あれから20年も経つのね・・・。
 でも、あたしたち姉弟7人は相変わらず一つ屋根の下で生活している。
 38歳になった空也も一緒に暮らしている。
 いまだに寝起きの悪いあたしを毎朝起こしにやってくる。
 40近くなのにあどけなさが残る横顔がかわいい。
 本当は空也はあたしのものになるはずだったのに・・・。
 結局、空也はあたし以外の女性を選んだ・・・。


 20年前、あたしは沖縄から帰ってきた空也を犯した。
 それは、あたしから空也を離すため。
 あたしみたいな後ろ向きな女を好きになっちゃいけないの。
 予想に反して、空也はあたしに擦り寄ってくる。
 生意気にも昔のあたしに戻ってと。
 あたしは冷たくあしらったけれど、
 本当は、頭の中は空也のことでいっぱいだった。
 心の奥底では、空也があたしを選んでくれることを期待していた。
 だから、夜中になぜか泣きたくなったり、いつも以上に衣瑠香を攻めたり・・・。
 
 でも、あの日・・・。


 秋の気配のする、8月も終わりに近いある夜。
 あたしは見てしまった。
 ふたりが口づけしているところを。
 空也が海にするお出かけのキスとまったく違う。
 あたしは全身が硬直した。
 なぜ、彼女なの・・・?


 要芽姉様から受けた辱めは、確かに俺のプライドを傷つけた。
 でも、要芽姉様を好きなことには変わりなかった。
 ただ、沖縄に行く前と何かが変わっていた。
 姉様を変えたのは何だったのか?
 俺はそれが知りたかった。


 俺はお姉ちゃんたちが好きだ。
 恥ずかしいけど、40近くになってもそう思う。
 ただ、愛しているのは要芽姉様ただ一人。
 だから、要芽姉様の心の闇を取り除いてあげたかった。
 でも、姉様以外の人に恋するなんて思いもしなかった・・・。


 我は正しい。
 しかし、誰と結ばれるのが正しいかなど、大岡越前守でもわかるはずもあるまい。
 我はそう長くはない。
 そう言いながら四十を軽く越えてしまった。
 空也は我の夫となる男であったのに・・・。
 それが心残りであるぞ。


 あたしはその辺の予備校の教師なんかじゃ終わらないわよ。
 見てなさい、今にカリスマ予備校教師になるんだから。
 それから、何年経とうがアンタは一生あたしの奴隷なのよ、空也。
 結婚しているからって大きな顔するんじゃないわよ。
 誰と結婚しようが、アンタはあたしから逃れられないんだから・・・。


(作者・名無しさん[2004/11/06])

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