「あ〜あ、遅くなっちゃったな〜」
ちょっと用事で学校にいたんだけど、すっかり辺りが暗くなっちゃったよ〜。
さっさと帰って晩御飯食べて、お笑い番組見て、くーやとベタベタしたいよ〜。
「今日は近道を使おうかな〜」
普通は通らない近道。
広い公園を突っ切って行くんだけど、ここってちょっと不気味なんだよね〜。
電灯が少ないから暗くて困るよ〜。
しかもエッチなことしてるカップルとかもちらほらいるから、青少年の教育には良くないよ〜。
でも、ここを使わないとお笑い番組に間に合わないしな〜。
くーやも待ってるし…
「大丈夫だよね〜」
特に気にもしないで公園に入ったけど、やっぱり人が少なくて気味が悪いね〜。
そういえば前にクラスの誰かが痴漢にあったような気がするよ〜。
物騒な世の中だね〜。
そんなことを考えていると…
突然サングラスにロングコートの変質者が現れたよ〜!
「きゃ〜!」
きっとそれはそれは恥ずかしいことをしてくるんだろうね〜。
こうなったら鞄に忍ばせておいたスタンガンで…
「えいっ!」
「おっと」
そんな、不意を突いたのにあっさりとかわされちゃった。
「フフフ…」
「きゃ〜!く〜や〜!」


もうみんな夕メシ食べちゃったけど、うみゃのやつはまだ帰ってこない。
そりゃたまには帰りが遅くなることもあるけど、いつもは前もって連絡してるしね。
モエは心配してオロオロしてるし、クーヤも気が気じゃないみたいだ。
「まさか誘拐とかされたんじゃないだろうな…」
「ふむぅ…しかし、うみが誘拐されるとはあまり考えられんがなぁ」
そりゃ言えてる。
うみゃなら、どんな手を使ってでも切り抜けるからね。
でも、さすがにここまで遅いと心配だにゃー。
「ただいま〜…」
あ、ようやく帰ってきた。
さっそくモエがうみゃを出迎えに行ったよ。
「海、大丈夫か!?ケガはない!?」
「あはは、大丈夫だよ、巴お姉ちゃん…」
なんだか元気がないにゃー。
これは絶対何かあったね。
こんな様子のうみゃを見るのは久しぶりだよ。
つーか、これで何もなかったらおかしいよ。
「うみゃ、この瀬芦理お姉さんに言ってみ?アタシがうみゃの悩みを解決してやろうじゃないか!」
「瀬芦理姉さんに言ったら、余計こじれそう…(ボソリ)」
む、タカのやつめ。
お姉さんにそんなこと言っちゃうか。
「そんな失礼なことを言うのはこの口かー?」
「ひはいひはい!」
うりうり、口が倍になるぐらいほっぺたを引っ張ってやる。
「…それじゃ、聞いてくれる?」
「ん、いーよ。どーんときなさい!」
「実は…」


「痴漢にあった!?」
「そ〜だよ〜。でもね、とりあえず何もされなかったんだ〜」
「どういうことなの?」
ありゃ、寝ていた要芽姉まで出てきちゃったよ。
「えっとね、『く〜や〜!』って叫んだら、急にビックリしてどっかに行っちゃったんだ〜」
なんだろ、変な痴漢だにゃー。
よし、犯人はわかったぞ!
「クーヤ、アンタでしょ。自分の名前を呼ばれて焦っちゃったんじゃないの?」
「いいっ!?」
「イカ、まさかアンタ…よりによって自分の姉に痴漢を…」
「違ぁぁう!そんなしょうもないことするか!大体、痴漢は中学の時で卒業したさ!」

ひゅぅぅぅぅぅぅ…

「し、しまった!あの…その…」
「容疑者確保。前科持ちと判明」
「わー!待った待った!ずっとみんなと一緒に家にいたじゃないか!俺が犯人なわけないだろ!」
一瞬にして時間が止まっちゃったね。
なんかひなのんがメチャメチャ怖いオーラを発しているんだけど…
「くうやよ」
「は、はいっ」
「1週間の外出禁止を命ずる」
「で、でも…」
「口答えは許さん」
「…はい」
クーヤのやつ、しょんぼりしちゃった。
まー、この程度で済んだんだからガマンするこったね。


「でもさ、クーヤの名前を叫んだ途端に驚いて逃げていったってのは妙だよね」
「そうね…まさかとは思うけど、顔見知りの犯行ということはないかしら?」
「それはかんがえすぎではないかのう」
うーん、どうなんだろうなぁ。
そう考えるのは難しいけど、可能性がないこともないね。
「実はね、そこって最近になって痴漢が出てるんだよ〜。
 クラスの子も、何人か襲われちゃったって聞いたんだ〜」
ありゃりゃ、だったら大変だ。
さすがになんとかしてあげないと…
「それにしてもショックだよ〜」
「怖かったろうに…よしよし」
「違うよ、巴お姉ちゃ〜ん。仕留め損なったのがショックなんだよ〜」
「そ、そうなのか」
「次は絶対仕留めてやるんだ〜」
そう言って、ぐっと握り拳を固めるうみゃ。
やっぱりそれほど心配する必要はなかったね。
もう立ち直ってるよ。
「何よりも許せないのは、その痴漢魔よね。女の敵よ!」
「まったくだわ。汚らわしい」
「う、うん…そうだね」
「よもや家族まで巻き込もうとは…これはもはや捨ておけぬ」
「よし、ここはアタシに任せて!犯人はアタシが必ず捕まえてみせる!柊瀬芦理の名にかけて!」
「うむ!せろりよ、その腕を存分に振るうがいい!」
おーし、ひなのんのお墨付きももらったし、さっそく明日から捜査開始だ!


今朝はすっきりとした青空、行動を起こすのに絶好の天気だね。
それでは、張り切っていってみよー!
今日は要芽姉の推理を考えて、顔見知り犯行説で調べてみるか。
まずはマシューからってことで、事務所まで行ってみようかね。

「むぅ、それはなんと破廉恥な!そのような輩は許せませんな」
「事情はわかった?でさ、昨日は何してたの?」
「アリバイですか…昨日は秋山さんとお食事に行ってましたよ。
 今月は食費が厳しいらしいので…」
「そーなの?」
「ええ!それがもうおいしくておいしくて…
 健太のために、タッパーに入れて持って帰ろうとしたら怒られちゃいました」
うわー、それってメチャメチャ高いところじゃないの…太っ腹なことで。
とりあえず、そういうことならマシューはウラもとれたから除外か。
とは言っても、マシューはそんなことするような奴じゃないしね。
じゃー次だ次!確かクーヤの親父がこっちに来ていたはず…

「それで、調べているというわけか…」
「そ。アンタだったらさー、いかにもってカンジだから、アタシもアヤシイと思ってんの」
「ふっ…そんなくだらんことは中学の時に卒業したさ」
やっぱり親子だ…しかも堂々と言ってるあたり、さすがとしか言いようがないね。
「大体、昨日はこっちにはいなかったぞ。この女に連絡してみろ。ウラがとれるはずだ」
そう言って、メモを渡してきた。
女の名前と携帯の電話番号が書いてある。
自信満々みたいだし、コイツは犯人じゃないような気がするにゃー。
あとでそこに連絡してみたけど、どうやらアリバイは確かなようだね。
クーヤの友達のダンチョーってやつはもう沖縄に帰ったしなぁ。
ショウは仕事が忙しくてここのところ家に帰ってないし…


その日の晩、アタシは今日の捜査結果を夕メシの時に報告した。
早い話、有力な手がかりはゼロ。
そんなにトントン拍子で進むわけないけどね。
「というわけで、顔見知りじゃないと思うんだよね」
「そう…知り合いにそんなのがいても困るけどね」
「そうだのう。ここはひとつ、おとり捜査をするのはどうだ?」
「アタシもそれを考えてたんだけどね、おとりを誰にやってもらおうかなーって」
うみゃは当然ダメだし、ひなのんとタカは体形で論外。モエは見た目が怖いからアウト。
クーヤはある意味いけるかもしれないけど、ひなのんの命令があるから無理だしなー。
「そこで、要芽姉の出番というわけですよ」
「私はしないわよ。そんな汚らわしい奴の相手など…!」
あ、怒らせちゃった…
こうなったら要芽姉はダメだね。
でも、要芽姉は少し考えてから、一つの案を話し出した。
「…ならば、いるかはどう?アレなら別に襲われても問題ないわ」
「あ、それいいかも」
何だかヒドイこと言ってるような気もするけど、ここはスルーしちゃえ。
「連絡しておくわ。明日の夜、例の公園ね?」
「うん」
よしよし、おとりの準備はなんとかなりそうだね。
痴漢が出てくるとは限らないけど、何事もやってみないと。
「お、俺も行くよ!」
「んー、人手はほしいとこだけど、クーヤはひなのんの命令があるからダメ。
 今回はアタシ達に任せときなさいって」


その次の日の夜、クーヤを除いて全員が公園に集合した。
「わ、私がおとりで大丈夫でしょうか…」
「大丈夫だって。ちゃんとアタシ達が影で見張っておくから」
「いいからさっさと行けよ」
「は、はいっ!秋山いるか、吶喊します!」
そう言ってトコトコと公園の中に入っていった。
声は良かったけど、さすがに足どりが悪いなぁ。
だいぶ緊張してるんじゃないかな?
よし、それじゃ周辺の警戒をしっかりとしておかなくちゃね。
アタシと要芽姉、モエとうみゃ、ひなのんとタカのチームに分かれて、それぞれが配置についた。
アタシ達はエサを影から護衛。
ひなのん達とモエ達はしげみを動き回りつつ、怪しい奴のチェックだ。
それにしても、本当に人の少ない公園だね。
暗くてちょっと不気味だし、そのせいかエッチなことしてるやつまでいるし。
だから痴漢が出ても大げさに騒がないのかなー。
おっと、そうしているうちにひなのん達から連絡がきたよ。
「せろりよ、怪しい人間がいたぞ」
「サングラスにロングコート、間違いないわ」
「よっしゃ、ひなのん達はそのままそいつを監視しといて。見つからないように気をつけて。
 エサにかかったら、一気にとっつかまえるよ」
「うむ、任せておけ」
そうは言っても、あの二人じゃどう考えても無理だよねー。
まぁエサにさえかかればこっちのもんだからね。
モエ達にも連絡をしておいて、あとは獲物を待つのみ。
要芽姉もどうやら問題の奴を見つけたみたいだ。
「瀬芦理、いるかに誰かが近づいてきたわ。海の言っていた特徴と一致するわね」
「おっ、アイツか。よーし、現行犯逮捕でいくよ」


はわわ、夜の公園って本当に不気味ですねー。
お姉様に連れられて、裸にされて野外プレイしたときは本当にドキドキでしたよ。
声は出せないし、いつ人に見られるかわからないし…
でも、それが快感に変わっていくんですけどねー。
それにしても、本当に痴漢が出てくるんでしょうか…
「お嬢さん、こんなところで一人でいるのは危険ですよ」
紳士のような声で後ろから話しかけられました。
ゆっくりと振り返ると…
「きゃー!!」
あからさまな変質者ですよー!
サングラスにロングコート、特徴とバッチリ一致しちゃってますよ!
もしかしてアレですか!?
『やらないか?』ですか!?
『俺のここを見てどう思う?』ですかー!?
どうしましょう、どうしましょうー!
「と、とりあえずここは健太に電話を…あーっ!電池がないー!」
「ふふふ、さぁお嬢さん…」
これはマズイですよ、いるかの一世一代の大ピンチですよ!
もうダメかと思ったその時…
「今だー!いけー!」
まわりから一気に皆さんが駆けつけてくれました!
変質者さんは慌てふためいた後、瀬芦理さんから頭に一撃を受けてダウン。
全員からさらにタコ殴り。
仕上げに布団と荒縄でぐるぐる巻きにされて、完全に身動き一つ取れない状態になりました。
すぐに私は、お姉様に泣きついて行きましたよ。
「お姉様ぁー!怖かったですよー!」
「いるか…なぜ襲われなかったの?そのほうが面白かったのに…」
あのー…冗談ですよね?なんでそんなにガッカリしてるんですか?


捕まえた犯人の正体に、アタシ達は開いた口が塞がらなかった。
「まさか親父殿だったとは…」
そう、なんとショウのやつだったんだ。
要芽姉の顔見知り犯行説は正しかったってことだ。
「なんでお父さんがこんなことしたの〜?」
「い、いやな。お母さんとした野外痴漢プレイの感触が忘れられなくてつい…
 でも、ワシは最後までやってないぞ!?ちょっとタッチしたぐらいだけだぞ!?」
…どうしようか、コレ。
さすがのモエも、今回ばかりは目が冷たいね。
「というわけでひなのん、判決を」
「うむ。くうやが1週間の外出禁止だが…これはそれよりもさらに罰を重くせねばな」
「なんで!?どうして!?パパにやさしくしてよ!」
「馬鹿は言ってはなりませぬ。親父殿はうみまでも、その毒牙にかけようとしたことをお忘れか!?
 もはや呆れて物も言えぬわ!」
「おかげで私、心に30針は縫えるぐらいの傷を負ったよ〜(・ε・)」
なんだか余裕が現れてるような言い方だにゃー。
実際、今の乱闘で容赦なくスタンガン押し当ててたし。
「へ?それはワシじゃ…」
「言い訳は無用!まずは連れて帰ろうか。判決は家で言い渡すこととしよう。
 親父殿、警察に通報しないだけでも良かったと思ってもらいたいですな」

家に帰ってからアタシとモエでせっせと庭に穴を掘り、そこにショウを頭だけ残して埋めた。
そしてそのすぐ隣に『馬鹿の末路』と書いた立て札を打ち込んで終了。
これを1ヶ月続けるのがひなのんの判決だ。
会社には『修行に行った』と連絡しておいた。
めでたしめでたし…とはいかない、後味の悪い事件だったにゃー。


オマケ

2週間後…
「話は聞いたぞ。いいザマだな、翔よ」
「なんだ、お前か。まぁ、今回はワシが全部悪いから仕方ないけどな」
「フッ…くだらんことをするからだ」
「そういえば、雛乃が変なことを言っておったな。ワシが海を襲ったとかなんとか…」
「ああ、それか。お前には真実を話してやるとするか…
 簡単に言うと、お前は濡れ衣を着せられたってことだな」
「どういうことだ?」
「知っているとは思うが、お前のところの瀬芦理が痴漢を調べていたのだ。
 俺のところにも来たんだが、俺はその時間に女に会っていたとアリバイを説明した。
 実際は襲われていた時間に、俺は女になど会っていなかったのだがな」
「ほう…」
「その女に前もってアリバイを偽装するように仕向けていたことに気がつかなかったようだな」
「ま、まさか…」
「そう、お前のところの娘を襲ったのは俺だ。
 もっとも、相手はどこの誰でも良かったし、暗かったので最初は気づかなかったが…
 しかし、空也の名前を聞いてしまったから、俺はあせったよ。一応、友人の娘だからな」
「き、貴様…ワシははめられたというわけか?」
「ふっ、結果的にそうなっただけにすぎん。俺の運が良かったということだ。
 もう俺に疑惑の目が来ることもあるまい。それじゃあ、船に間に合わなくなるのでな」
「く、くそっ!動けん!このバカタレー!お前なんぞ自転車にはねられちまえー!」
「ハッハッハ、お前にできるのはせいぜいそれぐらい…」
(ガシャン!)
「ぐほあ!」
「あ、なんだ来てたのか。悪い悪い、轢いちまって。いきなり出てくるんじゃねーよ」
「うぐぐぐぐ…こ、腰が…」
「ピーナッツよ」
「あん?」
「ナイスだ」


(作者・シンイチ氏[2006/01/27])

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