なんか股間が涼しい。股間だけ滝に打たれている気分だ。はっと目を覚ます。まだなんか眠いけど、サングラスを
していてもここの日差しは目に入ってくる。もっと大きいやつにすればよかった。サングラスをはずして股間が滝に打
たれているのを確認する。ミネラルウォーターが俺の股間に注がれている。空太郎に水浴びをさせているその人
は。
「空也、 起きなさい、もう10時よ。」
姉様がミネラルウォーターを一口飲んで俺に渡す。そんな姉様はかなりセクシー。
「おはよう、 姉様。今日は早起きなんだね。」
ミネラルウォーターを飲み干して、ふたを閉める。姉様は隣のイスに座って足を組んだ。
「正確には、九時半に起きたわ。そしてこうしてあなたの寝顔をみていたの」
「きゃ、恥ずかしい」
あわてて顔を隠すリアクションをする。
「大丈夫よ、ここには私とあなたしかいないわ、誰にも見られてないわよ」
「だから姉様に見られるのは恥ずかしい」
そういわれた姉様は少し困った顔をした。なんか悪いこと言った気がする。
「わかったわ、 今度から気をつけます」
姉様の顔がにやついている。絶対この人はわかっていない。でも九時半起きを早起きといって胸を張っている姉
様がかわいいので許すことにする。


今俺たちがいるのはバリ島近くの無人島、でも設備は行き届いていた。姉様の写真を見たどっかの国のバカ王
子がお近づきの印としてくれたらしい。姉様のスケールの大きさにも驚くけど、その人のバカのスケールの大きさに
も正直驚いた。一度も会ったことないのに。


「静かね」
聞こえるのは波の音だけ、日差しは強いけどテレビで見るような南国の海が一望できた。
「このまま、時間がとまればいいのに」
姉様は波の音にうっとりしている。この人も普段は多忙を極めてるからな。でもこの人のやさしい笑顔はいつも俺
を癒してくれる。
「あなたが望めば、働かなくても十分やっていける貯蓄はあるわ」
「俺は姉様がそばにいてくれるだけで十分だよ」
「困ったことがあったら何でも言うのよ、すべて私が解決するわ」
事実この人はすべての問題を解決してくれそうだ。頼れるときは頼ろう。椰子の実ジュースを飲みながら考えた。
「それにしても敵が多すぎるよね、親父の仕事って」
「そうね、 でも仕事の話はここではタブーよ。大丈夫、キリヤのデータだって私の手中にあるわ」
「そうだね」 
この人といれば何でもやり遂げられる気がする。
「あなたの夢は私の夢、あなたの幸せは私の幸せ。誰にも邪魔はさせないわ」
姉様は椰子の実をテーブルに置いて俺のイスの端に座った。
「ずっとそばにいてくれるのね」
姉様の手が俺のほほをなでる。
「片時も離れないさ」
「浮気したら刺すわよ」
「もう姉様しか見えない」
「四日以上の出張には同伴するわ」
「むしろ大歓迎」


姉様がいきなり俺に抱きついた。椰子の実を落としてしまった。
「くーや、愛してるわくーや」
頬摺りをやめようとしない。姉様は少し泣いていた。この人はこれまでずっと我慢してきたんだと思う。やさしすぎる
この人は、すべてを許そうとして、すべてが許せなくなってしまったんだ。でもやっとその呪縛から開放されようとして
いる。


ピピピ……。家のほうから緊急用の通信のサイレンが聞こえた。
「ちっ、いいところだったのに」
姉様が舌打ちをして本気で悔しがっている。この人らしいけど、ファンの子がこれを見たら幻滅するんだろうな。
「ちょっと行ってくるわね、あなたはここで待ってなさい」
口付けをしてやさしく語りかける。ほんとに器用な人だ。

しばらくしても帰ってこないので様子を見に行くことにした。着替えでもしてるのだろうか。
「……いいわ。徹底的にやって頂戴」
なんか中から姉様の怒気のこもった声が聞こえる。トラブルかな。テーブルにあるノートパソコンをチラ見した。
《氷の弁護士、ついに南の島でとける。婚約者とラブラブ旅行》
どうやらこの旅行がばれたらしい。それで姉様が怒ってるわけだ。話し相手は摩周さんっぽい。日本に帰ったら大
変だろうな。でも摩周さんならなんとかしてくれるはず。俺はノートパソコンを閉じて電話線を抜き取った。
「あ、空也、ちょっとなんてことするの」
「日本のことは帰ってからでいいよ、摩周さんが何とかしてくれるし」
我ながらかなり勝手なこと言ってるし。その言葉に姉様は考え込む。
「そうね、仕返しは摩周くんに任せましょう。明日には東京湾の底にいると思うけど」
なんか俺の知らないところでおそろしいことが起こっているらしい。
「それじゃ、ちょっと、待ってなさい。いまお昼作るから」
姉様がキッチンに向かおうとする。


「姉様、それなら俺が」
「いいのよ、あなたは待ってなさい。私の手料理であなたが喜んでくれることが私の女としての幸せなのよ、しかも
せっかく覚えた料理がもったいないじゃない」
ぐはっ、俺は姉様のその微笑と言葉に完全にノックアウトしてしまった。しかも言いながら照れてる姉様はめちゃく
ちゃかわいい。
仕方なく窓際のベッドに横になる。姉様の幸せそうな横顔をみながら姉様と見る夢の続きを一人考えていた。

おわり。


(作者・名無しさん[2006/02/04])

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