めたのよ」
「クーヤに感謝しなよ?言い出したのはクーヤなんだから。
 でないとアタシ、本当にタカの誕生日忘れるところだったんだから」
「イカ…」
「いやぁ、だって前なんか誰も覚えていなかったんだもん。だから…」
なんだ、アタシったらそんなことも気づかずにイカや巴姉さんに…
そうか、だから海もあの時何もしないで許したんだ。
ヤダ、なんだか涙が出てきちゃった。
「あ、ありがとう…」
「泣かないでよ、高嶺ちゃんっ!ほら、誕生日プレゼント☆」
「姉さんと一緒に買いに行ったの…」
中身はアタシが前から欲しかったかわいいブローチだった。
どうしよう、こんなに嬉しい誕生日って生まれて初めてだわ。


その後は、いつものように呑めや歌えやの大宴会。
どうやら全員がすでにイカにチョコを渡しているようだった。
「ねぇ、イカ」
「ん?どうしたの?」
「あ、後で部屋に来てくれないかしら?その…チョコを渡すから…」
「いいよ。俺も姉貴にプレゼント渡すから」
イカもプレゼントを買ってたんだ…
ふふふ、これからはちょっといじめるのを軽くしてあげようかしら。
「ほれ、タカも飲め飲めー!」
「あ…巴さん、私からバレンタインチョコ…あげる…」
「い、いいの?」
「うん…」
「あらあら、ぽえむちゃんは巴ちゃんにお熱なのね☆」
「まるもちょこれーとをもらって、大層ご機嫌だのう」
「ギュッシュベル(訳:まーな。くれたのは巴とぽえむとひなのんだけだけどよ)」
「くーや、くーや、くーやぁ。はい、チョコレートキッス〜」
「う〜ん、あま〜い…ってお姉ちゃん!もう酔ってるだろ!?」
「こら、うみゃ!抜け駆けはひどいぞー!」
「ワタシもワタシも!」
「アナタはやらなくてもいいでしょう?目障りだからさっさと消えてくれないかしら?」
「いやーん、要芽ちゃんこわーい」
こんな調子でパーティーは盛り上がっていった。
今日はアタシにとって、忘れる事のできない一日になりそうね。
ありがとう、みんな。
ありがとう、イカ。


オマケ

「おーい、姉貴。入るよ」
「どうぞ」
イカが部屋にやってきた。
海と瀬芦理姉さんと帆波さんはまだ下でどんちゃん騒ぎをしている。
要芽姉さんは雛姉さんと一緒に、雛姉さんの部屋で静かに呑んでいるようだ。
巴姉さんとぽえむはすでに疲れて、巴姉さんの部屋で寝てしまった。
ちょっと気に入らないけど、今日ぐらいはいいわよね。
「そ、それじゃチョコを…」
「いや、俺が先に渡すよ」
「あら、そう?」
それにしてはプレゼントらしきものを持っていないわね…
ポケットにでも入れているのかしら?
「じゃ、ちょっと後ろ向いてて」
「へ?いいわよ」
なにやらゴソゴソとしているけど、何をやってるのかしら?
「いいよ、こっち向いて」
「プレゼントってな…キャアァァ!」
何で裸になってるのよ!コイツ、バカじゃないの!?
「そう!姉貴へのプレゼントは俺自身さ!
 バレンタインと同じ日なんだから、今日の夜はお互いの姉弟愛をこうして温めようと…」
「こ、こ、こ………このバカー!!!!!!」

ドグシャーン!!ガチャーン!

「ぐわぁぁぁぁぁ……うげっ(ドサッ)」
「なんだー!?クーヤが素っ裸で落ちてきたぞー!?」
あ、窓から落ちちゃった…
でもいいわ、あのエログロイカ!乙女心ってやつを何だと思ってるの!?
ちょっとでも軽くしようとか思ったアタシがバカだったわ!
明日からはもっともっといじめてやるんだから!覚悟しなさい!


(作者・シンイチ氏[2006/02/14])

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