ふと、目が覚める。・・・ん、あれ。まだ夜だ。
月が、紅い。紅い月なんて、出るんだ。
なんか、血の色に近い・・・。
ふと、人の気配がした。
「・・・姉さん?」
部屋の戸口には雛乃姉さんが立っていた。
「おお、くうや。おこしてしまったか」
「いや、大丈夫だよ」
「そばへ行ってもよいか?」
「うん。いいよ」
姉さんが僕のそばに座る。
「どうしたの、姉さん。こんな時間に」
「くうやよ、お前は我のことをどう思う?」
「それは、大切な姉さ・・・」
「そうではない」
「?」
「我を、女としてどう思うかと聞いておる」
「女として・・・?」
「うむ」
唐突に言われて、僕は少し考えてしまった。
「どうなのだ、くうやよ」
姉さんが顔を近づけてくる。
「す、好きだよ。とっても」
「それは誠か」
「も、もちろん」
「我以外の女には目もくれぬことを誓うか」
姉さんが真剣な顔で聞いてくる。
その表情に、何かとてつもないオーラを感じた。
「この命に変えましても」
ちょっと大げさに言っちゃったかな。


「我のために、その身を捧げる覚悟はあるか」
?!
「な、なぜそんなことを・・・」
「覚悟はあるか」
「も、もちろんでございます」
凄みのある声に押され、思わずそう答えてしまった。
「そうか・・・」
姉さんからオーラが消えていくような感じがして、僕は体の力が抜けてしまった。
「皆のもの、聞いたか」
そういって、姉さんが手をたたくと、ほかのお姉ちゃんたちが部屋に入ってきた。
ただ、なんか様子がおかしい気が・・・。
「これで、くうやは名実ともに我のものである。わかったな?」
「はい・・・」
「決して誰も、手を出すでないぞ」
「心得ております、姉さん」
そう答えた要芽姉様の目を見ると、生気が感じられなかった。
「姉様?」
「ほかのものも、よいな?」
「はい、わかりました・・・」
そう答えたほかのお姉ちゃんたちも同様だった。
「どうしたの、お姉ちゃんたち?なんか変だよ。具合でも悪いの?」
そういって、近寄ろうとする僕を姉さんが制した。
「姉さん?」
「案ずるな」
「でも・・・」
「我が術をかけたのだ」
「?!」


「・・・やはり6人もいては、我とお前との接する時間が少なくてな」
「だからって、何で術なんか・・・」
「我の力を持ってすれば、造作もないことよ。それに・・・」
姉さんが一息あけて、続けた。
「それに、愛というのは、独占せねば、その価値は高まらぬであろう?」
そういって僕を見た姉さんの目は、・・・いつもの姉さんの目じゃなかった。
ものすごく深くて、冷たい感じ・・・。
「姉さん、どうしちゃったの?いつもの姉さんじゃないよ」
「何を言うておる。我は我であるぞ」
「違うよ!姉さんはこんな事しないよ、いつもの姉さんに戻ってよ!」
「では、いつもの我とは何なのだ?」
「え?」
「人間には、それぞれいろんな面を持っておる。他人が知らない面をな。それを他人が見ることは、偶然でないとあり得んのだ」
「じゃあ、今、僕が見てるのは姉さんのひとつの面・・・?」
「で、あるぞ。これも我の持っている面のひとつなのだ」
パン、と姉さんが手をたたくと、あっという間に要芽姉様が僕の手足を革ベルトで縛ってしまった。
「な、何をするんですか!姉様」
「悪く思わないでね。これも姉さんのご意向よ」
「な」
ふっと見ると、姉さんはいつの間にかミラクルひなのんになっていた。
「ふふ、これでお前をじっくりゆっくりと愛でてやるぞ」
「姉さん、やめてよ!・・・っ、姉様!」
僕の呼びかけに姉様は答えない。
「姉様!ねぇねぇ、ともねえ、姉貴、お姉ちゃん!!」
何でこんな大声で叫んでるのに、誰も答えてくれないんだ?!
「くうや、じたばたするでない。男なのだから覚悟せい」
「そんなんじゃないよ!こんな形で愛でられても、うれしくないよ!」
「で、あるか?体はちゃんと応えておるようだが」
空太郎はしっかりと立ち上がっていた。


「くっ」
「こんなにはれるとは、我の魅力も罪なものよのう」
そう言って僕のモノを取りだし、しごきはじめた。
「我が楽にしてやるぞ。何度でもいくがよい」
「やめてよ、やめてったら!」
そんな僕の哀願にも、姉さんは耳を貸さず、僕のモノを攻め続ける。
「や、やめろぉぉぉ!!」
僕は渾身の力を込めて叫び、同時に何とか起きあがった。
「はぁはぁ、・・・ん?ふぅ、なんだ、夢か・・・」
外を見ると、まだ闇があたりを支配していた。
「そうだよな、姉さんがあんな事するわけ、ないもんな」
そう言い置いて、横になり寝ようとしたら、
「・・・うや、・・・くうやよ」
「・・・ん?」
扉の向こうから声がした。
「誰?」
「我だ、雛乃だ」
「ねえさん、どうし・・・!?」
「どうしたの、入ってきてよ」と起きあがって言おうとした。が、起きあがることが出来ない。
「あ、あれ?」
おまけに、手や足、自分で動かせる部位すべてが動かない。
「ちょ、ちょっと待ってね。今起きるから」
僕のその言葉を聞いていなかったのか、姉さんはふすまを開けて入っていた。
そして、僕に見える位置に立った。
「ねえさん、どうしたの?」
「くうや、我とひとつにならぬか?」
「・・・え?」


「同じ事は二度も言わぬ」
「ちょっと待って。あの、心の準備が・・・」
「体も、心も、魂も、ひとつにならぬか?」
3つめ、なんて言ったんだ?魂とかって・・・。
「どうなのだ、なるのか、ならぬのか?」
「ね、姉さんとひとつになれるなら、喜んで」
「本当か?」
「本当だよ」
「そうか。我はうれしいぞ」
スッ。
姉さんが手に持っているものを振り上げた。
ズブッ!
「がっ!?」
胸に一瞬の痛みが走った。何とか無理矢理首を少し動かし、痛みのする方向を見てみる。
姉さんの手にしっかりと握られた短剣が刺さっていた。


「・・・ねえ、さん?」
姉さんが短剣を引き抜く。
「ぐっ」
引き抜いた後から、血があふれ出てくる感じがした。
「お前の血を、我の体に入れることで、ひとつになれるのだ」
そう、なのか、な・・・。
「おお、飴を授けていなかったな。口を開けよ」
「ね、・・・さん」
「口移しの方がよいのか?この甘ったれの弟め」
そう言って姉さんが、口に飴を含み、僕の唇を覆った。
飴を姉さんが、舌で入れてくる。
甘さと、血の、少し鉄っぽい味・・・。
「空也、どうしたのだ。顔色が悪いぞ?」
「ねえ、さん、こそ・・・。か、おに、血が、つい、て、る・・・」
「ん?おお、すまぬな」
血をぬぐった姉さんは、僕の胸からでてる血を、舐めてるみたいだ。
でももう、舐められてる感覚がしない。
姉さんの、声も、聞こえなくなってきた。視界も、なんだかぼやけてきた。
「んん、お前の力が我の体を満たしてゆく感じがするぞ」
外を見てみる。
あ、月が、紅くなってく。
これも、夢、なのかな・・・。
だったら、さっきの方が、よかった、かな。
はやく、さめ、ないか、な・・・。
そう思いながら、僕は目を閉じた。
夢で、あることを、願って。
また、姉さんの顔が、見られることを、願って・・・。


(作者・名無しさん[2004/10/26])

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