「いい?イカ。この数字をさっきの公式のxのところに当てはめれば、答えはすぐに出るでしょう?」
 「なるほど・・・やってみるよ。」
カキカキ・・・
 「姉貴っ!出来たよ。」
 「へぇ、イカの分際でけっこう早くできたじゃないの。どれどれ・・・」
 「へへへ、合ってる?」
バキィッ!
 「いっっっってぇ!」
 「何で合計を求める問題で、しかも負の数がないのに解の数が問題より小さくなるのよ!
このド低脳、もとい、クサレ脳みそがぁっ!」
ガッシャァン!
 「あ〜あ、キレた、キレた・・・って高嶺!そ、そんなことしたらダメだ。」
 「だって、巴姉さん。このイカの試験まで、そんなに時間無いのよ。これくらい簡単に出来ないで、
到底試験をパスできるとは思えないわ。」
 海が『くーや分不足』で倒れた後の家族会議で、イカが海の行っている学校に一緒に行くと言い出した。
 かつて巴姉さんが通い、今海が通っている学校。
 なかなかに入学するのは難しく、かなりの勉強がイカには必要だった。
 巴姉さんやアタシ、海が時間を許す限りイカに勉強を教え、要芽姉様もたまには手伝ってくれた。
 イカは物覚えは思っていたほど悪くないが、それでも時間がかかりそう。
スーッ 
 「くーや!ただいま!何かツインテールにひどい事されなかった?
今日これからは私がくーやに勉強教えてあげるね〜。」
 「ちょっと海!今はアタシがイカに数学教えてるんだから、今教える人間が変わったら、
物覚えの悪いイカの脳みそが混乱するに決まってるわ。」 
 「くーやなら大丈夫だよ〜。
それに、私たち人間は高嶺お姉ちゃんと違って頭蓋骨の中にしか脳みそ入ってないから、
そりゃあ、高嶺お姉ちゃんから見たら、人類は物覚え悪いかもしれないけど・・・」
 「アタシが人間じゃないみたいな言い方すんな!」
・・・


 あの事件以来、イカと海はよりいっそう仲良くなったような気がする。
 アタシや巴姉さんに勉強見てもらってるときよりも、海に教えてもらっている時のほうが
イカは明らかに楽しんで勉強していると言うのが見て取れる。
 ・・・あの二人はやっぱりいつか結婚・・・のような形を取るのかしら。
 義理の姉弟で結婚・・・できるかどうか、調べればすぐに知ることは出来るけど、
 今までなんとなく調べなかった事。
 これからも調べる気なんてないし、調べる必要も無い。
 「高嶺?こんな遅くまで、何をぼーっとしているの?」
 「ああ、要芽姉様。お帰りなさい。」
 「あなた、最近そうやって考え事してることが多いわね。」
 「そうですか?」
 「そうよ。・・・何を考えているのかは大体想像がつくのだけれどね。」
 「えっ!?何を考えてると思っているんですか?」
 「フフフ・・・それより、ちょっと飲みましょうか。
最近、空也の勉強のほうはどうなの?」
 今までアタシをお酒に誘ってくれることなんてあまりなかったのに、
なぜかこの夜は姉様はずっとアタシの相手をしてくれた。
・・・
 「くぅあ〜!やっぱり馬鹿に勉強教えるのは疲れるわ。」
 巴姉さんとイカ教師を交代して、庭に出て日の光を浴びながら、体を伸ばしていると
 「おっ、出て来たね!タカ。こっちおいでよ。」
と屋根の方から声がして、縄梯子が下りてきた。
 何だか珍しいわね。
 普段は自力で登っておいでって言って梯子なんか下ろしてくれないのに。
トコトコ・・・


 「なによ。こんなところに呼び出して。」
 「まぁまぁ、ここ座んなよ。クーヤの勉強のほうはどうなの?」
 「やれば出来そう、って感じはあるんだけどね。
世の中にはあそこまで教え込まなきゃならない人間がいるのか、っていう発見があったのは面白いわ。」
 「ふーん。じゃ、一応は楽しんでるんだ。」
 「・・・まぁね。」
 「でもそれもクーヤが学校受かるまで。その後は・・・ツライネ。私もタカも。」
 「なっ、何でよ?」
 「ふっふーん。なんでもないよーだ。タカァー(ぎゅっ」
 「なっ、何でそこで抱きしめるのよ!ちょっと、離してよ。」
 「だーめ。タカのことがこんなに愛おしく思えるのは初めてだよ。
・・・これは喜ぶべきなんだよね。クーヤもうみゃも幸せそうだし(ボソ」
 「何て言ったの?って言うか離しなさいよ!」
 「なーんでもないよ。」
 そう言って瀬芦里姉さんは私を離して、ぱっと地面に飛び降りると
 「そういえばね、要芽姉がタカは大人になったって言ってたよ。じゃね♪」
と言って塀を乗り越えてどこかへ行ってしまった。
・・・
 よくよく考えると、あの事件以来変わったのはイカと海だけではないことが分かった。
 雛姉さんは神社で巫女さんのバイトを初めて、毎日イカが合格するように祈ってるらしい。
 巴姉さんは勉強をイカに教えるのが楽しいみたい。
 この間一緒にお酒飲んだ時の要芽姉様の雰囲気はどことなく寂しい感じがしたし、
さっきの瀬芦里姉さんは空回りしてる感じ。
 ・・・アタシも、けっっっっして!断じて!諦めなんかじゃないけど、
イカをいつまでも奴隷にしておくのは、やめたほうがいいのかも。
 海の邪魔をする気はないし、それに海も大切な妹だし。
 ・・・って何考えてるのかしら、アタシ。イカなんかどうでもいいのに・・・。
 よし!気が変わる前に言ってしまおう。
 「ちょっと!イk・・・空也!来なさい!」
 「何?姉貴?今勉強中だからパシリはやだよ。」
 「いい?アンタはね、今日で晴れて・・・」


(作者・SSD氏[2005/09/06])

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