『うにゃー、5時半だよんっ。起きろモエ!
起きないとひたすらHな言葉を流しt』
 パチン!と瀬芦里姉さんの声の目覚ましをとめる。
 あぅ・・・何だか今日は寒いなぁ。
 まだ十二月に入ったばかりなのに、昨日はニュースで記録的な寒波が
関東にくるとか言ってたっけ。
 パジャマを脱いでジーンズに足を通すと
 「うわ、つ、冷たい。」
 早朝のせいもあるけど、今日は雨戸の向こうが
妙に静かなような気がする。
 いつもならこのくらいの時間なら、
車が通る音とかも聞こえるのに。
 とりあえず、雨戸を開けようと廊下に出ると、
息が白くなり、つま先のほうがひんやりと冷たくなった。
 ガタッ、ガラガラガラ・・・
 「・・・うわぁ・・・綺麗だな・・・」
 庭が一面の雪に覆われていた。
 雪は今もしんしんと降り続いている。
 雪に見とれているとぶるっと体が震えた。
 「あぅ、やっぱり寒いなぁ。」
 雛乃姉さんが起きるまで、後20分ぐらいある。
 一応、布団をもう一枚かけて置いてあげよう。
 ・・・ 
 
 朝食を作っていると、雛乃姉さんが台所までやってきた。
 「あ、雛乃姉さん、おはよう。」
 「うむ、おはよう。」


 「もう、ラジオ体操は、終わったの?」
 「うむ、寒くても続けるのが健康の秘訣だからな。
ところで巴よ、我に布団をかけてくれただろう?」
 「あ、うん。寒いかと思って。」
 「やはりお前か。相変わらずやさしいな。飴をやろう。
それにしてもすごい雪よの。
ここでこんなに雪が降るのは、ほんに久しぶりだな。」
 「あは、本当だね。
何だか私、わ、わくわくしてきたよ。」
 「フフフ、お前もまだ子供よな。
では、我は居間で朝食が出来るのを待っているぞ。
精一杯おいしいご飯を作るといいぞ。」
 「あう!出来たら、持っていくね。」
 ・・・
 
 「おはようともねえ。寒くて今まで起きられなかったよ。
ごめんね。まだ何か手伝うことあるかな?」
 少しすると空也も起きて来た。
 もうそろそろ要姉さんを起こさなくてはいけない時間だったので
 「おはよう。ちょっと、火を見ててくれないか?
私、要芽姉さんを起こしてくるよ。」
 ・・・
 要芽姉さんの部屋の戸を開け中に入り、
用意してきたフライパンをすりこ木で叩いて、音を出す。
 ガンガンガン!
 「要芽姉さん、朝だよ。」
 「ん〜、もうあと三時間・・・」
 「ダ、ダメだよ。今日はこの時間に起こしてって
姉さんが言ったんだよ。」


 「嫌よ・・・。今日は寒いの。」
 「起きてよ。時間通り起こさなかったら、また姉さん、私に・・・あぅ。」
 「あら、あなたが私を起こさなかったら、
私が何かあなたにするって言うのかしら?」
 がばっと起き上がって、私の顔を見ながらニヤニヤする要芽姉さん。
 「また、お仕置きって言って、・・・その、私の・・・あぅ
・・・む、胸を触る。」
 「フフフ、触っているんじゃなくて、もんでいるのよ。
まあいいわ。今日は起きてあげる。・・・寒い。」
 と言いながらも、どことなくふらふらと部屋を出て行く。
 心配なので、洗面所まで手を引いてあげた。
 ・・・

 今日は皆、仕事や学校があって、朝食も全員そろって食べる。
 皆おいしそうに朝食を食べてくれている。
 「くーや、帰ったら、お姉ちゃんと雪遊びしようね〜。」
 「アンタ、その年になって何言っているの?
雪遊びなんて、子供っぽい事言って。下らない。
大人の女性は、雪を寂しげに見ながら窓辺にたたずむものなのよ。」
 「ツインテールは、友達いないからあんな発想しかできないんだよ〜。」
 「アレは姉貴の僻みなんだね。お姉ちゃん。」
 「流石くーや、飲み込みが早いね〜。」
 「むぅぅ、朝からイラつくわねー。」
 瀬芦里姉さんは早々と朝食を食べ終わると、
コタツから顔だけ出して丸くなっていた。
 ピ〜ンポ〜ン
 「あれ、誰か来たよ。」
 「ああ、おそらくいるかでしょう。
巴、出ておいてくれないかしら?私もすぐに行くわ。」


 玄関をあけると、異様に着膨れした秋山さんと、
いつも通りスーツをビシッと決めた摩周さんがいた。
 「巴さん、おはようございますー!」
 「おはようございます。要芽様をお迎えに上がりました。」
 「要芽姉さんなら、いますぐに来ます。
はい、お茶どうぞ。・・・秋山さん、さ、寒がりなんですね。」
 「ありがとうございますー。
そうなんですよ、私、東北の生まれなんですが、
寒いのはダメなんですよねー。」
 ずずっと一口、二口お茶を飲む秋山さんと摩周さん。
 「お待たせ。さ、行くわよ、摩周君、いるか。」
 要芽姉さんがスッと玄関に現れると、
一瞬ビシッとしていた摩周さんの頬が緩んだ気がした。
 「行ってらっしゃい、要芽姉さん。」
 「行ってくるわ。巴、あなたも今日学校なのでしょう?
気をつけて行ってらっしゃいな。」
 ・・・

 雪は夕方になると止んだが、積もった雪は解けずにそのまま残っている。
 神奈川にしてはだいぶ積もったほうだ。
 大学から帰り、家の門を開けると、庭で海と空也が
雪だるまを造っていた。
 それを雨戸と障子戸を開けて、
雛乃姉さんとまると高嶺が雛乃姉さんの部屋から見ている。
 「ほらくーや、ツインだるま〜!」
 「やったね!海お姉ちゃん。
二人で一生懸命がんばった甲斐があった!」
 「くーやー!」
 「お姉ちゃん!」
 ガシッ!っと抱き合う二人を見て、
 「ぜんっっっっぜん似てないじゃないのよ!
って言うか、雪だるまにツインテール付けただけでしょ!」


 「そうか?我は特徴をうまく捉えていると思うのだが。」
 「ぎゅぐぎゅるぎゅ〜(俺もひなのんに賛成だぜ)」
 「さっすが雛乃お姉ちゃん!分かってるな〜。
あ、巴お姉ちゃんだ。お帰り〜。」
 「あは、楽しんでいるみたいだな。」
 「巴姉さん!どう思う?この雪だるま。
ぜんぜんアタシには見えないでしょう?」
 「あぅ・・・私は、か、かわいいと思うけどな。」
 「ほらね〜。否定的意見はツインだけだよ〜。
場の空気を読むことを覚えようね〜。」
 「似てるとは巴姉さんは言ってないでしょうが!」
 「ともねえも一緒に遊ぼうよ。」
 「ありがとう。でも、私は夕飯の支度をしなくちゃ。」
 「あっ、そっか。俺もすぐに行くよ。」
 「空也は遊んでいて大丈夫だぞ。お姉ちゃんに任せるんだ。」
 ・・・

 今日の夕飯はチゲ鍋にした。
 寒いからあったまるかと思ったのもあるし、
あらかじめ招待していた歩笑ちゃんや帆波さんも喜ぶかと思ったからだ。
 「「いただきます!」」
 瀬芦里姉さんが辛いのが苦手なので、
トウバンジャンは好きな人が好きなだけ入れるように
辛さは薄めにしておいた。
 「それにしても今日はまだ要芽ちゃんが帰ってきてないんでしょ?
何だか寂しいわね。
歩笑ちゃん、私にもトウバンジャンの瓶とって。」
 「はい、姉さん。」
 「ってもう空じゃないの!」
 歩笑ちゃんの今日の服、かわいいなぁ・・・
 「巴さん、トウバンジャン、まだある?
・・・巴さん?」


 「ダメだよ、ともねえがねーたんに見入っちゃって聞こえてない。」
 「だったらアンタが早く取って来い!(ばきぃっ!」
 「ぐはぁ!何で姉貴がキレてんだよぉ!」
 「高嶺お姉ちゃん、いい度胸してるね〜。」
 「お前ら、もそっと静かに食えんのか。
今日の瀬芦里を見習え。静かに食べているではないか。」
 「私はただ、辛いのが苦手だから
誰のも横取りできないだけなんだけどね。」
 今日の夕飯は、要芽姉さんがいないのは寂しいけど、
何だか楽しいな。
 家の外は圧倒的に寒くて静かなのに、中はこんなにあったかで賑やか。
 こう言うのを、幸せって言うのかな?
 「あれ、ともねえどうしたの?泣いてるの?」
 「えっ、あ、い、いや、なんでもないんだ。」
 こんな時が、ずっと続くといいな。

 ・・・
 ガラガラガラ・・・
 「ただいま。」
 「お帰り、最近遅いね。」
 「瀬芦里・・・あなた、その格好疲れないの?
首だけコタツから出して丸くなって。
・・・そうね、年末だから忙しくて。」
 「えっへっへ〜。
実は待ってたんだよ、要芽姉が帰ってくるの。
ほら、これ!(ドン」
 「あら、この間飲みたいって言ってたお酒・・・。」
 「寒い中、買ってきたんだよ。
要芽姉と雪見酒するためにね。
もう皆寝ちゃったし、大いにやろうよ。」
 「フフ、そうね。付き合うわ。」
 ・・・


 『うにゃー、5時半だよんっ。起きろモエ!
起きないとひたすらHな言葉を流していくぞー。セッk』
 パチン!と瀬芦里姉さんの声の目覚ましをとめる。
 雨戸を開けると、残り少ない雪は朝日に照らされてきらきらしていたが、
これではお昼前には解けてしまうだろう。
 ちょっと、残念かな。
 ・・・
 昨日出来なかったランニングに行く支度をしていると、
庭のほうからラジオ体操の音が聞こえてきた。
 雛乃姉さんかな?
 靴の紐をぎゅっと縛って、玄関を出る。
 門を出る前に、雛乃姉さんが声をかけてきた。
 「巴、気をつけて行ってくるのだぞ。」
 「うん!」
 門の前の通りに出ると、雪は道の端に少し残っているぐらいだった。
 駆け出しながら、また雪が降ればいいなと思った。


(作者・SSD氏[2005/09/17])

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