「ただいまー!って、誰もいないのか…」
ちょっとバイクを飛ばして帰ってきたのに、誰もいないなんてつまんなーい。
クーヤもうみゃもモエもいないんじゃ、遊ぼうにも遊べないなー
「あ、そーだ」
ふっふっふ、実は冷蔵庫においしいケーキがあるんだよねー。
昨日、アタシが帰りに買ってきた『猫屋』のケーキ。
最近になってすごく人気が出てきたお店なんだよね。
昨日はひなのん愛用の湯飲みをこわしちゃって説教くらってたもんだから、食べ損なっちゃったんだ。
今は誰もいないし、ちょうどいいや。
「ケーキ、ケーキ」
さぁ、冷蔵庫のドアを開けてケーキとご対面…
(ガチャリ)
「あーっ!!」
ない!ない!
箱ごとケーキがなくなってる!
ちゃんと冷蔵庫に入れといたはずなのに!
「うぅぅぅぅ〜、これは誰かがアタシに無断で食べやがったにゃー!」
せっかく人が楽しみにしてとっておいたのに…
許せん!
犯人をとっちめてやる!
「犯人はアタシが必ず暴いてみせる!柊瀬芦理の名にかけて!」


というわけで早速、みんなを晩メシの後に集合させといたよ。
「…まぁそういうことで、犯人はタカ!お前だー!」
「ちょっと待ってよ!アタシがそんな意地汚いマネすると思う!?瀬芦理姉さんじゃあるまいし!」
「あ、ちょっとカチーンときたよ。やっぱ犯人はタカでしょ」
「高嶺お姉ちゃん、素直にはいたほうが楽だよ〜?はい、カツ丼」
「食うか!大体、アタシは最近ダイエット中なの!ケーキは我慢するわよ!」
「ダイエットするほど身がついてるとは思えないけどな(ボソッ)」
「ああ!?なんか言ったか、このダメイカ!」
(バキャァッ!)
おお、見事なシャイニングケンカキックだ。
でも次の瞬間、うみゃのドラゴンスクリューがタカに炸裂しちゃったよ。
さらにそこから四の字固めでフィニッシュだ。
「大丈夫、くーやぁ。悪いツインテールは、お姉ちゃんがおしおきしておいたからね〜」
「う、うん」
あーあ、タカのやつ泡ふいて気絶しちゃってるよ。
「まぁ、その程度にしておきなさい。しかし、この中に犯人はいなさそうね」
「そんなことを言っておいて、かなめが犯人なのではあるまいな?」
「…姉さん、意地悪ですね。私はそんなマネはしません」
「そうすねるな、戯れだ。悪かったな。だとするなら、誰が犯人なのだ?」
「私にはわかりかねます」
うーん、それじゃ本当にドロボーでも入ったかな?
けど調べてみたところ、何か盗られたとかはないしなぁ…通帳もハンコもタカのへそくりもあったし。
「あぅ…わ、私…」
「ん?いや、モエは別にいいっしょ。そんなことするような子じゃないもーん」
「そうね」
「うむ」
「確かに」
「そうだよね〜」
「あぅ…その…」
「よーし、そんじゃ明日は捜査範囲を広げるよ!」


けど捜査範囲広げるって言ってもなー、心当たりはすごく少ないんだよね。
「こんちわー」
すぐそこのほなみんとぽえぽえ、どっちかだと思うんだ。
ま、とりあえず事情を説明して聞いてみたんだけど…
「アタシはその日、仕事でちょっと遠出してたわっ。帰ってきたのは昨日の夜だもん」
「私も…締め切り1日前だったから、家から出てない…終わってからすぐ寝ちゃったし」
「うえー、ホントー?」
「だったら、空也ちゃんに確認してみたら?すぐわかるわよっ」
これはすぐに確認が取れた。ということは、二人は犯行が不可能ってことだね。
うーん、それなら次はあの二人かにゃー。
「大体、姉さんはケーキは滅多に食べない。太るからって」
「あっ、効いたわよ今の心のボディブローはっ」
「ぽえぽえ、お姉ちゃんにボディブローはないんじゃない?」
「姉さんだからこそボディブローだよ」
多分あとでぽえぽえはいじめられそーだね。
次は要芽姉の事務所に行くか。

「ということでアンタ達のどっちかじゃないかと」
「はわわ、犯人扱いされちゃいましたよー。これはすぐに健太に報告しないと…」
「しかし我々ではありませんよ。二人ともそちらの家の中に入ることはそれほどないので。
 その日も、夜はそちらに行っていませんし、朝は家の前で要芽様をお迎えに行っただけですから」
それもそうなんだよねー。
どっちも朝に要芽姉を迎えに来る時、家の中には滅多に入らないもんね。
それにあがってきても、大抵は居間でくつろぐぐらいしかないし。
「あー、もう!それじゃ誰が犯人だってのさ!」
「見落としているところがあるのでは?」
「うーん、と言ってもなぁ…」


あーあ、手がかりゼロだよ。やっぱ家の中の人間かな?
ひなのんはケーキより和菓子だし、要芽姉はミントアイス派。
モエはそんなこと絶対しないし、タカはああ言ってたから違うでしょ。
ということはうみゃか!?
「犯人はわかったぞー!コラー、うみゃー!」
一気にうみゃの部屋に乗り込んで、洗いざらいはかせてやる!
「私は犯人じゃないよ〜」
「ウソつくんじゃにゃーい!
 しらばっくれるんだったら、みんなの前でそれはそれは恥ずかしい事をさせてやるぞー!」
「仕方ないな〜、証拠を見せてあげるよ〜」
そう言うと、箱を奥から持ってきた。
紛れもなく、アレは『猫屋』のケーキの箱!
「やっぱりうみゃが犯人じゃないかー!」
「よく見てよ〜。お姉ちゃんは一切れだけ買ってきたんでしょ〜?
 これは二切れ用の箱だよ〜」
「へ?」
あ、よく見ると大きさが違う…
「くーやがね、お姉ちゃんが『猫屋』のケーキ食べたいなって言ったら、
 一緒に買いに行こうって言ってくれたんだ〜。
 箱をとっておいたのは、くーやヤと一緒に買った記念だよ〜。
 確かにその日、私とくーやはみんなにナイショで『猫屋』のケーキを食べたけど、
 瀬芦理お姉ちゃんが買ってきたのは食べてないんだよ〜。
 同じものを食べたのに、わざわざ人の物をとってまで食べようとは思わないよ〜」
ということは、自動的にクーヤも容疑者からは除外か…
「なんでナイショなのさ」
「だって、ばれたら瀬芦理お姉ちゃんやツインテールが勝手に食べちゃうじゃな〜い。
 それに、食べたかったのが2つしか買えなかったんだよ〜」
箱は記念にとっておいたのか…ということは誰が犯人なんだ!?
うわーん、わからなくなってきたじゃないかー!


もうダメだ…なんだか犯人見つけるのなんてどうでもよくなってきたなー。
また買ってきたらいいだけだしね。じゃーひとっ走り…
「あ、瀬芦理姉さん」
「なんだモエか。アタシちょっと出かけてくるねー」
「もしかして『猫屋』?」
「うん。なんでわかったの?」
「実は…」
何だか申し訳なさそうに、モエが箱を一つ差し出してきた。
それは紛れもなく『猫屋』の箱!
「ご、ごめんね、瀬芦理姉さん…実は…わ、私が食べちゃったんだ…」
「へ?モエが?」
「う、うん…あの日、晩御飯のおかずを瀬芦理姉さんや高嶺にほとんどとられちゃったから、お腹がすいてて…
 それで、れ、冷蔵庫にケーキがあったのを思い出したから…」
「黙って食べちゃったんだ」
「ごめん…瀬芦理姉さんが騒ぎ出すから、なかなか言い出せなくて…
 こ、これはそのお詫びだよ。同じのを今さっき買って帰ってきたんだ」
「…なーんだ、そうだったのかー。じゃ、原因を作ったのはアタシだね」
「そ、そういうわけじゃないよ。悪いのは食べちゃった私なんだし…」
「いーよ、いーよ。モエだったら、お姉さんは許してあげる」
「瀬芦理姉さん…」
「それよりさ、それはありがたくもらっておくけど、どーせだったらみんなで食べない?」
「あぅ?」
「今から一緒に『猫屋』に行って、一切れとかそんなケチなやつじゃなくて、一個丸々買ってこようよ!
 それをみんなで食べるんだ。あ、もちろんお金はモエ持ちね」
「うん!」
いつもモエにはお世話になってるんだもん。
怒ったりとかなんて、アタシにはできないよ。
「それじゃ、『猫屋』に向かってしゅっぱーつ!」
「あぅ!」


(作者・シンイチ氏[2005/11/25])

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