久しぶりに集まった、昔の友人たち。
昔話に花が咲き、またそれを肴にして酒を酌み交わす。
「ちょっと酔っちゃったかな?風に当たってくるね」
「あー、俺もちょっと当たってくるかな」
「お前、変なことするなよ」
「うるせー。するかよっ」
2人で外に出た。
「・・・・・・星」
「え?」
「きれいだな」
「・・・そうだね」
「・・・・・・みんなでこうやって集まるの、何年ぶりかな」
「5年ぶり、かな」
「・・・・・・そうか」
2人で空を見上げた。
「寒いな」
「当たり前よ、冬だもの」
「でもな・・・」
「北国生まれのくせに、なに言ってるの」
茶化すように、彼女が言った。
「うるせー。ほっとけ」
「変わってないね。全然」
「あ?」
「ちょっと都合悪くなると、すぐに「うるせー」って言うの」
「う、うるせーよ」
「ほら、あはは」
「ほっとけ」
「あ、そうそう。それもよく言ってた」
「ちっ」
思いっきりからかってやがる。


「・・・・・・でも」
「なんだよ、まだあんのかよ」
「一つだけ、・・・変わったね」
「なにが」
「カッコよくなった」
「それだけかよ」
「うん。それだけ」
「つまんねー」
「でも、カッコいいのはホント」
「言ってろ」
「ねえ」
「ん?」
「あたし、どこが変わったと思う?」
「は?」
「言ってみて」
「変わってねーよ」
「うそ」
「変わってねーって。その性格」
「あ、ひどーい。傷つくなぁー、その言い方」
「まあ」
「ん?」
「綺麗になったな、昔より」
「ホント?」
「それに・・・」
「それに?」
「スタイルがよくなった」
「昔からだったでしょ」
「いや」
「・・・・・・?」
「胸が、昔より大きくなった」
「スケベ」


そんなことを言いながら、空を見上げてた。
「・・・彼氏、いるのか?」
「・・・・・・いるよ」
「そっか」
「・・・・・・うん」
「いいやつか、そいつ」
「・・・・・・まあね」
「そっか・・・・・・・・・」
一瞬、強い風が吹いた。
「寒ーい。私、先に戻るね」
背を向け、中に戻ろうとする。
ギュッ。
「ちょ、ちょっと。なんのつもり?」
「・・・・・・・・・」
彼女を抱きしめた。強く、強く。
「ちょっと、痛いって」
「・・・・・・・・・」
「いくら昔から無愛想で口数が少なかったとはいえ、これは言ってもらわないとわからないわよ」
「・・・・・・・・・」
「ふざけてるつもり?」
「・・・・・・やろう」
「え?」
「・・・ばかやろう」
「なんで、ばかやろうなのよ」
「・・・・・・・・・」
「さ、戻るから離して」
「・・・・・・・・・」
「離してよ」
「・・・・・・くな」
「え?」
「・・・行くな」


「・・・・・・え?」
「どこにも行くな。俺のそばにいろ」
「・・・・・・・・・」
「俺だけのものになれ」
「!!」
そのまま、しばらく黙ってしまう2人。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・カ」
「ん?」
「・・・バカ」
俺の冷たい手に、暖かい滴が落ちてきた。
「なんだって?」
「・・・バカ」
「なんでバカなんだよ」
「バカだから、バカって言ってるんじゃない」
「なんでだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい」
「・・・遅いのよ」
「あ?」
「・・・遅すぎるのよ」
「なにが」
「・・・もう、ホントに鈍いんだから」
「・・・・・・」
「私の今のこの気持ち、どうすればいいのよっ!」
「・・・・・・ごめん」
「謝らないでよっ!また、出てくるじゃないっ・・・うっ・・・うぅっ・・・・・・」
「泣いてる、のか・・・・・・」
彼女の体の向きを、俺のほうに向ける。
「見ないでよ・・・・・・」


泣いてる顔を見られまいと、俺から顔を背ける。
それを強引に俺のほうに向け、唇を奪う。
「んっ」
短く、彼女の唇を覆う。
「っはぁ、ちょっと、いきなりなによっ、んんっ」
また彼女の唇を、今度は長く覆う。
「んふっ、ん・・・・・・」
互いの舌を絡め合い、味を確かめ合う。
雪は、降っている。
しずしずと、白く、2人の周りに降り積もる。
2人の周りだけ、時間が止まってるかのようだった。
お互いの気持ちを確かめ合う接吻は永く続いた・・・・・・・・・。


「かぁーーーっと!!」
「お疲れー、2人とも」
「くーやぁ、寒かったでしょ〜。はい、ジャケット〜」
「ありがとうお姉ちゃん」
「はい姉さん、紅茶」
「ありがとう」
「うむ、2人とも、御苦労であった。飴をやろう」
「ありがとう、姉さん」
「ありがとうございます」
俺たちは今、北海道にいる。
しかも、冬真っ盛りのこの時期に。
なんで、そんな時期に来ているかというと・・・。
「やぁー、2人ともお疲れー!なかなかグッと来たよ」
そう、この人、瀬芦里ねぇねぇが事の発端である。
全員、居間でまったりしているところに突然えぇねぇが来て、「自主制作映画を撮ろう!」とか言いだし、あれよあれよという間に、ここまで来てしまった。
ちなみに、企画・脚本・演出がねぇねぇで、監督は雛乃姉さん、カメラ・編集が海お姉ちゃん、アシスタントがともねえ、高嶺姉貴は「カチンコ」と、「お前、変なことするなよ」等の男役のセリフ(お姉ちゃんが編集の時に姉貴の声を変換するって言ってた)である。
そして、役者がオレと要芽姉様。オレとしては何ともおいしい役目だ。
姉様も、あまり乗り気ではないが、まんざらでもない様子だ。
ただ、少し機嫌が悪い。いきなりこんな事になったこともあるが、一番の理由は・・・。
「空也ちゃん、お疲れっ☆甘酒飲む?」
「クーくん、お疲れ様」
そう、帆波ねぇやと歩笑ねーたんも来ている。
ご存じの通り、姉様はねぇやとはあまりうち解けていない。
以前よりはだいぶいいのだけれど。
ただ、いるだけならまだよかったのだけど、
「ほなみよ、今の2人の演技はどうであった?」
「そうねー、まずまずいいんだけれど、もう少し硬さをとったほうがいいかなぁ」
そう、演技指導で来ているのである。
「で、あるか。具体的には?」
「まず、要芽ちゃんは、セリフをもう少し自然に言えば、あとはオッケーよっ」
「ふむ。では、くうやは?」
「空也ちゃんは、たまに自が出そうになってるから、そこを気をつけてねっ☆」


「うっ」
本職やってるだけあって鋭いなぁ。
とりあえず、今のシーンはオーケーらしい。
「ねぇねぇ、こんなの撮ってどうするの」
「ん、それはね、んっふっふっふっ・・・」
「な、なんだよぅ、教えてくれてもいいじゃん」
「実は・・・、ネットで公開するんだ」
「えっ?」
「それで見た人から、いくらか払ってもらうんだ」
「やっぱり、そういうことだったのか・・・」
「なによー、要芽姉とおいしい思いしてるくせにぃー」
「そ、その件は、どうも」
「あとで、たーっぷりとお礼してもらわないと割に合わないにゃー」
と言って、じと目でこっちを見てくる。
「うっ、わかったよ・・・・・・」
「さーて、なにでお礼してもらおうかなぁ」
うっ、なにでお礼させられるか想像するのがすごく怖い・・・。
「ところで、ぽえむよ。作家の立場から見て、すとーりーはどうであるか?」
「ちょっとシンプルすぎる・・・」
「確かに言えてる〜」
「いいじゃん、初めてなんだから。ところで、うみゃ。準備はできた?」
「いつでもオーケーだよ〜」
そういうと、どこから出したのか、お姉ちゃんはハイタワー型のデスクトップパソコンとノートパソコンを目の前においていた。
「じゃ、2人とも。次のシーン、いくよー」
「まだあるの?いい加減寒くなってきたわ」
「まあまあ要芽姉。次のシーンは暖まるからさ」
「?」
「では、次のシーンの内容、ひなのん!発表お願いします」
ねぇねぇがそういうと、雛乃姉さんが紙を取り出し読み上げた。


「うむ。次は、2人が交わる“しーん”だ」
「・・・・・・は?」
一瞬なんのことかわからなかった。
「交わるって、なにが」
「人と人に決まっておろう」
「誰が」
「かなめとくうや、おぬしら2人しかおらぬだろうが」
「どこで」
「ここに決まっておる」
「いつ」
「今だ。分かりきったことを聞くでない、このたわけ者」
そういって姉さんはオレの頭を扇子でペシ、と叩いた。
「ちょっと瀬芦里!どういう事!?」
「あそこまで熱いキスしておいて、終わりってのはちょっとねぇー」
「そうじゃなくて、私たち2人を凍死させる気!?」
「大丈夫だって、全部脱ぐワケじゃないし」
「そういう問題じゃないでしょう!」
「いいじゃん、これっきりなんだから」
「とにかく、私は降りるわよ」
「でもぉ、要芽姉もわりと本気でキスしてた様に見えたけどぉー」
図星をつかれたのか、一瞬言葉が詰まる。
「っ、瀬芦里!!」
「あはは、ごめんごめん。でも、今日はそんなに寒くないらしいし。それに、慣れてきたでしょ?」
「まさか、この衣装はそのために選んだの?」
「ピンポーン」
「・・・はぁ、迂闊だったわ」
「で、やる、やらない?」
「・・・・・・」


姉様は黙り込んでしまった。そこへ、ねぇやが近づいていった。
「どうしたの要芽ちゃん?浮かない顔してるわよっ?」
「少し黙ってくれる?」
「あン、要芽ちゃん冷たーい。帆波おとなしくしてるのにー」
そういって両手の人差し指をツンツンさせる。
「ところで瀬芦里ちゃん。次のシーンってどんな感じなの?」
「あんた話聞いて無かったんかい」
「念のためよっ」
絶対嘘だ。
「次のシーンは、クーヤと熱く絡むんだよねー」
「あン、こんな屋外でなんて淫靡だわっ」
「で、いま役者のオーケー待ちなんだけど・・・」
「ふーん」
そういって、唇に人差し指をあててねぇやは少し考えていたようだった。そして、
「じゃあ、要芽ちゃんがやらないなら、私がやる!」
「えっ!?」「おっ」「!!」
なんて事を言い出すんだ、あんた。
「でも、役者が変わっちゃうしなぁ」
「うんうん」
確かに、役者が変わってるのはマズいよな。
「大丈夫よっ。うちの事務所のメイクさん連れてきたから☆」
「なぜに?」
「女優はいつでも出る準備しておかないと」
そう言って、ウインクを飛ばすねぇや。
「・・・あ、そう」
深く突っ込むのはやめよう。
「でもメイクだけじゃごまかし効かないっしょ?」
「ノープロブレム!そのメイクさん、ハリウッドでVFXって言うんだっけ?それの特殊メイクチームにいたらしいの」
「えっ、すごいじゃん!じゃあ、とりあえずメイクしてきてくれる?」
「オッケー☆」
そういって、ねぇやはロケバス、というかただのレンタカーの中に入っていった。


2時間後・・・。
「おまたせー」
「ねぇや、どんな感、じに・・・」
「ワオ。超そっくり・・・」
「で、あるな。喋らなければどちらが本物が分からんのう」
「姉さん、そんな・・・」
あ、姉様が珍しく焦ってる。
確かに、声聞かなきゃ分かんないくらいそっくりだもんなぁ。
「でもさ、声はどうするの?いくら外見が似てても声が違っちゃあマズいよ」
「その点は、うみゃ!」
「帆波さんの声の周波数いじって、要芽お姉ちゃんの声に変えちゃうからだいじょ〜ぶ!」
「じゃあ、進路オールクリアねっ☆」
「待ちなさい!」
その流れを、姉様が遮った。
「あなたにやらせるくらいなら、私がやるわ」
「あらぁ、やる気無かったんじゃないの」
「ふっ、気が変わったのよ」
「・・・そっ。じゃあ、がんばってね要芽ちゃんっ」
「あっさりと引き下がるのね」
「だって、他人の役を奪ってもおもしろくないもの」
「・・・そう」
「でもいいなぁ、空也ちゃんと青姦なんて」
「ねぇや、下品な言い方しないでよ」
「だって、事実じゃない。淫乱だわっ」
「黙れよ」
「あン、いつもの要芽ちゃんだわっ」
「2人ともー!そろそろいくよー」
ねぇねぇがオレたちを呼んだ。
「わかったー」


そう返事をして所定の位置へついた。
そこでねぇねぇは、とんでもないことを口にした。
「あ、ちなみにこのシーン、ライブ配信するから」
「・・・はい?」
瀬芦里さん、今なんて言いました?
「えっ、どういうこと?」
「だから、ライブ配信。つまり、生撮り」
「・・・マジで?」
「マジで」
「じゃあ、あのパソコンは・・・」
「ライブ配信用にうみゃに用意してもらったんだ。うみゃー、準備オッケー?」
「いつでもいけるよ〜」
「間接視姦だなんて、エロいわっ」
「・・・ねぇや、まだそのカッコしてたの?」
「あっそうだ。歩笑ちゃん脅かしてきちゃおっと」
人の話聞いてないし。
「さ、シーン2いくよ!」
大丈夫かな、この映画・・・。


(作者・◆uq4J1ypP0c氏[2005/04/08])

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