日の出ている時間が短くなって庭の木々も丸裸になる時期に、
毎年ウチでは要芽お姉様を抜いた柊家の面々で、秘密の集会がある。
 みんなで集まって何を決めるわけでもない。
 ただ「クリスマス&要芽姉さんお誕生日会 実行委員」を選出するだけ。
 「委員」と言う肩書きは実はタダの飾り。
 最終的には準備も楽しいから結局みんなでする事になるし、
委員なんて本当は決めなくてもいい。
 でも万が一パーティーが楽しくなかった時の為の要芽お姉様への人身御供を、
この時期ウチでは「パーティー実行委員」って呼ぶ。
 だから毎年巴姉さんが、アタシと瀬芦里姉さん、海の巧みな連係プレーで
委員に選出されるようにするんだけど、今年は―――
 「ともえに二票、たかねに三票入っているな。
 今年のぱーてぃー委員は、たかね、お前だ。
 存分に力を振るうがよいぞ!」
 「タカ、おめでとう!」
 「やったぜ姉貴!」
 「高嶺お姉ちゃん、おめでと〜!」
 「ちょ、ちょっとまってよ!何でアタシが委員なのよ!」
 「それはお前に票が集まったからなぁ。」
 「ぬぅぅ・・・。って言うかアタシに三票入れたの誰!?」
 「我は議長として投票権はないからなぁ。
 誰が入れたとかそういうことを調べてしまっては、無記名投票の意味が無いぞ。」
 「わ、私は自分に入れたんだ。みんなこの時期忙しいだろうし、
また、私ががんばれば良いと思ったから・・・。」
 「まぁでも、誰が姉貴に票を入れたとかどうでも良いじゃない。
 俺は姉貴に入れたけど。」
 「いちいちそんな事気にしてたら体が持たないよ。
 私もタカに入れたんだけどね。」
 「兎に角、選ばれたからにはがんばろうよ〜。
 私も高嶺お姉ちゃんに入れたんだけどね〜(・ε・)」


 う、裏切られた・・・。
 そういえば昨日イカを蹴って遊んでた時、後ろから海の声で「・・・満期・・・」って
聞こえたのは気のせいじゃなかったのね。
 瀬芦里姉さんも海に言いくるめられたに決まってるわ。
 こうなったら!
 「ふっ、フン!やってやろうじゃないのよ!
 今年のパーティー、絶対にお姉様が満足するようにしてあげるわよ!」
 「私に協力できる事があったら、え、遠慮なく言ってくれていいよ。」
 「当たり前じゃない。みんなには徹底的に手伝ってもらうからね!」
 ・・・

 とは大見得を切ったものの、どうしようかしら。
 毎年やっているようなパーティーでも全くかまわないんだけど、
せっかく今年はアタシが委員に選ばれたんだからいつもとは違うものにしたいわ。
 ちょっと反則っぽいけど、お姉様に今年はどんなパーティーが良いかって聞いたら、
 「私はどんなパーティーでも、祝ってもらえるならそれで良いわ。」
 姉様ならそんな事言うかなって思ってたけど、実際言われてみると
余計に工夫を凝らしたくなるわね。
 そんな事を考えながらテレビをボーっと見ていると、
この時期には恒例のシチューのCMが流れてきた。
 CMの中ではシャンシャンと鈴の音を強調したBGMで、
クリスマスの飾り付けがされた暖かな家の中、
テーブルについている子供たちの目の前に母親役の女優が湯気の立つシチューを出している。
 子供たちの後ろには大きなクリスマスツリー。
 窓の外では雪がこんこと降っていて、いかにも『クリスマス』らしい感じ。
 ツリーの飾りつけも雰囲気も、全部クリスマス。
 『クリスマス&要芽姉さんお誕生日会』か・・・。
 要芽姉様は弁護士。
 弁護士は逆境に立たされたとき不適に笑うもの。
 困った時は逆転の発想・・・。
 そうよ、逆転の発想よ!


 「・・・って言うのはどうかしら?」
 後日、みんなの前でアタシの天才的な思い付きと具体的な計画を話す。
 フフン、みんなのこの驚いた顔。
 アタシの思いつきに感動して口まであんぐりあけちゃって。
 「す、凄い案じゃないか。さすが高嶺だな。」
 巴姉さんは素直にアタシのことを褒めてくれる。
 他のみんなは・・・
 「微妙だね。」
 「微妙であるな。」
 「微妙だよね。」
 「微妙〜」 
 「ちょっと!微妙って何よ!」
 「いや、俺達もいつもと違うクリスマスパーティーを望んでるわけじゃないんだよ。」
 「ただ〜、高嶺お姉ちゃんがアレだけ張り切ってたわりには微妙ってだけだよ〜。」
 「まぁ、タカがそれで良いと思うならやってごらんよ。
 私たちはその案に反対だなんて一言も言ってないんだから。
 タダちょっと微妙ってだけ。」
 瀬芦里姉さんがやれやれと首を振りながら言う。
 ぬぅぅ・・・言いたい事言ってくれて、本当に腹立つわね。
 「とっ、とりあえず、海は例のものがあるかどうか調べて。
 調べが付いたら瀬芦里姉さん、買って来て。」
 「アイアイサ〜。」
 「あーい。」
 「巴姉さんとイカは飾りつけと当日の調理、
雛姉さんは犬神姉妹に招待状を書いて。」
 「わかったよ。」
 「空也、お姉ちゃんと一緒にがんばろうな。」
 「招待状は我に任せておくが良いぞ。」
 「それじゃあ、各自よろしく頼むわよ。解散!」
 みんながぞろぞろと居間から出て行く。
 さてと、アタシもそろそろケーキ屋に行って特別にアレを頼まなくちゃ。
 ・・・


 「お姉様?もうそろそろ裁判所に向かわなきゃいけない時間ですよー?」
 事務所のソファーにもたれて眠っていると、いるかが体をゆすって起こしてくる。
 どうせ判り切った判決を聞きに行くだけなのに・・・面倒くさいわね。
 薄目を開けると、いるかが眉をハの字にして私を覗き込んでいるのが見えた。
 「いるか、あなたが私の代わりに行ってらっしゃいな。」
 「だっ、ダメですよー。何を言っているんですか。」
 「要芽様、もうそろそろ支度なさったほうが・・・。」
 いるかの後ろから摩周君が申し訳なさそうに言う。
 「仕方ないわね・・・」
 体を起こすと、いるかが肩掛けをどこからともなく持ってきて私の肩にかける。
 「そういえば今週クリスマスで、お姉様の誕生日ですねー。今年はいかがなさるんですかー?」
 「今年も何も・・・。例年のようにウチでパーティーするのよ。
 今年は特に高嶺が力を入れてくれているみたいだから。」
 「はー、いいですねー。お姉様は空也さんみたいな弟さんもいらっしゃって、
その上妹さん達からも慕われて。うらやましいですー。」
 「・・・そうね。」
 立ち上がって事務所の玄関へ向かって歩いていく私のそばを、二人がぴったりとくっついてくる。
 そう、クリスマス・イブが私の誕生日。
 家族のみんなはそんなつもりはないのだろうけど、
なぜか毎年、私の誕生日は「ついで」に祝ってもらっているような気がしてしまう。
 ・・・別にそれでも楽しければいいのだけれど。
 玄関の前までやってきて私はくるりと二人に向き直り、
いるかが期待しているであろう台詞を言う。
 「勿論、二人とも今年も来るわよね。ウチのパーティー。」
 「はい!勿論ですよー。誘われなかったらどうしようかと思ってどきどきしてましたー。
 早速田舎の弟に報告しますね!」
 携帯をいじっているいるかを横目に、摩周君が一歩前に進み出てきた。
 「光栄です要芽様。私も他の予定をすべてキャンセルして出席させていただきます。」
 「摩周君は私とは違って忙しいものね。
 そんなに大事な予定が詰まっているなら、何もウチのパーティーなどでなくてもいいのよ?」
 「い、いえ、私は決してそんなつもりで言ったのではなくて、その・・・。」
 「フフフ、冗談よ。」


 パーティー当日の昼間、クリスマスイブ。
 空は雲ひとつない快晴だけど、その分朝から凄く冷え込んでる。
 買い出しにでていたイカと巴姉さんが、
両手にビニール袋をいくつも提げ、白い息を切らせて帰ってきた。
 「ただいま〜!外は寒かったな。空也、大丈夫か?」
 「うん、大丈夫・・・と言いたいけど手がちぎれそうだよ。」
 「アラ二人ともお帰り。」
 「ただいま、高嶺。」
 「材料買ってきたの・・・料理のほうは大丈夫みたいね。」
 「うん、お姉ちゃんに任せておくんだ。」
 「材料冷蔵庫に入れてきたら、早速ツリーとか基本的な飾り付けお願いね。」
 「姉貴は本当に人使い荒いな。姉貴も何か手伝ってくれよ。」
 「ダメよ。もうそろそろ瀬芦里姉さんが例の物を買って帰ってくるから
それをチェックしなくちゃならないし、その後にもいろいろやる事があるのよ。
 頼んでいたケーキ取りに行ったりとか・・・。」
 「高嶺もがんばってるんだな。私も美味しいご馳走作るからな。」
 「姉貴にしては面倒くさがらずによく働くね。」
 「当たり前よ。お姉様を満足させるって事は、認めてもらうのと同じ事じゃない。
 お姉様に認めてもらえれば、アタシはまた完璧な女に近づく事ができるのよ!
 ・・・とりあえず、いつまでも玄関で突っ立ってないで早くそれ冷蔵庫に
しまって来ちゃってよ。」
 「へいへい・・・。」
 イカと巴姉さんが玄関に置いたビニール袋を持ち上げると同時に、
すぐ後ろの玄関の戸がガラガラと開いて、
 「タカー!例のオーナメント、すっごくいっぱい売ってたよー!」
瀬芦里姉さんが段ボール箱抱えて玄関に入ってきた。
 「ホラ、モエもクーヤもどいたどいたぁ!」
 「あぅ、ご、ごめん。」
 「ホラともねえ、行こう。」
 イカと巴姉さんが台所に引っ込んで行って、空いた玄関のスペースに
瀬芦里姉さんが抱えていたダンボールを置いた。


 「ンフッフー!中身、見てごらん。」
 瀬芦里姉さんがにんまりとアタシを見て、カッターナイフでダンボールの
ガムテープを切っていく。
 蓋を空けて中を覗くと・・・
 「・・・うん、アタシが想像してたのとほぼおんなじね。コレで良いわ。」
 「やったねー!コレで私の仕事もおっわりー!後はパーティーを楽しむだけだにゃー。」
 靴を脱ぎアタシの横をすり抜けて、瀬芦里姉さんは居間の方へ消えていった。
 「ちょ、ちょっと、箱をついでに居間に持ってくぐらいしてくれても良いじゃないのよ!」
 「やーだよー。私はもう十分労働したかんね。寒いのはどうも苦手だにゃー。」
 瀬芦里姉さんの声だけが居間から聞こえる。
 ったく、面倒は何でも人任せなんだから。
 「巴姉さーん!食べ物冷蔵庫にしまったら、早く来て飾りつけ手伝ってよね!」
 「い、今行くよ〜!」
 ・・・

 「ふぅ、飾りつけはこんなものかしらね。」
 「あは、結構可愛くできたな。」
 コタツでゴロゴロと寝ているドラ猫をよそに、一通り飾り付けを終えた居間を
巴姉さんとまじまじと見つめる。
 「そういえば巴姉さん、料理のほう放って置いて飾りつけ手伝ってくれたけど、
料理は間に合うの?」
 「うん、さっき歩笑ちゃんが来てくれたから、空也と一緒にがんばってくれてるはずだよ。」
 「あらそう。じゃあ巴姉さん、もうちょっと私に付き合ってくれても大丈夫よね?」
 「ま、まだ何かすることがあるのかな?」
 「あら、巴姉さんは要芽姉様を喜ばそうと言うアタシの努力に、付き合ってくれないわけ?」
 「あぅ・・・そんなつもりで言った訳じゃないんだ。
 私は、何をすればいいのかな?」
 「駅前のケーキ屋まで、アタシを乗せて行ってくれれば良いわ。」
 「なんだ、そんな事か。お安い御用だよ。」
 ・・・


 「はい、ヒイラギタカネ様ですね。これがご注文されたケーキになります。
 ・・・クリスマスケーキじゃなくてよかったんですよね?」
 ケーキ屋のカウンターの向こうで店員が確認するようにアタシの顔色を伺う。
 「・・・そうですね、これで大丈夫です。」
 差し出されたケーキを見て、巴姉さんが声を漏らす。
 「うわぁ・・・かっ、可愛いんだな。これを食べちゃうなんてもったいないよ。」
 「フフン、なんて言ったってオーダーメイドだから。」
 「これは要芽姉さん、喜ぶだろうなぁ。」
 ・・・

 事務所を閉めて外に出ると、雪でも降るかと思うほどの寒さが身にしみる。
 今日は高嶺に八時ごろに家に着くようにと言われている。
 事務所を閉めて摩周君の運転する車に乗り込み、一路ウチへ。
 摩周君の車の車窓から見える街のイルミネーションが、光の矢の様に後ろに流れていく。
 「はー、やっぱりクリスマスイブはイルミネーションが綺麗ですねー。
 私、クリスマスの季節が近づいてくるだけでワクワクしてしまいますよー。」
 摩周君の隣、助手席に座っているいるかがシート越しに私に話しかけてくる。
 「いるか、何をそんなにはしゃいでいるのよ?」
 「だって、クリスマスですよー。クリスマスにはしゃがない子供はなかなかいないですよー。」
 「クリスマス・ イ ブ よ。それにあなたが子供っぽいとは思ってたけど、
自覚しているとなると思っていたほど頭は悪くないようね。」
 「もうそろそろでご自宅に到着します。
 それに秋山さん、そんなに激しく動かれると、そちら側の外が見えにくいのですが・・・。」

 家の前に車を止めた摩周君が、後部座席の私のドアを恭しく開ける。
 「着きました要芽様。」
 車から一歩出ると、強い風が吹き抜ける。
 すぐ目の前に家の玄関が見える。
 例年の通りだと、みんながあの玄関の向こうでクラッカーを持って待ち構えて、
『メリークリスマス&要芽姉さんお誕生日おめでとう!』って祝ってくれるのだけど・・・。
 フフフ、思い出しただけでもなぜか口元が緩んでしまうわね。
 そんな事を考えながら、玄関へと足を進めていく。 


 玄関の戸に手をかけて、ガラガラと戸を滑らせると・・・
 「あれー、家の中真っ暗ですねー?」
 後ろからいるかが家の中を覗き込んで言う。
 家の中は暗闇に包まれて、誰もいないかのように静か。
 「どうしたのかしら?」 
 「とりあえず、居間まで行ってみませんか?」
 「そうね、二人とも上がりなさい。」
 「お邪魔しますー。」
 「はっ、失礼します。」
 私が先頭になって居間へ足を向ける。
 居間の障子戸もすべて閉まっていて、中からは物音一つしない。
 どういうことかしら。
 ・・・・いるかと摩周君をこのまま廊下に立たせておくわけにはいかないわね。
 居間で取りあえずくつろいで貰おうかしら、と障子を開けると―――
同時にポッ、ポッ、ポッっと色とりどりの光が暗闇の中に浮かぶ。
 その一つ一つをよく見ると、それらは普通のクリスマスオーナメントではなく、
 「ぺんぎんが光ってる・・・」
 私が暗闇の中できらきらと光るぺんぎんに見とれていると急に部屋の電気がついて、
 パァン!パァン!
 「「「要芽姉さん!お誕生日おめでとう!」」」
姉さんや妹達がクラッカーの爆音と共に私の目の前に飛び出してきた。
 「・・・」
 ガラにも無く少し驚いてしまって、すぐに言葉が出てこなかった。
 「「「・・・」」」
 みんながクラッカーを片手に固まったまま、じっと私の顔色をうかがっている。
 「・・・高嶺、何で今年は『メリークリスマス』って言う台詞はないのかしら?
 それにこの飾りつけ、ぜんぜんクリスマスらしくないわね。」
 「えっ、あの、なんていうか、こっ、今年は・・・」
 高嶺がどきまぎして言葉に詰まっている。


 「クリスマスパーティーと平行してお誕生日会をやるんではなくて、
むしろお姉様の誕生日会にクリスマスイブが重なったって言うコンセプトの元に、
お姉様の誕生日をメインに祝うための飾りつけとかをしてみましたっ!」
 高嶺はここまでを一息で言い切ると、怒られる前の子供のように
目をぎゅっとつぶって私の前に棒立ちになった。
 「なんか張り切ってた割には、考えが単純だよね〜。」
 「飾りつけとか雰囲気が違うだけで、やる事とかはおんなじなんだってさ。」
 瀬芦里と海が言うと、高嶺の体一瞬びくっと震えた。
 「・・・そうね。確かに単純な発想だわ。でも・・・」
 高嶺がうっすらと目を開けているのが見える。
 「私は好きよ。単純な発想ほど分かりやすいものはないじゃない。」
 「おっ、お姉様・・・。」
 高嶺がなぜか体を小刻みに震わせている。
 私は高嶺の頭に手をぽんと乗せて、心の中でつぶやく。
 (馬鹿ね。こんな事されて怒る人間なんているわけないじゃないの。)
 振り返って廊下に立っているいるかと摩周君に声をかける。
 「さぁ、いるかも摩周君も、中に入りなさいな。」
 「はぁー、こう言うことだったんですねー。ロマンチックで良いじゃないですかー。」
 「高嶺さんは要芽様のことが大好きなんでしょうね。」
 「ちぇーっ。私はすっかりタカが要芽姉にも『微妙』って言われるかと思ってたのになー。」
 「う〜ん、私としては非常に残念だよ〜。」 
 「まぁまぁ、よいではないか。いるか殿もましゅう殿も、今宵は無礼講であるからな。」
 私が『お誕生日席』に座ると、高嶺がまださっきの位置に立ち尽くしている。
 「高嶺、どうしたの言うの?委員はあなたなのでしょう?
パーティーを進めてくれないかしら?」
 「えっ、あっ、はい!ただいま!」
 ボーっとたたずんでいた高嶺がびくっとこちらに向き直り、私の隣にやってきて
 「じゃあ・・・みんな、グラスを手にとって。」
 高嶺に言われて、席に着いたみんなが各自の飲み物が入ったグラスを片手に取った。
 「お姉様の誕生日に、カンパイ!」
 「「「カ ン パ 〜 〜 〜 イ !!!」」」


 パーティー参加者が一人二人と酔いつぶれて、自然とお開きになるのが柊流。
 雛乃姉さんと空也、巴と歩笑ちゃん、いるかは酔いつぶれて眠ってしまったらしい。
 海と瀬芦里、帆波がまだ居間で元気に飲んでいる。
 尋問と称していろいろプライベートを聞き出されている摩周君が少し気の毒だわ。
 私は高嶺が少し前に居間を出て行ったのを見て、その後を追って庭に出た。
 夜空には雲ひとつなく、澄んだ空気のおかげでキラキラと輝く星がよく見える。
 庭では高嶺が小さな円を描く様にふらふらと同じところを回っていた。
 「何をしているのかしら?」
 「あっ、お姉様。ちょっと酔っちゃったみたいで。酔いを覚ますために外に出てたの。」
 ・・・あの、お姉様、パーティーどうだった?」
 高嶺が私の顔を覗き込むように聞いてくる。
 「嬉しかったに決まっているではないの。ぺんぎん尽くしのオーナメントも可愛かったし、
何よりあのミント味のケーキ、ぺんぎんの砂糖菓子が良く出来ていたわ。」
 「・・・正直アタシの案をみんなに話した時微妙って言われたから、
何だかお姉様に気に入ってもらえる自信がなくて・・・。」
 「何度も言っているではないの。私は嬉しかったわよ。『ついで』じゃなかったのが。」
 「えっ?」
 「・・・あなたがクリスマスを意識しないパーティーにしてくれたのにアレなのだけれど、
これは私からのクリスマスプレゼントよ。受け取りなさいな。高嶺。」
 私は昨日用意しておいた小箱を高嶺に差し出す。
 「開けてもいいの?」
 「あなたの手に渡った時点で、もう私の物ではないわ。」
 高嶺は丁寧に箱の包装をはがして、蓋を開けた。
 「ガラス細工のぺんぎんの置物よ。こんなものでも、気に入ってもらえたかしら?」
 「・・・はい!勿論!大切にします!」
 「馬鹿ね。姉妹なのだから、そんな大げさな事言わなくても・・・。
 ・・・あまり長く外にいると風邪を引いてしまうわ。中に戻りましょう。」
 と、高嶺に向けて手を差し出した。
 私としては自然に手を出したつもりだけど、やはり変だったかしら?
 「はい、お姉様。」
 高嶺は満面の笑みを浮かべて、私の手を取ってくれた。
 いいパーティだったわよ。ありがとう、高嶺。


(作者・SSD氏[2005/12/24])

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